何かあった才羽モモイが、異世界の廃墟の中で生きるだけの話 作:ミレニアムのモブ:文学派
「デート?」
「うん、そう。デート。」
ある日のノアズレイヴン本拠地、地下深くの警戒待機室。
冷たく無機質なコンクリートの壁に四方を囲まれたその部屋は、本来であればナヴァギオの生存圏を脅かすオートメイルやフェイタルビースツが警戒網の端に少しでも侵入した際、即座に武装を整えて緊急出撃を行えるよう、歴戦の遊撃隊員たちが24時間体制で神経を研ぎ澄ませて待機する、張り詰めた緊張の最前線だ。
かつては、いつ出撃のサイレンが鳴るか分からない極度のプレッシャーと、血と泥の匂い、そして使い古された銃器から漂うガンオイルのきつい悪臭がこびりついていたその空間に、今はほんの少しだけ、春の木漏れ日のような穏やかで緩やかな空気が流れていた。
所々塗装が剥げた傷だらけのパイプ椅子に深く腰掛け、整備を終えたばかりの愛銃を手持ち無沙汰にいじっていたアーサーと、彼の隣に肩が触れ合うほどの距離まで身を詰め、ミレニアムサイエンススクール製の最新型スマートフォンの滑らかな画面をスワイプしていたモモイは、この血生臭い世界には到底似つかわしくない、ひどく甘く、そして平和な会話を交わしていたのである。
「まあ、デートって言っても、アーサーとバルダー、キャロルの3人をキヴォトスに招待して、私とゲーム開発部のみんなが色々と観光案内するって感じの、賑やかなグループ行動なんだけどね……」
モモイはスマートフォンの明るい画面――ミレニアムサイエンススクールの美しく整備された近代的な街並みや、かつては汚部屋だったがモモイの手によって今はすっかり綺麗になったゲーム開発部の部室の写真――をアーサーに見せながら、少しだけ申し訳なさそうに、けれどそれが楽しみで楽しみで仕方ないといった様子で、太陽のような笑顔を浮かべた。
次元を越えるゲートが完全に安定し、限定的とはいえ両世界間の行き来が可能になったことで実現した、ナヴァギオの住人たちに向けた『キヴォトス視察ツアー』。その記念すべき第一陣として白羽の矢が立ったのが、アーサーたちノアズレイヴンの未来を担う若手エース部隊だったのだ。
「なるほどね? つまり、あっちの平和な世界とこっちの終わった世界の、公式な次元間文化交流の第1弾の実験台が、俺たちってことか。随分と重い役目を背負わされたもんだ」
「あはは、実験台って人聞きが悪いなぁ。まぁ、連邦生徒会の上層部に対するアピールとか、そういう政治的な意味合いでそうなっちゃうのは事実だけど、先生もリオ会長も、あの時私を助けてくれたアーサーたちにはすごく感謝してるから、最高のおもてなしをするって張り切ってたよ? 美味しいもの、いっぱい食べさせてあげるって」
「そいつはありがたいな。配給の合成カロリーバー以外の飯が食えるなら、実験台でも何でも喜んで引き受けるさ」
「ふふっ、食いしん坊だなぁ。
……それとも、アーサーはみんなでワイワイ観光したり、パーティに参加するより、私と2人っきりでお出かけの方が良かった?」
ツンツン、と。
モモイは、アーサーの分厚いタクティカルベストに守られた肩口を、自分の細い指先で悪戯っぽくつつきながら、彼の下から覗き込むようにして、少しだけいたずらな表情を浮かべた。
かつての、すぐに顔を真っ赤にして怒ったり、ガサツで子供っぽかった彼女からは想像もつかないような、計算されたあざとさと、確かな大人の余裕を含んだ上目遣い。
アーサーはその直球すぎるからかいの仕草に、顔の温度が一気に沸点へと急上昇するのを感じながらも、必死に動揺を隠そうと視線を逸らし、わざとらしく天井のシミを見つめて完全なる黙秘権を主張した。だが、その分かりやすい沈黙と、耳の裏まで火がついたように真っ赤に染まった肌の色は、雄弁な肯定としか捉えようがなかった。
「……ふふっ」
