仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
海の方へ太陽が沈む最中、赤く染まった冬木の港と未遠川をビルの上で時臣とアーチャーはともに眺めていた。
「俺を護衛として連れていくとは...フォーリナーでなければ貴様についてこなかったと思え時臣。」
「王の恩情、誠に感謝いたします。」
アーチャーに対し片膝をつき、感謝を示す時臣。
「そういえば、雁夜といったやつに会うのは娘に関することだそうだな...」
「左様でございます。」
「久しぶりの再会だというのにお主はどこか調子でも悪いのか?」
黄金の鎧が夕日に照らされ、時臣の視界がチラつく。
「...王にとっては私の事情などつまらぬものにすぎません。お気になさらず。」
「ふん、私情を語らんとはつまらん。」
すると目の前に赤き魔法陣が現れ、人間姿のフォーリナーに雁夜が出てくる。
「お父さん...」
「桜...なのか!?」
それに続き、桜も出てきて父と娘は再会を果たすも、彼女の変化した姿に驚きの表情が少し見える。
「...変わり果てたな、間桐雁夜。」
「あぁ。」
白髪にボロボロな雁夜の方へ視線を変える時臣。
「一度魔道を諦めておきながら聖杯に未練を残し、そんな姿になってまで舞い戻り、挙句の果てには魔術刻印を受け継がずに間桐の当主である臓硯を殺害...今の君一人の醜態だけで間桐の家は堕落したも同
然だぞ。」
「...俺は間桐が堕落していいと思ってる。」
「何?」
雁夜の発言に眉をひそめる時臣。
「それより俺は質問したい...どうして桜を間桐の家に引き取らせた?」
「それは今、君が気に掛けることなのか?」
「あぁ。」
ため息をつきながら、自身のもつステッキを一瞥する。
「...愛娘の幸せのためだ。」
「お父さん?」
桜の瞳に陰りができる。
「秘伝を伝授させたい魔術師に儲けた二子のうちどちらかを選ばなければならない。選ばれなかった子を凡俗に落とさねばならないジレンマ。」
「凡俗だと?」
今度は時臣の発言に眉をひそめる雁夜。
「とりわけ我が妻は母体として優秀すぎた...凛も桜も共に稀代の素養を備えて生まれたため、二人とも魔道の家門による加護が必要だったのだ。選ばれなかった一人の可能性を摘み取るなど...親としてでき
なかった。」
「お前は」
雁夜は時臣の表情を見て、閉口する。
その顔は親として心配するように桜に向けていた。
「姉妹双方の才能について望みを繋ぐために...間桐の申し出は天啓に等しかったのだ。聖杯を知る一族であれば、根源に至る可能性も高くなる。」
晴人や雁夜の表情は陰り、桜も俯いている。
「魔術師とは生まれついてより力あるもの、そしてさらなる力に辿り着くもの...その運命を覚悟する以前からその責任は血の中にある。」
つまらなさそうに景色を眺めるアーチャー。
「それが...魔術師の子として生まれることだ。」
「あんた、それマジで言ってんのか?」
口を挟むフォーリナーの方に向く時臣。
「君はフォーリナーか。」
「あぁ。それより、あんたは預けた後もしっかり桜ちゃんを見に来ていたのか?」
「養子に出した後は接触は禁止されている。」
日がほとんど傾き、辺りは一気に暗くなる。
「魔術師としての幸せは本当に桜ちゃんの為なのか?」
「桜の才能だと魔術協会ではホルマリン漬けにされる...私の考える最善の手はそれしかなかったのだ。」
衝撃的な発言に雁夜とフォーリナーは唖然とする。
「...魔道の尊さを理解しないお前たちは桜の未来を奪ったのだ。私はそれを」
この場にいる一同が異様な空気が流れる川の方へ眼を向ける。
「あれは...」
「キャスターの仕業だな。俺は潰しに行ってくるが...」
アーチャーを睨むフォーリナー。
「心配せんでも良いぞ魔法使い。貴様のマスターには手を出さん。」
