仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
「仁藤!?」
緑のマントを羽織った獅子の仮面の男にそう呼ぶ晴人。
「おじさんは誰なの?」
「ん...私は晴人の仲間!魔法少女・ビーストよ!」
「「「え?」」」
裏声で答える男に困惑する一同。
「目の死んだおっさんを倒しちゃうぞ!」
「あの...気持ち悪いです、おじさん。」
「気持ち悪い...おじさん!?」
桜のマジトーンにショックを受ける男とそれに呆れる晴人。
「...仲間なのですか?」
「あぁ...」
引き気味のセイバーの言葉にフォーリナーは頭を悩ます。
「おい晴人!女児は魔法少女人気じゃねーのかよ。」
「ばーか、そういうノリをやるからおじさんって言われるんだよ。」
「何を!」
披露される漫才にこの場にいる者たちは唖然としていた。
(...どうしてこう明るくいられる。こんな殺し合いの場で...)
「で、どうすんだ?目の死んだおっさんよ。」
「僕にはどうすることもできない.....僕には、もう世界を救えない。」
膝から崩れ落ちる切嗣の姿に一同は困惑する。
「皆を救うことができない僕には多数を優先して少数を切り捨てるしかなかった。そんな達成できない平和を僕は聖杯を手にすることで解決したかったんだ...せっかく、舞弥やアイリに「あーあー、皆まで言うな!」」
「暗い顔すんなよ、おっさん。言っとくが...たった一人の人間が世界を救えないなんて当たり前だろ?」
暗い空気を生み出す切嗣に仁藤は口を出す。
「いいか?世界を救うなんてのはな、一人でやるもんじゃねぇ。俺だって晴人がいなきゃ今頃キマイラに食われてたし、晴人だって俺や凛子ちゃんたちがいたから魔法使いでいられたんだ。」
「...仲間か。」
「あんたにもいるはずだ...奥さんやセイバー、なんなら俺や仁藤も協力するさ。」
晴人の言葉に嘲笑を浮かべる切嗣。
「僕はシャーレイを殺さなかったために大勢を見殺しにした...大勢を救うためにナタリアを切り捨てるしかなかった。仲間や家族ができたとき、僕は切り捨てなければいけないその時まで苦痛を味わう...周りを不幸にする僕に仲間を求める資格なんてないんだ!」
彼の情けない叫びに襲われていた雁夜と桜までも憐みの目を向ける。
「…衛宮切嗣。貴方がそこまで己を呪い、孤独に固執していた理由…今、ようやく理解した。
貴方は、家族や仲間をその手で葬ることでしか『正義』を貫けなかった……その痛みは王として国を背負い、多くの犠牲の上に平和を築こうとした私と同じもの...ですが、誰にも理解されず、独りで背負うことだけが正義だと信じるのは、救いではなく…ただの傲慢と言えよう。」
静かに聞いていたセイバーは口を開き、膝をつく切嗣の傍に近づく。
「…今この瞬間、私は貴方のマスターとしての冷酷さではなく、その臆病なまでに優しい本心を私の王道の名において肯定する…立つのだ、衛宮切嗣。貴方はアイリスフィールが器となる宿命を受け入れ、それを『必要な犠牲』だと自分に言い聞かせてきた。だが、私の騎士道も、フォーリナーたちが掲げる希望も、そんな残酷な理屈に屈しはしない。」
セイバーは晴人と仁藤を一瞥する。
「あんたが周りを不幸にするって言うなら、俺がその不幸ごとあんたを救ってやる。俺の希望は、あんたの絶望なんかに負けたりしない...だから、一緒に戦ってくれ。」
「そろそろ立とうぜ、おっさん。」
三人の言葉を聞き、切嗣はゆっくりと立ち上がる。
「セイバー、フォーリナー...君たちの言う『希望』が、僕のような男の隣にあっても許されるというのなら…」
立ち上がった男の瞳には以前と比べて力強いものだった。
「君の言う聖杯の汚染、聞かせてほしい。」
衛宮邸の土蔵の中、舞弥は横たわるアイリを警備しながらも銃弾を詰めていた。
「ねぇ、舞弥さん。」
アイリに呼びかけられ、顔を向ける舞弥。
「あなたはなぜ切嗣のために戦うの?」
「...それ以外に何もないからです。私には自分の名前も家族のことも思い出せない...久宇舞弥という名前は切嗣が最初に作ってくれたパスポートの名義です。」
