仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第17話 栄誉の果て

間桐邸の門の前、言峰綺礼は治療した間桐雁夜の体を置く。

 

白濁な左目が彼の行いを眺めるようにみえる。

 

(間桐雁夜を助けるなど...我が主の仇となる。)

 

綺礼は自身の行いに困惑しながらもこの場を去ろうとする。

 

「待ってくれ。」

 

背後から聞こえる二輪のブレーキをかける音と共に一人の青年、フォーリナーがこちらにやってくる。

 

「あんたが彼を助けてくれたのか?」

 

(間桐雁夜のサーヴァント!?)

 

内心驚きつつも平然を装う綺礼。

 

「私は教会の信者だ...助けるのは当然のこと。」

 

「だが、なぜ雁夜の家を知っているんだ?」

 

家の前で倒れる雁夜に寄り添う桜に視線を向けるフォーリナー。

 

「こうなれば正直に話すしかない...私は脱落したアサシンのマスター、言峰綺礼だ。」

 

「ということは、あんたは時臣の仲間なはずだが?」

 

「...実のところ私にも分からない。」

 

フォーリナーは彼のくすんだ瞳に警戒する。

 

「あんたの真意は分からないが...とりあえず、感謝する。」

 

「ありがとう、お兄さん。」

 

純粋な桜の視線に困惑しながらも綺礼は後にする。

 

(後悔するべき私は..高揚しているのか?)

 

 

 

夢を見た。

 

砂浜で遠くを眺めるコヨミを見つける晴人。

 

「...やっぱりここか。」

 

振り返ったコヨミに近づく晴人は口を開く。

 

「ごめん...俺、自分のことで頭一杯で。コヨミのこと...」

 

「あの時ここで言ってくれたこと...覚えてる?」

 

彼らの間で回想が入る。

 

『俺たちが何者だろうと、今を生きようぜ。』

 

『今を生きる...』

 

この砂浜の海で語った彼らの過去。

 

「...晴人の言う通りだった。今をちゃんと生きたおかげで...思い出も、仲間もできた。」

 

「コヨミ!」

 

海に入ろうとする彼女を静止し、後ろから抱きしめる晴人。

 

「今の俺には魔力はない...それでも俺は、俺は...」

 

「...暖かい。」

 

コヨミの顔に陰りができる。

 

「晴人のおかげで...私は人として消えることができる...晴人の心に、皆が救われてきた。」

 

潮の香りと波の音がより響いて聞こえる。

 

「魔法なんかなくったて...皆の希望になれる...だから、魔法がなくなることも、私が消えることも...悲しまないで。」

 

「コヨミ...」

 

小さく呟く晴人。

 

「いい...実にいい!」

二人が振り返った先に例のファントムが立っていた。

 

「ファントム!?」

 

「どうしてここに!?」

 

後ずさりする二人。

 

「お前の心を壊し損ねた...随分探したぞ。」

 

「!?」

 

光球を放ち、晴人とコヨミを引きはがす。

 

「では...ゆっくり楽しませてもらおう。」

 

薙刀を構えたファントムが近づいていく。

 

海にずぶ濡れとなった晴人は何とかファントムに抵抗する。

 

「俺はまだ...やられるわけにはいかない!」

 

薙刀を上手く躱すも、体制を崩す隙を突かれて、足で踏まれる。

 

「う...ぐ。」

 

「晴人!」

 

踏まれて苦しむ晴人に耐え切れず、コヨミは魔力切れになりそうな体を動かす。

 

「コヨミ!!」

なんとか脱出するも、倒れこむコヨミに晴人は叫ぶ。

 

体は切り傷ばかりでコヨミも動かなくなる状況に膝をつき、涙を滴らせる。

 

「終わりだ、諦めろ。」

 

「俺は...俺は諦めない…命ある限り、コヨミの命も諦めない!!」

 

振り下ろされる薙刀。

 

だが、その刃は届くことなく、涙から生まれたリングの光がそれを遮った。

 

「...指輪?」

 

『ドライバーオン』

 

立ち上がった晴人は指輪をかざす。

 

