仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
夜が明け、朝日が昇る冬木は建設予定だった市民会館を中心に聖杯戦争の爪痕を色濃く残していた。
倒壊した会館の前の公園は木々が全て焼け、大きな平地となった為に仮設テントによる避
難所となっていた。
「順番に並んでください!」
この大惨事は聖堂協会と魔術協会も重く見たのかキャスターでの未遠川の件と同様かそれ以上の人員を派遣し、ボランティアに紛れて記憶の操作や事態の収集、さらには大聖杯の調査などが行われた。
「よっ!仁藤!」
「晴人ぉ、なんとかキマイラに食べさせてあの泥を抑えたんだぜ?そしたらあいつまず
いって言いやがってさぁ...」
時間は正午直前、瓦礫撤去を晴人と仁藤が被災者と共に手伝いながら駄弁っていた。
「はい、こちらどうぞ。」
「食べてください!」
ボロボロな体の雁夜とまだ小さい桜は被災者での配膳や炊き出しを手伝っていた。
「お父さん、大丈夫?」
「おれは平気だよ、桜。」
気遣う桜に外見とは変わって頼もしく答える雁夜。
「桜、凛に声をかけてくれないかしら?」
「分かりました、お母さん。」
桜は雁夜の手伝いから外れ、凛がいるであろう方向へと走る。
「...アーチボルト卿、このあたりで強い魔力反応がありますが。」
「最終的に残ったのはあそこで作業を手伝っているあの男だ。」
「いえ...それが三人分の反応なのですが...」
桜は教会から派遣されたものとソラウに車椅子を押してもらっているケイネスと入れ違う。
「あ、桜ちゃん!」
「お姉さんにおじさん。」
振り向いて立ち止まり、桜に声をかけるソラウ。
「あの子...結構素質凄いですね。」
「...マキリの娘だ。」
「...冬木の蟲使いですか?」
ソラウと桜が話し合う様子を見る派遣員とケイネス。
「その小娘は私の管理対象だ...貴様らの出る幕はない。」
「...はい。」
いくら聖杯戦争に負け、ロードを剝奪されかねないケイネスでもその威厳は健在なようだ。
「じゃあね。」
「お姉さんバイバイ!」
桜は再び姉である凛のいる場所へ走り出す。
「はぁ、はぁ...あれ?お姉ちゃんがいない...」
荷運びを頼まれた凛が防災倉庫の前にはいなかった。
「まさか僕が荷運びを手伝うことになるとはな...」
倉庫から聖杯戦争に参加していたウェイバーが段ボールを抱えて現れる。
「旅に出たいのだろ?ウェイバー。」
「おじいさん...どうして僕を誘ったのさ?」
彼に続いてウェイバーがお世話になっているグレン・マッケンジーも荷運びをしている。
「お前さんがまるでアレクセイさんを見習っているように見えてな...あの人なら手伝ってくれそうじゃないか?」
「...あぁ、確かにそうだな...」
「すいません!」
話しかけた桜に振り向くグレンとウェイバー。
「お嬢さん、どうしたのかな?」
「お姉ちゃんを探していて...黒髪のツインテールで...」
グレンは優しく対応する中、ウェイバーは何か思い当たりのある顔を浮かべる。
「...確か、その子は金髪の女性についていった気がするな...」
「セイバーお姉さんかな?どこへ行きました?」
「うーん...方向的にあの病院かもしれない。」
ウェイバーが指さす先を見る桜。
「ありがとう、お兄さんにおじいさん!」
「ま、待て!一人で大丈夫なのかよ!」
走り出した桜を追いかけようとする二人だったが、持っていた荷物を手放すわけにもいかなかった。
病院の方へ走り出すも、女児の足ではどこまでも遠い。
「桜ちゃん?」
「おじさんと...」
後ろから切嗣が桜に声をかけ、振り向いた彼女は彼の隣にいるアイリに目が行く。
「私はおじさんの妻のアイリスフィールよ。」
「おじさんの奥さん...綺麗...」
「まぁ、嬉しいわ。」
桜に褒められてうれしそうなアイリ。
「それより桜ちゃんはどうしたんだい?」
「私はお姉ちゃんを探していて...それでセイバーお姉さんと一緒にいるって。」
「なるほど...ちょうど僕たちも向かう病院かな。」
