仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第18話 英霊への幻滅

「約束する……俺が最後の希望だ!」

 

晴人の登場に目を見開くケイネス。

 

「あの時もそうだ...なぜお前は...」

 

「助けるに決まってんじゃん、たとえ相手が敵のマスターだろうとね。それが今、俺のやるべきことだから。」

 

『コネクト プリーズ』

 

魔法陣がケイネスとソラウを通過してこの場から退場させる。

 

「またヒーローごっこの真似か?魔法使いさん。」

 

「俺は希望の魔法使いだ...ランサーの希望を奪わせやしない。」

 

タバコを投げ捨てる切嗣に対して、ウィザーソードガンを構える晴人。

 

「それよりだまし討ちをするなんて...あんたをファントムと思ってしまったな。」

 

「ファントムはよく分からないが...マスターとサーヴァントを同時に消さなければ再契約されるのは知らないのか?」

 

死んだ眼を切嗣は晴人に向ける。

 

「衛宮切嗣...今ようやく貴様を外道と理解した。」

 

今まで黙って見ていたセイバーが口を開く。

 

「道は違えど、目指す場所は同じだとそう信じてきた私が愚かだった...」

 

「...」

 

決してセイバーの方を見ない切嗣。

 

「アイリスフィールを信じて貴様を疑うことはしなかったが、今はもう貴様が聖杯を以て救世をなすと言われても到底信じるわけにはいかない!答えろ、切嗣!聖杯を求める真の理由はなんだ!!」

 

「答えて、切嗣。いくら何でもあなたには説明の義務がある!」

 

セイバーに申し訳なさを感じ、切嗣に問い詰めるアイリ。

 

「...その剣を下ろしてくれないか、魔法使い。」

 

「あんたがセイバーの問に答えるまでは断る。」

 

ため息をつきながら、切嗣はアイリの方を向く。

 

「そういえば、僕の殺し方を君に見せるのは初めてだったね、アイリ。」

 

不機嫌な顔を浮かべるアイリ。

 

「彼にも言った通り、元マスターはサーヴァントと再契約する可能性がある。だから、サーヴァントとマスターを同時に始末する必要があった。」

 

「ねぇ切嗣!私ではなくセイバーに話して!」

 

アイリはセイバーを無視する切嗣に苛立ちを示す。

 

「栄光だの名誉だの、そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者には何を語り聞かせても無駄だ。」

 

「眼前で騎士を汚すか!外道!!」

 

激怒するセイバーに切嗣は呆れた様子で答える。

 

「こいつら英雄は、戦いの手段に正邪があると説き、さも戦場に尊いものがあるかのように演出するんだ。彼らが魅せる幻想でどれだけの若者たちが武勇だの名誉だのに誘惑され血を流して死んでいったと思う?」

 

「幻想ではない!例え命のやり取りだろうとそれが人の営みである以上、法と理念がある!さもなくば、戦火のたびにこの世には地獄が具現化するはめになる。」

 

「ふっ...ほらこれだ。この英霊様はよりにもよって戦場が地獄よりマシなものだと思ってる。君も同じなのか、魔法使い」

 

切嗣は正当化するセイバーを鼻で笑い、晴人の方を見る。

 

「その言葉を聞くとあんたは多くの人の死を見て、傷ついてきたんだな...優しいんだな、あんたは。」

 

「…ふざけるな。僕をそんな手垢の付いた言葉で定義しようとするな、魔法使い。」

 

眉をひそめ、不快そうに冷ややかな視線を浴びせる切嗣。

 

「いや、あの時の爆破を含め、あんたはできるだけ血を流さないように考えてきたはずだ。だが、あんたの手段は許されるものじゃない...これ以上繰り返すとあんたの身が持たないぞ!」

 

「…僕は効率を求めているだけだ。この身がどうなろうと、この世界の地獄を終わらせる聖杯が手に入るなら安い代償だ。」

 

剣を下ろした晴人に攻撃の意志がないことを察して、この場を去ろうとする切嗣。

 

その背中には世界を救うという祈りにも似た呪いと、積み上げた屍の重みがのしかかっているように見えた。

 

「待て、切嗣! まだ話は終わっていない!」

 

セイバーに静止させられ不機嫌な顔を切嗣が見せる。

 

「効率で今まで貴様が陥れたすべてを切り捨てるというのか...それに貴様は私が戦場が地獄よりマシなものと言ったが、そうではない!地獄だからこそ人はそこに一筋の光を、矜持を求めるのだ!その希望に応えるのが英雄だ!」

 

正当化するセイバーを鼻で笑い、指をさす切嗣。

 

「...いつの時代も勇猛果敢な英雄様が華やかな武勇伝で人々の目を眩ませ、血を流すことの邪悪さを認めようとはしない...戦場に希望なんてない。あるのは掛け値なしの絶望だけ。敗者の痛みの上でしか成り立たない、勝利という名の罪過だけだ...なのに人類はその真実に気づかない。」

 

晴人やセイバーは剣をしまう。

 

「人間の本質は石器時代から一歩も進んじゃいない!!」

 

「それじゃあ、切嗣。あなたがセイバーに屈辱を与えるのは...英霊に対する、憎しみのせい?」

 

黙っていたアイリが口を開き、切嗣は彼女の方へ向く。

 

「まさか...そんな私情は交えないさ。僕は聖杯を勝ち取り世界を救う...そのための戦いに最もふさわしい手段で臨んでいるだけだ。正義で世界は救えない...そんなものに僕は全く興味はない。」

 