『心の強さで蘇らせるとは...改めてお前の希望になってやる。』

 

心の中のドラゴンが語りかけ、涙から生まれたリングをベルトにかざす。

 

「変身!」

 

『インフィニティ!プリーズ』

 

純白な輝きに包まれた晴人の姿は誰もが目を奪われた。

 

 

 

 

「雁夜おじさん!!」

 

「さ...くら。」

 

目を覚ますと、桜が雁夜の元に飛び込んできた。

 

「...お父さんはどうしたんだい?」

 

「もういいの...お父さんはもういいの。」

 

雁夜から離れない桜。

 

「私のお父さんはもう...雁夜おじさんなんだよ。」

 

「...そうか。」

 

「言っただろ、まだ死ねないってな。」

 

部屋の入り口には晴人が嬉しそうに立っている。

 

「...晴人、俺はまだ諦めないよ。」

 

「よし、それじゃあ景気づけに俺のプレーンシュガーだな。」

 

魔法陣からドーナツの紙袋を取り出す晴人。

 

「...今度は普通のドーナツ?」

 

「ん?もしかして桜ちゃんは期待していたのかな?」

 

取り出した晴人のドーナツをつまらなそうに見る晴人。

 

「桜。」

 

「どうしたの、お父さん?」

 

「...晴人の持ってるドーナツみたいな普通っていいと思わない?」

 

「うん!」

 

まるで親子のような二人のやり取りに笑みを浮かべる晴人。

 

「どうした?」

 

突如、使い魔であるガルーダが部屋に入ってくる。

 

(「ランサーにセイバーの左手には対城宝具があると言ってやれ。」)

 

「まさか...ごめん雁夜、行ってくる。」

 

「あぁ。」

 

彼はすぐさま使い魔の後を追った。

 

 

 

 

「キャアァ!?」

 

ビルの上で未遠川の戦いを眺めていたソラウは令呪が刻まれた自身の右腕が切り離されたことに発狂していた。

 

「私の...右手、ない!?」

 

「...」

 

錯乱したソラウを血の付いたナイフ片手に舞弥は冷めた目で見ていた。

 

「これでは...ディルムッドを呼べない!」

 

彼女の視線は金網に捕まっていた右手に目がいく。

 

「私の...右手」

 

起き上がるソラウに近づく舞弥。

 

「!?」

 

直ぐに後退する舞弥の目の前には実体化したランサーがソラウの目の前で槍を構えていた。

 

「...ディルムッド。」

 

「貴様はセイバーのマスターの仲間だな?」

 

「ちっ!」

 

悪態をつく舞弥の前でソラウを抱え、右腕も回収する。

 

「主の姫君に対する仕打ち...忘れんぞ!」

 

ランサーはソラウを抱えたままビル伝いに飛び去る。

 

「申し訳ないソラウ様...私はあなたを守れなかった。」

 

「ディルムッド...そんな顔しないで。」

 

黒子に囚われたソラウはランサーが来て安心したのか涙を流す。

 

「ソラウ様...こうして守れたのは主の声があったからです。」

 

「違うわ、ランサー。あなたと私に繋がりがあったからよ。」

 

彼女の盲目な様子に陰りを見せるランサー。

 

「正規の契約関係のない私とソラウ様では気配の察知ができない...細心の注意を払うことであなたを助け出せたのです。」

 

「私とランサーに繋がりはないの!?私はこんなにあなたのことを...」

 

(「武功を立てるだけが忠義じゃない。」)

 

何も言わないようにしようと考えたランサーだが、ふとフォーリナーの言葉が頭によぎる。

 

「残念ながらあなたのその心は私の黒子が作った偽物にすぎません。」

 

ケイネスのいる廃墟の方まで近づくランサー。

 

「主からあなたの過去について聞きました...ソラウ様は興味半分で恋を知りたかっただけなのではないですか?」

 

「そんなこと...」

 

「主は言っていました。私のプライド故に示さなかった愛を求めていたのだと...」

 

俯き表情を見せないソラウ。

 

「帰ってきたのか、ランサー。」

 

