仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第33話 未来を恐れる騎士王

虚無の黄金に染めた瞳のセイバーに狼狽える一同。

 

「ならば最初から終わらせればいい。」

 

「セイバー...いったいなにがあったんだよ。」

 

「フォーリナー、この世界から去れ。」

 

セイバーは晴人に視線を向けようとせず、目を反らし唇を噛む。

 

「無理な話だ。まだ、終わってないだろ?」

 

「...お前のような希望の存在にこの泥には耐えられない!」

 

セイバーの立つ足元から真っ黒な泥が大量に湧き出し、アンリマユの呪いが晴人たちを襲う。

 

『ディフェンド プリーズ!』

 

「くっ!」

 

だが、晴人が光の障壁を展開したことで自身と背後にいる仁藤や切嗣たちを守る。

 

「...大丈夫か!晴人!」

 

「あぁ、だが...」

 

「!?」

 

晴人を心配する雁夜だが、光の障壁の範囲外の悲惨な光景に絶句する。

 

まるで溶岩のような赤黒い泥は辺り一帯を火の海に変えていた。

 

「セイバー!もう止めて!!」

 

「...もう私は後には戻れない。ここで止めれば絶望する人間が出てしまう...全てを破壊して救う!」

 

「くっ!?」

 

さらに勢いを増した泥の流れは光の障壁を徐々に侵食していく。

 

「...令呪を以て命ずるセイバー、もう止めろ!!」

 

「うっ!?」

 

セイバーの体が硬直したと同時に泥の流れが穏やかになる。

 

「お?停まったのか?」

 

「...セイバー、もういいだろ...僕はこれ以上お前を見れば...また、英霊を...」

 

安堵する仁藤に対し、苦しそうな表情でセイバーに訴える切嗣。

 

「そんな顔で見るな...私は...過去はもう悔いていない...だが、これから起こる悲劇や絶望を避けたい...」

 

「...だから、終わらせたいのね。」

 

苦虫を噛むようなセイバーにアイリは俯く。

 

「でもね、セイバー...あなたのそれは未来の可能性を捨てることにならない?」

 

「...アイリスフィール。」

 

だが、めげずに真っすぐ視線を向けてくるアイリに瞳を泳がすセイバー。

 

「勿論、私は未来が怖くないわけではないわ...娘のイリヤを育てられるか、私が切嗣を支えてあげられるか...でも、そんなことに怯えていたらイリヤや切嗣に舞弥さん...みんなとのこれからできる思い出が楽しみで仕方ないのよ。」

 

「...未来に対して希望を持てるのは、壊れていないときだけだ!」

 

「ちっ!?」

 

「令呪が効いていない!?」

 

泣き叫ぶようなセイバーの声と共に再び泥の流れが激しくなり、何とかこらえる晴人と動揺する切嗣。

 

「私が救おうとしたブリテンは...滅びた。アイリスフィール、幸せの裏には誰かの不幸がある...皆が救われない未来など、私は望まない!!」

 

「後ろだ!」

 

突如、目の前にいたセイバーが消失するもアイリや切嗣の後方に回り込む。

 

切り殺そうとするエクスカリバーを晴人のアックスカリバーが受け止めた。

 

「邪魔をするな、フォーリナー...貴様もこの泥に飲み込まれる。」

 

「晴人!?」

 

雁夜の目に受け止めた晴人の腕に取りつく泥が映る。

 

「仁藤...お前は雁夜と切嗣たちを逃がして、泥の処理を頼めるか?」

 

「いいぜ!」

 

「おい!お前ひとりで...」

 

不安そうに晴人を見る雁夜に晴人は背中で語る。

 

「安心しろ、セイバーは未来に不安を覚えているだけだ...お前は桜の未来を守ってやれ。」

 

「...分かった。」

 

「魔法使い。」

 

一同が離れようとしていたが、切嗣は足を止めて晴人に呼びかける。

 

「...セイバーを、頼む...」

 

「あぁ。」

 

力強い応答に一同は仁藤によって泥を払いながら去っていく。

 

「退いてくれ、フォーリナー...貴様だけは泥に触れてはならぬ!」

 

「...優しいんだな。」

 

「何を悠長なことを言っている!」

 

エクスカリバーを振り下ろそうとするセイバーだが、必死に体を硬直させる。

 

「世界を終わらせる奴が、わざわざ俺の心配なんかするか?」

 

「黙れ!!」

 

「がはっ!?」

 

激情に駆られ、留めていた剣を振りかざすセイバー。

 

だが、晴人は避けようとせずインフィニティーの装甲でそのまま受け止める。

 

「くっ!」

 

だが、変身が解除されて晴人は膝を着いた。

 

「なぜ...なぜ避けない!」

 