アーサーのいじらしい反応を見て、モモイは「ニヒッ」と、かつてキヴォトスでよく漏らしていたような、少しだけ間の抜けた、けれど心底嬉しそうな変な笑い声を漏らすことしか出来なかった。
そして、周囲に他の隊員がいないことを(彼女なりに)確認すると、モモイはさらに身を乗り出し、アーサーの耳元へと自身の唇をそっと寄せた。
「そういう『本当のデート』は……こんど、キヴォトスの案内が終わった後で、2人きりで抜け出して、ね?」
くすぐるような吐息と共に甘く囁かれたその声に、アーサーは心臓を鷲掴みにされたようにビクンと肩を跳ねさせた。驚いてモモイの方へと顔を向けると、そこには、至近距離で彼を見つめる、とろんとした色香を帯びた艶のある瞳と、見事にイタズラが成功したことを喜ぶ小悪魔のような表情が待ち構えていたのである。
アーサーの理性が限界を迎え、何か言葉を返そうと口を開きかけた、まさにその時だった。
「あ、あのー……。」
「「あっ。」」
完全に2人っきりだと思い込み、自分たちだけのピンク色の世界でイチャイチャと甘い空気を醸し出していたモモイとアーサーだったが、唐突に背後から第三者の遠慮がちな声が掛かり、二人は弾かれたように体を離し、揃って顔を耳の先まで茹でダコのように真っ赤に染め上げた。
……待機室の構造は、極めて単純である。実を言うと、この待機室は、防音壁など存在しない素通しの空間で、部隊の目と耳となるオペーレータールームに直接併設されているのだ。
そのため、2人が恐る恐る声のした方向――壁際のコンソール群へと目線を向けると、そこには、顔をトマトのように真っ赤にして、分厚いレンズの奥の目をぐるぐると回しながらプルプルと震えている、青髪ツインテールなメガネの小柄な少女……オペレーターのWことウィンディが、気まずそうに縮こまって座っていたのである。
「ご、ごめんW! まさかそこにいるなんて思わなくてっ! へ、変なもの見せちゃったね! あは、あはは……」
「だ、大丈夫だよモモイちゃんっ。わ、私が存在感が薄いのが悪いし、そ、その、若い二人の健全なコミュニケーションは部隊の士気向上にも繋がると思うし! わ、私、このまま背景の観葉植物かコンソールの部品に徹するから、うん。ほんと、私のことは全く気にしないで、続きをどうぞっ!?」
「 続きなんてねぇよバーカ!お、オホン!! W、周囲の警戒網はどうなってるっ?」
アーサーが、自身の顔の赤さと異常な心拍数を誤魔化すように、わざとらしく大きな咳払いを一つ落とし、任務の口調を取り繕ってWに警戒網の状況を尋ねる。
その不器用な照れ隠しの意図を完璧に理解したウィンディは、「は、はいっ!」と背筋を伸ばし、ちらりと手元の巨大なコンソールの画面をのぞき込んだ。
そして、慣れた手つきでカタカタと高速でキーボードを叩き、ミレニアムからの支援物資の一つである空中投影モニターに、地上を高高度で飛行しているドローンからのリアルタイム映像を映し出した。
「こちら、ミレニアムサイエンススクールのドローン製作部から、特例の戦略的支援物資として提供していただいた『静音ステルス偵察ドローン』のダイレクト映像です。
御覧の通り、現在ナヴァギオ周辺の緩衝地帯において、オートメイルの巡回部隊およびフェイタルビースツの群れは、目視の範囲内では一切確認できません。さらに、キヴォトス製の高性能サーモグラフィーや音波スキャナーでも、生命反応・動力炉反応ともに完全なゼロを指しています。
一応、念のために同じくゲヘナ学園の地震測定部から戦略支援物資として贈られて、地下深くに敷設された『広域地殻振動探知機』からも、定期ログとは別に臨時報告を直接送信するようこちらでアクセスして命令を下したのですが……こちらも、大型兵器の歩行を示すような振動反応は全くありません」
モニターに映し出された地上の映像は、ひび割れた大地と崩れかけた廃墟が延々と続くばかりで、普段であれば必ずどこかで砂煙を上げているはずの機械や獣の姿が、不自然なほどに綺麗に消え失せていた。
