何かあった才羽モモイが、異世界の廃墟の中で生きるだけの話   作:ミレニアムのモブ:文学派

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真・後日談その1 ミドリの悩みの続きのお話です!

えっ、続くタイプのシリアス編の後に投稿するのは混ざるからやめてほしい?
書きたいことを書いているので、私には何のことやら!(まさに外道)

ぶっちゃけシリアス編って連続してると胃もたれするからこういうお話を箸休め程度に混ぜておくのがいいと思いました!!


真・後日談その3 ユウカがバグる

ミレニアムサイエンススクール生徒会「セミナー」の会計、早瀬ユウカは、控えめに言って限界だった。いや、正確にはとっくの昔に限界を突破し、未知の精神的次元へと足を踏み入れていた。

 

事の発端は、先日ついに安定稼働を果たした「次元相互転移装置」の莫大な予算案の整理である。

当初は「異世界に飛ばされた生徒(モモイ)を救出する」という緊急かつ人道的な大義名分のもと、ミレニアムの規定などあってないような勢いで湯水のように予算が投入された。だが、事態が収束し、いざ後処理の段階になると、そのツケは全てセミナーの、それも実務担当であるユウカの細い肩に重くのしかかってきたのだ。

何十時間、いや何百時間という途方もない時間を、彼女は冷たいブルーライトを放つモニターと睨めっこして過ごした。電卓のキーを叩きすぎて指先の指紋が消えかけるのではないかと錯覚するほど計算を繰り返し、複雑怪奇なエクセルファイルのマクロを組み直し、気が狂いそうになるほどの膨大な数字の羅列と格闘した。

 

さらに追い打ちをかけるように、連邦生徒会の技術発展室の役員たちとの、終わりの見えない『予算の帳尻合わせ会議』が連日連夜行われた。相手方も連邦生徒会の激務に追われる苦労人の集まりだったらしく、最初は互いの組織の予算折衝から始まった会議は、いつしか「なんでうちのトップはあんなに奔放なんですかね」「いやうちの会長だって失踪癖があってですね」といった、互いの組織の愚痴を延々と吐き出し合う地獄の傷の舐め合い大会へと変貌を遂げていた。

それに加えて、次元間転移技術のプロジェクトに新規参入してくる、極めて優秀だが人格的には一癖も二癖もある民間の研究者やマッドサイエンティストな技術者たちとの面接、法外な特別給料の査定と交渉、機密保持契約の策定……。

 

とにもかくにも、一人の女子高生が背負うには、やることがあまりにも多すぎたのである。

 

そしてついに昨日。

度重なる徹夜とカフェインの過剰摂取、そして終わらない数字の海に脳髄を完全に破壊されたユウカは、セミナーの執務室のど真ん中で突如として立ち上がり、両目をグルグルと回しながら、

 

「もう計算なんて知らないっ!! 泣いて平服しなさい! 私こそが、私こそがミレニアムよぉぉぉっ!!」

 

と、自分でも何を言っているのか全くわからない、誇大妄想狂のような迷言を大音量で叫び散らしてしまったのである。

その直後、親友でありセミナーの書記である生塩ノアから、「ユウカちゃん、とってもカンペキな宣言でしたよ。でも、今日はもうお家に帰って、温かいミルクを飲んで寝ましょうね?」と、有無を言わさない満面の笑顔で心配され、さらにはセミナー会長である調月リオから直接「ユウカ、アナタに有給休暇の取得を命じるわ。これはセミナー会長としての絶対命令よ。休まないなら警備ロボットを使って強制的に寮へ運ぶから。」と厳命を言い渡されてしまったわけである。

そんなこんなで、不本意ながらも完全なオフの日を手に入れたユウカは、すり減り切った精神を回復するべく……というより、張り詰めたメンタルを少しでもリフレッシュするために、「たまにはゲームでもやってみようかな?」と思いつき、ゲーム開発部の部室へと向かうことにしたのだ。

 

(モモイも無事に帰ってきたことだし……あの子たちがいつものようにドタバタと騒いで、くだらないゲームで盛り上がっている姿を見るだけでも、今の私には癒やしになるかもしれないわね。ふふっ、お土産に差し入れのお菓子でも……)

 

そんな、一縷の希望と安らぎを胸に抱き、ユウカはゲーム開発部の部室の重い防音扉に手をかけ、それをゆっくりと押し開いたのだが……。

 

