仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
間桐邸の客室に太陽の光が差し込む。
「...眠らされていたのか。」
一日中活動していた切嗣は強制的な睡眠によって疲れがほぼ取れていた。
(早くアイリを探さないとな。)
上体を起こして立ち上がった切嗣は昨日来ていたスーツに着替える。
「大丈夫ですか、桜!?」
扉を開けるとセイバーの声が遠くから聞こえる。
(アーチャーの襲撃か!?)
声が聞こえたダイニングの方へ駆けつける切嗣。
「あ...」
「おはようございます、切嗣。」
切嗣の目にはまるで母親のように桜の火傷を流水で処置するセイバーの姿だった。
「...おはよう、セイバー。」
「あ、おじさん待って!」
ダイニングから去ろうとする切嗣を静止する桜。
「なんだい?」
「おじさん、朝食を用意したよ。」
流水から手を放し、桜はさきほどまで焼いていたようなパンケーキの乗った皿をテーブル
に置く。
「...僕は昨日君に悪いことをしたんだよ?」
切嗣は桜とイリヤの姿を重ね、罪悪感でふと口が出る。
「おじさんは確かに怖かった...だけど、晴人お兄さんが言っていたんだ。みんなを助けたかったおじさんはつらい過去で病んでいるだけで優しい人だって。」
「優しい人...か。」
俯く切嗣に対して言葉を続ける桜。
「昨日のおじさんは心が風邪をひいてただけなんだよ...だから、おじさんには食べてもらいたいの。」
少々焦げているところに努力を感じる。
「切嗣...あなたは少し引きずりすぎなのです。あなたを思って作った乙女に誠意を向けてください...なぜ笑うのです?」
「いや、騎士王である君がこんなに女性らしい姿を見せてくれるとは思わなくてね...じゃあ、遠慮なくいただいてもいいかな?」
「はい。」
椅子に腰かけて、ナイフとフォークを手に取り、口にする。
「...ちょっと苦いけど、甘くて温かいよ。」
「よかったぁ、おじさんの口に合わないかと思ってた。」
桜の笑顔でイリヤの笑顔が思い浮かぶ。
「...セイバー、魔法使いや舞弥はどうしたんだ?」
「二人ともアイリスフィールの捜索のために出かけています。フォーリナーの仲間も一緒に手伝いをしていると思うのですが...」
「お!起きたのかおっさん。」
ちょうど仁藤が扉から現れる。
「おっさん呼びはやめてほしい...僕は衛宮切嗣だ。」
「あぁ、ごめんごめん。じゃあ、切嗣でいいか?」
仁藤は相変わらずデカい鞄を抱え、席に着く。
「好きに読んで構わないよ。それで君も僕の妻を?」
「あぁ、使い魔を使ったりして探してるんだが...腹ペコでなぁ。」
ちょうどもう一枚焼きあがったのか、桜がパンケーキを運んでくる。
「マヨネーズおじさんもどうぞ。」
「おぉ!サンキューな桜。」
置かれたパンケーキを目にした仁藤はマヨネーズを取り出す。
マヨネーズのパッケージにはご馳走と書かれていた。
「「?」」
「じゃあ、いっただきやーす!」
場違いなマヨネーズにハテナを浮かべるセイバーと切嗣だが、桜の作品の上から絞り出す様子に驚愕する。
「な、何をしているのです!?」
「あぁ?何ってマヨネーズだよ!マ・ヨ・ネ・ェ・ズ!」
マヨネーズのパンケーキを口にしてご満悦な仁藤。
「貴様...何という無礼を! 一生懸命焼いた桜への侮辱だぞ!!」
「おいおい、桜ちゃんはこの前、俺のマヨネーズをおいしいって言ってくれたんだぜ?なぁ、桜ちゃん?」
