仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第30話 隣にいてくれる存在

「アイリスフィール・フォン・アインツベルン...あなたは私と同じくアインツベルンの悲願を達成せねばならない。」

 

泥によって誕生した笛木と晴人が交戦する中、アイリとユスティーツァは向き合って話していた。

 

「...ユスティーツァ様、確かに私は聖杯を完成させるために作られた人形に変わりないわ。」

 

「では、なぜ裏切る?千年という歴史の中でアインツベルンは人類を救済するために悲願達成に捧げてきた...」

 

雪の古城から真っ暗な空間へと変わる。

 

「ここは!?」

 

二人の周囲にたくさんの映像が映し出される。

 

『先生...やっぱり無理じゃないですか?』

 

『行かせてよ五郎ちゃん...このままじゃ俺...何か一つシミを残していくようで、嫌なんだよね...それにしても、今日は天気が悪いね.....五郎ちゃんの顔が、見えないよ。』

 

『っ...』

 

敵と決着をつけようとしたが、晴天でさえ見えなくなり永く眠っていしまった不治の病の弁護士。

 

『英司さん...もうすぐ日本に戻れますから。』

 

『うっ...』

 

紛争地帯で現地で仲良くなった少女一人を救えないどころか、政治家である父に美談として利用された空っぽな青年。

 

『完成させるには...この身では短すぎる...』

 

『はぁ、はぁ、生き延びねば...』

 

かつてユスティーツァとともに人類救済の理想を目指したが、人の寿命では足りず蟲を

使って延命した結果、目的を忘れて死を恐れる化け物となってしまったマキリの魔術師。

 

『...それで、誰も泣かずに済むのなら。』

 

『アーチャー、守ったはずの理想に裏切られ、道を見失っただけではないのですか?そう

でなければ自分を殺すことで罪を償おうなどとは思わない!』

 

『ふっ、俺が自分の罪を償う?確かに何度も裏切られ欺かれた。他人のために命を落とす男なんぞ、理解させるはずもない。最期には争いの張本人だと押し付けられて、絞首台だ。』

 

ある男から理想を受け継ぎ、理想の為に人を殺して多くの人間を救ったが理想に裏切られた未来の正義の味方。

 

「この世界や操真晴人の属する世界達でさえも人々は救われない。」

 

次々と流れる映像にアイリは何も口にすることはできなかった。

 

「人間という不完全な体さえなければ、弁護士は病などに侵されることはなかった。」

 

弁護士がこれからある女性にプロポーズするためにデートで食事をしている。

 

「リソースを必要とする肉体がなければ、青年は少女を失うことなどなかった。」

 

青年が楽しそうにボランティアで少女と話している。

 

「老いる肉体などなければ、私の同士であったマキリ・ゾォルケンは魂を擦り減ることなくあんな醜悪な人物にならなかった。」

 

魔術師は自身の子孫である雁夜や桜と談笑していた。

 

「あなたの夫、衛宮切嗣の意志を受け継いだ未来の息子は第三魔法さえ達成すれば、あのような結末には至らなかった。」

 

数多くの剣が突き刺さる丘で腰かける正義の味方がこちらを睨んでいた。

 

「そんな...私が聖杯を拒むことで...」

 

「聖杯の完成はこれらの苦痛から人々を救うこと...それが第三魔法、天の杯(ヘブンズ・フィール)。」

 

慈愛に満ちた言葉とともにどこか冷たい手がアイリの顔に触れる。

 

「娘や夫を愛しているからこそこの世界から人々の魂を開放するべきだ...」

 

『『『『エクスプロージョン! ナウ!』』』』

 

近くで戦う晴人が巨大な爆撃を喰らう中、膝から崩れ落ちたアイリはユスティーツァに飲み込まれそうに眼が虚ろになる。

 

「アイリスフィール、私と共に誰も苦しまない世界にしようではないか?」

 

「...ユスティーツァ様。」

 

ユスティーツァの差し出された手を取ろうとするアイリ。

 

『手にとっては駄目よ!』

 

「っ!?」

 

