仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争   作:T氏@pixiv

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第7話 龍達の乱舞

「さぁ、ショータイムだ!」

 

『スタート』

 

針が刻む音とともに臓硯の方へ突っ込んでいく。

 

「お荷物を放置して良いのかね。」

 

「桜!」

 

晴人の死角から多くの蟲が二人の元に飛んでくる。

 

それに対し雁夜は桜に覆いかぶさって守る。

 

『ウォータードラゴン!』

 

「晴人?」

 

目の前に現れた魔法陣からサファイアのような仮面の晴人が現れ、蟲を跳ねのける。

 

「分身か...たかが二人に苦戦などせん。」

 

「それはどうかな?」

 

臓硯の目の前に広がる蟲達を捌きながら、腕時計についている手の親指を弾く。

 

『ハリケーンドラゴン!』

 

「ぬぉ!」

 

背後から現れるエメラルドのような仮面の晴人が臓硯の背後に斬りかかる。

 

「これは...三人目?」

 

『ランドドラゴン!』

 

「いや、四人だ。」

 

雁夜の目の前に黄色の魔法陣が現れ、トパーズのような仮面の晴人が青色の晴人に加勢す

 

る。

 

『ディフェンド プリーズ』

 

「ここは任せろ!」

 

土壁が二人とウォータードラゴンを覆う。

 

「雁夜、始めようか。」

 

「頼む...」

 

『スモール プリーズ』

 

体が縮んでいく晴人。

 

『コネクト プリーズ』

 

魔法陣を通り、桜の体内に入りこむ。

 

「悪夢はもう...終わりにしよう。」

 

心臓に巻き付く細長い蟲がくねらせる。

 

「貴様...なら」

 

『クリア プリーズ』

 

心臓を締め付けようとした臓硯だったが、あたりが暗い海岸に変化する。

 

「ここは俺の世界だ。」

 

「第二魔法だと!?」

 

困惑する蟲に指輪を見せつける晴人。

 

「フィナーレだ。」

 

『ブリザード プリーズ』

 

逃げ出そうとするも氷漬けにされる臓硯。

 

『チョーイイネ! スペシャル サイコー!』

 

水龍が晴人の周囲を舞い、背中を通るとドラゴンのうねる尻尾が生えてくる。

 

「たぁ!」

 

静かに構えた動きから尻尾が空気を抉るように振り下ろされる。

 

凍った臓硯の本体である蟲はかき氷のように砕け散った。

 

「ふぃー...」

 

キラキラと舞う氷の礫を眺めながら晴人は消えていった。

 

 

 

 

「ぬぉー!?」

 

臓硯の体が崩れ落ち、腐臭が漂う。

 

「あちらも終わったか。」

 

「...こいつも蝕まれていたのか。」

 

腐った肉体の内部で多くの蟲が無造作に蠢く。

 

それを眺める雁夜の目はどこか憐みを向けていた。

 

「大丈夫か、桜?」

 

「...。」

 

苦痛の表情でぐったりと雁夜の腕に横たわる桜。

 

晴人は変身解除して雁夜の傍へ駆け寄る。

 

「晴人...桜は。」

 

「大丈夫だ...こいつがある。」

 

『ビースト プリーズ』

 

桜に腕をかざすと青く輝く粒子が彼女に降り注ぐ。

 

「...雁夜おじさん?」

 

「桜!」

 

眼をゆっくりと開き、身を預けたまま雁夜の顔を見る桜。

 

「おじさん...泣いてるの?」

 

「うん...桜ちゃんが解放されたからさ。」

 

干からびてしまうほど流す雁夜に桜は唖然としていた。

 

「まだ終わっていないぞ、雁夜。」

 

「...あぁ、俺は必ずお母さんや凛ちゃん...それにお父さんのところに返すからね。」

 

「うん。」

 

雁夜の自信に影響されたのか柔らかい表情で眠りにつく。

 

「こりゃ、仁藤に感謝だな...。」

 

自身の財布の中を想像する晴人であった。

 

 

 

 

夢を見た。

 

晴人は仲間である古の魔法使いビーストとともにある一つ目の薙刀を持ったファントムと

 

戦闘していた。

 

「こいつは俺に喰わせろ!」

 

「下品な奴は消えろ。」

 

ビーストはファントムの背中にとりつくが、吹き飛ばされる。

 

「はっ!」

 

「仁藤!ガハッ!?」

 

ダウンしていたビーストに放たれた光球が襲い掛かるも、晴人が身を挺してかばう。

 

「どこまでも他人を守ろうとするその心、お前はやはり美しい...」

 

ボロボロな晴人にゆっくりと近づくファントム。

 

「その心、覗かせてもらうぞ。エキサイティング!!」

 

「グアァァ!?」

 

振るわれた薙刀の軌道に沿って晴人の体に亀裂が入り、空間が歪む。

 

「ファントムが晴人さんの中に!?」

 

陰に隠れてみていた晴人の仲間が入って行くファントムに目を見開く。

 

激痛に悶え苦しむ中、彼の脳内で異物が入り込む姿が映し出される。

 

「ここがあいつの心の中か...」

 

亡くなる前の両親が寝ていた病室にファントムが入り込む。

 

(こいつ...俺のアンダーワールドに!?)