「主よ...私の落ち度でソラウ様が。」

 

車いすのケイネスの傍にソラウを下ろすランサー。

 

「貴様...サーヴァントの分際で我が妻の腕を」

 

「待ってケイネス!」

 

怒鳴るケイネスにソラウは遮る。

 

「彼は悪くない...私が敵に油断したばかりに」

 

「命じたお前の護衛を守れなかったランサーが悪いのだ!」

 

「二人とも落ち着いてください!」

 

どんどん居心地の悪い空気になる中、ランサーの大声で静まる。

 

「私の落ち度には変わりません...が、主とソラウ様には互いに協力していただけなければ十分に戦えないのです。」

 

「主に対して説法を!」

 

ケイネスに臆せず、ランサーはまっすぐな眼を二人に向ける。

 

「恐らくこのままでは破滅を迎えます...私はまた同じことを繰り返してしまうのが怖いのです。」

 

「ランサー...!?」

 

「何をしているのだ!?」

 

ランサーは持っていた双槍を地面に突き立て膝をつく。

 

「我が主ケイネス、ならびに我が主の半身ソラウよ。

私は此処に、エリンの戦士として、そして貴公らの槍として、新たなる『誓約(ゲッシュ)』を刻む...

我が主と夫人が手を取り合わず、私が主君の信を得られなかった時、私の槍は光を失い、自らその命を断つ!

この誓いを破る時、私は騎士の誉れを永遠に失い、魂は焦土に還るだろう。」

 

「ランサー、あなたゲッシュなんて...」

 

ランサーの唐突な行動に唖然とするソラウ。

 

「...ランサー、貴公の立てたそのゲッシュを我ら主従の絶対の法とせよ!」

 

「何をやっているの、ケイネス!?」

 

「...ソラウよ、いい加減ランサーへの恋の盲目から目を覚めよ。こやつは自身の弱みを打ち明けて主に誓いを乞うたのだ。」

 

俯くソラウにケイネスは駆け寄る。

 

「あなたは大切な令呪を一つ失ったのよ!」

 

「この令呪でランサーの本音が聞けたのも同然だ。こやつが吐露したのなら、我らもそれ相応に答えてやらねばなるまい。」

 

「ケイネス...」

 

真っすぐ見つめるケイネスにソラウは口を開く。

 

「分かったわ...私も悪ふざけがすぎました。」

 

彼女の瞳にはもう恋する乙女の見せるものではなかった。

 

「あなたの私への愛と、覚悟は受け取ったわよ。」

 

「...お前を期待しているぞ、ディルムッド・オディナ!」

 

「我が主よ...必ず期待に応えてみせましょう!」

 

 

 

 

セイバーとアイリは車である廃墟へと踏み入った。

 

目の前に現れたランサーとその背後にいるケイネスとソラウの存在をフロントガラスが教えていた。

 

「お前がここに現れるとはな...セイバー。」

 

「私の...味方が調べ上げて知らせてきた。」

 

車から降りた二人を睨むランサー。

 

「我が主の姫君に行った仕打ち...許さん!」

 

「待て!どういうことだ、ランサー!」

 

風王結界で即座に装甲を生成し、ランサーの又槍を透明な剣で受ける。

 

「...あなたのマスターの仲間が私の右腕をはぎ取ったのよ!」

 

「これは!?」

 

右腕のないソラウに目を見開くセイバー。

 

「そういうことでセイバー...消耗したところを狙い、貴様の宝具を取り戻すといったところだな?」

 

「違う!皆が消耗して邪魔者が入らない今だからこそ決着を...」

 

「そいつの言葉に惑わされるな、ランサー!」

 

金属がぶつかり合う音が続く中、ケイネスは口を開く。

「セイバーに騎士道があっても、そのマスターは外道だ!」

 

「どういうことだ!?」

 

セイバーとランサーはお互い距離を取る。

 

「貴様のマスターは我々が待ち構えていたホテルで正面突破するのではなく、爆破したのだ!」

 

「何!?...どういうことです、アイリスフィール!」

 

