仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
どこかの海岸で老若男女問わず人々が誘拐されて集められた。
空を見上げると月が今まさに太陽に覆いかぶさろうとしている。
「皆既日食だ...」
大地に降り注ぐ日光が遮られたことで辺り一帯が暗闇に包まれ、唯一見える
「え?」
大地が避け、そこから赤色の光が漏れ出る。
「あ、あ、あ...父さん、母さん...」
青年の病室で最後に過ごした父親と母親の思い出に亀裂が生じる。
回りの人々の体中にも同様に亀裂が走っている。
「あぁ!」
「はっ、はっ、はっ!」
絶叫や発狂し、人間という殻から絶望の化け物たちが這い出てくる。
「俺は...」
ついに青年の体から翼が飛び出て、今にも化け物が生まれそうだ。
(「忘れないで...晴人はお父さんとお母さんの...最後の希望よ」)
「...俺は!」
皆既日食に手を伸ばしその光を掴み取る。
「ゆ、め?...桜ちゃん!!」
雁夜は気が付くとベットの上で寝かされていた。
「ヒヒーン!」
「...使い魔か?」
青い馬のおもちゃが彼の目覚めに反応し、どこかへ走り去る。
「大丈夫か?マスター。」
開かれた扉から茶髪の青年が入ってくる。
「君は...たしか」
「あんたに召喚されたウィザード。操真晴人だ。」
声は昨日の人物と一致するが、見た目は思ったより普通の青年に見える。
「...そういえば、名前は?」
「あぁ、俺は間桐雁夜。うっ」
ボロボロの体を起こすも、激痛が走る。
「雁夜、無理するな。」
晴人に再び寝かされ、指輪をはめられる。
『プリーズ プリーズ』
「これは」
「あんたに魔力を渡す。生命力を魔力に変換しているんだろ?なら、せめて事前に魔力を持っておけば負担は減るはずだ。」
痛みが少し和らぎ、体が軽くなる。
「桜ちゃんは!?」
「あの子は大丈夫だ。あんたの爺さんに釘を刺してるし、使い魔が目を光らせてる。」
「...助かった、ウィザード。」
緊張が途切れ、再び目を閉じる。
「雁夜、俺を晴人と呼んでくれ。この聖杯戦争に参加するってことは望みがあるんだろ?」
「...あぁ。桜ちゃんをあの臓硯から解放したくてね。」
彼は桜がもともと遠坂家で、父親である遠坂時臣に養子として間桐家に出されたこと、この家の魔術に適応するために臓硯によって自分と同じように
蟲蔵に入れさせられていること、聖杯を渡せば臓硯は桜を開放することを口にしていった。
「だから、決めたんだ...俺は桜ちゃんの幸せのために時臣を殺して聖杯を手に入れるって。」
晴人は雁夜の話を聞くも、その雲行きは怪しくなる。
「なるほど...雁夜の願いは分かった。だが、その願い、ほんとにあの子のためになるのか?」
「どういうことだ!?時臣は魔術のために桜ちゃんや凛ちゃん、それに葵さんも不幸に...」
思わぬ返答に激情するも、刻印蟲が刺激を受けて激痛が走る。
「落ち着け雁夜。父親と母親がこんな目にあっている娘を黙って見てるはずがないだろ。時臣は間桐の事情を知っていたのか?」
「...」
雁夜はまるで殴られたかのように唖然としていた。
「...あのじいさんの拷問で考える余裕すらなくなるのは分かるが,,,葵さんをとられた妬みから来てるのか?」
「そ、それは...」
桜を助けようとする純粋な目的が時臣を復讐する建前になっていることに気づき、狼狽える。
(「雁夜おじさん....どんどん違う人になって行くみたい....」)
「...少しは頭を冷やす時間も必要だろう、休め。」
雁夜に新しくリングをはめ直す。
『スリープ プリーズ』
雁夜は糸が切れるように目をつぶった。