 

「この美しい心を破壊するなんて...実にエキサイティング!」

 

彼の希望の空間を切り裂き続けるファントム。

 

「グハッ!?俺の心の中を!?」

 

「ッアァ、俺は男に指輪をはめる趣味じゃねーが、緊急事態だ!」

 

ビーストが晴人がいつもやっていたようにアンダーワールドに入る。

 

「邪魔をするなぁ!」

 

ビーストは自身のファントムであるキマイラを召喚して対抗するもファントムの破壊は止

 

まらない。

 

「うっ。」

 

「あれが晴人のドラゴンか!」

 

晴人の中に巣くうウィザードラゴンも加勢する。

 

「なぁ!?」

 

だが、無力にもドラゴンが撃破される。

 

「ガァァァ!?」

 

「晴人さん!?」

 

晴人の腰にあるドライバーが儚く散っていった。

 

「うぉ!?」

 

再び生じた亀裂からビーストとファントムが飛び出す。

 

「おい!晴人!」

 

「ドラゴンが...俺の魔力が...消えた。」

 

 

 

 

「ん...晴人の記憶?」

 

寝室で寝ていた雁夜は目を覚ます。

 

「魔力がなくなったのなら今の晴人は...」

 

動かない脳を絞り出すのは無駄だと考え、顔を洗ってダイニングの方へ歩む。

 

「晴人お兄さん、どうぞ。」

 

「ありがとう、桜ちゃん。」

 

キッチンからカップを運ぶ桜とテーブルに腰を掛ける晴人。

 

「おはよう、雁夜おじさん。」

 

「...おはよう。体調は大丈夫かい?桜ちゃん。」

 

「うん!」

 

桜の見せた表情は間桐家に引き渡される以前の笑顔に近づいていた。

 

「おはよう、雁夜。」

 

「おはよう...」

 

健気に朝食をとる桜の姿に微笑む雁夜に晴人は思わず笑みを浮かべる。

 

「まだ生きてもらわなきゃ困るぞ...雁夜。」

 

「あぁ。」

 

「ん? おっと、電話だ。」

 

晴人は鳴り始めた携帯を取り出す。

 

「はい。」

 

『よう!魔法使いよ!』

 

「あんたは...ライダーか?」

 

勇ましくバカでかい声は雁夜が聞こえるほどだった。

 

『余は初めて電話というものをかけてみたが、これは素晴らしいのぉ!お主もそう思うだ

 

ろう!』

 

「生憎、俺は携帯のある時代に生まれたからなぁ...」

 

『ほう、お主は現代に近い英霊という『ライダー!早く俺の電話返してくれよ!』坊主、

 

少しは話させろ。』

 

漫才のようなやり取りに拍子抜けする晴人。

 

「...邪魔をして悪いが、要件はなんだ?」

 

『すまんな魔法使い。実はな...余と散歩に出かけんか?』

 

 

 

 

晴人はライダーとともに冬木の中央に流れる未遠川に沿って河原を歩いていた。

 

「まさかあんたのマスターからのお使いに付き合うとはなぁ...」

 

「すまぬなぁ、魔法使いよ。余はズボンを得る条件としてこれを頼まれてな。」

 

ライダーの抱えるボストンバッグの中に試験管がたくさん詰まっていた。

 

「これは...何をするんだ?」

 

「余に水汲みを命じてきてな。」

 

地図を開き、Rと書かれた試験管を取り出してすくうライダー。

 

「そういえばお主のその服装はマスターに買ってもらったのか?」

 

「いや、これは俺が普段から来ているものだ。」

 

「ほう...騎士王のスーツというものとはまた違った着こなしよのぉ。」

 

ライダーは晴人の服装を興味深そうに眺める。

 

「...大王がファッションに興味があるとはね。」

 

「余もせっかく再び限界したのだ。戦の合間に余興も楽しまねばならぬ。」

 

初めて出会った混戦の中で威厳を見せていた時のギャップに目を見開いた。

 

上流の方まで歩き、試験管すべてに採取し終えた頃には昼間を過ぎていた。

 