セイバーと言い合いになる仁藤は桜に助けを求める。
「何言ってるの、マヨのおじさん?」
「えぇ!?裏切るのかよぉ...桜ちゃん?」
「やはり桜は無理をしていたのですね!!」
目の前で繰り広げられる漫才に少し笑みを浮かべる切嗣。
(アイリ、僕は絶対取り戻してみせるよ。)
「女。」
「ん...」
アイリは目覚めると真っ暗な場所で寝かされていた。
「聞こえているか?女。」
「言峰...綺礼。」
上体を起こしたアイリの前には綺礼が立っていた。
「ここはかつてキャスターのマスターが隠れ潜んでいた場所だ。」
アイリの側にあるパイプ椅子に腰掛ける綺礼。
「私を攫ったということはあなたの狙いは聖杯...いや、私の夫ね。」
「その通りだ...同じ人間性が欠落したあの男に私は興味を抱き、機械のように数々と殺
してきたやつに答えを訊いてみたかったのだ。」
苦しげに彼女の赤い瞳は綺礼に向けられる。
「残念だけどあなたは切嗣とは誰よりも程遠い存在だわ。」
「あぁ、今の衛宮切嗣はお前の言う通り変わってしまったようだ。」
感情の読めない瞳で、暗がりの天井を見上げる綺礼。
「かつてのあの男は長きに渡り何の益もない戦いにばかり身を投じ、愛する者も含めて殺戮ばかりを繰り返してきた機械だった。だが、今の奴はどうだ? フォーリナーという得体の知れない不純物に希望という毒で人間味を取り戻してしまった。初めて直接対面した時、やつはお前を助けたがっていたな…あれほど私を惹きつけた渇きは、今や見る影もない。」
綺礼はアイリにニヒルな笑みを見せる。
「…女よ、お前が信じる夫はもうあのフォーリナーに魂を売り渡した抜け殻かもしれんぞ。」
「私は切嗣にこの身を捧げているの...どんなに彼が変わろうともね。」
「アインツベルンは聖杯を使って悲願である第三魔法の達成を求めていたのではないのかね?」
綺礼の揺さぶりにも動じず、アイリは睨み続ける。
「それは私の製作者であるおじい様の願い...私の命は切嗣の願いを選んだのよ。」
「ほう...お前はよほど衛宮切嗣に心酔しているようだな...だが、やつや協力しているフォーリナーは最後まで探し出せなかったようだがな...間もなくこの聖杯戦争は決着する。」
綺礼は自信ありげな様子を見せる。
「聖杯を得るのは...断じてお前などではないわ、代行者!」
「...仮にフォーリナーの言っていたことが本当であれば、衛宮切嗣の願いは悲惨な結果となるだろうな。」
(『アインツベルンによって召喚された[[rb:復讐者 > アヴェンジャー]]に汚染された聖杯は願いを曲解して叶えられてしまうと聞いているが大丈夫なのか?』)
キャスター討伐の為に集められた教会でのフォーリナーの言葉を思い出すアイリ。
「そんなこと...」
「まぁ、いずれにしても今夜で決まる...」
「待ちなさい!はぁ、はぁ...」
立ち上がってその場から去ろうとする綺礼に呼び止めようとするアイリだが、体力の限界により意識を再び失う。
(衛宮切嗣...お前の絶望を肴にするのが待ち遠しいものだ。)
「はっ!?」
日が傾き、赤き光と陰影が分けられる時間帯に雁夜は目を覚ました。
首を絞められた為に少し喉が掠れている。
(「それをあなたが戻ったせいで!私とこの子たちのあの人を返して!あなたが死ねば、全部元通りになるのよ!!」)
「そうか...俺は葵さんに。」
昨日の出来事が頭の中で駆け回り、苦痛な表情を浮かべる雁夜。
(なら、なんでベットで寝かされて...)