「俺は...セイバーと戦うのが目的じゃない。」

 

変身が解除された影響か泥が晴人を飲み込み始める。

 

「人の心の...あるお前の...希望になる。」

 

「早く掴まれ!!」

 

手を伸ばそうとするセイバー。

 

「うっ!?」

 

だが、つなごうとする手がアンリマユのせいなのか突き飛ばそうとするように拳を握っていた。

 

「アァァ!!」

 

完全に飲み込まれ、何もなくなった泥の前で発狂するセイバー。

 

それと同時に泥が空間でさえも包み込もうとしていた。

 

 

 

 

ブリテンは当時帝国の庇護が無くなり、様々な小王国に分裂、それを機に異民族たちが侵攻し長い戦乱の時代が到来した。

 

ある魔術師の予言により王はある子供を授けたが跡継ぎにすることができない女子であった。

その少女は身分を隠され、ある騎士のもとで教育を受け、騎士見習いとして日々鍛錬を重ねていた。

 

「ここは...」

 

どこまでも広がる草原に晴人はポツリと放り出されていた。

 

岩に刺さった剣に向かって遠くから一人の少女がやってくる。

 

「あれは...セイバーか?」

 

まだ高校生にも満たない少女は長い金髪を黒のリボンで纏め、堂々と剣の前に立ち止まる。

 

『...その剣を岩から引き出したるもの、すなわちブリテンの王たるべきもの。』

 

彼女の背後にフードを羽織った魔術師が現れる。

 

『アルトリアよ、それを取る前に今一度よく考えてみるがいい...その剣を手にしたが最後、君は人ではなくなる。』

 

『はい...私は望んでこの剣を抜きに参りました。』

 

魔術師に凛とした瞳を向けた後、迷いなく選定の剣を握る。

 

引き抜かれたことで姿を現した刀身は朝日の照り返しで輝いていた。

 

『私には支配欲や信仰、使命感などありません...ただ王になって誰かを救い、人々の笑顔を護りたいのです。』

 

『...後戻りはできないよ。』

 

「...こんな年頃の子が...か。」

 

遠くから見ていた晴人は愚痴をこぼしていた。

 

『みんなを守るには...多くを殺す存在になる...』

 

突如、闇夜が広がり、草原で横になって星を眺めるセイバー。

 

「やっぱり...年相応だったんだな。」

 

震える体を紛らわすように夜空を眺める姿はどこかちっぽけに見える。

 

この夜が彼女の少女としての最期であり、剣を引き抜いた夜明けが人間を止めた王の誕生であった。

 

『我らが王は戦いの神。常に先陣に立たれ、敗北を知らぬ。』

 

多くの騎士を率いた彼女は先頭に立ち、多くの敵を蹴散らせていった。

 

『アーサー王の行く手を妨げるものなど存在せぬ!』

 

十の年月で十二の会戦は彼女は勝利だけで終わらせた。

 

『王は年も取らぬ!まさに、龍の化身よ!』

 

剣の魔力により成長を止められた彼女を大半の騎士はその不死性と神秘を持ち上げる。

 

「...おかしいだろ。一人の女の子を祭り上げるなんて...」

 

熱い勢いを持つ騎士たちに対し、セイバーの表情は至って冷静だった。

 

その明らかな空気差に晴人は俯き、唇をかみしめる。

 

『...』

 

大空の元、剣を大地に刺して遠くを見つめるセイバーは神々しくも、温かみなど一切なかった。

 

『『『オォー!!』』』

 

「これは!?」

 

突如、彼女の足元がいつの間にか死体の山に変わり、その麓には生き残ったブリテンの騎士たちが勝利に酔いしれていた。

 

彼らの喜ぶ様子に対し、肉の頂点に立つ彼女はまるで押し付けられているようにも見えた。

 

『勝機を得るためとはいえ、冷酷な王よ。』

 

戦略上、見捨てるしかできなかった村が炎上し、その様子を遠くから見ていたセイバーと兵士たち。

 

『村を犠牲にせずとも、我が軍勢の勝利は不動だったはず...』

 

コソコソと聞こえないように話す兵士たちの言葉は皮肉にも多くの呟きはセイバーの耳に届く。

 

『...』

 

だが、平然を装おうその顔にどこか陰りがあった。

 

「...誰かあいつの気持ちに立ってやれないのか!」

 

晴人の叫びが響き渡るが、何も反応がない。

 

その後、勝利の宴を開いて兵士たちの士気を上げている間にセイバーは一人、見捨てられた村に足を運ぶ。

 

『...!?』

 

焼け焦げた臭いが鼻を突き、真っ黒な人の形をした何かが横たわる。

 

そんな中、自分とそう変わらない子供であろう焼死体を目にする。

 

