仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
「そうか...
「では、願望機である聖杯は願いを最悪の形で叶えると。」
「あぁ、その通りだ。」
間桐邸の客間で晴人と切嗣、セイバーは話し合っていた。
「あんたはどうするんだ、衛宮?」
「...僕は聖杯を破壊する。おそらく僕のこの世全ての争いを根絶するという願いは一人の人間以外を全て消し、物理的に争う状況を無くす...ということだろう。そんなのはもはや願望機ではなく、もはや破壊兵器だ。」
切嗣に向けていた視線をセイバーに移す晴人。
「私も同感だ。願いを叶えてまで私は人々に危害を加えるつもりはない。」
「俺も聖杯に破壊することは賛成だが、奥さんはどうするんだ?」
「分かっている...聖杯を破壊すればアイリも無事では済まない。」
晴人の言葉に切嗣は顔を俯く。
「アイリは僕のために自分を犠牲にすることを受け入れている...けど、今の僕には彼女を犠牲にしたくはない。」
切嗣は晴人を真っすぐ見つめる。
「聖杯というシステムからアイリを引き離すことができるのは奇跡以外何もない...フォーリナー、君はアイリを救えるのか?」
「できるかは分からない...だが、俺は諦めない…命ある限り、あんたの奥さんも諦めないさ。」
「...あぁ、頼む。」
夢を見た。
晴人は笛木奏に連れ去られたコヨミを探すために笛木の家に訪れた。
現れた笛木に晴人は口を開く。
「おまえは、コヨミの父が生み出したファントムなのか?」
「ハハハ、私は人間だ。」
白いファントムの姿に変わる笛木。
「このカーバンクルは私が作った人造ファントムだ。」
「人造ファントム!?」
「魔法使いになるには体にファントムを宿す必要がある。私は科学の力で生み出したこいつを自分の体に埋め込んだんだ。」
「そんなことが...」
俯く晴人に笛木は顔を向け、怪人から魔法使いの姿に変わる。
「私は科学と魔法の融合に成功し、そして手に入れたのだ。」
変身を解いた笛木は晴人に近づく。
「人でありながら魔法を意のままに操る術を...」
「それがコヨミとどう関係あるんだ...コヨミはいったい何者なんだ!なぜ魔力で動くんだ!!」
「...コヨミは賢者の石を宿した人形だ。」
愕然とする晴人。
「なんだって...」
「魔力で維持している人形だ。」
晴人に背中を向ける笛木。
「そして、賢者の石は生と死を裏返す究極の魔法石!」
「究極の魔法石?」
「...だが、賢者の石を維持するためには魔力がいる...そのための供給源が必要だった!」
「それが、俺か...」
晴人は鋭く笛木を見つめる。
「私は再びサバトを開くため、魔力を無駄にするわけにはいかなかった...」
「だからファントムを使ってゲートを探し、真由ちゃんや譲や山本さんを攫って無理やり魔法使いに...」
晴人は笛木に駆け寄り、襟をつかむ。
「お前のためにどれだけの人が絶望させられ、苦しい思いをしたのか分かってんのか!!」
「娘を失った私の苦しみに比べれば、そんな苦しみは小さなものにすぎない!!」
「...何?」
捕まれた襟を引きはがし、笛木は晴人を突き放す。
「コヨミは私の希望だ。その希望を取り戻すためなら、私はどんな犠牲も厭わない!!」
笛木は晴人を睨みつける。
「すべてはコヨミのため...でも、他に方法は?」
「他に方法はない...お前が協力しなければ、コヨミは死ぬ。」
晴人は苦しそうに苦痛な表情を浮かべていた。
「お父さん、どうしたの?」
「...ごめん、考え事をしちゃってね。」
桜に声をかけられ、我に返る雁夜。
二人は仁藤とともに遠坂葵と会うために非戦闘地区扱いの教会へ出かけて行った。
「これがないと始まらねーな。」
「?」
歩いてる最中、仁藤は懐からおにぎりとある白いチューブを取り出す。
そのチューブには布教用という文字が書かれていた。
「...おじさん、なにかけてるの?」
「これか?マヨネーズだ!」
桜と雁夜はおにぎりとマヨネーズのミスマッチさに言葉もでない。
「あの...仁藤君はいつもマヨネーズを?」
「あぁ、マヨネーズは世界一美味い食いもんだからな。」
絞り出されたマヨネーズがおにぎりにかかり、仁藤は食いつく。
「桜ちゃんも食うか?」
「ちょっと、仁藤君!」
おにぎりをもう一つ取り出して、マヨネーズを桜に勧める仁藤を止めようとする雁夜。
「いらない。」
「なんだよ...食ってみろよ。」
冷たく断る桜だが、なかなか押しの強い仁藤。
「あ...おじさん、やっぱほしい。」
「やっぱりそうだ!」
腹を鳴らした桜の前で仁藤は新しいおにぎりにマヨネーズをかける。
「うめーぞ!ほら、食え。」
「桜、断っても...」
マヨネーズのかかったおにぎりを受け取って、頬張る桜。
「...おいしい。」
「桜、晩御飯作ってやれなくてごめんよぉ...」
仁藤と同様に美味しそうに食べる桜に聞こえないように呟く雁夜であった。