舞弥は作業をしていた手を止め、自身のことを語りだす。
「覚えているのは貧しい国だったということだけ...戦争は決して終わらず、軍隊を維持する資金さえ無いのに殺し合いを続けるしかない毎日。そのうちに誰かが思いついたんです...兵隊を徴用して訓練するより、子供をさらって銃を持たせた方が安上がりで手っ取り早いと。」
「舞弥さん、あなた...」
「敵を狙って引き金を弾く...私はそういう機能だけを残してすべてを捨て去りました。」
銃弾を詰め込む作業を再開する舞弥。
「人として中身が死んで、ただ外側の器だけがまだ動いて、昔馴染みの機能を維持しています...それが私の命です。そんな私を拾ったのは切嗣だ。だから切嗣が好きなように使ってくれればいい。それが私がここにいる理由です。むしろ私には...マダム、あなたの熱意こそ意外だった。」
「え?」
「生まれ育った城に閉じ込められたまま外の世界を知らずに生きてきたあなたが、世界を変革しようという切嗣のためにあれほど必死に戦うなんて...」
「私は...本当は切嗣の理想がどういうものかきちんと理解できているわけではないわ。舞弥さんの言う通り、私は切嗣が変えようとしている世界のことをまるで分かってない...私の理想なんて、何もかも切嗣の受け寄りでしかない。」
お互い顔を向ける舞弥とアイリ。
「でも切嗣には内緒。切嗣にはいつだって彼が正しいと言い聞かせてきた...彼の理想には私の命を捧げるだけの価値があるってね。そうやって理解者の振りをしてきたわ。」
「ではマダム、あなたの願いはないと?」
「願いは...いいえ、確かにある。私は切嗣とセイバー、あの二人に聖杯を掴み取ってほしい。」
「それは...第三魔法を達成するというアインツベルンの悲願ですか?」
「いいえ、私が求めているのは戦いの終焉よ。切嗣の願いが叶ってすべての闘争が終焉するなら、この戦いについても例外じゃないはずよ...どうか最後の戦争にして欲しいの。」
「...ご息女のことですか?」
「もし私と切嗣が失敗すれば、次はイリヤが...」
険しい表情を見せる舞弥。
「でも、それが...アインツベルンのホムンクルスに背負わされた宿命なのよ。だから私で最後にしたい...あの子は最後まで人として生きてほしい...舞弥さん、あなたは切嗣が理想を遂げた後にどうするの?」
「...生き残るなどと考えていません...仮に命を繋いだとしても、切嗣によって変革された世界に私の生きる意味はありません。」
「探さないと...あなたの本当の名前と家族を。それは忘れられていいことではない...はっきりと確かめて、刻みつけなければならないことなのよ。」
アイリの言葉を聞き、考え込む舞弥。
「だから生きて、舞弥さん...私の分も。」
「...善処はします。でもそれは戦いが終わった後の話です。現状では予断を許さない...彼も私も当面は気を抜くことなどできません。」
「本当に...あなたって人は。」
「実に面白い話を聞かせてもらったぞ。」
「ガハァ!?」
舞弥の腹に三本の刃物が貫く。
「言峰、綺礼!?」
「今は不在のようだが...代わりにこの器をもらおうか。」
倒れた舞弥の背後から綺礼が黒鍵を彼女から抜き取って現れる。
「くっ!」
力を振り絞って所持していたサブマシンガンを綺礼に浴びせる。
「ほう...まだ動けるのか。」
「うっ!?」
「舞弥さん!?」
だが、綺礼には全く効かず、アイリの目の前でトドメと言わんばかりに一本の黒鍵を胸に突く。
舞弥の悲惨な姿に綺礼は笑みを浮かべていた。
「舞弥さんを、彼女を!」
叫ぼうとするアイリを気絶させる綺礼は彼女を抱える。
(...衛宮切嗣、これでお前は私を無視できまい。)
次回、仮面ライダーウィザード
「おうよ!母ちゃんに会えよ!」
「遠坂...時臣!?」
「私を捨てたくせにまた来るの?私がそんなに...」
「...誰かを好きになったことさえないあんたなんかに!!」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第23話 絶望の作劇