仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
空が雲で覆いつくす中、外灯に座り込んでドーナツをほおばる男。
彼は
「やっぱ、プレンシュガーよ。」
ドーナツ屋はんぐり~の紙袋を片手にドーナツの穴を眺めていた。
(誰か...おじさんを...助けて...)
「...これはお預けだな。」
欠けたドーナツをしまい、指輪を腹部にかざす。
『コネクト プリーズ!』
現れた赤き魔法陣からバイクを手繰り寄せる。
外灯からバイクに飛び乗り、ヘルメットを被る。
『ガルーダァ! プリーズ』
「さっきの声を辿ってくれ」
使い魔を呼び出して、声の元までアクセルを踏み込んだ。
(「あの人たちとまた会えるの?」)
闇へとつながる階段を下り、男は少女の言葉を胸に節々の痛みを耐える。
彼は間桐家の
桜の救済のために一年間、体がボロボロになるほど
「召喚の呪文は覚えてきただろうな」
すでに陣を描いたぬらりひょんのような老人、間桐臓硯と対峙する。
「ああ」
「いいじゃろう、だがその途中に、もう二節別の詠唱を差し挿んでもらう。」
「...どういう事だ?」
臓硯は雁夜の魔術師としての技量と魔力量をカバーするためにバーサーカーとしてサーヴァントを召喚してクラス補正により能力を強化するようだ
が、臓硯の笑みから雁夜がこれから苦しむ様子を待ちかねているようだ。
(桜ちゃん、凛ちゃん、葵...時臣)
愛すべき人達と憎む相手を思い浮かべ、決意を固めて召喚の儀に取り掛かる。
魔法陣の上には
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ...」
「この光...雁夜おじさん...」
このとき、桜が地下室から入口から覗いていた。
普段、辛い思いしかない蟲蔵に桜は施術以外に訪れることはないが、漏れ出る輝きに誘われたようだ。
(私の代わりになっているんだ,,,)
「...されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし!汝、狂乱の檻に囚われし者!我はその鎖を手繰る者!」
(,,,やっぱり無理してる)
雁夜の額から血が流れ、体の中の蟲が蠢く。
魔法陣の中心から突風が飛び出し、浮き上がる体をなんとか踏みとどまる。
「…汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
(誰か...おじさんを...助けて...)
詠唱に応えた魔法陣はあたり一帯を光に包み込む。
「な!?」
目の前に現れた英雄は長い黒のロングコートに宝石の仮面をつけていた。
「呼んだのはお前か?」
「ぅ...そうだ。」
本来、呼ばれるはずの
「なに暗い顔してんだ。俺はウィザード、指輪の魔法使いさ」
「はっ、はっ,,,どうやら、失敗のようだな雁夜。此度の聖杯戦争は期待できぬのぉ。まぁ、お前には呼べただけでましかな」
臓硯はウィザードを一瞥し、雁夜をあざ笑いながら蟲蔵を後にする。
「うぐぅぅぅ!!」
刻印蟲に蝕まれ、激痛に悶え苦しみながらも臓硯を睨む。
「おぉ、おぬしも来ていたか桜。はっ、はっ、期待できない雁夜を見越して蟲蔵に来たのじゃな。」
「きゃ!?」
入ってきた桜を臓硯は階段から突き飛ばす。
「桜!!」
『エクステンドゥ! プリーズ』
やかましい呪文とともに地面に叩きつけられるはずだった桜はウィザードの腕の中に抱えられていた。
「ほう、腕が伸びるとは変わった能力じゃな。」
「だろ?だが、孫を突き落とすのは感心しないな。」
ウィザードは桜をゆっくりと下し、臓硯へと視線を向ける。
「臓硯!」
「雁夜、早くしないとまた蟲に食われるぞぉ、はっはっは。」
魔力を多く持つ桜に惹かれた蟲が三人に群がってくる。
「とんだ悪趣味だな。」
『チョーイイネ スペシャル サイコー!』
別の指輪を付け替えてかざしたウィザードは周囲の蟲を業火で焼き尽くした。
「...火属性か。間桐に背く雁夜にはピッタリじゃな。」
「おい、じいさん。あんた、毎日こんなことをこいつらにさせてるのか。」
階段に見下ろす像硯に手をかざすウィザード。
「そうじゃな、ウィザードとやら。じゃが、わしに構ってる暇はないだろう。」
「ぞ...臓硯...」
雁夜は召喚の反動なのかその場に倒れこむ。
「貴様の実力に免じて今は見逃してやろう。」
「その言葉、甘えさせてもらう。だが、お前に手を出させない。」
出ていく臓硯を一瞥し、ウィザードは雁夜を介抱する。
「体中、あの蟲に侵されてるからか...ん?」
体の様子を一目見ている時、桜が足元にすり寄ってくる。
「...おじさんは大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫。それよりここから出よう。」
