仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第19話 愉悦への目覚め

冬木の住宅街、言峰綺礼は帰路に向かっていた。

 

「どうやら愉悦を味わったようだな...綺礼。」

 

「愉悦かは分からんが、高揚を感じた。」

 

現れたアーチャーと会話を続ける。

 

「それが愉悦というものだ。」

 

「にわかには信じがたいが...認めるしかないな。」

 

「まだ貴様は正しさに囚われているのか。」

 

笑みを浮かべながらも俯く綺礼にアーチャーは呆れたようすであった。

 

「歪んだ悦に嫌悪を抱く姿もなかなか滑稽だが、そろそろ飽きたところだ...綺礼よ。」

 

「なんだ?」

 

「貴様がより上質な悦を味わう方法を教えてやろう。」

 

徐々に教会が見えてくる。

 

「貴様の父、言峰瑠正を殺すことだ。」

 

「冗談を言っているのか、アーチャー。」

 

眉をひそめる綺礼にアーチャーはいたずらな笑みを浮かべる。

 

「聞くも聞かずもお前次第...だが、楽しみにしているぞ、綺礼。」

 

教会の扉の前に着く頃にはアーチャーの姿が消失していた。

 

 

 

教会の中、聖杯戦争の監督役である言峰瑠正は頭を悩ませていた。

 

キャスターによる未遠川での戦いは多くの一般人が目撃し、被害を受けているため、派遣された聖堂教会と魔術協会の人材に指示を出して事態の収拾を図っていた。

 

「ランサー陣営が先に令呪を得るとは...」

 

ようやく後処理から解放された瑠正だが、ランサーのマスターが報酬の令呪を先に回収してしまった。

 

「ただいま帰りました、父上。」

 

「帰ってきたか、綺礼...時臣君はどうだね。」

 

「...」

 

帰ってきた綺礼は瑠正の言葉が聞こえないほどぼーっとしている。

 

「綺礼?」

 

「はっ...すみません父上。時臣氏は間桐雁夜と接触して退けた後、アーチャーとともにキャスターを討伐しようとしましたが、彼の性格故に最低限の協力しか得られなかったようです。」

 

「はぁ、時臣君もなかなか苦労しているようだな...お前もご苦労だった。」

 

立ち上がった瑠正は綺礼に背を向けて礼拝堂から裏の方へ出ようとする。

 

「父上もお疲れでしょう。」

 

礼拝堂の中央に差し掛かり、瑠正についていく綺礼。

 

「グハァ!?」

 

「...ゆっくり休んでください、父上。」

 

瑠正の腹部には黒鍵が飛び出し、血を滴らせていた。

 

信じられないというような顔を綺礼に向けるも、体はもう動かず倒れる。

 

(「いいえ、私を愛しています。」)

 

父の死骸を一目見て亡き妻であるクラウディアの自殺する時を想起する。

 

「そうか...あの時私は。」

 

白目を向く瑠正の瞼を閉める綺礼。

 

「自分で殺めたかったのだな。」

 

教会の二階からワイン片手にその様子を嗜むアーチャーがそこにいた。

 

 

 

「どうやら現実的な桜の道が見つかったようだな。」

 

「あぁ。」

 

桜が就寝した後、ダイニングで今後の予定を晴人と雁夜は話し合っていた。

 

再び狙われる可能性のあるケイネスとソラウは晴人のコネクトで冬木から遠く離れた日本の地に避難していた。

 

「だが...」

 

「どうしたんだ?雁夜。」

 

「晴人、時臣を拒絶したことで再び葵さんと凛ちゃんと離れ離れになってしまったと思ってね。」

 

肩を落とす雁夜。

 

「時臣の許可がないと桜は二人に会えないのか?」

 

「そんなことはない...だけど、前まで一緒に過ごしていた姉妹がたまにしか会えなくなると思ってね。」

 

遠坂家四人が仲良く家族団欒を過ごす姿を雁夜は思い浮かべる。

 

「...大丈夫だと思うぜ、雁夜。桜はこうしてお前を選んだんだ...父としての責任を果たせよ。」

 

「あぁ。」

 

窓から見える夜空は多くの星で思っているよりも明るかった。

 

 

 

 

ボロボロな廃墟が続いた道を抜け、繁華街を走らせた車で切嗣は遠くを見ていた。

 

(「...あんた、いつかは絶望に飲まれてしまうぞ。切り捨てたやつらに対する良心の呵責で。」)

 

フォーリナーの言葉を想起し、眉をひそめる切嗣。

 

(「ケリィはさ...どんな大人になりたいの?」)

 

(「今度こそ本当に...母親ごっこしかやることが無くなるなぁ。」)

 

今まで切嗣が見捨てることしかできなかったシャーレイやナタリアを思い浮かぶ。

 

(...かつての僕を見ている気分だな。)

 

「...そろそろ着きます。」

 

運転している舞弥に声を掛けられ、気が付くとホテルの駐車場に到着していた。

 

ホテルにチェックインをして、客室で作戦会議を開く二人。

 

「これまでのフォーリナーの戦闘を見ると、単純なサーヴァントの基礎スペックに加えて、空間干渉や飛行能力などの魔法に銃を所持していたりなどセイバーでも苦戦するだろう。」

 

「...では、フォーリナーが離れている隙に間桐邸を襲撃しますか?」

 

「それだけでは足りないだろう...空間干渉ができる以上、やつはどこにいてもマスターを回収することができる。」

 

地図と今までの記録を確認し、案を出し合う二人。

 

「...頼りない騎士様だが、彼女にはサーヴァント相手を陽動してもらおうか。」

 

