仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第13話 聖杯の招き

冬木市のホテルの一室。

 

切嗣は貼り付けた地図を眺めながらハンバーガーを頬張る。

 

(時臣は初日の襲撃以来、遠坂邸に穴熊を決め込む...不気味なまでの沈黙。)

 

時臣の写真からケイネスのものに視線を移す。

 

(ロードエルメロイは再起不能なはずだが、ランサーは脱落していない。早急に新たなマスターを見つけね

 

ば。)

 

外の街頭テレビから児童誘拐の事件が聞こえる。

 

(キャスターは居所が不明だが、児童を誘拐し狼藉を繰り返す始末...。)

 

全てを飲み込んだバーガーの袋をクシャリと潰す。

 

(ライダー陣営は飛行宝具で移動するために追跡が困難...報告にあった王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)についても気になる。)

 

ゴミをごみ箱で投げ捨て、ウェイバーの写真を目にする。

 

(しかし...二つ気になることがある。)

 

(「...あんた、こんなことしてたら身が持たないぞ。」)

 

脳裏に冬木ハイアットホテルの爆発で出会った青年を思い浮かべる。

 

(間桐雁夜、のサーヴァントであるフォーリナー。マスターは対したことがないが、フォーリナーは空間転移や飛行能力など多彩で侮れない敵だ。)

 

間桐家の人物である雁夜、臓硯、そして桜が写真で張られている。

 

(間桐臓硯が死んだ今...ランサーの次に狙うべきなのかもしれない。だが...)

 

アイリから送られた紙袋を取り出す切嗣。

 

(「今度こそアサシンは完全消滅したと思っていいのでは?」)

 

(そのマスターは?)

 

舞弥との会話を回想し、言峰綺礼という男の存在が浮かび上がる。

 

(やつは遠坂と組んでいるなら一歩も出てはいけなかった。僕が目的であれば筋が通るがなぜだ...言峰綺礼。)

 

袋から取り出すとカスタードのようなものがかかったドーナツを頬張る切嗣。

 

(このドーナツ...おかずか?)

 

マヨネーズとツナが口の中を占領していた。

 

 

 

 

蓄音機の前で腰を下ろす遠坂時臣は言峰綺礼の報告を聞いていた。

 

「アサシンに頼んだ伝言は全滅によりフォーリナーに届いていません。」

 

「...フォーリナー以外については確かに目論んだ通りではある。」

 

考え込む時臣は杖を手に取り、立ち上がる。

 

「ここから先は第二局面だ。アサシンが収集した情報を元にアーチャーを動員して敵を駆逐していく。ライダーの対策もおのずと見えてくるだろう。」

 

「はい...マスターとしての務め、ご苦労だった。」

 

時臣は綺礼との連絡を切り、ため息をつく。

 

「使い魔を出すとしよう...」

 

紙を取り出し、間桐家のマスターに対して明日の夕方、ある屋上で桜を連れて会う約束を記す。

 

(桜を、私があの俗物から守らねば...)

 

 

 

 

遠坂との連絡を終え、教会の自室へと戻る綺礼。

 

「フフ...」

 

「今日はまた機嫌がいいな、アーチャー。」

 

軋む扉を開くといたずらな顔を浮かべ、酒を楽しむアーチャーが出迎えた。

 

「聖杯とやらの格はいまだに見えぬが...ガラクタでも良しとしよう。」

 

机に載せていた紙袋の中から四つの果物を使ったドーナツを取り出すアーチャー。

 

「俺はそれ以外の楽しみを見出した...綺礼、そういうお前こそ今日は珍しく上機嫌に見えるぞ。」

 

「ただの安堵だ。煩わしかった重荷からようやく解放されたのでな。」

 

デスクの方へと歩む綺礼。

 

「そんなお前に俺からの賜物だ...この紙袋を受け取れ。」

 

「それは...フォーリナーの持ってきたドーナツか?」

 