「...仁藤君は晴人と友人なのか?」
「友人?晴人とはお互い魔法使いとしての腐れ縁だな。」
おにぎりを完食しきれない桜を横目に仁藤と話す雁夜。
「魔法使い...君も絶望したことがあるのか?」
「俺か?俺は晴人と違って遺跡を調査していたら、こうなったわけだ。」
マヨネーズをかけ、おにぎりを再びかぶりつく仁藤。
「俺もキマイラに魔力やるのに必死だったから最初は晴人と対立してたんだがな。」
「対立...敵だったのか。でも、そこからどうやって仲間に?」
「そうだな...まさか人間からファントムが生まれるなんて俺も知らなかったから生きることとのジレンマに苦しんだぜ。だけど、晴人の明日の命より今日の命って聞いてからは食事も優先させてもらうが、絶望から救うあいつに手を貸してやってる感じだな。」
目の前にはすでに教会が見える。
「おぉ、これが教会か!」
「...協会は中立地帯だから仁藤君には門の前で待ってもらえるかい?」
「あぁ、俺はマヨネーズでも食って待ってるぜ。」
門をくぐる雁夜と桜。
「ん...おじさん、ありがとう!」
「おうよ!母ちゃんに会えよ!」
食べ終わった桜は仁藤に手を振り、二人は教会の前の長いアプローチを進んでいく。
(葵さんに凛ちゃん...これで桜も)
教会の扉を開くと祭壇の近くの座席に一人の男が座っているのが分かる。
「あの...ここに遠坂葵さんが」
暗い教会の中、目が慣れ始めた二人には見覚えのある後ろ姿だった。
「遠坂...時臣!?」
「なんで来てるの。」
目を見開き、驚く雁夜に対して時臣に近づく桜。
「私を捨てたくせにまた来るの?私がそんなに...」
「どうしたんださく」
雁夜も桜と共に座っている時臣に近づく。
「おい!時臣!」
時臣の目に光はなく、体をゆするが反応しない。
その体は冷たく、無機物のように感じた。
「はぁ、はぁ、いったい何が...」
「雁夜君?」
扉が開かれ、葵の声に驚いた雁夜は時臣から手を離す。
ドサッと地に伏した時臣だった体。
「葵さん...違う!俺じゃない!!」
一言も口にせず、時臣の元へ歩き出す葵に硬直する雁夜。
「お母さん!」
「桜...」
駆け寄った桜の頭を撫でる葵だが、雁夜には目もくれず時臣だったものの前でしゃがみ込む。
雁夜はそんな葵の様子に顔を強張らせる。
「満足した雁夜君...これで聖杯も得たも同然ね。」
「ち、違う!俺は桜を返し」
「私から桜を奪い、夫を奪い...挙句の果て桜の前で父の死体を見せるなんて...」
死体の前で震える葵の様子に雁夜は血の気が引く。
「違うのお母」
「ふざけないでよ!!」
桜の静止は葵の叫びにかき消される。
「桜を返しに来たなんて嘘よね!!ホントはあなたが時臣さんに勝てないから...こんなことをした。」
「僕はただ」
「あなたはいつも夫に劣等感を感じていた...だから、桜を奪って家族を壊し、彼を殺した。そうじゃないの!?」
否定したい雁夜だが、最愛だった人に拒絶されてまるで人を殺したかのような気分に陥る。
「ねぇ、私はこの人を愛していたの...誰かを好きになったことさえないあんたなんかに!!」
涙を流し、般若と化する葵。
「僕は...ただ桜ちゃんを助けたくて」
「桜に近づかないで!!」
「お母さん...」
これまで見たことのない母親の発狂ぶりに閉口する桜。
「桜、あなたのためにお父様が魔術師の家門である間桐に庇護を求めたの...」
葵は雁夜の首元に手を伸ばす。
「それをあなたが戻ったせいで!私とこの子たちのあの人を返して!あなたが死ねば、全部元通りになるのよ!!」
首を絞められた雁夜は倒れ、葵に睨まれながら意識が遠のく。
「死んで!死んでよ雁夜君!」
「あ、おい...」
首を絞め続けられる雁夜はどんどん顔が腫れていく。
好きな人がいた。
暖かくて、優しくて、誰よりも幸せになってほしくて
あなたの為なら命さえ惜しくない。
今日までの痛みもあなたと桜の為に耐えてきた。
僕は報われたかったのかもしれない。
かつて愛していたあなたに未練があった。
でも、今はあなたの娘の為に立ち向かっている。
あなたにとって彼を奪った僕にあの子を救う資格なんてないのかもしれない。
なら、僕はあの子の幸せの為ならこの身を...
あまりの母の様子に立ち尽くす桜。
「なんで...そんなに穏やかなの!!」
口から唾液が垂れてくるも、彼の表情は実に穏やかであった。
「あ、おい...さん。」
まだ息のある雁夜にさらに力を強める葵。
そんな様子を高所の回廊から二人の影が眺めていた。
次回、仮面ライダーウィザード
「魔法使い、奴はアイリのついでに間桐雁夜を狙っている可能性がある。」
「私が...不幸にしているの?」
「あなたが死ねば、全部元通りになるのよ!!」
「...桜はそれでいいの?」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第24話 勇気の希望