仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
「主よ。」
「...ランサーか。」
廃墟で寝かせられていたケイネスの元にランサーは駆けつけた。
「お前のマスターは今やソラウだ。早く消えろ。」
「我が主よ...私の伝説故に信用していないのですか。」
ランサーはケイネスの目線に合わせるために膝をつく。
「お前には君主を裏切り、その妻と駆け落ちした記録がある。」
「...その通りでございます。」
「ソラウもお前に魅了されている...こんな私なら二人で逃げるチャンスではないか?」
自暴自棄になるケイネスにランサーは俯く。
「私は果たせなかった忠誠を尽くすために主に尽くしています。主を置いて逃げるなどで
きない!」
「それなら...お前は聖杯にかつての君主であるフィン・マックールに忠誠を再び誓う願
いを乞えばよいではないか!!」
「それは...あの時の私に後悔しておらず、今度は果たせなかった忠義を。」
ケイネスが軽蔑するような笑みを浮かべる様子に閉口するランサー。
「お前は忠義を尽くせれば誰でも良かったのではないか!」
「そんなことは...。」
「現に騎士道のあるお前に沿わない私に不満があるのだろう?」
ランサーは豆鉄砲を喰らい、狼狽する。
「セイバーとの闘いにかまけていたのも、貴様の騎士道に響いたからではないか?」
「...主よ、私は...。」
「ソラウの元へ早くいけ!お前が守らないでどうする!」
ランサーに起き上がって怒鳴り散らすケイネス。
「...ソラウ様を大切にしているのですね。」
「馬鹿なことを...」
再び寝具に体を預け、ため息をつくケイネス。
「フォーリナーに言われてな...妻を大事にしろと。」
「フォーリナーですか。」
(「主君の希望になれるのはあんただけだ。」)
フォーリナーの姿を連想するランサー。
「気づいておるのだ...お前の黒子はソラウには通じないはずだと。」
ケイネスはランサーの黒子に目線を移す。
「だが、実際はお前に魅了されている。意図的に抵抗力を弱めているのだろう
...私が初めて出会った時からソラウはあんなに感情を表に出す人物ではなかった。」
ケイネスは語る。ソラウは魔道の名門に生まれ、兄が家の座に就いてからは政略結婚の道
具として扱われ親の取り決めによりケイネスと婚約を結ぶ。
「彼女は私に対して不満は持っていなかったが、恋心に興味があったのだろう...いや、
私のくだらないプライドで愛を示さなかったのが原因かもしれないな。」
さきほどと違い、冷静に語りだすケイネスにランサーは目を見開いた。
「君主よ...私は勘違いをしていました。本当は不器用ながらも妻思いであると。」
「余計なことを言うんじゃないランサー。」
不快そうな顔を浮かべるケイネス。
「...貴様と話して少し整理できた。ランサー、妻であるソラウを命に代えてでも守
れ!」
「御意!」
ランサーは霊体化し、その場から消えていった。
「遅くなってごめんね、桜ちゃん。」
「大丈夫だよ、雁夜おじさんに晴人お兄さん。それよりもはい!」
帰ってきた晴人と雁夜に対し、温められたカレーが出される。
「おぉ、温め直してくれるとは気が利くね。」
「じゃあ、いただくね桜ちゃん。」
「うん!」
食べ進める晴人と雁夜。
「そういえば、お姉ちゃんはどうだったの?」
「あぁ、お母さんのところへ無事に返したよ...」
雁夜の顔は暗い影を落とす。
「もうすぐで会えるからもう少し辛抱できるかい?」
「もちろんだよ。それより雁夜おじさん、元気ないんだね。」
心配そうに顔を覗き込む桜に雁夜は笑みを作る。
「そんなことないさ。」
それから軽い雑談を挟みながらも完食した。