「あいつのお気に入りの店らしいが...なかなかチャレンジ精神のあるもので非常に興味深いぞ。」

 

綺礼は袋から取り出すと真っ赤なソースに白い何かが乗ったドーナツであった。

 

「これは...」

 

「まぁ、食え綺礼よ。何か発見があるかもしれぬぞ。」

 

恐る恐るドーナツを口に近づける綺礼を面白そうに眺め、ドーナツに口をつけるアーチャー。

 

「...ん。」

 

最初の一口がトリガーになったのか、どんどん食べ進める綺礼。

 

「どうだ綺礼?」

 

「...悪くない。麻婆豆腐か...」

 

「実にくだらないが凡俗な味に甘んじない心意気は褒めてやろうと思うが、」

 

食べきった後の袋を投げ捨てるアーチャー。

 

「俺の蔵に入れるほどの価値ではないがな...消えた令呪というのはその後どうなるのだ?」

 

「理屈の上では再び聖杯の元へ帰る。」

 

綺礼は自身の椅子に腰をかける。

 

「サーヴァントを失ってマスターとして失格となったものから聖杯がその令呪を回収する。」

 

「...」

 

アーチャーは綺礼の言葉を耳に傾けながらアサシンの姿の駒を手に取る。

 

「そして、もしマスターを失ったサーヴァントが出てきた場合、聖杯は回収した未使用分の令呪を新たなに選んだマスターに再配布する。」

 

マスターと思われる駒を倒し、盤面を眺めるアーチャー。

 

「令呪は使用されない限り現世に残り続け、最終的に残ったものは監督役に委ねられる。」

 

「では、この後の展開次第では新たなマスターが現れる可能性があるということか?」

 

「...そうだが、聖杯に選ばれる適格者というのは早々いるものではない。」

 

ワインを片手にアーチャーは綺礼に目を移す。

 

「では、お前がまた聖杯に選ばれる可能性もあるのではないか?」

 

「...確かに以前に聖杯が見込んだマスターが優先的に選ぶが...遠坂陣営の援護として呼ばれた私の出る幕はないよ。」

 

鼻で笑うアーチャーの見る盤面には弓兵の手前の駒が倒されていた。

 

「そういえばお前の調べた各マスターの動機を教えてくれ、綺礼。」

 

「...そうだったな。」

 

五人のマスターの聖杯を求め戦争に参加する動機を語り始める綺礼。

 

「...というわけだ。」

 

「期待外れもいいところだ。」

 

アーチャーのセリフで徒労に思った綺礼はため息をつく。

 

「これだけ他人を煩わせておいてそれか...」

 

「まぁ待て、綺礼。所詮は雑種どもだが面白いサーヴァントにはそれ相応にマスターも面白いようだ。」

 

「フォーリナーのマスターの間桐雁夜か...。」

 

アーチャーはグラスを揺さぶりながら語る。

 

「自覚はなくとも魂というものは本能的に愉悦を求める...そういう心意気は表に現れる。お前というフィルターを通すことで情報の偏りからお前の興味を惹きつけたことに他ならぬ。」

 

「事情の入り組んだ人物に説明を要するのは当然ではないのか?」

 

一瞬考え込むも反論する綺礼。

 

「違うな、入り組んだ情報を説明するほどアサシンに調査を強要してしまったのだ...無自覚なお前の興味によってな。」

 

「どうやらお前に余計な詮索をさせてしまったようだな...」

 

「まだ分かっていないのか、綺礼。この問いの本質的な意味に。」

 

眼を瞑って考え込むも出てこない綺礼。

 

「アーチャー、間桐雁夜について考えることに意味があるのか?」

 

「ないさ。」

 

酒を一口注ぐアーチャーは口を開く。

 

「そもそも他のマスターの動機を調べるなぞ無意味だと気づくはずだ...だが、魔法使いのマスターに関してお前は永遠と益体のない妄想にふけっていた。」

 

「つまり、それが...私の娯楽だというのか?」

 

