仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第24話 勇気の希望

「舞弥!?」

 

衛宮邸の土蔵に戻ってきた切嗣、セイバーは刃物を突き立てられた舞弥の元に駆け寄る。

 

「なんてことを...」

 

後からついてきた晴人もその様子に目を見開いた。

 

「切嗣、アイリスフィールがいない!?」

 

「...おそらく聖杯の器だと気づいている人物だな。」

 

胸に刺さっている刃物に視線を向ける切嗣。

 

「これは...」

 

「知っているのか、衛宮?」

 

切嗣が手にすると刃物は消滅し、柄がコロンと落ちる。

 

「これは黒鍵...代行者が好んで使う魔術的に編み上げられた実体のない刃...おそらく

これは」

 

「言峰...」

 

「舞弥!?」

 

微かに眼を開き、最後の力を振り絞るかのごとく口を開く舞弥。

 

「待ってろ。」

 

『プリーズ プリーズ』

 

舞弥の中指に指輪をはめてかざす晴人。

 

「舞弥、アイリは?」

 

「言峰、綺礼に...奪われました...」

 

(「...実のところ私にも分からない。」)

 

間桐邸に現れたときのことを思い出す晴人。

 

「教会のあいつか...」

 

「フォーリナーよ、知っているのか?」

 

「あぁ、あいつはなぜか敵である雁夜を間桐邸に運んでくれたんだが...」

 

晴人の言葉に眉を潜ませる切嗣。

 

「信じられない...あの男は情で動くような奴じゃない。」

 

「そういえばフォーリナーよ、あなたのマスターとその娘はどうしたのだ?」

 

「雁夜は教会で桜の母と...」

 

切嗣が晴人の言葉に何かに気づいたかのように不穏な空気を漏らす。

 

「どうしたのだ、切嗣?」

 

「魔法使い、奴はアイリのついでに間桐雁夜を狙っている可能性がある。」

 

「それはまずいな...」

 

舞弥に視線を向ける晴人。

 

「魔法使い、こちらで舞弥を何とかする。先に行ってくれ!」

 

「...助かる。」

 

晴人は教会の方へ向かうため、マシンウィンガーに跨った。

 

 

 

 

「それをあなたが戻ったせいで!私とこの子たちのあの人を返して!あなたが死ねば、全部元通りになるのよ!!」

 

(どうして、どうして!)

 

母親が助けてくれた恩人の首を絞める光景が見るに堪えず、桜は目を瞑る。

 

(私が...不幸にしているの?)

 

「そんなことないわ。」

 

「え?」

 

気が付くと教会の礼拝堂ではなく、時計や古いミシン、ラジオなどが並ぶ骨董屋にいた。

 

「いらっしゃい。」

 

「その声は...お姉さん?」

 

受付に桜のよく知る声を発する女性、コヨミが座っていた。

 

「あれ?おじさんにこの人たちは?」

 

「晴人の仲間...ここは晴人のアンダーワールド、雁夜が呼んだお兄さんの精神世界

よ。」

 

スーツを着た女性に若い男性、小太りの人の良さそうなおじいさん、仁藤が楽しそうに

ドーナツを頬張る様子で固まっていた。

 

「お茶を入れるわね。」

 

「...うん。」

 

まるで時が停まったかのような光景の中、ココアの香りを漂わせる。

 

「座って。」

 

女性と若い男性の間に座り、出されたカップを手に取って口をつける。

 

「桜は自分が周りを不幸にしていると思うの?」

 

「...私のせいでお父さんが死んでお母さんが悲しんでる。私のせいで雁夜お父さんがお

母さんに恨まれてる。」

 

「でも、それは偶然が重なっただけであなたのせいではない...そんなことより、あなたはどうしたいの?」

 

コヨミの言葉に考え込む桜。

 

「私はあなたと同じ、父親の理想のために生かされていたわ...でも、それは悪意のものでなく、歪んでしまった愛。」

 

水晶に桜の母親が父親の死体の前で涙する姿が映る。

 

「あなたのお母さんは死んでしまった父親と彼の望んだ理想を偶然崩した雁夜しか見ていない...雁夜はあなたの母に対して罪悪感を感じているから抵抗しようとしない...桜はそれでいいの?」

 

「...お姉さん。」

 

葵と凛、それに桜と雁夜が楽しそうに公園で遊ぶ姿が映し出せる。

 

「本当に求めているのは、こんな日常じゃないの?」

 

「...うん。私はもう一度、お姉ちゃんやお母さん、雁夜お父さんと過ごしたい!」

 

「なら、桜...今、あなたの勇気が必要よ。」

 

桜の顔を真剣に見つめる。

 

「...あなたがお母さんと雁夜の最後の希望よ。」

 

 

 

 

「あ、おい...さん。」

 

目の前が真っ暗になったかと思えばいつの間にか礼拝堂に戻っていた。

 

「かぁ...はっ!?」

 

落ち着いてはいるものの、雁夜の息は苦しさを感じさせる。

 

(「なら、桜...今、あなたの勇気が必要よ。」)

 

桜はコヨミの言葉を思い出す。

 

「あん「やめてお母さん!!」」

 

突然の娘が叫び、抱き着いたために手を止める葵。

 

「...桜?」

 

「雁夜おじさんは私を奪ったんじゃない!!お父さんが捨てた時、苦しむ私を助けてくれたの!」

 

必死に訴える娘の姿に首から手を放して驚愕の顔を浮かべる。

 

「お父さんが死んだのもおじさんのせいじゃない!!私の大切なおじさんを奪わないで!!」

 