震える小さな手にそっと手を差し伸ばし、蟲蔵を後にした。
晴人が召喚される前に遡る。
バイクの止まった先はある廃墟の屋敷であった。
「ここか。」
使い魔の後を追うと、
光を放って辺りを吸い込む魔法陣が屋敷の地下室に眠っていた。
急に暗闇がひろがる。
「...王に会えるなら、私が狂おうとも...」
すると、目の前に漆黒の鎧を纏った長髪の美男が奥から差し込まれた魔法陣の輝きに引き寄せられるように歩んでいた。
「あんた、どうしたんだ...」
「君は...召喚に誘われた英霊か?」
男はうつろな目をこちらに向ける。
「おれはウィザード。助けの呼ぶ声にひかれた。」
「...私は
ランスロットは
「俺も助けを呼ぶ声に応えないわけにはいかない。」
『ドライバーオーン プリーズ』
指輪をかざして、ウィザードライバーを出現させる。
「では、行くぞ!」
『シャバドゥビタッチヘンシーン』
ドライバーを起動して指輪をかかげる晴人に対し、ランスロットは駆ける。
『フレーイム プリーズ』
「くっ」
目の前に出現した魔法陣を警戒して後退するも、魔法陣は晴人の方へ通過する。
『ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!』
「魔術師か...」
「いや、俺は魔法使いさ。」
『コネクト プリーズ』
魔法陣からウィザーソードガンを取り出し、剣として構える。
「さぁ、ショータイムだ。」
晴人のセリフと同時に火花が散る。
ランスロットは重厚な剣の一撃を丁寧に打ち込むのに対し、
晴人はアクロバティックな動きで軌道をそらしながらも華麗に避ける。
「はっ!」
「くっ」
降りおらされた重厚な剣撃の勢いは殺せずに吹き飛ばされる。
「どうか私に譲ってくれないか?」
「そうはいかねーよ、俺は希望の魔法使いだからな。」
リングを付け替える。
『ハァリケーン プリーズ フゥ!フゥ!フゥ、フゥ、フゥ、フゥウ!』
「はぁ!」
姿の変わった晴人の様子を気にもせず、再び突っ込んでくる。
「ぬぅ!?」
突風に目を塞がれ、重厚な一撃はハリケーンスタイルの飛行能力で避けられた。
「フィナーレだ!」
『キャモナスラッシュシェイクハーンズ』
ウィザーソードガンの親指を動かし、剣に着いた手が開かれる。
『ハァリケーン スラッシュストライク』
その手にリングをかざすと、やかましい呪文とともに剣に竜巻が纏い始める。
「...我が聖剣!
「はっ!」
ウィザーソードガンから放たれた斬撃の嵐と
光を纏った剣を構えて飛び掛かるランスロットが激突する。
「ぐわぁ!?」
「くっ...」
なんとか体を起こしながらもフレイムスタイルにスタイルチェンジする。
「希望の魔法使いよ、そこまでして聖杯に望むものはなんだ。」
「聖杯?」
「聖杯戦争を知らないのか?...七組の召喚される我々サーヴァントとそのマスターが望みを叶える願望機「聖杯」をめぐって争う戦争だ...
うっ!?」
ランスロットは切り傷と宝具の負荷により晴人と同様に痛みにこらえながら立ち上がる。
「望みか...俺に聖杯はいらない。」
「では、そこまでしてなぜこの戦いに参加するのだ?」
「だから言ったろう?希望を求める声が聞こえたから俺は応えるって。
そういうあんたはどうなんだ?」
晴人の答えに悲痛な表情を浮かばせる。
「...私は此度の聖杯戦争に参加するアーサー王に問いたいのだ。なぜ私を罰せず許したのか。」
アーサー王伝説にはこのような話がある。アーサー王の妻、グィネヴィアとの不倫や不倫の現場に踏み込んだ十三人の円卓の騎士を殺害するなどさま
ざまな不忠の罪をランスロットは犯していたのだが、アーサー王は裁かずにこれを許してしまったのだという。
「私は自身の罪を王に裁いてほしかった。そのために召喚に応じるつもりだったが...誰かを助けようとする君の目的は騎士道を重んじる私にとっては尊重したい。」
ランスロットは
「魔法使いよ、あの陣に入れば召喚に応じることができる。」
「ありがとう、ランスロット。あんたの望みであるアーサー王に話を訊いてきてやるよ。」
彼は身に着けている指輪を晴人に渡す。
「これは私の象徴の一つである魔除けの指輪だ。私の願いを聴いていただき感謝する。」
「約束する、おれがお前の最後の希望だ。」
指輪を受け取り、晴人は陣の中に入って行った。
次回、仮面ライダーウィザード
「俺は桜ちゃんの幸せのために時臣を殺して聖杯を手に入れる!」
「だが、その願い、ほんとにあの子のためになるのか?」
「雁夜おじさん....どんどん違う人になって行くみたい....」
「俺があんたの希望になってやるよ」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第1話 正しい願い