「雁夜お父さん!起きてる?」
ノックと共に桜が雁夜の寝ていた部屋に入っていく。
「桜ちゃん...」
「起きたんだね。」
ベットの元に駆け寄って雁夜を不安そうに見る桜。
「やっぱり首が辛そう...お水、取ってくるね!」
「ありがとう。」
すでに部屋から出ていった桜に掠れた声は届いていない。
(「私から桜を奪い、夫を奪い...挙句の果て桜の前で父の死体を見せるなんて...」)
(よくよく考えれば、俺が間桐を離れたせいで桜が代わりに来たんだ。)
脳裏に葵の言葉と昨日見た時臣の死体がよぎる。
(そこへ葵さんが愛していた時臣が死んだんだ...もともと根に持っていた俺に行きつくのは無理もない。)
空が夕日で真っ赤に染まる冬木を縁取った窓を見る。
(晴人はどうしたんだろうか...まだ、聖杯戦争は終わっていないけど、聖杯の汚染はどうなるんだろう。)
「持ってきたよ、雁夜お父さん!」
「あ、ありが」
水を運んできた桜の背後にはかつての思い人がいた。
「...雁夜君。」
「葵、さん。」
昨日の出来事から今日で初めて会うため、お互い閉口する二人。
「...お母さん、まだ喧嘩しているの?」
「そうじゃないわ...お母さんは雁夜君になんて言えばいいのか分からないの。」
二人の様子を不思議そうに見る桜。
「...衛宮さんから聞いたの、あの人を殺したのは言峰綺礼だって。」
「セイバーのマスターか。」
葵は震えながら両手で顔を覆う。
「私は...行き場のない怒りを雁夜君に押し付けてしまった。桜を助けてくれたあなたに対して私は...あんなことを...」
「葵さんは悪くないよ...俺ももともと時臣には劣等感や憎しみを感じていた。それに傍から見れば、娘の目の前で父親を殺害しているように見えるのも当然だよ。」
膝をつき、涙を床にこぼす葵に温かい表情を向ける雁夜。
「なんで...私は...優しくされる価値なんて。」
「...今なら言えるかもしれない。俺は元々葵さんが好きだったんだ。」
「え?」
葵は唐突な彼の告白に涙が止まり、唖然とする。
「暖かくて、優しくて...そんなあなたを幸せにしたかった。」
「...」
「でも、俺にはあなたを幸せにすることができない...間桐に嫁いだ女性は臓硯によって捕食される運命にあった。」
語り出される雁夜の話を静かに聞く二人。
「今に思えば、俺が時臣に勝てない言い訳をしていただけに過ぎなかったのかもしれないな...」
「雁夜君、私はあなたに誰かを好きになったことさえないと言ったけど...違っていたのね。」
昨日絞めていた首に指をそっとなぞる葵に雁夜は少し赤らめる。
「あなたも優しい人...幸せにする資格がないなんて、言わないで。」
「葵さん...」
「時臣さんがいない今、私や桜、それに凛を笑顔にできるのはあなただけよ。だから、生きて。」
二人が見つめ合う中,桜が駆け込んで割り込む。
「雁夜お父さんとお母さん...これで仲直りできた?」
「えぇ、そうよ桜。」
桜に対して微笑みを返す葵。
(こんな光景が見れたのも...俺じゃなく、晴人のおかげだな。)
「桜に葵さん...俺はこれから晴人と戦いに行く。」
「...お兄さんのこと?」
雁夜は真っすぐに葵を見つめる。
「雁夜君、あなたはまだ」
「もちろん死にに行くつもりはない...俺や桜を助けてくれた人にマスターとしての責任を果たしたいんだ。」
桜が出してくれていた水に口をつけて掠れた声を整える。
「今、この聖杯戦争の裏にある絶望と戦っている晴人の力になりたいんだ!」
「雁夜お父さん...」
「俺は絶対に葵さんや桜、凛ちゃんの元に帰ってくるよ...帰ってきたらまた一緒にね。」
彼の言葉に覚悟したのか手に取る葵。
「雁夜君、あなたまでいなくならないでね。」
「雁夜お父さん、約束だよ?」
小指を差し出す桜に応えるように彼は小指を結ぶ。
「約束するよ!」
次回、仮面ライダーウィザード
「今夜は決選の大一番となりそうだな!」
「...奴の狙いは僕と...お前だ。」
「綺礼よ、どうやら戦う意味については答えを得た様子だが...今でも聖杯に託す祈りは
あるか?」
「は...僕が、僕なんかでいいのか?お前なんかの隣で...」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第26話 最期の幕上げ