「不気味なほどに静かだね~……。よくある、嵐の前の静けさってやつかな? それとも、ミレニアムの支援物資が強力すぎて、向こうのAIとか本能が警戒して寄り付かなくなったとか?」
「それがね、モモイちゃん。ただ怯えて逃げたってわけじゃないみたいなの。
つい数時間前に、エンジニア部って組織の人たちから新しく送られてきた『長距離滞空偵察用UAV』ランチャーセットを使って、テストも兼ねて成層圏ギリギリの高さまで飛ばしてみたんだけれど……ここからずっと北、約300㎞も離れた先のエリアで、オートメイルとフェイタルビースツの活動が、かつてない規模で活発になっている地帯があるの。
そして、その地点を中心に向かうように、各地に点在していた多くのオートメイルの大隊と、フェイタルビースツの巨大な群れが、まるで何かに引き寄せられるように、だんだんと一点に集結しつつあるんだ」
ウィンディがキーボードを叩くと、モニターの映像が広域のヒートマップへと切り替わる。ナヴァギオの現在地から遠く離れた北方の地点が、異常なほどの熱量を示す真っ赤な色に染まり、そこへ向かって無数の細かな光点がアリの行列のように移動していく様子が可視化されていた。
「……なるほど。両陣営の総力がぶつかり合う、何度目かわからない『大戦争』の予兆か。
だから、俺たち討伐班の連中も、手薄になってた物資回収や地形の再調査、キヴォトスから来た学者と技術者の方々の護衛に駆り出されてるってわけだ」
「このデータを信じるなら……近いうちに、私たちナヴァギオの生存圏には直接影響が出ないレベルの、星を揺るがすような大戦争がまた起きますね」
「警戒するべきは、大戦争後の『戦争帰り』の個体ぐらいだね~。」
空中に投影される映像を眺めながら、そんな会話をしていると、ギィっと扉が開き、4人の男性が、オペレーションルームに入ってきた。
「うーす、交代だぜ~?」
「もうそんな時間か……お疲れさん、D、E、F、G。」
やってきたのは、ウィンディと同じオペレーターのメガネをかけた背の小さい青年の”D”ことダニー、そしてAたちと同じ討伐隊の、線の細いイケメンでどこかキザな雰囲気を纏う青年の”E”ことエベレットと、スキンヘッドが目を引いて大柄で筋肉質な大男の”F”ことフィン、そしてどこか草臥れた様子を見せるたれ目の青年の”G”ことグレッグの4人だった。
「みんな~、お疲れ様。」
「やあ、モモイも元気そうで何よりだ。やはり君は太陽に向って咲く大輪の花のような笑顔が似合う。どうか、この私と――――――スゥ……じょ、冗談ですAさん。冗談なのでサヴァイヴの安全装置を解除しつつトリガーに指をかけて殺気を向けないでください。ほんとすみませんでした。」
「E……お前、いい加減に女性を見たらとりあえず口説こうとするのやめろよ。
そのせいで、キャロルとかティナ、ヘレナとかに俺たちまで嫌われてるんだからな?」
「そうだぞ、E。お前のそのナンパ癖のせいで、キヴォトスから来た人たちの護衛に回されないんだからな?」
「ウッ……し、しかし、F、G……見目麗しい女性に称賛を述べないのは私の美学に反するのであって……」
「「お前の連帯責任で俺らも護衛に回されないんだが!?ほんとはかわいいキヴォトスの子たちとお近づきになりたいが!?」」
「本当にすまない……。」
アーサーとモモイの前でエベレットとフィン、グレッグの3人の漫才が繰り広げられる中。
ダニーとウィンディもオペレーターの引継ぎが終わったのか、和やかに雑談していた。
「まあっ、俺とGがモテない見た目してるっていうのもあるしな……」
「あぁ……Fも俺も、強面のスキンヘッドの大男と、草臥れたおっさん顔だもんな……。」
「だ、大丈夫だよ!二人ともちゃんと魅力があるから、落ち込まないでくれ!!