「私もいったい分からないわ...」

 

セイバーとアイリはマスターである切嗣の行動に眉をひそめた。

 

「セイバーよ...主が私に機会をくれたように、貴殿も誉れが刻まれた騎士道の剣を示すのだ!」

 

「ディルムッド...あぁ!」

 

風王結界で自身の能力にブーストをかけるセイバー。

 

だが、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)のコンビネーションによって下手に責めることができず、左腕の傷で彼の槍の連撃に長く耐えられない。

 

「いいぞ!ランサー、誓約(ゲッシュ)を果たすのだ!」

 

「クッ!」

 

必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の方は何とか受け流すも、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)により装甲の下の肉体にダメージが蓄積していく。

 

「なぁ!?」

 

右手だけで戦っていたせいなのか、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の一振りで彼女の剣が手から離れる。

 

大きく後退したため追撃は喰らわなかったが、剣との距離が離れてしまう。

 

「覚悟だ!!セイバー!」

 

「ケイネス!?」

 

ソラウの叫び声で振り返る一同。

 

「切嗣!?」

 

「その武器を下ろしてもらおうか...ランサー。」

 

ソラウに銃口を突きつける切嗣がそこにはいた。

 

「貴様...我が妻ソラウを盾に!」

 

「落ち着け...ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。」

 

車椅子のケイネスの目が紙の束に向く。

 

「ギアススクロール...」

 

「ランサーに令呪をすべて使って自害を命じ、このスクロールに署名すれば俺はお前を殺せない。」

 

肩を震わせるケイネス。

 

「下賤のクズが!貴様の手になど」

 

「ケイネス殿、私に自害を命じてください!」

 

「!?」

 

ランサーの言葉にケイネスとソラウは目を見開く。

 

「サーヴァント風情が!命令するなぞ」

 

「...私には今の状況を切り抜く力がありません。」

 

「正気なの!?ランサー!」

 

ランサー陣営やアイリとセイバーは表情に影を落とす中、ランサーは口を開く。

 

「主やソラウ様...出会った最初はかつてのフィンとギネヴィアに姿を重ね、恐れていました...ですが、あなた方は違う。ケイネス殿は不器用ながらもソラウ様を愛していた。そんな主や愛されるソラウ様に最後の忠義を果たします!」

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を自身に突き立てるランサー。

 

「私に令呪を!」

 

「...ランサーよ、自害しろ。」

 

ケイネスはソラウの左腕に刻まれた令呪をすべて使う。

 

「がはっ!?」

 

「すまない...すまない...っ!?」

 

自身に槍を貫いたランサーに歩みだそうとするが、車椅子から転げ落ちるケイネス。

 

「ケイネス!あなた...」

 

「責めないでください、ソラウ様...私は主に忠義を尽くすこと...私の願いをケイネス殿は叶えてくださった。」

 

吐血しながらも柔らかい視線を向けるランサー。

 

「主に聖杯を捧げられなかったこと。また、心残りができてしまった...」

 

「ランサー...」

 

霊核が破壊された影響なのか消えていくランサー。

 

「私の希望である主君とその妻に幸あれ。」

 

彼の姿はもうそこにはなかった。

 

「確かに条件は満たされた...」

 

放心したソラウをケイネスへ突き放し、切嗣はギアススクロールを投げ捨てる。

 

「もう僕にはお前たちを殺せない。」

 

ライターに火を灯す切嗣。

 

ケイネスは放心したソラウの元へ這いずって駆け寄る。

 

「僕には!?」

 

『コネクト プリーズ』

 

銃弾の音が響くがケイネスの目の前に魔法陣が出現する。

 

「ランサーの希望、俺が守ってみせる。」

 

「お前は!?」

 

魔法陣からフォーリナーが剣を構えて出てきた。

 

「約束する……俺が最後の希望だ!」

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者には何を語り聞かせても無駄だ。」

 

「眼前で騎士を汚すか!外道!!」

 

「あの時もそうだ...なぜお前は..」

 

「それが今、俺のやるべきことだから。」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

第18話 英霊への幻滅

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