「切嗣...かつてあなたは何に裏切られ、何に絶望したかは知らない。だが、その怒りは、嘆きは紛れもなく正義を求めたものだけが抱くものだ!切嗣...若き日の本当のあなたは正義の味方になりたかったはずだ。世界を救う英雄を誰よりも信じて、求め、欲していたはずだ。違うか!」

 

迎えに来ていた車に乗り込もうとする切嗣はセイバーの言葉で鋭い視線を浴びせる。

 

「終わらぬ連鎖を終わらせる...それを果たしうるのが聖杯だ。僕がこの冬木で流す血を人類最後の流血にしてみせる。」

 

「...あんた、いつかは絶望に飲まれてしまうぞ。切り捨てたやつらに対する良心の呵責で。」

 

「お前と話していると、不快になるよ...魔法使い。」

 

顔を晴人に向けることなく、切嗣は迎えの車で去ってしまった。

 

「フォーリナーよ...あなたはなぜ敵であるランサーや切嗣を気にかけるのだ?」

 

「あんたみたいな傾国の救世主でもなければ、あんたのマスターみたいに世界平和を望んでいるわけじゃない。俺は目の前で絶望しそうなやつに手を伸ばしたいだけだ。」

 

車にもたれかかるアイリに近づく晴人にセイバーは警戒を示す。

 

「...あんた、大丈夫なのか?」

 

「私?特に問題はないし、あなたには関係ないわ。」

 

「そうか...少しは旦那さんに頼るべきだと思うけどねぇ。」

 

リングをかざす晴人。

 

『コネクト プリーズ』

 

「...またな、セイバー。」

 

「あぁ、フォーリナー。」

 

魔法陣の中へと消えていった。

 

 

 

 

間桐のダイニングに気まずい雰囲気が流れていた。

 

「...」

 

「おじさんとおねぇさんは誰?」

 

間桐邸に敵対していたランサー陣営であるソラウとケイネスが来ていたからである。

 

「私はケイネス・エルメロイ・アーチボルトだ。そして、妻のソラウ・ヌァザレ・ソフィアだ。小娘も聞いたのなら名乗れ。」

 

「間桐桜。」

 

その沈黙を子供である桜が破り、心が参ったソラウの代わりに口を開くケイネス。

 

「...俺は間桐雁夜だ。あんたらはフォーリナーに連れ去られたのか?」

 

「いや、その逆だ。よりにもよって敵のマスターを助ける馬鹿がいるとは...。」

 

出されたカップに手をつけながら、ケイネスは悪態をつく。

 

「ランサーはどうしたんだ?」

 

「...私の自害で消えてしまった。」

 

「...自害?」

 

自身の心の整理も兼ねて語り始めるケイネスを黙って雁夜と桜は話を聞いていた。

 

「あんたも聖杯戦争の餌食になったんだな。」

 

「黙れ!落ちぶれたマキリの一族!...貴様らなんかの同情はいらん!」

 

再び空気を悪くする中、桜は晴人の残した紙袋からドーナツを4つ分取り出して彼らに配膳する。

 

「どうぞおじさんにお姉さん...お父さんも一緒に食べようよ。」

 

「ありがとう、桜。」

 

皿に置く桜を一目見たケイネスは眉をひそめる。

 

「間桐雁夜よ。娘に何か体を細工したのか?」

 

「体をいじったのは俺じゃなくて間桐臓硯だ。それにこの子はもともと遠坂家から養子に出されたんだ。」

 

「ほう...遠坂家か。私の感じた違和感はそういうことだったのか。」

 

まるで学者のように二人を観察するケイネスに対して、桜は恥ずかしそうに雁夜の背後に隠れる。

 

「桜に何か用か?」

 

「...お前と小娘についての事情を話せ。私だけに話させるな...マキリよ。」

 

態度のデカいケイネスに苛立っていた雁夜だったが、渋々口を開く雁夜。

 

その間、配られたドーナツを手に取って聞いていた。

 

「マキリと遠坂がこれほどとは...我ながら誠に遺憾だ。」

 

「...お姉さん!?」

 

頭を抑えるケイネスに対し、ソラウは静かに桜に近づいて左腕で抱き着く。

 

「親の理不尽で...大変だったのね。」

 

「...うん。」

 

ソラウはケイネスに視線を移す。

 

「ケイネス、もうランサーに対して後悔するのは辞めたわ。彼の忠義に生かされた私はこの子のサポートをするわ。」

 

「...私としては小娘の才は惜しいものだ。」

 

二人の反応に雁夜は眉をひそめる。

 

「待て!桜は普通の家族として過ごしたがっているんだ!もう魔術師の元には」

 

「馬鹿者!!魔道を一時離れたお前には分からんと思うが、小娘の膨大な魔術回路は魔力の暴走や人ならざるものに狙われるほどだ。貴様はそこまで頭は回らんのか!!」

 

「!?...ごめん。時臣がうちに預けたのもそういうことか...」

 

ケイネスの正論に肩を落とす雁夜にソラウは柔らかな視線を向ける。

 

「安心しなさい、間桐雁夜。夫はプライドが高いだけで誠実な教育者であるわ。」

 

「...言うんじゃない、ソラウ。」

 

ソラウの言葉に少し赤らめるケイネス。

 

「ともかく、この戦争後に私の元へ小娘と共に来い。貴様と小娘のその体ぐらい私とソラウに直せないはずがないからな。」

 

「ケイネスさん...」

 

車椅子に乗り、不自由な体であるケイネスの顔は雁夜にとって頼もしいものであった。

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「貴様がより上質な悦を味わう方法を教えてやろう。」

 

「..かつての僕を見ている気分だな。」

 

「いいえ、私を愛しています。」

 

「私はかつてないほどの喜びを感じている。」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

第19話 愉悦への目覚め

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