「ぬあーーーっ!! HA☆NA☆SE! なにをするだー!!」

「お、落ち着いてミドリちゃん!! だめだよ、急に失踪なんてしちゃ! そんなことしたら、また部員不足で部費が減らされちゃうよぉ!!」

「11100011 10000001 10010100 11100011 10000001 10110111 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10110101 11100011 10000001 10101010 11100011 10000001 10101000 11100011 10000001 10101110 11100011 10000001 10011111 11100011 10000010 10000000 11100011 10000001 10010111 11100011 10000001 10101100 11100011 10000001 10011100 11100011 10000001 10101000 11100011 10000001 10011111 11100011 10000001 10100111 11100011 10000001 10011110 11100011 10000001 10101110 11100011 10000001 10100000 11100011 10000001 10011110 11100011 10000001 10100010 00100001」

「うわーん! ケイがバグってしまいました!! 落ち着いてくださいケイ!! 二進数で『落ち着いて深呼吸しましょう!』なんて言っても機械じゃないミドリには伝わりません! というかアリスにも翻訳アプリがないとわかりません!!」

 

「…………えぇ。なにこれは」

 

扉の向こうに広がっていたのは、癒やしや平穏などという言葉とは無縁の、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

普段は冷静沈着なはずのミドリが、顔を真っ赤にして涙目になりながら奇声を上げて暴れ回り、それを部長のユズが泣きながら必死に背後から羽交い締めにしている。

そして、その横ではケイが、明らかにおかしな様子で二進数の羅列を高速詠唱し、アリスが頭を抱えてパニックになって走り回っている。

 