「...あんたが言うなら安心するよ。」
緑に輝くリングを取り出すフォーリナーはもう片方の右手のリングをかざす。
『ドライバーオン』
やかましい呪文が辺りを響かす。
「変身!」
『ハァリケーン ドォラゴン』
魔法陣から現れる竜が暴風を生み、フォーリナーの姿を変える。
「これが貴様の変身か...面白い。」
「雁夜、桜ちゃんを守ってやれ!」
「...あぁ!」
アーチャーの視線を無視し、再びリングを付け替える。
『チョーイイネ!スペシャル サイコー!!』
フォーリナーは巨大な翼をはやし、真っ暗な空へと飛び立った。
「緑色もあるとはなかなか飽きないものだな。」
「時臣、乗れ。」
「はっ!」
彼の持つ戦艦、
「フォーリナーのマスターと小娘よ、貴様らも乗れ。」
「「!?」」
「どういうことですか王よ!?」
アーチャーに対して目を見開く時臣に彼は鋭い視線を浴びせる。
「黙れ時臣...貴様は客を招待したこの俺の顔に泥を塗るのか?」
「...いえ、異論はありません。」
「早く乗れ、雑種。」
雁夜は桜を抱えて船に乗り込み、アーチャーの船はゆっくりと空へ駆けあがった。
巨大な黒い影が大きくなっていく。
「たぁ!」
巨大な触手を切り裂き、海の上を走るセイバー。
「ソォリァァ!」
チャリオッツで宙を駆け、雷とともに破壊するライダー。
「駄目だ...また元に戻ってる。」
一緒に乗り込んでいるウェイバーは再生する化け物に唖然としていた。
『チョーイイネ!サンダー サイコー!』
突如、黒い化け物に巨大な雷の柱が立つ。
「遅れてしまったみたいだな。」
「フォーリナーか。」
翼を広げて駆けつけたフォーリナー。
「遅かったではないか魔法使い。」
「あぁ、色々と用事の途中だったからな。」
陸地の方を見渡すと霧が生じているためはっきりとは見えないが、一般市民の一部もこの事態に気づいているのが分かる。
「フォーリナーよ!分厚い肉の中にいるキャスターの宝具を狙いたいが、奴の再生力では届かないのだ!」
「ランサーか...確かにサンダーでもこれほどまで回復するのか。」
岸にいるランサーの向けた穂先である黒い影はゆっくりだが、雷撃で裂けた傷が治りかけている。
さらには遥か上空を駆ける戦闘機が目に入る。
「はぁ、はぁ...」
無限に増幅し、破壊されれば再生するため英霊の一部に疲労が見られる。
「雷が駄目なら氷だ。」
沿岸部に戻ったフォーリナーは新たに指輪をかざす。
『ウォーター ドォラゴン』
魔法陣により青い姿に変わるフォーリナー。
『チョーイイネ!ブリザード』
巨大な青い魔法陣が怪物の方へ動く。
「凍らせているのか!?」
通過したところは氷張りとなり、怪物の触手も結晶に包まれる。
「これで歩けるだろ?ランサー!」
「助かるぞフォーリナーよ!」
氷上を滑りながらランサー特有の俊敏さで怪物の元へ突っ込む。
穂先が結晶を砕き、粉々にするも怪物の勢いは止まらない。
「こりゃあ...骨が折れるな。」
他のサーヴァントと協力しながらも先の見えない戦いに愚痴をこぼした。
濃い霧に包まれた怪物を
「なんともはや...如何に雑種とはいえ少しばかりは名を馳せた猛者であろうに。」
手こずっているライダーやセイバーを船から眺めるアーチャー。
「お...今度は青色になるとは、フォーリナーは見ていて飽きぬなぁ。」
怪物が氷漬けにされた影響か少し寒々しい空気が漂う。
「だが、そろいもそろって汚物の処理に明け暮れるとは...嘆かわしいにも程がある。」
頬杖をしつまらなさそうに彼は時臣や雁夜の方へ視線を向ける。
「そうは思わぬか?お前たち。」
悲惨な戦況ぶりに目を見開くアーチャー以外の一同。
口を少し歪ませながらも時臣はアーチャーの元へ振り返る。
「...王よ。あの巨獣は御身の庭を荒らす害獣でございます。どうか手ずからの誅戮を!」