アイリは声によって我に返り、ユスティーツァから離れる。

 

「この声は...コヨミか!?」

 

『晴人、雁夜が全ての令呪を用いてあなたに力を託したわ...』

 

「そうか...雁夜が...」

 

爆発がおさまり、光り輝くホープリングを取り出す晴人。

 

「それは、賢者の石だな...なぜ貴様が持っている!」

 

輝く指輪に仮面越しで目を見開く笛木。

 

『私が晴人に託したの...』

 

「そうか...」

 

『インフィニティ!』

 

指輪を取り出して魔法を発動させようとする笛木にインフィニティの時間干渉による高速移動により阻害される。

 

「くっ!貴様は所詮、私に与えられた力しかないはずだ...」

 

「この力は俺の希望から生まれた...それに俺だけの力じゃない!」

 

『ハイタッチ!シャイニングストラァイク!キラキラ!』

 

アックスカリバーを斧のように持ち替え、インフィニティーリングをかざす。

 

「たぁ!!」

 

巨大化したアックスカリバーが笛木を真っ二つにし、爆散する。

 

「大丈夫か、衛宮の奥さん?」

 

「えぇ...」

 

笛木と思われるものは泥となって消え、晴人はアイリの傍に駆け寄る。

 

「操真晴人にその指輪に秘める少女よ...なぜ邪魔をする?」

 

残されたユスティーツァの方を向くアイリと晴人。

 

「この世界やあなたを含めた仮面ライダーの世界、さらにはどの世界でも人々は不完全な肉体により苦しんでいる...」

 

今度はアイリと同様に晴人にもこの世界やライダーの世界で苦悩を抱えた人達の様子を見せられる。

 

「もともと聖杯戦争は人々を生の苦痛から魂を開放する儀式...あなたたち自身も生を背負うことで様々な苦痛を追っているはずだ。これでもあなた達はアインツベルンの悲願を否定するか?」

 

天の杯(ヘブンズ・フィール)はアンリマユによって歪められ、アインツベルンの望む理想にはならないわ。』

 

ホープリングに宿るコヨミが輝きながらユスティーツァに応える。

 

『それにたとえその魔法が達成できたとしても、私は否定する...晴人もそう思うでしょ?』

 

「あぁ。」

 

ユスティーツァにインフィニティの輝きを照らす晴人は続ける。

 

「確かに、あんたの言う魔法は完璧な世界で人々を苦しみや絶望から救い出すのかもしれない。だけどな、その世界に訪れるのは停滞だ...人は絶望や苦痛を乗り越えることで希望を持って前に進む...それが人間のすばらしさでもあるんじゃないのか?」

 

「...停滞に人間らしさ...そんなことを言えるほど人間は強くはない。」

 

「あぁ、それはそうだ...あんたの言うように俺を含め人はそんなに強くない。」

 

晴人は希望の指輪(ホープリング)に付け替える。

 

「それでも不完全な世界で明日を、未来の可能性を信じて進むのが人だ。だからこそ、俺が絶望しそうなやつの希望になるんだ。」

 

「...その不確かな希望でどれほどの悲劇を生むのか...仮面ライダーは正義の味方ではなかったのか?」

 

「仮面、ライダー?」

 

顔を歪ませるユスティーツァの聞きなれない言葉にアイリは首を傾げる。

 

「ある人が言っていた...仮面ライダーは正義の味方じゃなく、人類の自由のために戦う存在だってな!」

 

「...これ以上の話は無駄のようだな。」

 

「これは!?」

 

痺れを切らしたユスティーツァの周囲に聖杯の泥が広がり、晴人とアイリを飲み込もうと

泥の中から無数の腕が伸びる。

 

『晴人!』

 

「あぁ!」

 

晴人の足元に淡い白銀の魔法陣が広がり、増した輝きに腕の動きが鈍くなる。

 

「退くとは...」

 

「フィナーレだ!!」

 

飛び上がり、泥の中心地であるユスティーツァに足を向ける。

 

「神造兵装でもない攻撃など取るに足らない。」

 

