仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第27話 最果ての海

冬木と深山を繋ぐ橋である冬木大橋、その上空をライダー達が通過しようとしていた。

 

「俺と戦え、征服王。」

 

「あれは!?」

 

目の前にアーチャーが現れ、戦車を急旋回して衝突を避けるライダー。

 

お互い橋に降り立った。

 

「...怖いか?坊主。」

 

「あぁ、怖いね。」

 

隣で震えるウェイバーに視線を移すライダー。

 

「それともこういうの、お前流に言うなら心が躍るって感じかな...」

 

「ふっ、貴様も弁えてきたではないか。」

 

ウェイバーの成長に内心喜びを覚えるも、アーチャーへと向いて睨み続けるライダーは戦車から降りる。

 

それが合図かのようにアーチャーとライダーは両社とも歩み寄る。

 

「...ここで酒宴を始める気か?」

 

橋の中腹でお互いに杯を酒で満たす様子にウェイバーは困惑していた。

 

「...その魔力、どうやら俺の決定も遂行できそうだな。」

 

「あぁ、後ろにいる小僧のおかげでな...だが、お前に使うのは 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)だけだ。」

 

「貴様を万全な状態で倒すと告げておいたはずだが?」

 

深紅の瞳でライダーを睨むアーチャー。

 

「貴様の多くの財を抑えるには余の無数の軍勢が適しておる...それに貴様は征服すべき存在であるからな。」

 

「ほう、貴様の言う王道で戦うというわけだな...」

 

ギルガメッシュの突き出された杯に応えるかのように乾杯するライダー。

 

お互い杯に一口つける。

 

「バビロニアの王よ。最後に一つ、宴の〆の問答だ。」

 

「許す、述べるが良い。」

 

「例えばな、余の 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)を貴様の[[rb:王の財宝 > ゲート・オブ・バビロン]]で武装させれば間違いない最強の兵団が出来上がる。」

 

「ふん、それで?」

 

「改めて余の盟友とならんか?」

 

ライダーの嬉しそうに語る様子を細目で聞くギルガメッシュ。

 

「我ら二人が結べばきっと星々の果てまでも征服できるぞ!」

 

「ハッハッハッ、つくづく愉快なヤツよ。道化でもない奴の痴れ言でここまで笑ったのは

久方ぶりだ。」

 

高笑いするギルガメッシュに真剣な眼差しを向けるライダー。

 

「生憎だがな、我が朋友は後にも先にもただ一人のみ...そして王たる者も二人として必要ない。」

 

「孤高なる王道か...その揺るがぬあり様に余は敬服を以て挑むとしよう。」

 

「良い...存分に己を示せよ征服王。お前は俺が審判するに値する賊だ。」

 

杯を空にした二人は宙へと投げる。

 

踵を返し、杯が落下するとともに歩き出す。

 

「お前ら...本当は仲が良いのか?」

 

「邪険にできるはず無かろうよ...余が最後に死線を交わす相手になるかもしれんのだ。」

 

腕を組んで待つギルガメッシュを一瞥した後、ウェイバーはライダーを睨む。

 

「...バカ言うなよ。お前が殺されるわけないだろ...僕の令呪を忘れたか!!」

 

「!?...そうだな。その通りだとも!」

 

雷と共に彼の愛馬であるブケファラスを呼び出す。

 

「小僧、お前も乗れ!」

 

「あぁ、行くぞライダー!」

 

ライダーとウェイバーは鞍に跨り、ギルガメッシュと対面する。

 

「集えよ、我が同胞!今宵、我らは最強の伝説に勇姿を記す!」

 

掲げた剣を中心にギルガメッシュを自身の心象へ引きずり込んでいった。

 

 

 

 

「やはり君の魔法は便利だな...」

 

「それはどうも。」

 

晴人と雁夜、それに切嗣はコネクトの魔法で冬木市民会館のロビーに出た。

 

「晴人、何か感じるか?」

 