「そんなものは庭師の仕事だ...それとも貴様は俺の宝具は庭師の鋤も同然だと愚弄するのか、時臣?」
「滅相もありません!しかし、他のものでは手に余る有様...真の英雄たる真意を示す好機です。どうかご英断を!」
頭を深々と下げる時臣を相も変わらず頬杖で睨むアーチャー。
「そうだな...時臣。貴様が小娘について雁夜を言い負かせば、俺からの賜物として手を下してやろう。」
「アーチャー!?」
驚く雁夜に対し、アーチャーは口を開く。
「貴様も同様に時臣を言い負かせれば、俺様の宝具をくれてやろう。」
「...あんたはいったい何を考えているんだ。」
睨まれたアーチャーは少し笑みを浮かべながら口を開く。
「なに、ショーが始まる前は退屈なもの...お前たちの余興で暇を潰す。」
俯き続ける桜の手をつなぐ雁夜の方へ向く時臣。
「雁夜よ。さきほどの説明した通り、お前は桜の未来を奪ったのだ...私はそれを許さない」
「...時臣、お前がどうして間桐家に送ったのかは理解した。だが、お前は臓硯、いや間桐の魔術が行った桜への所業を知らないようだから教えてやる。」
雁夜は上着を捲り、蟲に喰い破られた上半身の一部を見せる。
「間桐の魔術は体内に寄生虫を宿して術を行使する...俺は魔術を扱うために体を蟲に捧げた。」
「見苦しいぞ、雁夜。それが桜と...」
「分かるだろ時臣。桜は間桐の魔術に適応するため、蟲を植え付けられた...加えて、臓硯は桜を間桐の次世代を生み出す胎盤としか考えていない!」
時臣は驚きを隠さず狼狽える。
「...お前が桜を返そうとしたのは理解した。間桐家がここまで堕落していたとは...」
桜に近づく。
「すまなかった、桜...私の失態でお前を汚してしまった。」
「...」
目線を合わせようとしゃがむ時臣だが、桜は俯き黙り続ける。
「時臣...まだ分かってないのか。」
「何を言っているのか分からないな雁夜...貴様の誠意は喜んで受け取るが、魔道に背き聖杯を競う敵には変わりない。」
時臣は桜を雁夜から引きはがし、距離を取る。
「王よ...御身の船でこの虫を追い払いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、面白ければ構わん。」
「!?」
ステッキを取り出した時臣は炎の紋章を宙に浮かばせる。
「今後、桜をどうする気だ?」
「...血の責任から逃げ、何の負い目も感じない卑劣で軟弱者のお前が知る必要のないこと!」
肩を震わせる雁夜の周囲に蟲が集まる。
「グホォ!?」
魔術の行使で体に負担がかかり雁夜は吐血する。
「...お前は家族のことを何にも分かっちゃあいない!!いけ!」
羽をはためかせる翅刃虫たちが時臣に襲い掛かるも、焼け死に続ける。
それに合わせるように雁夜の体中から血が飛び出す。
「蓋を開けてみればこの体たらくか...雁夜、魔道の恥であるお前に恩情を与えよう。」
ステッキを振る時臣。
「Intensive Einascherung」
「ガァァ!?」
時臣を守っていた炎が雁夜を襲い、火だるまになる。
「雁夜おじさん!?」
炙られる雁夜が苦しそうな様子を見て、叫ぶ桜。
「お前を許さない...時臣!!」
「桜、あの者は魔術を裏切った上にすがったことでこのような末路に至ったのだ...心しておくように。」
「...はい。」
ジリジリと鳴る炎が時臣と桜を照り、雁夜はアーチャーの船から落ちていった。
次回、仮面ライダーウィザード
「毎度、毎度俺と旦那の邪魔をしやがって...」
「最高のクゥールを!!」
「英霊たちよ、勝機を掴みうる策を見出してほしい!」
「策はある。」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第15話 未遠川血戦