「晴人、今後のことなんだけどさ。」
「すまん、電話だ。」
鳴り響く携帯は雁夜でもその相手は予想がつく。
「はい、もしもしライダー。」
『...マスターのウェイバーだ。』
少年の声が聞こえるが、雷鳴により雁夜にははっきり聞こえない。
「昼間と同じく散歩か?」
『...ライダーの馬鹿が明日の晩、お前にセイバーの元へ来いと言ってる。』
「セイバー?ランサーとの戦闘が終わってからと言ってたんじゃないか?」
『僕には分からない...宴を開き、英霊としての格を競うとか言って『おい坊主!!』う
るさいぞライダー!』
また例に漏れず再び漫才が始まる。
「おいおい...勘弁してくれよ。」
『すまんのぉ、魔法使い。貴様には余の盟友としてお主の紹介したドーナツを店から運ん
できてほしい!』
「...分かったけど、ライダーもまた変わったことをするんだな。」
ウェイバーはライダーに口を押えられているのか呻いている。
『まぁ、何も血を流す必要がないからなぁ...格を認め、なお譲れなければそれこそ戦う
必要があるがな。』
その後、軽い雑談を交わした後に電話は切られる。
「それで雁夜。話とはなんだ?」
「あぁ、晴人は誰かの希望になるのが望みなんだよな。」
「そうだな。」
皿洗いしていた桜がダイニングの方へ戻ってくる。
「あんたに桜を助けてもらったし、桜を葵さんの元へ返せたらもう望みはないんだ...お
そらくだけど、晴人は俺からの魔力供給に頼ってないだろ?」
「...そうだな。俺の魔力の源は俺自身の希望から来ている。」
「後先短い俺はもう晴人の希望になること以外未練がないんだ。」
「お前なぁ」
晴人の言葉を遮る雁夜。
「分かっている...自分の望みはまだあるが、それ以上に晴人に対して恩を返したいん
だ。」
「雁夜...」
お互い言葉が出てこない。
「なら、明日は桜を連れてどこかで遊んで来たらどう?」
「桜...じゃなくてコヨミさん?」
桃色の瞳の桜が二人の方へ近づく。
「晴人は明日、ライダーとの付き合いで忙しいでしょ...冬木を一時離れてあなたとの別
れを惜しむ桜を最後だけでも楽しませなさい。」
「コヨミの言う通りだな...お前の意志が変わらないなら、せめて1日くらい一緒にいてや
れ。」
「分かったよ、晴人。」
雁夜は微笑むも物悲しい顔で桜を見ていた。
夢をみた。
冬木の住宅街とそう変わらない景色を公園の丘の上で晴人は眺めていた。
ふと、右手のリングをかざすも何も起こらない。
彼は前のファントムとの闘いで魔法が使えなくなっていた。
「あ!魔法使いさんだ!」
意味をなさなくなったリングを見る晴人にある兄妹が駆け寄ってくる。
「やっぱり!」
「...君たちは。」
彼らの方へ振り返って立ち上がる晴人。
「ねぇ!魔法みせて!」
妹の方は晴人の手を握って懇願する。
彼は笑みを保つもどこか暗い影を落としていた。
「...ごめん、もう見せられないんだ。」
「どうして?」
純粋な目を向ける少女に対し、再び景色の方へ向ける晴人。
「使えなくなっちゃったんだ...魔法。」
その後、彼女の兄と一緒にベンチに座る晴人はシャボン玉を吹かす妹を見ていた。
「...栞はああ見えてけっこう重い病気なんだ。」
「え?」
兄が晴人に対して口を開く。
「来週、手術が決まって不安でしょうがないみたいで...何とか元気づけたくて...。」
「それで手品を...」
「全然上手くできなくて...だから今日もあんたに会えるかなって。また、魔法を見せて
もらえるかもって。」
彼の言葉に目線を落とす。
「...ごめんな。」
少年に視線を向けた後、遠い景色を眺める晴人。
「魔力が消えて初めて分かった。俺には魔法ができる以外に何にもないんだって...魔法