切嗣が桜の目的を整理する中、アイリは桜と目線を合わせるためかしゃがみ込む。
「じゃあ、私たちと一緒に行かない?」
「僕たちもセイバーが向かった病院に用事があるんだ。」
「...うん!」
差し出されたアイリの手を桜はとり、切嗣とアイリに引かれて病院へと近づいていく。
「また、こうしてイリヤと手を繋ぎたいわ。」
「そうだね、アイリ。」
やがて病院の中に入る三人。
「お父様...」
病院の待合室に座り込む凛が桜の目に映る。
「お姉ちゃん!」
「...桜!?」
凛の元へ駆けだしていく桜を静かに見守る桜。
「お母さんに頼まれて、探したんだよ!」
「お母さまが...」
「それよりお姉ちゃんどうしたの?」
涙をこぼす凛の様子に不安な表情を浮かべる桜に対し、凛は恥ずかしそうに涙を拭う。
「何にもないわ!...それより、お父様を見かけなかったかしら?」
遠くで見ていた切嗣は凛の言葉に暗い影を落とす。
「...お姉ちゃん、お父さん」
「桜ちゃんのお姉ちゃん、かな?」
桜の言葉を遮るように切嗣は凛に話しかける。
「あなたは?」
「おじさんは君のお父さんの知り合いでね...」
「お父様の場所を知っているのですか!?」
凛はまるで一筋の光を見つけたように切嗣に喰いつく。
「少なくともこの病院にはいないよ。それよりも君のお母さんが探しているんじゃないか?」
「お母さまが...私はお父様を見つけるまで戻れません!」
「お父さんは...僕や魔術協会の人達がちゃんと見つけるよ。」
納得のいかないのか不貞腐れた顔を見せる。
「ねぇ、お姉ちゃん。せっかく一緒に会えたんだよ!一緒にお母さんの」
「だからこそお父様を見つけたいの!!」
凛の声が病院内に響き、注目を集める。
「申し訳ありません...病院内ではお静かにお願いします。」
「すいません...」
看護師に注意を受け、凹む凛に変わり切嗣が謝罪する。
「...そうだ、君たちにお願いしたことがあってね。」
「...なんですか?」
心残りがある凛だが、注意された影響で従順になる。
「知り合いが身寄りのない男の子を引き取りに来ていてね...その男の子を元気づけてくれないか?」
「...うん。」
切嗣にお願いされた凛は先ほどの借りを感じていたのか、切嗣達一緒にある病室までつい
ていく。
「アルトリア、入っていいか?」
「構いませんよ。」
病室に入るとベッドの多くが子供で占領されており、その一番端のベッドで寝かされた赤
髪の少年と傍で優しく見守るセイバーがいた。
「え...と。」
「ねぇ、あなたのお名前は?」
桜が少年の元へ走り出し、セイバーの隣に座る。
「...士郎。」
「私は桜。」
さっきまで感じていた不安が、少しだけ遠のく。
この病室だけは壊れた冬木とは違うように感じる。
彼らの間に流れる風はどこか温かい春を予期していた。
最後までこの『仮面ライダーウィザードin第四次聖杯戦争』を読んでいただきありがとうございます。
この作品は、『Fate/Zero』のアニメを見返したことをきっかけに生まれました。さまざまな二次創作を読む中で、特に「相互理解の難しい陣営」をどう変えられるかを自分なりの答えで書いてみたいと思ったのが執筆の始まりです。
異分子をどの陣営に置くか考えた結果、最も変化が大きいのは間桐雁夜陣営だと考えました。
操真晴人を選んだのは最初は直感でした。平成ライダーであれば電王やオーズ、ビルドなども候補にあったのですが、書き進めるうちに「魔法が使えること以外は、困っている人を放っておけないただのお兄さん」である晴人こそが適任ではないかと思うようになりました。
個人的に仮面ライダーのメンバーは描きやすいのに対し、Fate/Zeroのライダーやギルガメッシュは言葉遣いや行動の仕方が、切嗣や時臣の考え方、セイバーやランサーの実際の史実と型月での設定に苦戦した印象があります。完璧ではありませんが、何とか完結まで持っていけてホッとしました。
これまで本作に評価やお気に入りに入れてくださった皆さま、本当にありがとうございました。