仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
「ただいまー...」
「あ、お帰りなさい晴人お兄さん。」
晴人を出迎えたのは桜だった。
「あれ?雁夜はどうした。」
「おじさんは料理中だよ。」
にこやかに晴人の腕を引く桜はダイニングへ連れていく。
「よし...あ、おかえり晴人。」
「ん~...これはカレーかな?」
漂うスパイスが香り、ぐつぐつと煮沸音が聞こえる。
「桜ちゃん、準備してくれる?」
「うん!」
お米をよそってカレーを注ぐ桜を横目に雁夜と晴人は席に着く。
「晴人、ライダーはどうだった?」
「あぁ、問題なくて拍子抜けだな。それより体の調子はどうだ、雁夜?」
「...ちょっと体が鈍くなったかな?」
手を開いたり閉じたりする雁夜。
真っ白に染まった雁夜の表情は柔らかいがどこか儚げであった。
「はい!雁夜おじさん!」
「ありがとう。」
桜がカレーライスを配膳していく。
「...たぶん、時臣もこんな気持ちだったんだろうな。」
健気に家事を手伝う桜に微笑む雁夜。
「まだ終わってないぞ、雁夜パパ。」
「...あぁ、そうだったな。」
晴人の冗談に苦笑する雁夜。
「食べよう、雁夜おじさん!」
「そうだね。」
配膳が終わり席に着く桜を合図に三人は手を合わせる。
「「「いただきます。」」」
三人は夕食を食べる。
「おいしい...桜ちゃんが手伝ってくれてありがたいよ。」
「おじさんが切り方を教えてくれたからだよ。」
雁夜と桜のやりとりに晴人は微笑む。
かつて母と一緒に料理を作った時と姿を重ねていた。
「あ...。」
「どうしたの、桜ちゃん?」
手を止めた桜に戸惑う二人。
「お姉ちゃん...。」
「コヨミか?桜ちゃん変わってくれるかい。」
「うん。」
『ホープ プリーズ』
桜のリングをかざし、瞳が桃色に光る。
「晴人、キャスターを見つけたわ。」
「これは...。」
水晶には子供を洗脳してさらうキャスターとそのマスターが映し出される。
「凛ちゃん!?」
「遠坂凛がなぜか尾行しているわ。」
凛の姿に晴人と雁夜はすぐさまスプーンを置き、出かける準備を進める。
「コヨミ、桜ちゃんを頼む!」
「えぇ。」
瞳から桃色の輝きが消える。
「お姉ちゃんを助けて...雁夜おじさん。」
「絶対助けるよ!」
桜の見送りとともに二人はすぐさま間桐邸を出た。
「がぁ!?」
「コトネ!!」
遠坂凛は雨生の持つ魔術具を大量の魔力を注ぎ込むことで破壊し、攫われていた彼女の友
人、コトネを含む子供たちを洗脳から解放する。
「ん、凛ちゃん。」
「うぇーん!」
子供たちが目が覚め、困惑するものや泣き出すものが現れる。
「泣いている暇なんかないの!逃げるのよ!!」
苦しむ雨生の様子を目にし、子供たちに脱出を促す。
「おい、待て!」
雨生は逃げていく子供を止めようとするが、彼らはなんとか振り切る。
皆が闇雲に走る中、コンビニの明かりを目にする凛。
「皆、ここに駆け込むのよ!」
そのあと、凛の説明した事情に慌てたコンビニ店員により警察車両が複数駆けつける。
「あれ?凛ちゃんは?」
路地裏から無事に保護される子供たちに安堵する凛。
「はぁ...良かった。」
父からもらった魔力針を取り出す。
「やったよ、お父様...何!?」
魔力針の針が高速回転し、あたりの空き缶もカラカラとなり始める。
(「こういう反応をするものはまだ凛の手におえるものではないから気を付けるよう
に。」)
魔力針が宙に浮き、上方向に針を刺す様子に父の言葉を想起させる。
「はっ!?」
彼女の目の前にドサッと真っ黒な怪物が落ちてくる。
蠢くその姿に凛は顔面蒼白になる。
「えっ!?」
羽音が聞こえ振り向いた瞬間、大群の蟲が彼女から通り過ぎる。
体から力が抜けるように倒れた。
「凛ちゃん...」
目の前に立っていた雁夜は意識を失った凛を抱えてる。
「うっ!?...結局、あの爺が残したものに頼ってしまった。」
怪物に食らいつく蟲を横目に彼は路地裏の奥へと歩む。
「晴人!」
別行動をとっていた晴人に呼びかける雁夜。
「あれ?この辺にいないのかな...」
「すまない雁夜。」
上から変身した晴人が現れる。
「上手くやったな、雁夜。」
「あぁ。」
二人はすぐにその場を離れる。
「雁夜、凛ちゃんの母親とは連絡は取れるのか?」
「取れない...けど、前に三人で遊んだ公園なら来てるかもしれない。」
晴人は凛を抱える雁夜を後ろに乗せて、公園の方まで駆け抜けた。
「凛...まさかあの子冬木に行ったなんて...」
胸が裂けそうな思いを抑え、ハンドルを握る遠坂葵。
しらみつぶしに学校近辺を探すも見つからず、一年前に間桐雁夜と再会した公園の方まで
来ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