『ごめんなさい...助けられなくて...』

 

膝から崩れ落ち、自身の涙がその屍に注がれていた。

 

「なんで彼女一人で背負うんだよ...騎士たちはどうしたんだよ!」

 

『人の心が分からないのですか!!』

 

場面が変わり、騎士団の集まりの中で王に苦渋な表情で訴える一人の男。

 

『王の下では、人が人として生きていくことができない...』

 

ある弓使いの騎士がそう一言呟いてセイバーの元を去っていく。

 

『トリスタン...』

 

去っていった仲間であっても平然を装わなければならなかったセイバー。

 

「あいつを...気づいてやれよ!!」

 

セイバーは立ち上がった直後、また場面が切り替わる。

 

自室で鎧を脱ぐセイバーは傍にいるベディヴィエールに声をかける。

 

『ベディヴィエール、席を外してくれないか?』

 

『...はい。』

 

彼が部屋から出ていくのを見かけた後、セイバーは椅子に腰かけため息をつく。

 

『私は皆を守らなければ...』

 

彼女は祈るように顔を俯いて両手を胸の前で合わせる。

 

「...なんであいつは隠すんだよ...」

 

『ランスロット卿、貴様の我が妃との不実とこれまでの不忠を許す...』

 

『...アーサー王!?』

 

今度は取り押さえられたランスロットの目の前で玉座に腰を下ろしたセイバーが目を瞑り

ながら彼に一言述べた。

 

『おい、なぜ許すんだよ...』

 

『妻を取られたんだぞ!?』

 

その光景を見ていた円卓の騎士たちや配下の騎士たちが騒めく。

 

『静まれ!...王よ、なぜ彼を許す!!』

 

太陽の騎士、ガヴェインが周りのガヤを鎮めて王に問う。

 

『私は王だ...臣下の不忠はある意味私の責任である。』

 

『...私の兄弟に無抵抗の騎士達を殺め、忠義を尽くすあなたを裏切り、あまつさえ王妃

を拐かした...やはり許せません!!』

 

『落ち着けガヴェイン卿!!』

 

遺憾を大いに示すガヴェインを宥めるセイバー。

 

『王である私に免じて...ランスロット卿を許してやってくれないか?』

 

『アーサー王...』

 

これ以降、円卓の騎士の絆に亀裂が生じ、島外からの襲撃に対処するどころか再び内乱に発展してしまう。

 

『姉上!!どうしてあなたは...』

 

『...ずっとお前が憎くて仕方がなかった。なぜ私ではなくお前なのだと...』

 

加えて異母の姉であるモルガンが密かにセイバーに嫌がらせを向ける上に彼女の鞘、全て遠き理想郷(アヴァロン)を強奪する。

 

かつて王が都として発展させたキャメロットも廃れ、玉座から腰を上げたセイバーは息子とも言えるモートレッドが起こす謀反に備えて剣を手に取る。

 

『王よ、もうブリテンを立て直すなど』

 

『...まだ守るべき民がいるのだ。私たちが戦わないでどうする?』

 

『はっ!』

 

馬に跨り、廃れた都市を発った彼女の目指す先はかつての仲間たちが構えている敵陣、カムランの丘である。

 

『あなたの国はこれで終わりです、アーサー王!』

 

丘の上でセイバーとぶつかり合うその相手はやはりモートレッドだった。

 

『なぜです!なぜ私に王位を譲らなかった!!』

 

「理由はただ一つ、貴公には王としての器がないからだ。」

 

鍔迫り合いの中、甲冑の下で叫ぶ息子を冷たくあしらわざるを得ないセイバー。

 

『ダァ!!』

 

エクスカリバーで鎧を裂き、もう片手に握られたスピアで貫く。

 

『!?』

 

戦場の風が流れ、平然を装おうセイバーだったが、彼女も腹部に剣が刺さる。

 

『ち、父上...』

 

甲冑が割れた子供はまさに血塗られた自分を見ているようだった。

 

やがて戦場は静寂を取り戻すも、視界に映るのは死体の海。

 

致命傷を負ったセイバーは丘の上で誰かも分からない騎士の死体に剣を刺して、体を支える。

 

『ランスロット...ガヴェイン...モートレッド...』

 

暗雲の中、かつての仲間を口にしていくセイバー。

 

『...我が兵士や民...皆...』

 

嗚咽が混じり、瞳が揺れる。

 

『皆...ごめんなさい...アァァァァ!!』

 

彼女の発狂はただ辺りを響かせるだけだった。

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「お母さま...切嗣...」

 

「桜...葵さん...ごめん...」

 

「今はいかに未来が裏切るのかを私は知っている。」

 

「...弱さがそんなに駄目なのか?」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

 

第33話 未来を信じる少女

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