ユウカの頭の中で、せっかく休息によって回復しつつあった理性の数式が、ガラガラと音を立てて崩れ去っていく。

カンペキな休日の癒やしプランは、開始わずか数秒で破綻した。

ユウカは深い、深いため息を吐き出し、めまいに襲われながらも自身のこめかみを強く揉みほぐした。

 

~~~~~~

 

「えーっと、つまり……」

 

大混乱の部室を武力と権力(主に部費削減のチラつかせ)によって強引に鎮圧したユウカは、部屋の中央にゲーム開発部の面々を正座させ、腕を組んで冷ややかな視線を下ろしていた。

 

「普段は一番まともなミドリがいきなり『私の業が深すぎる!』とか叫んで発狂したと思ったら、それを見たケイちゃんがパニックを起こして二進数で発狂し始めて、アリスちゃんはその様子にびっくりして泣き叫び、ユズは必死に発狂して失踪しようとしていたミドリを抑え込んでいた……って、こと?」

 

何とか全員の言い分を聞き出し、情報を整理した挙句に出てきた、あまりにもバカバカしい答え。

その要約に対し、正座させられた四人は、しゅんとした様子で揃ってコクコクと素直に頷いた。

 

目頭を指で強く押さえながら、ユウカの脳内背景は広大な宇宙空間へと飛翔していた。

理解ができない。一文字も、一欠片も、この状況の論理的な説明が成り立たない。

 

「……まず、なんでミドリは発狂したの? あんた、普段はモモイのストッパー役でしょ。何かあったの?」

 

ユウカが鋭い視線でミドリを射抜く。

しかし、ミドリは顔を真っ赤に茹で上がらせ、視線を左右に激しく泳がせたまま、ギュッと唇を噛み締めていた。

 

「…………イエマセン」

「声ちっさ。

……『言えません』じゃないわよ。何か悩み事があるなら言いなさい。セミナーの会計として、相談くらいは乗ってあげるから」

 

ユウカは少しだけ語気を和らげて歩み寄ろうとしたが、ミドリの心の中はそれどころではなかった。

 

(言えるわけないやんっ!

『お姉ちゃんが異世界で命の恩人のイケメン相手にメス顔して乱れまくってるド級のセンシティブなナマモノ同人誌を、フルカラー60ページで錬成しちゃいました! しかもそれに私自身がめちゃくちゃ興奮して脳を焼かれちゃってます!』……だなんて!

そんなことユウカに言ったら、私、キヴォトスの社会から物理的に抹殺されるっ!!)

 

「……本当になんでよ。隠されると余計に気になるんだけど」

 

頑なに口を閉ざすミドリの態度に、ユウカはさらに訝しげに眉をひそめた。

仕方なくミドリからの情報収集を諦め、ユウカは視線をもう一人の発狂者へと向けた。

 

「……で、次はそっち。なんでケイちゃんは、そんなミドリを見ていきなり二進数で発狂してたの?」

 

ユウカの問いかけに、アリスの隣で気まずそうに目を伏せていたケイは、機械的な、しかし明らかに動揺を含んだ平坦な声で答えた。

 

「…………モクヒケンヲ、コウシシマス」

「こっちも声ちっさ。

……そして行使しちゃうのね……? 黙秘権を」

 

ケイのAIコア内でも、かつてないほどの激しい論理矛盾が渦巻いていた。

 

(王女の隣で、常に冷静な観測者たるこの私が……あろうことか、あの『常識的で大人しいはずのミドリ』が突如として狂人に変貌した姿を目の当たりにし、感情が未知の恐怖と理解不能の恐怖でパンクしてしまい、一時的に言語中枢がアセンブリ言語まで退行してパニックになっていた……などと。

そんなポンコツAIのような醜態を晒していた理由など、私のプライドに懸けて、絶対に口が裂けても言えるはずがありません

もしバレたのなら、先生を殺して私も死にます!!)

 

なんの罪のない先生に何故か責任が行ったところで、ユウカは再びため息を吐いた。

ミドリとケイは普段は常識人だ。2人ともツッコミ側の人間だし、ストッパーでもある。

そんなふたりだが、共通点があるとすれば、意外とモモイのことを好いていることだろう。

ミドリは姉妹だから当然とはいえ、昔はそんなに仲が良くなかったというのは知っている。

ケイもなんだかんだモモイのとこを放っては置けないからこそ、転移事故が起こる前のモモイを気にかけていた。

 

「……モモイのことで何かあったの?」

「ウェッ!?」

「……?」

 

ケイは無反応であったが、ミドリはどうやら何かがあったらしい。

 

(この反応……ケイちゃんは、発狂したミドリを見てパニックになっただけっぽいわね。)

「ミドリ、大丈夫よ。私を含めてここにいる全員が誰にも言うことはないし、誰も責めないから」

「………………。」

 

ミドリの表情が珍しく2つ3つと面白いように変化してゆく。

見せたくないという思いと、普段からお世話になっているユウカに対して嘘をつく申し訳なさ、そして何よりあのナマモノ同人誌の評価が欲しいという承認欲求がせめぎ合い……。

 

「……ゆ、ユウカ……こ、こっちに来て」

 

ミドリは 承認欲求に 敗北した !

 

~~~~~

 

ミドリに連れられてゲーム開発部の部室の、ミドリのスペースに招かれる。

相変わらず、イラストに関しての書籍が積まれているがかなり整理整頓されているようだった。ミドリが自発的にしたのかな?とも思いつつも、ユウカはミドリが次に何をするのか待っていた。

 

「……その、ほんっとうに、ほんっっっとうに誰にも言わないよね?」

「そ、そこまで念押しされたらそりゃ言わないわよ。それで、なにがあったの?」

 

凄まじいプレッシャーと念押しに気圧されつつもユウカはミドリに何があったのかを尋ねる。

ミドリはそっぽを向いたと思うと、画面の着いたタブレットを無言で渡してきた。

 

(……見ろってこと?

まあ、多分手いつもみたいな私が魔王になった姿を……えっ?)

 

どうせいつもの太ももが強調された自身の魔王姿を書かされたのだろう……そう思っていたユウカだったが、そのタブレットに描かれていたのは同人誌の表紙……それも、成長したモモイの服がはだけてあられもない姿のフルカラー同人誌の表紙であったのだ。

 

「……。」

 

セミナーの生徒として、ミドリを叱らねばならない。

ユウカの理性はそう訴えていたが、しかしユウカの本能と性癖は早く読ませて!と、非常に強い要請を行っていた。

 

「……ゴクリ。」

 

生唾を飲み、覚悟を持って読み進める。

内容は……随分とリアリティのあるものだった。

任務中にモモイとアーサーが帰れなくなってしまい、廃墟のホテルで1夜を明かすというもの。

持ってきた携帯食料を分け合い、普段からしているであろう普通の雑談が続き、やがて思い出話や愚痴に浸る2人。

しかし、雰囲気は段々と妖しい雰囲気へと変わってゆき、コマの合間に挟まる手を繋ぐ瞬間や、モモイの体に触れる瞬間、段々と距離の縮まる描写のもどかしさに、読む手が止まらない。