「...おそらくこのホールにあんたの奥さんがいるんじゃないか?」

 

「行こう。」

 

大ホールへの扉を開ける。

 

「アイリ!?」

 

観客席の向こう側にある舞台の上で寝かされていた。

 

舞台の方へ走る切嗣は舞台裏から綺礼がやってくるのが目に見える。

 

「待ちかねたぞ、衛宮切嗣に魔法使い。」

 

「言峰...綺礼!!」

 

綺礼はアイリの髪に触れる。

 

「薄汚い手で触るな!」

 

「...手荒い真似は辞めた方がいいぞ、衛宮切嗣。」

 

サブマシンの銃撃を黒鍵で弾く綺礼。

 

「大方、この女を聖杯から切り離したいのだろう...無駄な足掻きを見るのもまた一興だからな。」

 

「切嗣...私のことはもう」

 

「僕は君を見捨てたくない!アイリ!」

 

顔だけでも切嗣の方へ向けるアイリ。

 

「起きたか、女よ...お前には少しこの男の劇薬になってもらうぞ。」

 

「止めろ!!」

 

突如、綺礼はアイリの太ももに一本の黒鍵を突き立てた。

 

太ももの内側にはホースほどの動脈も通っているため、多くの血液が飛び出す。

 

「ーッ!!」

 

悲鳴にならない叫びと共に傷口を中心にして白いシーツを真っ赤に染め上げる。

 

「ほう...実に美しいものだな、衛宮切嗣。」

 

「アイリィィ!!」

 

急加速で近づいてきた切嗣に警戒して後退する綺礼。

 

「やっと楽しめそうなものだな...全身魔術回路のこの女に時間はない。」

 

「...あんたはどうしてこんなことを。」

 

綺礼の邪悪さに絶句する雁夜と晴人。

 

「私は君たちと違って他者の不幸や苦痛でしか生きる喜びを得られない欠陥でね...魔法使いよ、お前は無駄話をしに来たのではないだろう?」

 

心地よさそうな綺礼を無視し、アイリを抱えて苦痛な表情を浮かべる切嗣に目を向ける。

 

「衛宮、俺があんたの奥さんをなんとかする..」

 

「魔法使い...感謝する。」

 

地下へと逃げた綺礼の後を追う切嗣。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あなたは、フォーリナーね。」

 

疲弊するアイリに駆け寄る晴人。

 

「衛宮にあんたを託された...俺はあんたの聖杯とのつながりを断つことはできそうだ

が、その傷は治せそうにない。できることはあるか?」

 

「あなたは、敵である私や夫にどうしてここまで...」

 

痛みと脱力感で意識が飛びそうになりながらも晴人に問う。

 

「敵とか味方とか俺にはない...ただ俺は絶望するのを黙って見てるのが嫌だからさ。」

 

「...そう、じゃあ刺さった黒鍵を引き抜いて...」

 

近くで見ていた雁夜は黒鍵を手に取る。

 

「晴人、凶器を引き抜いたら出血が酷くならないか?」

 

「...ここは彼女の言う通りで言ってみるしかないな。」

 

「分かった。」

 

深呼吸をして黒鍵を力強く握る雁夜。

 

「うっ!?」

 

「大丈夫か!?」

 

自身の裾を噛みしめて引き抜かれる際の激痛を耐えるアイリに雁夜は動揺する。

 

「...後は、ホムンクルスとしての回復で...」

 

「それじゃあ足りないだろ。」

 

アイリの中指にリングをはめる晴人。

 

「ま、まだ切嗣に...」

 

「それは薬指だ。」

 

『プリーズ プリーズ』

 

アイリの手をベルトにかざすと表情が柔らかくなる。

 

「これがあなたの魔力...温かいのね。」

 

「傷が!?」

 

貫通していた太ももが魔力の供給によりホムンクルスの自己回復で塞がっていく。

 

「...少し楽になったわ、もう聖杯の機能しか残してくれない私が...まだ耐えているなん

て。」

 

「衛宮があんたを諦めなかったからだ。」

 

「なら、猶更切嗣の為に捧げたいわね...」

 

指輪を付け替える晴人に首を傾げるアイリ。

 

「だが、あんたにはこれからも生きるべきだ。」

 

『エンゲージ プリーズ』

 

再びかざされるとアイリの体から赤い魔法陣が出現する。

 

「夢のやつだ...」

 

「雁夜、衛宮の奥さんを頼んだ。」

 

「あぁ!」

 

ぐったりとしたアイリは魔法陣の中へ入って行く晴人をぼんやりと眺める。

 

(風?)