困惑する綺礼にアーチャーはいたずらな笑みを浮かべる。

 

「祝え!綺礼よ。お前の愉悦が見つかったではないか!」

 

「間桐雁夜に悦などない...」

 

「おいおい、悦を狭義に捉えるでない...痛みと嘆きを悦ととらえることに何を迷う?」

 

アーチャーは肩を震わせる綺礼を見る。

 

「他者の不幸を蜜とするなど...罪人の魂だ!罰せられるべき悪徳だ!!この言峰綺礼の信仰の道においてはな!」

 

「ここまで屈折するとは...つくづく面白い男だ。」

 

「こ、この痛みは!?」

 

焼けるように右手が痛む綺礼は甲を見ると、令呪が煙をあげて浮かび上がった。

 

「ほう...やはり俺の予想通りか。」

 

 

 

 

「遅いな...晴人。」

 

雁夜は暗くなった遊園地のゲートが見えるファミレスで時間を潰していた。

 

「...ん、お姉ちゃん...」

 

疲れ果てた桜は横になっている。

 

雁夜はコーヒーを片手に夢で見た晴人の過去について考えていた。

 

(魔法が使えなくなった晴人はその後どうしたんだろう...彼の様子を見るに亡くなってないと思うんだけど。)

 

さみしそうに寝顔を見せる桜を白い手で撫でる。

 

(俺が葵さんと結婚していたら...)

 

「待たせたな、雁夜!」

 

ファミレスのテーブルに案内された晴人がこちらに帰ってきた。

 

「どうだった、聖杯問答は?」

 

「あぁ、面白かったよ。」

 

晴人は他のものとは違うリングを取り出す.。

 

「頼まれたことも無事終えたしな...それより、親子デートはどうだったんだ?」

 

「あぁ...無事桜も楽しんでもらえたよ。」

 

眠り続ける桜を目にして穏やかな顔をする雁夜。

 

「...雁夜、お前はまだ生きたいと思ったんじゃないか?」

 

「俺は...」

 

(「...私は雁夜おじさんもお父さんだって思っているよ。」)

 

ふと、桜がこぼした言葉が脳内に流れる。

 

「お前が諦めるのなら、俺は諦めない...俺がお前の最後の希望だからな。」

 

「晴人...」

 

「それにお前は桜を喜ばせたいんじゃないのか?」

 

(「それより妹を喜ばせようとしてくれたのが嬉しかったんだよ...魔法より、その心が!」)

 

雁夜の見た晴人の記憶にいた少年の言葉を思い出す。

 

「桜は喜ばせようとしてくれるお前に消えてほしくないんだよ...命ある限り諦めるな。」

 

「...そうだな晴人。」

 

その後、ファミレスから晴人の魔法によって間桐邸に帰宅する。

 

二人は寝ている桜を部屋で寝かせようとしていた。

 

「ん?この鳥は...」

 

「知っているのか?」

 

窓の外に映る鳥の足に小さな紙の束が巻き付かれている。

 

「多分...遠坂の使い魔だ。時臣は書状を届けに来たんだろか。」

 

「ちょっと待ってろ。」

 

『コネクト プリーズ』

 

魔法陣からさきほどの鳥を取り出す晴人。

 

雁夜は紙束をほどき、書状を読む。

 

「桜を連れて明日の夕方に...アーチャーを連れていると思うか?晴人。」

 

「今まで本人自体が動いていないからな...警戒心を抱いているのならその可能性があると思う。」

 

考え込む雁夜。

 

「俺もついていく...不安になる必要はないさ。」

 

「ありがとう晴人、これで桜を無事に...」

 

公園で遊んだ記憶を想起し、涙を流していた。

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「...どうして桜を間桐の家に引き取らせた?」

 

「魔術師としての幸せは本当に桜ちゃんの為なのか?」

 

「魔道の尊さを理解しないお前たちは桜の未来を奪ったのだ。」

 

「お父さん...」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

第14話 父と娘の交錯

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