車から降り、車通りが多くガソリンスタンドの明かりで眩しい車道に対し、真っ暗な公園
の方へ走る葵。
「凛!?」
明かりのある公園のベンチに娘である凛は寝かされていた。
「凛!」
「凛ちゃんは大丈夫だよ。寝てるだけだ。」
駆け寄って起こそうとする葵の離れたところに人影が目に写る。
「雁夜君?どうしてあなたがここに!?」
明かりで照らされた雁夜の姿は瘦せこけていた。
「その顔!?」
「これが間桐の魔術だよ。肉を捧げ、命を蝕まれ、それを対価にしていたる魔導さ。」
ふら付きながらも彼は微笑みながら続ける。
「でも、桜ちゃんは無事だよ...もう臓硯はこの世にいない。もうすぐ葵さんや凛ちゃん
の元に返せるから」
「雁夜君...どういうことなの?あの子には魔道の家門が必要なのよ!それを...」
雁夜は袖を捲り、体中に蠢く蟲が住み着く腕を見せる。
「桜ちゃんも同じような状況なんだ...それにあの子にはまだ葵さんや時臣が必要なん
だ!今も会いたがっている!」
「桜...」
涙を流す葵。
「聖杯戦争に参加してしまって時臣とぶつかってしまうかもしれない...その前に俺はあ
いつに桜を返すよ。」
令呪をぼんやりと眺める雁夜。
「参加していたの!?」
「...聖杯を求めた臓硯に桜を返すためだった...でも、臓硯はもうこの世にいない。」
去っていく雁夜。
「葵さん、もし俺が生きていたらまた昔みたいに遊ぼう...」
「待って!雁夜君...あなたは死ぬ気なの!?」
彼の姿は闇の中へと消えていった。
晴人は公園の外でバイクに座って待っていた。
「...雁夜!どうだった?」
「あぁ、無事葵さんの元に返せたよ。」
今にも消えそうな顔を浮かべる雁夜に晴人は口を開く。
「どうしたんだ?」
「...俺が時臣に無事桜を返せた後を考えていた。」
手の甲に刻まれた令呪を一瞥する雁夜。
「俺はこの先長くない...わざと時臣に負けるつもりなんだ。」
「あんたが死ぬ必要ないだろう?」
「聖杯に選ばれたものは生きている限り、再びマスターに選ばれてしまう。それに時臣は
桜の父に変わりないんだ。」
(「...これ見てると、お父さんを思い出すよ。」)
雁夜の脳裏にはホープリングを眺めていた桜の表情が思い浮かぶ。
「晴人は何か聖杯に望みはあるのか?」
「俺自身、そういった望みはない。...けど、今回の聖杯戦争で大勢の人が絶望に落ちる
かもしれない。俺は彼らの希望になりたい...。」
「...そうか。」
「その中にはお前も入っているぞ、雁夜。」
真っすぐな目を雁夜に向ける晴人。
「お前は桜ちゃんの希望なんだ。それにお前のまたこの公園で遊びたいだろ?」
「...あぁ。」
「約束する……俺がお前の、最後の希望だ。」
晴人の強さに思わず微笑む雁夜。
「誰だ!」
「ぬぉ!?」
木々が生い茂る方へ銃弾を放つ晴人。
「アサシン!?」
骸骨の仮面を被る黒ずくめの男が木から降りてくる。
「ちょうどいいところにいた。」
「ちっ!」
『バインド プリーズ』
逃げようとするも四方から飛び出す鎖につながれるアサシン。
「あんたのマスターに伝えておくれよ。間桐は桜を遠坂時臣に返したいって。」
「...。」
繋がれた鎖が消失したと同時に黙って霊体化して消えた。
「アサシンからご内儀がご息女を保護したとの報告です。」
「...凛の為にも早く終わらせなければならないな。」
遠坂邸の地下で言峰綺礼の報告にため息をつく。
「加えてフォーリナーとアサシンが接触しました。」
「フォーリナーに対してアサシンの気配遮断が上手く効いていないようだな...。」
考え込む時臣に綺礼は付け加える。
「その際にフォーリナーから間桐は桜を遠坂時臣に返したいと伝言をアサシンに頼んでい
ました。」
「桜を!?」
桜の姿が脳裏によぎる時臣。
(衰退して次代を欲している間桐臓硯が返すとは思えない...。)
「いかがなさいますか、我が主よ。」
「...間桐家での大きな出来事はあるのか?」
「アサシンの報告ではフォーリナーが間桐臓硯と戦闘を行い、殺害したとの報告がありま
す。」
「あの間桐臓硯を!?」
衝撃で目を見開く時臣。
(あの魔道を放棄した雁夜が...。)
「綺礼、アサシンにフォーリナーと接触させて次の内容の伝言を頼む...キャスター討伐
後に私の邸宅へご足労を願うと。」
「承知しました、我が主よ。」
綺礼との連絡を終え、椅子に深々と座る時臣。
「あの裏切者が...愛娘の未来を潰すとは。」
雁夜に対し顔を歪ませていた。
次回、仮面ライダーウィザード
「私の伝説故に信用していないのですか。」
「忠義を尽くせれば誰でも良かったのではないか!」
「ライダーの馬鹿が明日の晩、お前にセイバーの元へ来いと言ってる。」
「だって、俺の下手くそな手品、最後は笑ってくれるからさ。」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第10話 思う心