 

劇場の滞留していた空気に流れが生じるのを感じた雁夜だが、気にせずアイリの様子を見

守る。

 

劇場の扉が僅かに開いていることに気づくものはいなかった。

 

 

 

 

「ふぅん...」

 

「...ライダー。」

 

自身の切り札である 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)をいとも簡単に一つのある宝具で崩れ去った。

 

そんな中、ライダーを心配そうにのぞき込むウェイバー。

 

「そういえば、一つ聞いておかねばならぬことがあったのだ...ウェイバー・ベルベットよ、臣として余に仕える気はあるか?」

 

ウェイバーに向けられた勇ましい姿に瞳を潤わすウェイバー。

 

「あなたこそ...あなたこそ、僕の王だ。あなたに仕える、あなたに尽くす...どうか僕を導いてほしい!同じ夢を見させてほしい!」

 

「...ん、良かろう。」

 

ライダーは溢れるウェイバーを掴んで愛馬から降ろす。

 

「夢を示すのが王たる余の務め...そして王の示した夢を見極め、後世に語り継ぐのが臣

たる貴様の務めである。」

 

ウェイバーに向けられたライダーの笑顔。

 

「生きろ、ウェイバー。すべてを見届け、そして生きながらえて語るのだ。貴様の王の在り方を!このイスカンダルの疾走を!」

 

ウェイバーは彼の言葉を察したのか俯いて目を逸らす。

 

「さぁ、いざ行こうぞブケファラス!!」

 

「ライダー!」

 

馬の嘶きとともに駆けだしたライダーの背中に向かって叫ぶ。

 

「征服王!!」

 

「おい死ぬ気かイスカンダルのおっさんよ!」

 

突如、セイバーと仁藤がバイクでその間に入り込む。

 

「セイバーに、お主はビーストか...」

 

「今宵の聖杯戦争に争う意味などない...征服王にアーチャーよ、一緒に汚染された聖杯を破壊しないか?」

 

「邪魔をするな雑種!!」

 

先ほどまで腕を組んでみていたギルガメッシュは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)でセイバーと仁藤に攻撃する。

 

なんとか飛び上がって避けるも、乗っていた大型二輪は大破してしまった。

 

「誰の許しを得て、やつの王としての幕引きに泥を塗るか...王であるお前も分かっているであろう?セイバー。」

 

「おいおい、姉ちゃんも...」

 

二人の王に睨まれるも、頭を下げるセイバーに仁藤は目を丸くする。

 

「すまなかった、征服王にアーチャー。」

 

「おい待てよ!この戦いは不毛でしかねーんじゃねーのか?」

 

「仁藤、貴殿は分からないと思うが、王には王としての矜持がある...騎士王として二人の戦いを見届けるべきだ。」

 

セイバーの発言に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を閉じるギルガメッシュ。

 

「...セイバーよ、お主の気遣いには感謝する。魔法使いの友人よ、お主の親切心は痛み入るが…今のはいささか、俺と金ぴかの語り合いを邪魔している。」

 

「おっさん...」

 

ライダーは仁藤を真っすぐと睨む。

 

「今、この場で余が成すべきは、目の前の王と語り合い、己の覇道を完遂することのみ!」

 

「嘘だろ...おい、いいのかあんたは!」

 

仁藤はもはやウェイバーに突っ込むしかなかった。

 

