全てを護りたい少年の幻想英雄譚   作:時雨翠雨

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第5話

第5話 寺子屋の先生と、幻想郷を作った神々

 

「――というわけで」

 

 

 

「人里行くぞ」

 

 

 

魔理沙の一言で決まった。

 

 

 

理由は二つ。

 

 

 

一つ。

 

能力について調べるため。

 

 

 

そしてもう一つ。

 

 

 

「お前、ぼろぼろだしな」

 

 

 

「え?」

 

 

 

言われて初めて気づく。

 

 

 

腕は擦り傷だらけ。

 

服も土まみれ。

 

頬も少し切れている。

 

 

 

「……あ、ほんとだ」

 

 

 

「気づいてなかったのかよ」

 

 

 

霊夢が呆れる。

 

 

「痛くないの?」

 

 

 

「いやまぁ……アドレナリンですかね?」

 

 

 

「バカ」

 

 

 

即答だった。

 

 

 

そして。

 

 

 

なぜか霊夢が少し不機嫌そう。

 

 

 

「……?」

 

 

 

誓護は気づかない。

 

 

 

その横で魔理沙がニヤついていた。

 

 

 

 

 

「それじゃ、行くぞ」

 

 

 

ほうき。

 

 

 

二回目。

 

 

 

ただし。

 

 

 

「ゆっくりな!!マジで!!」

 

 

 

魔理沙の服を掴みながら叫ぶ。

 

 

 

「お前男子だろ!?」

 

 

 

「怖いもんは怖い!」

 

 

 

「しゃーねぇなぁ」

 

 

 

今日はかなり低速。

 

 

 

その代わり――。

 

 

 

近い。

 

 

 

めちゃくちゃ近い。

 

 

 

身長が同じくらいなので余計。

 

 

 

「近くね?」

 

 

 

「いやだって怖いし危ないし」

 

 

 

「いや理屈は分かるけど」

 

 

 

「おーい、顔赤いぞー?」

 

 

 

縁側から霊夢の声。

 

 

 

「うるさい!!」

 

 

 

魔理沙が怒鳴る。

 

 

 

誓護は笑った。

 

 

 

「仲良いな、お前ら」

 

 

 

「「よくない!!」」

 

 

 

ハモった。

 

 

 

 

 

 

しばらく飛ぶ。

 

 

 

見えてきたのは。

 

 

 

「うわ……」

 

 

 

村。

 

 

 

でも現代じゃない。

 

 

 

まるで昔の日本。

 

 

 

「ここが人里だ」

 

 

 

魔理沙が説明する。

 

 

 

「人間が住む場所。幻想郷で一番安全なとこだぜ」

 

 

 

着地。

 

 

 

すると。

 

 

 

「魔理沙!」

 

 

 

すぐに声が飛ぶ。

 

 

 

現れたのは。

 

 

 

角のような帽子。

 

知的な雰囲気。

 

少し厳しそうな女性。

 

 

 

そして隣には。

 

 

 

小柄で、どこかお嬢様っぽい少女。

 

 

 

「また何かやったのか」

 

 

 

第一声が説教だった。

 

 

 

「うっ」

 

 

 

魔理沙が固まる。

 

 

 

「慧音……」

 

 

 

(先生感すげぇ)

 

 

 

誓護の第一印象だった。

 

 

 

その隣。

 

 

 

少女――阿求の目が止まる。

 

 

 

銀髪。

 

 

 

少し小柄。

 

 

 

それなのに。

 

 

 

ぼろぼろ。

 

 

 

服も破れて。

 

傷だらけ。

 

 

 

なのに笑っている。

 

 

 

――危なっかしい。

 

 

 

心臓が跳ねた。

 

 

 

(え、なにこの子)

 

 

 

すごく。

 

 

 

放っておけない。

 

 

 

しかも。

 

 

 

顔、かなり好み。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

初恋みたいな感覚。

 

 

 

いや。

 

 

 

一目惚れだった。

 

 

 

「で?」

 

慧音が腕を組む。

 

 

 

「説明しろ」

 

 

 

 

 

 

十分後。

 

 

 

「つまり」

 

慧音のこめかみに青筋。

 

 

 

「お前は外来人に模擬戦を仕掛け」

 

 

 

「う」

 

 

 

「しかも暴走しかけた?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「魔理沙」

 

 

 

にこっ。

 

 

 

笑顔。

 

 

 

怖い。

 

 

 

「正座」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「君もだ」

 

 

 

「え!?俺も!?」

 

 

 

「お前も無茶しすぎだ!」

 

 

 

「えぇ!?」

 

 

 

並んで正座。

 

 

 

寺子屋の前。

 

 

 

怒られている。

 

 

 

なぜか既視感がある。

 

 

 

「自分の体を大事にしろ!」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

「能力も分からない状態で無理をするな!」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

阿求がその様子を見ながら、少し笑う。

 

 

 

(男の子なのに怒られてる……かわいい)

 

 

 

しかも時々。

 

 

 

反省してる犬みたいな顔。

 

 

 

刺さった。

 

 

 

完全に。

 

 

 

(これは……少し躾けたくなるかも)

 

 

 

年下ドS気質、発動である。

 

 

 

 

 

 

治療後。

 

 

 

傷薬。

 

包帯。

 

 

 

「ありがと、慧音さん」

 

 

 

自然な敬語。

 

 

 

そして。

 

 

 

笑顔。

 

 

 

「助かった」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

慧音が少し止まる。

 

 

 

年下。

 

なのに。

 

 

 

妙に礼儀がある。

 

 

 

しかも真っ直ぐ。

 

 

 

(……素直な子だな)

 

 

 

怒った直後なのに。

 

 

 

少し甘やかしたくなる。

 

 

 

 

 

「さて」

 

阿求が本を広げる。

 

 

 

「能力、ですよね」

 

 

 

稗田家の歴史書。

 

 

 

幻想郷の記録。

 

 

 

「あったんです」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「少しだけ、似た話が」

 

 

 

空気が変わる。

 

 

 

ページをめくる。

 

 

 

古い記録。

 

 

 

誰も知らない神話。

 

 

 

「幻想郷が作られる前」

 

 

 

阿求の声が静かになる。

 

 

 

「二柱の神がいたと言われています」

 

 

 

「二柱?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

一柱は。

 

 

 

“万物を護る女神”

 

 

 

人々を救い。

 

結界を張り。

 

世界を優しく包んだ神。

 

 

 

そしてもう一柱。

 

 

 

“全てを壊す魔神”

 

 

 

混沌。

 

破壊。

 

戦い。

 

 

 

世界を滅ぼしかねない力。

 

 

 

本来、相反する存在。

 

 

 

なのに。

 

 

 

「幻想郷を作る時だけ」

 

 

 

阿求が言う。

 

 

 

「手を組んだと言われています」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

そして。

 

 

 

誓護の頭がズキッと痛む。

 

 

 

光。

 

 

 

闇。

 

 

 

『護れる力』

 

 

 

『壊す力』

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

「せーご!?」

 

魔理沙が支える。

 

 

 

息が荒い。

 

 

 

でも。

 

 

 

胸の奥で。

 

 

 

何かが、確かに脈打っていた。

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