が使えなきゃ、女の子一人喜ばせることもできないんだって...。」
「...そうかな?」
「え?」
晴人は少年に視線を向ける。
「俺が嬉しかったのは、もちろん魔法は凄かったけど...」
彼は嬉しそうに晴人に笑みを向ける。
「それより妹を喜ばせようとしてくれたのが嬉しかったんだよ...魔法より、その心
が!」
楽しそうにシャボン玉を作る妹を眺める兄。
「たぶん...栞も分かってるよ。だって、俺の下手くそな手品、最後は笑ってくれるから
さ。」
「晴人の記憶か...」
日光に顔がかかり、起こされる雁夜。
「心、か。」
残り少ない体の精気を奮い立たせ、起き上がる。
3人は朝食や身支度を済ませた。
「雁夜おじさん、今日はどこへ行くの?」
「今日は桜ちゃんの出かけたいところへ行くよ?どこへ行きたいかい?」
雁夜の問いかけに考え込む桜。
「...遊園地に行きたい。」
「了解。」
『コネクト プリーズ』
晴人はつぶやきながら魔法陣を出現させる。
「晴人、行ってくる。」
「行ってきます、晴人お兄さん」
「迎えに行くからどこかで待っててくれ。」
通り過ぎると、どこか分からないが賑わっている遊園地のゲート前に繋がる。
「さぁ、行こうか。」
「うん!」
チケットを買ってゲートを通り過ぎる。
「桜ちゃんはどこにする?」
「うーん...お化け屋敷!」
「え!?」
唖然とする雁夜に桜は彼の腕を引く。
「駄目?」
「いや、いいんだ。」
苦笑しながらも二人はお化け屋敷の中へと入って行く。
「さ、桜ちゃん...ひっ!?」
「ギャー!?マジもんが出たー!?」
「へ?」
真っ白でがりがりの雁夜から逃げ出すお化け屋敷のスタッフ。
「雁夜おじさん、たぶん怖がられてるよ。」
「桜ちゃん...」
くすくすと笑う桜に顔を赤らめていた。
「次は甘いものが食べたい!」
「そうだなぁ...これにしようか。」
外に出た二人はチュロスを売っている店に目を付ける。
「む...おいしい。」
口をムニュムニュと食す桜。
「...雁夜おじさんは食べないの?」
「...あぁ、じゃあ遠慮なくもらおうかな。」
何も口にしない雁夜にチュロスを差し出す桜にチュロスを多めにかぶりつく。
「あぁ!一口が大きい!」
「ごめん、ごめん。」
口を膨らます桜に雁夜は笑ってしまう。
その後、ジェットコースターやローラーコースターなどの他のアトラクションにも訪れ
た。
「...あと1個くらいかな?どこにする?」
「うーん...。」
あたりを見回す桜だが、暗くなる空を照らす観覧車に目がつく。
「ここにする。」
観覧車に乗り込み、ゆっくりと上がっていく。
「...今度はお姉ちゃんやお母さん、お父さんと一緒に行きたいね。」
「...うん。」
空の端で赤く光る様子を眺める二人だが、暗い影を落とす雁夜に桜は顔を覗かせる。
「おじさん、消えちゃうの?」
「...桜ちゃんは分かっちゃうか。」
頷く桜。
「おじさんはね...もう長くないんだ。こうして桜ちゃんとも遊んでいられるのも晴人の
おかげだ。」
「お父さんの恨みはどうしたの?」
「まだあるけど...俺は決めたんだ。桜ちゃんが本当に幸せにできるのはお父さんだけ
だって。」
帰宅を促す放送を背景に観覧車は後半に突入する。
「...私は雁夜おじさんもお父さんだって思っているよ。」
次回、仮面ライダーウィザード
「俺が王として敷いた王の法だ。」
「成し遂げてこそ我が覇道なのだ。」
「王たるものならば身を挺して治める国の繁栄を願うはず!」
「俺なら過去を変えず未来に進む。」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第11話 聖杯問答