「取り逃がしたケイネス・エルメロイ・アーチボルトとその妻についてはどうしますか?」

 

「あの魔法使いのことだ...とっくに逃がしているだろう。」

 

タバコを取り出して、ライターに火を灯す。

 

「そこは魔法使いの思い通りにするしかない。だが、あいつとそのマスターを逃すわけにはいかない。」

 

彼の視線の先には少女の写真が貼られていた。

 

 

 

 

 

(「この戦いから...身を引いてくれ、綺礼。」)

 

神父を殺害され、アインツベルンと条件ありで協定を結びたがった時臣は綺礼を追い出す他になかった。

 

綺礼はそれを理解しながらも、遠坂邸にある自身の荷造りを進めている。

 

「衛宮切嗣...」

 

(何を得て、何を失い、今どのような地獄を見ているのか...確かめずにはいられない。)

 

切嗣の写真を一目見て、手が止まる綺礼。

 

「父親を殺した気分はどうだ?綺礼。」

 

「...かつて、妻が目の前で死を見せたとき、私の中で悔しさという言葉が支配していた...父を自ら殺めて私は理解した。大切な存在を自ら捨てる背徳は私の生きる実感と愉悦であったということを。」

 

「ほう、良かったではないか。」

 

綺礼の方に近づき、アーチャーはソファーにくつろぐ。

 

「では、再び聖杯に選ばれた貴様はなお戦い続けることを望むか?」

 

「...物心ついて以来、私はただ一つの探索に生きてきた。ただひたすらに時を費やし、痛みに耐え、その全てが徒労に終わった。」

 

綺礼の表情は生き生きとした笑みを浮かべる。

 

「だが、他人の苦しみを助長し、しかも父を殺す背徳行為を為した私はかつてないほどの喜びを感じている。」

 

苦しむ雁夜や父の死体を思い浮かべる綺礼に一本の電話が来る。

 

「分かった、ご苦労。」

 

「何か、心がよほど浮き立つような知らせがあったのか?」

 

報告を聞き、電話を切る綺礼の傍に移動するアーチャー。

 

「アインツベルンの連中が隠れ潜んでいる拠点の調べがついた。」

 

「なんだ綺礼、俄然やる気があるではないか。」

 

高笑いしながら、再びソファに寝転がるアーチャー。

 

「...やめる手もあった。だが英雄王、お前の言う通り...私という人間はただ問い続けることの他に処方はないようだ。」

 

「それは?」

 

「父から奪ったものだ。」

 

袖を捲った綺礼の腕には監督役が持つはずの予備の令呪が刻まれていた。

 

「父を殺し、かつ父の持つ令呪を移植するとは!お前の成長は見ものだよ。」

 

高笑いながら、寝かせていた上体を起こし座る体制に移るアーチャー。

 

「しかしな、綺礼。お前が自らの意志で聖杯戦争に参ずるなら、いよいよ遠坂時臣は敵であろうが...つまりお前は何の備えもないままに敵対するサーヴァントと同室しているのだ。これは大層な窮地ではないか?」

 

「命乞いの算段ならついている。」

 

「聞いてやろう。」

 

アーチャーの座るソファの近くに備え付けられた椅子に腰を下ろす綺礼。

 

「ギルガメッシュ、お前のまだ知らない聖杯戦争の真実を教えてやろう。」

 

「なんだと?」

 

「そもそもこの冬木の儀式はな、七体の英霊の魂を生贄とすることで根源の穴を開けようとする試みだ。大聖杯を起動するために七人すべてのサーヴァントを殺しつくす必要がある...我が主があれほど令呪を渋っていたのはすべての戦いが終わった後、自らのサーヴァントを自決させるためだったからだ。」

 

「時臣が俺に示した忠義は全て噓偽りだったというのか...娘に嫌われる所は滑稽だったが、もう一つ見どころを示したな。」

 

ギルガメッシュの俯くその顔は笑みがこぼれているが、その目は笑っていなかった。

 

「あの退屈な男もこれでやっと俺を楽しませることができそうだ。」

 

「...さて、どうする?英雄王。」

 

 

 

 

遠坂邸の書斎。部屋の一面にある窓にはもうすぐ夜が明けることを告げていた。

 

そんな中、遠坂時臣は冬木を離れる言峰綺礼に遺言状を託し、娘の世話を頼んでいた。

 

「これは?」

 

「君個人に対して私からの贈り物だ...開けてみたまえ。」

 

箱を手にして、開封する綺礼。

 

「アゾット剣だ。君が遠坂の魔道を納め、見習の過程を終えたことを証明する品だ。」

 

「...至らぬこの身に、重ね重ねのご厚情、感謝の言葉もありません...我が師よ。」

 

綺礼は取り出したアゾット剣を眺める。

 

「君にこそ感謝だ、言峰綺礼。これで私は最後の戦いに臨むことができる。」

 

剣が瞳を映し、刀身をさする綺礼。

 

「...もうこんな時間か。飛行機の時間に間に合うといいが。」

 

立ち上がって扉に向かう時臣。

 

アゾット剣を片手に彼に続く綺礼。

 

「いいえ。」

 

背中にゆっくりと近づき、いたずらな笑みを浮かべる綺礼。

 

「心配無用です...我が師よ。」

 

「ガハッ!?」

 

時臣の目は見開き、床に血を垂らす。

 

「飛行機の予約などしておりませんので。」

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「取りこぼした幸せの残りは全部...イリヤにあげて、私たちの大切なイリヤに...」

 

「戻りましたね...昔のあなたの顔に。」

 

「令呪を以て命ずるセイバー。」

 

「早く逃げろ!フォーリナー!!」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

 

第20話 暗殺者の帰還

 

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