全てを護りたい少年の幻想英雄譚   作:時雨翠雨

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第9話

第9話 帰り道と、もう一人の巫女

 

「やだ!!」

 

 

 

「帰さない!」

 

 

 

紅魔館、玄関前。

 

 

 

フランが誓護にしがみついていた。

 

 

 

「また遊ぶって言ったもん!」

 

 

 

「いや、また来るから」

 

 

 

「ほんと?」

 

 

 

「ほんと」

 

 

 

少ししゃがんで目線を合わせる。

 

 

 

ぽん。

 

 

 

頭を撫でた。

 

 

 

「約束」

 

 

 

フランが止まる。

 

 

 

また。

 

 

 

優しい。

 

 

 

怖がらない。

 

 

 

普通に触れる。

 

 

 

それだけで、胸がじんわりする。

 

 

 

「……約束」

 

 

 

少し名残惜しそうに離れる。

 

 

 

そして。

 

 

 

今度は――。

 

 

 

「……せーご」

 

 

 

パチュリーだった。

 

 

 

本を抱えながら、少しだけ視線を逸らす。

 

 

 

「……また来なさい」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「本、貸してあげるから」

 

 

 

遠回し。

 

 

 

でも。

 

 

 

分かりやすい。

 

 

 

誓護は笑った。

 

 

 

「もちろん」

 

 

 

自然な笑顔。

 

 

 

「また来ます。パチュリーさん」

 

 

さん付け。

 

敬語。

 

 

 

なのに。

 

 

 

どこか距離が近い。

 

 

 

パチュリーの胸が少しだけ跳ねる。

 

 

 

「……そう」

 

 

 

小さく頷く。

 

 

 

その様子を。

 

 

 

霊夢と魔理沙が見ていた。

 

 

 

なんか。

 

 

 

ちょっと。

 

 

 

面白くない。

 

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

 

夕焼け。

 

 

 

山道。

 

 

 

「結局、歩きなんだな」

 

 

 

誓護が苦笑する。

 

 

 

「四人は無理」

 

 

 

魔理沙が肩をすくめた。

 

 

 

「ほうき定員オーバー」

 

 

 

「それに歩いた方が安全でしょ」

 

 

 

霊夢が言う。

 

 

 

そして。

 

 

 

自然に。

 

 

 

――手を握った。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

誓護が止まる。

 

 

 

霊夢も止まる。

 

 

 

数秒。

 

 

 

「あ」

 

 

 

気づいた。

 

 

 

でも。

 

 

 

離さない。

 

 

 

「……迷子になったら面倒だから」

 

 

 

言い訳。

 

 

 

めちゃくちゃ苦しい。

 

 

 

「いや俺子供じゃないんですけど」

 

 

 

「うるさい」

 

 

 

少し赤い。

 

 

 

誓護は笑った。

 

 

 

「ありがと、霊夢さん」

 

 

 

その笑顔。

 

 

 

ずるい。

 

 

 

霊夢の耳が少し赤くなる。

 

 

 

その横。

 

 

 

魔理沙が黙る。

 

 

 

アリスも少しだけ視線を逸らす。

 

 

 

なんだろう。

 

 

 

もやもやする。

 

 

 

理由は分からない。

 

 

 

でも。

 

 

 

なんか、嫌。

 

 

 

「……ふーん」

 

魔理沙。

 

 

 

「……別に」

 

アリス。

 

 

 

空気がちょっと重い。

 

 

 

誓護だけ気づいてない。

 

 

 

 

 

 

しばらく歩く。

 

 

 

見えてきたのは人里。

 

 

 

「あ、人多い」

 

 

 

幻想郷ではかなり賑やかな場所。

 

 

 

夕方で少し活気がある。

 

 

 

すると。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

誰かが止まった。

 

 

 

緑髪。

 

 

 

巫女服。

 

 

 

でも。

 

 

 

霊夢とは全然違う。

 

 

 

どこか現代っぽい。

 

 

 

そして。

 

 

 

誓護を見た瞬間。

 

 

 

目が止まる。

 

 

 

銀髪。

 

 

 

そして――。

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

思わず声が出る。

 

 

 

「もしかして日本人ですか!?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

誓護が固まる。

 

 

 

「え、日本?」

 

 

 

「やっぱり!!」

 

 

 

一気に距離を詰めてくる。

 

 

 

「今の日本!? 東京!? スマホ!? コンビニあります!?!?」

 

 

 

圧がすごい。

 

 

 

「ちょ待って待って!」

 

 

 

魔理沙が笑う。

 

 

 

「始まった」

 

 

 

霊夢がため息。

 

 

 

「外の世界トークね」

 

 

 

巫女服の少女が慌てて頭を下げた。

 

 

 

「あっ、すみません!」

 

 

 

「私は東風谷早苗です!」

 

 

 

そして。

 

 

 

ぱっと笑う。

 

 

 

「久しぶりに外の世界の人に会えて嬉しくて!」

 

 

 

明るい。

 

 

 

親しみやすい。

 

 

 

誓護も自然に笑った。

 

 

 

「あー、なるほど?」

 

 

 

「俺、籠音誓護です」

 

 

 

少し頭を下げる。

 

 

 

「早苗さん、でいいですか?」

 

 

 

“さん”付け。

 

 

 

敬語。

 

 

 

自然。

 

 

 

早苗が一瞬止まる。

 

 

 

(え)

 

 

 

礼儀正しい。

 

 

 

しかも。

 

 

 

銀髪、綺麗。

 

 

 

顔も整ってる。

 

 

 

でも何より。

 

 

 

笑顔が、なんかずるい。

 

 

 

「……あ」

 

 

 

そして。

 

 

 

一瞬だけ。

 

 

 

ふとした表情。

 

 

 

どこか寂しそうな目。

 

 

 

それを見てしまった。

 

 

 

なぜか。

 

 

 

少しだけ気になった。

 

 

 

 

 

その出会いが。

 

 

 

また新しい物語の始まりになることを。

 

 

 

まだ誰も知らない。

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