「僕はライダーの意志を尊重してやりたい...あいつの臣下として見届けなきゃならないんだ。」

 

「あぁ、もうわかったよ!すまなかったな!!」

 

やるせない気分の仁藤だが、セイバーと同様に離れて様子を見守る。

 

「征服王とその臣下に免じて許す...さぁ、こちらに来い!征服王!」

 

「AAAALaLaLaLaLaie!!」

 

ギルガメッシュの宝庫が開かれると共に、ブケファラスが駆けだす。

 

宝具の嵐を搔い潜るライダーの背中をウェイバーは涙を拭って静かに眼に焼き付ける。

 

「ぬぅ!?」

 

剣で一部弾くも、馬に被弾して転倒するライダー。

 

だが、すぐに起き上がって走り続ける。

 

(彼方にこそ栄えあり、届かぬからこそ挑むのだ!)

 

だが、堪えぬ宝具の雨に肩を穿たれる。

 

(覇道を謳い、覇道を示す!この背中を見守る臣下の為に!!)

 

さらに横腹も抉られるも走り続けるライダー。

 

「ウオォォォ!!」

 

剣を振り上げ、ギルガメッシュに迫る。

 

「ふっ...」

 

「ライダー!?」

 

だが、振り下ろした剣は鎖の音と共に目と鼻の先で止まってしまう。

 

ギルガメッシュは縛られたライダーに対して少し笑みを見せる。

 

「次から次へと珍妙なものを...だが。」

 

「何!?」

 

ギルガメッシュとライダーの間に眩い光を放つ。

 

「なんだ!?」

 

王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)...」

 

周りも砂漠の一面に置かれ、ギルガメッシュとライダーの傍には数万の臣下が囲った。

 

「同じ手をこのように使うとはな...」

 

「小僧のおかげでお主の慢心を突けたわい...さぁ、孤高の英雄王よ。余の臣下を躱して再びその剣が抜けるかな?」

 

ギルガメッシュの手にある乖離剣も王を刺し殺すには周りの召喚された英霊の向ける鉾や

剣によりためらっていた。

 

「掛かれ!」

 

「「「うぉー!!」」」

 

向けられた周囲の刃がギルガメッシュを襲う。

 

「...俺の慢心はその程度では突かんぞ、征服王。」

 

黄金の鎧で一部の刃を弾くギルガメッシュの一言共に爆裂が起こる。

 

「いったい何が...」

 

「おい、あれは!?」

 

セイバーと仁藤は見上げると爆心地の真上に複数の杖が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から顔を覗かせていた。

 

「二度も同じ景色を見る必要などない。」

 

乖離剣によって固有結界は跡形もなく消えていった。

 

ギルガメッシュの目の前ではぐったりと鎖に揺られるライダーがそこにはいた。

 

「俺に自爆に近い手を使わせたのは褒めやろう...夢より覚めたか、征服王。」

 

「...あぁ...此度の遠征も...心、踊ったのぉ。」

 

「また幾度なりとも挑めばいいぞ、征服王。」

 

とどめと言わんばかりに乖離剣をライダーに突き刺す。

 

「ウッ!?」

 

「時の果てまでこの世界は余さず俺の庭、故に俺が保証する。」

 

突き刺さったままの乖離剣から血が滴る。

 

「...ここは決してそなたを飽きさせることはない。」

 

「あぁ...そりゃあ、いいなぁ。」

 

冬木の海岸での波の音がかつて彼の目指していた海の景色を想起させる。

 

「そうか...この胸の高鳴りこそが...最果ての海(オケアノス)の潮騒だったのだ。」

 

光の粒子が上へ昇り、ライダーの姿はなくポツポツと赤く垂らす乖離剣しか残らなかった。

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「...操真晴人、これ以上、聖杯のシステムに介入させるわけにはいかない。」

 

「待つのは退屈なもんじゃな...雁夜よ。」

 

「綺麗...これがあなたの宝具なのね。」

 

「俺の最期の希望だ」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

 

第28話 この世全ての悪

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