あぁ、Aさん!とりあえず、交代します!!」
「ほんと仲いいよな、お前たち。まあ、後は頼んだわ。行こう、モモイ。」
「うん、アーサー。」
少しだけ騒がしくなった待機室に笑顔を残し、モモイとアーサーは連れ立ってその場を後にする。
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「今日は警戒待機任務だけだったから、楽だったな~。」
「そうだね~アーサー。」
モモイとアーサーは、周囲の隊員たちにバレないように、モモイの大きめなタクティカルコートの陰に隠して手を恋人繋ぎで結びながら、薄暗い地下の廊下を歩いていた。
何気ない会話をしながら廊下を歩くこと自体は、親密になる前……それこそ、モモイが一度キヴォトスに帰還する前からやっていたごく自然なことだが、完全に両思いとなり『親密な関係』になってからは、こうして二人きりで歩くのは初めてのことだった。
そのため、二人はどこか言葉にできない気恥ずかしさで話題が続かず、沈黙が落ちるたびに、お互いににぎにぎと繋いだ手のひらの熱い感触や、絡み合う指先の滑らかさを確かめ合っていた。
コートの布地が擦れる微かな音と、二人の静かな足音だけが廊下に響く。
やがて、廊下が左右に分かれているT字路にたどり着いた。その左右に分かれている廊下は、ノアズレイヴンの隊員たちが生活拠点として使っているルームを男女別に分ける境界線であり、同時に、二人の甘い恋人らしい行為の「今日の終わりの時間」を告げる箇所でもあった。
「……モモイ、そろそろ。」
アーサーが名残惜しそうに歩みを止め、繋いでいた手を優しく離そうとした、その時だった。
「…………あの、ね。」
ギュッと、モモイが離れようとしたアーサーの右手を、自らの両腕で抱え込むように強く抱きしめたのだ。
アーサーは、その突然のしぐさにドキリと心臓を限界まで高鳴らせつつ、彼女の柔らかな胸の谷間に自分の腕が深く沈み込んでいる感触にパニックになりかけながらも、手だけは出さないように、理性を総動員してギュッと、握っていない方の左手を強く握りしめた。
「……アーサー。いいんだよ、我慢しなくて。」
ぽつりと、モモイがつぶやけば、アーサーの心臓はこれまでにないほどドクンドクンと高鳴りを鳴らす。
モモイのにおいが、モモイの体重が、モモイの服越しの柔らかさがが、そして、腕から伝わるモモイの早い心臓の鼓動が、少しずつアーサーの理性を削っていた。
だが、アーサーは……それをこらえるように目をつぶり、視線を外した。
「だ、ダメだモモイ……俺たちに、それはまだ……っ」
「わかってる。わかってるんだけど、ね?」
ぎゅぅっと抱きしめられた腕が、さらに強く、逃がさないように締められる。
押し付けられた柔らかな双丘の弾力と、上気した彼女の体温がタクティカルシャツ越しに直接伝わってくる。
アーサーは、あまりの刺激にわずかな痛みを伴うほど顔をしかめつつも……見下ろした先で、今にも泣きそうな、切羽詰まった表情を浮かべるモモイの潤んだ瞳を見て、完全に固まってしまう。
「私は、アーサーのことが大好きで……アーサーも、私のことが大好きなのは、わかってる。
でも……ううん、だから……だから、アーサーに、傷つけて、ほしくて……っ」
震える声で紡がれた、あまりにも無防備で、情欲を煽る懇願。
モモイが、アーサーの腕を抱いたまま空いた片手でタクティカルコートの内ポケットに手を入れ、カサリと音を立ててとある小さな包みを取り出した。
……それは間違いなく、アーサーがキヴォトスの『先生』から直々に、「いざという時のために、これぐらいは持っておくのが大人のマナーだよ。」と渡されたものと、全く一緒の繋がった四角い包みだった。
彼女もまた、それを事前に用意して、今日この瞬間のためにずっと胸に忍ばせていたのだ。
「……だから、アーサー……おねが―――んっ。」
モモイが顔を真っ赤にして、ありったけの勇気を振り絞って言葉を紡ごうとした瞬間、彼女の震える唇は、耐えきれなくなったアーサーの熱い唇によって乱暴に塞がれた。