背後の魔法陣から白銀の龍が迎撃してくる泥の塊に突っ込む。

 

「『たぁ!!』」

 

泥と龍が拮抗する中、コヨミの残像を纏った晴人のライダーキックが降り注ぐ。

 

「きゃ!?」

 

キックの衝撃は離れていたアイリにも白銀の煌めきとともに届く。

 

泥は光を恐れるかのように退け、ユスティーツァを吹き飛ばす。

 

絶叫の代わりにガラスが砕かれたかのような音が響いていた。

 

「ユスティーツァ様...」

 

覆っていた泥が消えて晴天が広がる。

 

晴人とアイリに向けられる砕かれた陶器の顔。

 

「まだ...終わって...」

 

「もう十分頑張ったんじゃないか?」

 

崩れた彼女の前でしゃがむ晴人は目線を合わせる。

 

「作られたあんたは手段はともかく自身を犠牲にしてまで世界全ての人々を救おうと千年も抗った...その心は決して間違っちゃいない。」

 

「なぜ私を...労う?諦めろと...言いたいのか?」

 

『別に晴人は諦めろと言っているんじゃないの。』

 

ユスティーツァの瞳がホープリングに向けられる。

 

『あなたの孤独だった千年に幕を下ろして、普通の少女として終わってほしいと思ったのよ。』

 

「...私が消えれば...苦痛や悲劇を...」

 

『もちろん繰り返される...だけど、そんな絶望のある世界だからこそ、私の隣に晴人や凛子がいてくれた。』

 

青空にかつてコヨミと晴人と共に過ごした仲間が映し出される。

 

『...本当の救いは隣に一緒にいてくれる希望を持てることだと私は思うの。』

 

「隣にいてくれる...」

 

『先生……また美味いもん買って帰ります……』

 

ユスティーツァの見せた弁護士には信頼している相方がいた。

 

『お前を選んだのは、俺にとって得だった…間違いなくな。』

 

空っぽな青年には刑事に寄生する右腕の怪物がいた。

 

『私、頑張るから...あんたみたいに捻くれたやつにならないように頑張るから!きっとあいつが自分を好きになれるように頑張るから!だからあんたも!』

 

未来の正義の味方にはマスターであった黒髪の少女がいた。

 

「ユスティーツァ様。」

 

ここで黙って見ていたアイリが口を開く。

 

「外の世界を知らないホムンクルスの私に夫である切嗣と出会って人としての生き方を与え、娘であるイリアまで授かりました...私には隣にいてくれる夫と娘がいますが、ユスティーツァ様にはいないのですか!」

 

「...私にはもういないな。」

 

彼女の脳裏にはマキリの魔術師が浮かぶ。

 

「同じ志を持っていたマキリは変わってしまった...私にはもう...。」

 

『なら、最後だけでもあなたの傍にいるわ。』

 

「コヨミ!?」

 

ぼんやりとした姿のコヨミが現れ、ユスティーツァの傍に座り込む。

 

『晴人や皆がいてくれたように今度は私が傍にいる番...私があなたの希望になるわ。

壊れた人形の頬に触れるコヨミの手。

 

「あんたはもう休めよ。不完全な世界は続くが、決して暗いだけじゃない...これからの

人達が少しずつ変えていくんだ。」

 

「...私は寂しかっただけなのかもしれないな。」

 

砕けた顔の頬を伝う涙。

 

「ユスティーツァ様!」

 

「大丈夫...アイリスフィール、お前にもう過去の呪縛はなどない。早く隣にいてやれ。」

 

同じように涙を流して抱擁するアイリに対し、優しく引き離す。

 

「操真晴人にコヨミよ...ありがとう。」

 

「あぁ。」

 

辺りが白飛びする。

 

『後で戻るわ...晴人。』

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「お前と戦っていたライダーやセイバーはどうした?」

 

「私が時間を!」

 

「過去だけでなく現在にとって未来である財を持つこの俺が我が蔵にないお前の宝具を鑑

定せねば気が済まない。」

 

「あんたに譲る気はさらさらない。」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

 

 

第31話 原典VS無限

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