雁夜を寝かせた晴人はダイニングでガルーダを観察する桜の方に来ていた。
「あ...雁夜おじさんは大丈夫なの?」
「あぁ、桜ちゃんが心配するほどではないさ。」
ハイライトのない瞳を晴人に向ける桜。
「ねぇ、お兄さんはなんでおじいさまに楯突いてまで私を助けるの?」
「それはね桜ちゃん、俺を召喚した雁夜と助けを求めた君の希望になるためさ。」
桜は不意にボロボロの雁夜の姿を思い浮かべた。
「...なんで、雁夜おじさんもお兄さんもおじいさまに無駄な抵抗をするの?」
「...俺や雁夜はね、桜ちゃんを救いたいんだよ。無理でもやらなきゃ、誰も救えない。俺はそんなの嫌だからさ。」
「お兄さん...!」
彼女の腹が空腹を伝え、顔を赤らめる。
「そういえば、なにも食べてなかったな。」
『コネクト プリーズ』
魔法陣から食べそびれたドーナツ屋はんぐり~の紙袋を取り出す。
「プレンシュガーしかないけど...って、店長。」
そこにはプレンシュガーの他に真っ赤なソースに所々白い豆腐のようなものが付いたドーナツがあった。
(『今回の新作は麻婆ドーナツよ♪食べてくれないからサービスしちゃうわ。』)
同封していたメッセージに肩を落とす。
「はぁ、俺が食べるしかないかぁ...」
「...くれないの?」
麻婆ドーナツに釘付けになっている桜が晴人の方へと向く。
「桜ちゃん?麻婆豆腐って知ってるかい。」
「うん。」
「それがこのドーナツの味なんだけど...」
ハイライトのない瞳は再び麻婆ドーナツへと向けられる。
「...食べてみたい。」
「マジか。」
晴人は牛乳と皿をキッチンから取り出し、桜に席をつかせる。
「いただきます。」
晴人は麻婆ドーナツに手を付ける桜を横目にプレンシュガーをほおばる。
「けほっ!」
「だ、大丈夫か?」
急いで牛乳を流し込む桜の背中をさする。
「ぷはっ」
「...おいしいのか?」
「それと交換して」
麻婆ドーナツを3分の1の大きさに裂き、プレンシュガーを指さす。
嫌がる晴人だったが、冷たい視線に負けて泣く泣くプレンシュガーを裂いて交換に応じた。
「ぜってーやべーじゃん」
ドーナツの真っ赤な色が食べてもないのに唾液がどんどん流れてくる。
「...辛ッ!?」
「クスッ」
立ち上がってコップを探す晴人の様子に桜は失笑する。
「ぷはっ」
コップ二杯分ほどの水を飲み、深呼吸をする。
「...桜ちゃん、笑ったなぁ...」
「キャ!」
桜と晴人はダイニングテーブルを中心に追いかけっこを始める。
「桜ちゃん...」
「雁夜おじさん?」
すると、いつの間にか涙が頬につたっている雁夜が立っていた。
「よっ、雁夜。」
「晴人...俺、久しぶりに見たよ...桜ちゃんの笑顔。」
雁夜のようすに唖然とした桜を晴人は一瞥して、
「...雁夜、もう一度聞くが、あんたの望みはなんだ?」
「俺は...桜ちゃんを助けたい。桜ちゃんの笑顔を取り戻したい!」
腕で涙を拭いながら桜の方を向く。
「でも、俺は勝てないかもしれない。桜を幸せにするために...」
自身の瘦せこけて血の気のない手を見る。
「これは...」
「俺があんたの希望になってやるよ。そして桜ちゃんの希望にも。」
晴人は雁夜の中指にエンゲージリングをはめた。
次回、仮面ライダーウィザード
「今回の聖杯戦争、ちょっと問題があるの。」
「これまで起こった3件の殺害現場すべてに被害者の血で描かれた魔法陣と思われる謎の図柄が」
「希望が絶望へと切り替わる、その瞬間のことを言う。」
「地を這う虫けら風情が。誰の許しを得て面を上げる?」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第2話 聖杯戦争開幕