「私が...桜を...」

 

涙を流して母親を睨む桜に頭を抱える葵。

 

「アァァ!?」

 

「おいおい、どうなってんだこりゃ!?」

 

葵の発狂が外まで聞こえたのか仁藤が礼拝堂の中に入った。

 

「雁夜に知らんおっさんまで!?」

 

雁夜だけでなく、時臣も地に伏している様子に驚く仁藤。

 

「桜を不幸にしたのは...私?」

 

「おばさん、落ち着けって!」

 

錯乱する葵を落ち着かせようと仁藤は抑える。

 

「仁藤!!」

 

「おい晴人!どうにかしてくれ!」

 

駆けつけた晴人に愚痴をこぼす仁藤。

 

「私は、私は...」

 

『スリープ プリーズ』

 

指輪をはめられた葵は電源が切れるように脱力する。

 

「大丈夫か、桜ちゃん?」

 

「...うん。それより雁夜お父さんが!」

 

心配そうにぐったりと倒れる雁夜に目を向ける桜。

 

「うわぁ...めっちゃ首に跡があるじゃねーか...」

 

「仁藤、雁夜は息をしてるか?」

 

雁夜の容態を見る仁藤。

 

「...息はしてるが、この様子だとかなりあぶねーな。」

 

『ドルフィ!』

 

イルカの鳴き声と共に仁藤の右肩に紫色のマントが現れる。

 

「イルカセラピーでも味わえ。」

 

青い粒子を雁夜に注ぐと首元の手の跡が消失する。

 

「桜...ケホッ!」

 

「雁夜おじさん!」

 

まだ首が苦しそうだが声をかけた雁夜に桜は駆け寄る。

 

「一時はどうなるかと思ったが...晴人?」

 

「...隠れてないで出てきたらどうだ?」

 

高所の回廊の方を睨む晴人。

 

「なかなか面白いものを見せてもらったぞ、魔法使いにそこの小娘よ。」

 

「アーチャー!?」

 

「だが、お前にとっては水を差す展開だったか...綺礼?」

 

回廊の影から髪を下ろしたアーチャーと不機嫌そうな綺礼が現れる。

 

「やはりあんたが来ていたのか...アーチャーやあんたはいったい何の為に上から傍観し

ていた?」

 

「私は元々聖杯戦争の敗者だ。ここにいても不思議ではないが?」

 

「では、そんなお前がどうしてアーチャーと一緒にいる?」

 

礼拝堂の扉が開かれ、夜空の明るさを背後に人影がそこには立っていた。

 

「衛宮...切嗣。」

 

「言峰綺礼、貴様は理由は知らないが主である遠坂時臣を殺害し、再びこの戦いに戻ってきた。」

 

切嗣が来たおかげなのか不機嫌な様子から一変し、笑みを浮かべる。

 

「空っぽなお前に一体、何があったというんだ。」

 

「…空っぽ、か。衛宮切嗣、お前に会えた礼に教えてやろう。」

ワイングラスとワインを手に取る綺礼。

 

「私は今まで空っぽであったが、それを埋めるための答えを神に求めてきた...だが、ようやく理解したのだ。」

 

ワインで満たされていくグラス。

 

「…そこに注がれる他者の苦悶こそが、私の渇きを癒やす唯一の美酒であったということを。」

 

「あんたは他者の絶望や苦しみが喜びだって言いたいのか?」

 

「...そういうことになるな。」

 

注いだワイングラスを口にする綺礼。

 

「やはりあのとき口にした酒の方が化けていたものだ。」

 

「フフフ、どうやらお前も見識を深める意義を理解したようだな。」

 

綺礼を面白そうに見る綺礼に対し、それ以外は綺礼の逸脱した感性に眉を潜める。

 

そんな中、銃口が火を噴き、綺礼の持っていたグラスが割れる。

 

「水を差すとは面白くないなぁ、雑種。」

 

「言峰綺礼、アイリを返してもらおうか?」

 

アーチャーに睨まれるも、無視して綺礼に銃口を向ける切嗣。

 

「この俺を無視するとは...なんだ綺礼?」

 

「ギルガメッシュ、この男は私の次のシナリオに必要な男だ。」

 

「...綺礼に免じて許してやろう。」

 

再び笑みを浮かべ、機嫌を直すギルガメッシュ。

 

「待て!言峰綺礼!」

 

「衛宮切嗣よ。お前の妻は丁重に扱っていやる...明日の夜までに楽しみにしておけ。」

 

ギルガメッシュとともに言峰綺礼は姿を消した。

 

「ちっ!今すぐやつを!」

 

「衛宮、あんた体調は大丈夫なのか?」

 

目の下に隈がある切嗣は口を開く。

 

「問題ない...それよりも早くアイリを!」

 

「おいおい、自分の体調分かってねーのかよおっさん。」

 

焦る切嗣に仁藤は呆れる。

 

「...仕方がない、俺からのおまじないだ。」

 

「魔法使い...この指輪は?」

 

「とりあえず、はめなって。」

 

晴人に言われるがまま、リングをはめる切嗣。

 

『スリープ プリーズ』

 

「おい...」

 

「お前の奥さんは俺たちに任せて寝てろ。」

 

切嗣の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「...僕は昨日君に悪いことをしたんだよ?」

 

「昨日のおじさんは心が風邪をひいてただけなんだよ。」

 

「私を攫ったということはあなたの狙いは聖杯...いや、私の夫ね。」

 

「あぁ、今の衛宮切嗣はお前の言う通り変わってしまったようだ。」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

 

第25話 嵐の前の光と影

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