ふと、モモイが目を瞑って少しだけ唇を差し向けた。

アーサーは、ヨシと言われた大型犬のように、しかし愛する番を労わる狼のようにそっと甘い口付けを落とす。

効果音とともに1回、2回と唇を合わせては離し、合わせては離しのバードキスが続き、いつの間にかモモイとアーサーは抱き合っていた。

チラリと、アーサーがモモイを見ると、モモイは頷き口を少し開けたまま、唇を合わせ、そして舌を絡めだした。

お互いを確かめるような、淫靡なディープキス、時折目を開け、蕩けた瞳でアーサーを見つめるモモイの表情からは、イラストであるにも関わらず、アーサーに愛されて、もっと愛されたいというエロティックさが、溢れていた。

やがて、抱き合うふたりの衣服がひとつ、またひとつと床に散らされてゆき……ユウカは、食い入るようにその先を読み続けた。

アーサーがモモイを求め、モモイはアーサーに差し出し、けれどアーサーを求める。

やがて、モモイとアーサーは繋がりあい、初めはゆっくりと動いていたのだが、徐々に、気遣うように激しく絡み合い始めた。

絡み合う描写の一つ一つに、美しさと、エロさが混ざり、モモイがアーサーを、そして、アーサーがモモイを愛している事がはっきりとわかるほど、2人の行為は、激しくも、互いを気遣い、愛を与え合うものだと、はっきりとユウカの脳裏に訴えていた。

やがて、行為もラストスパートになり、苦しげに耐えるアーサーがモモイに覆い被さる。

 

(っ!?)

 

セリフはない、文字は効果音だけだ。

けれど、同人誌の中のモモイは、アーサーの耳もとで何かを囁いた。

その言葉を聞いた、アーサーの目が開かれたと思うと、そのまま動きが激しくなり、ページをめくれば、その行為の終わりを告げる描写が1ページにわたって描かれていた。

そして、それがユウカの脳を焼いた。

 

覆いかぶさりながらもモモイを抱きしめたアーサー。

抱きしめられたのを抱き返しながら逃がさないように足を使ってホールドし、蕩けるような、けれど満たされているようなモモイの表情。

構図、描写、効果音……その全てが1つの芸術作品のようであった。

 

……話はそこで終わっていなかった。

行為を終え、抱き合ったまま寝ていたふたりが、雨の音で目を覚ます。

アーサーは帰ろうかと提案するが、モモイはもう少しだけ2人きりがいいな。と、アーサーの手をつなぎながら答える。

アーサーはそれに頷き、再びベットに座り、モモイを抱き寄せる。

モモイはそんなアーサーの肩にソッと頭を乗せ、窓の外を一緒に見つめていたのであった。

 

(…………)

 

ミドリが錬成した同人誌を呼んだユウカは、何も考えられなかった。

ただ、読了感を存分に噛み締め、感じたことをゆっくりと整理することしか、ユウカは出来なかった。

 

「……その……ゆ、ユウカ?」

 

その様子にミドリは少し慌てる。

怒っているのだろうか、それとも呆れているのだろうか。

そんな不安がミドリを襲う中……ユウカはソッと、優しい笑顔でミドリを見た。

 

「……ミドリ。」

「ヒュッ」

 

いつになく優しい声色に、ミドリは思わず身を震わせる。

ふと、次の瞬間、ミドリはユウカに肩を掴まれた。

あ、終わった。と、ミドリが思ったその瞬間だった。

 

「いくらでも予算を出すわ、続きを、続きを書いて!!」

「へ?」

 

「もっと、もっとアレの続きが読みたいの!

ゲーム開発部の部費を増やしてもいいし、あなたに支払ってもいいから続きを……続きをォォォッ!!」

 

「ウワァァァァ!?ナンデ!?

ユウカがバグったぁぁぁっ!」

 

……余談だが、その後バグったユウカはアリスによって通報されたC&Cによって鎮圧され、その余波でゲーム開発部のぶ室が爆発したのだが……。

少なくとも、ミドリとユウカは先生にガチトーンのお説教を食らったのであった。





っていう同人誌を見たいのよ。
誰かピク渋で投稿してくれないかな?

シリアス目なお話を

  • ぜひ見たい
  • いいえ、遠慮しておきます
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