アーサーの理性は、もう限界だった。
きちんと筋を通せば、あの世界の先生も、親代わりのアンリーゼも最終的には構わないと言ってくれていた。だが、アーサーは決して、モモイと正式な婚約を交わし、真の意味で平和が訪れるその日まで、彼女の純潔に手を出そうとするのはやめようと、自分に固く誓っていたのだ。
アーサーは、自身の中に渦巻く若い男としての情欲がとても大きく、荒々しく……とても、彼女を優しく愛せそうにないという恐怖があった。大切なモモイを傷つけ、悲しませるかもしれないと思い、今の今まで歯を食いしばって自制し続けてきたのである。
けれど、その過剰なまでの自制心は、モモイにとってもどかしく、自身が女性として求められていないのではないかと不安にさせる、苦しいものだったのだろう。
彼女のその涙ぐんだ決意の瞳と、手に握られた小さな覚悟を見た瞬間、アーサーの中の何かが完全に決壊した。
だからこそ、アーサーはもう、我慢することをやめることにしたのだ。
「んっ……ちゅ……あっ、あぁ……っ」
重なり合った唇の隙間から、モモイの甘く艶っぽい吐息が漏れる。アーサーの大きな手がモモイの腰を引き寄せ、もう片方の手が彼女の首筋を撫で上げながら、後頭部を固定する。
最初はただ押し付けるだけのキスだったが、やがてアーサーはモモイの唇を割り開き、熱を帯びた舌を彼女の口内へと滑り込ませた。
「んんっ……ふぁ……れ、ろ……っ」
モモイはアーサーの唐突で情熱的な口付けに一瞬身を強張らせたが、すぐに抗うことをやめ、背伸びをして彼にすがりつくように舌を絡め返す。互いの唾液が交わり、生々しい水音が静かな地下の廊下に響き渡る。
息継ぎすら忘れるほどの長く、深いキスの果てに、ゆっくりと唇を離し、銀色の糸を引かせながら、アーサーはモモイを真っ直ぐに見つめる。
その瞳は、普段の冷静な戦士のそれではなく、完全に理性のタガが外れた野獣のようであり、ギラギラとした情欲の光を持ちながら、獲物であるモモイを捕らえて、決して逃がさないと告げていた。
その圧倒的な熱量に当てられ、今度はモモイが、ゾクッとするような快感に背筋を震わせる。
「……優しくできないかもしれない、それでもいいか?」
掠れた、低く甘い男の声。
モモイは顔を極限まで赤く染め、瞳を潤ませながらも、小さく、けれどはっきりと頷いた。
「…………うんっ。アーサーの、全部で……めちゃくちゃにして……っ」
モモイの覚悟の返事をしっかりと聞いた後、モモイの体を抱え込むようにして腕に抱きつかせたまま、アーサーは自身の男子用個室である部屋へと歩を進める。
その間にも、アーサーとモモイは、お互いの心臓の音が重なり合って耳元で響き続け、互いに顔を赤らめて相手を見やることさえ、照れくささと異常な緊張感でできずにいた。
モモイの吐息は荒く、アーサーの腕にしがみつく手は期待と不安で微かに震えている。
やがて、アーサーの部屋の重い鉄扉の前にたどり着き……ドアノブに手をかけたアーサーは、最後に、モモイの瞳をのぞき込んで確認することにしたのだ。
「……このドアを入ったら、もう朝まで引き返せないぞ。」
「……いいよ。引き返したくなんて、ないもん……っ」
帰された言葉は、もはや隠しきれないほどの甘い期待と、身を委ねる覚悟に満ち溢れていた。
アーサーは抑えきれない衝動のままに、自分に割り当てられた部屋のドアを勢いよく開け、モモイと一緒に入り……カチャリと、決して誰も入ってこれないように、内側から重い鍵を閉めた。
その後、閉ざされた部屋の中で、二人の間に何があったのかは…………きっと、誰もが顔を赤らめて思う、想像の通りだろう。
扉の先の続きは……皆様のご想像の中でどうぞ!
シリアス目なお話を
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ぜひ見たい
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いいえ、遠慮しておきます