「ん~...小僧のお使いも終わったことだし、余とともにどこか腹ごしらえを済ませたる

 

か。」

 

「そうだな...俺の世界におすすめのドーナツ屋があるけど...どうだ?」

 

「ほう。しかし、魔法使いよ。いくらこの時代に近いとは言え、その店は開いておるの

 

か?」

 

晴人はリングを取り換える。

 

「時代的には近いが、俺の場合は世界観が違ってな。」

 

『クリア プリーズ』

 

「これは!?」

 

いつの間にか子供や高齢者たちがにぎわう公園の休憩スペースに移動していた。

 

「これは俺の世界だ。」

 

「...お主の心象風景か?」

 

「違う違う。平行世界の移動だ。」

 

公園の休憩スペースに真っピンクのキッチンカーが泊っている。

 

「あ!晴くんいらっ...おぉー!この人誰!!」

 

キッチンカーの方に歩むと店長が気づく。

 

「この人は」

 

「余は征服王、イスカンダルだ。」

 

「イスカンダル?...もしかしてアレクサンドロス大王!?」

 

筋骨隆々なライダーは胸を張り、その体に魅入られる店長。

 

「なら、ちょうどいいドーナツがあるわぁ!」

 

「...あぁ、またか。」

 

店長はいつも通り新作ドーナツを取り出す。

 

「これは!?」

 

「今回のおすすめは世界ドーナツよ!!」

 

その見た目は地球を無理やりドーナツの形にしているようだ。

 

「ほう、余にピッタリではないか!!一つ頂くとしよう!」

 

「晴くんも!」

 

「プレンシュガー。」

 

店長の顔面が蒼白になり、腰を抜かす。

 

「そんなぁ~...」

 

ライダーとともに席に着く晴人。

 

「お主に冒険心はないのか?」

 

「プレンシュガーは俺のお気に入りだからな。」

 

互いに注文したドーナツを頬張る。

 

「このサッパリとした甘さ...余の目指した最果ての海(オケアノス)を想起させ

 

る...」

 

「...そういえば、あんたはそれを目指していたんだな。」

 

感傷に浸るライダーに晴人は頬張りながらジーっと見ていた。

 

「魔法使いよ。お主の店、気に入った。」

 

「あら、嬉しいわ!」

 

「余に全種類のドーナツを!」

 

晴人は少し笑みを浮かべ、眼を輝かせた店長は箱にドーナツをつめていく。

 

欠けた地球ドーナツに唸るライダー。

 

「お!晴人じゃねーか。」

 

「仁藤!?」

 

バカでかい鞄にキャンプ道具を抱えた男、仁藤が乱入する。

 

「そういえば、これだな。」

 

「あーっ!そうだったな!」

 

借りていたドルフィリングを返す晴人。

 

「お主は「あー、皆までいうな。」」

 

「俺の名は仁藤攻介。魔法使い、ビーストだ!」

 

「ほう、お主も魔法使いなのか。」

 

仁藤に興味を移すライダー。

 

「余は征服王、イスカンダルだ!」

 

「えぇ!?あんたが...晴人、これはホントか?」

 

「違う世界...だけどな。」

 

考古学者である仁藤は興奮を隠し切れない様子だ。

 

「握手してくれ!」

 

「おうよ!余のファンという者なら喜んで答えるぞ。」

 

晴人は置いてけぼりにされた。

 

 

 

 

「へー...やっぱ征服王は伊達じゃねーな。」

 

ライダーの熱弁に対し、いつものようにマヨネーズをかけながら食す仁藤。

 

「...お主のそのマヨネーズといったか、うまいのか?」

 

「あぁ!あんたの話の礼だ。」

 

差し出されたドーナツはおかず系のもの。

 

「では...ん~、悪くない。」

 

「だろ?晴人も食べろよ。」

 

「嫌。」

 

マヨを押し付ける仁藤に拒否反応を示す晴人。

 

その様子に高らかに笑うライダー。

 

「はっ、はっ、はっ。いいものを見せてもらった。」

 

「もうこんな時間か...」

 

あたりが暖色に染まるほど夕日が差し掛かっていた。

 

立ち上がる晴人とライダー。

 

「もう帰っちまうのか?」

 

「まだ終わってないからな。」

 

「晴人...困った時は俺に声かけろよ!」

 

「あぁ。」

 

晴人はリングをかざす。

 

『クリア プリーズ』

 

「ビーストよ、また会おう。」

 

「晴人をよろしくな!」

 

急にライダーとマスターが滞在している民家の前に着く。

 

「お主の世界...楽しませてもらったぞ。」

 

「あぁ、ライダー。」

 

『コネクト プリーズ』

 

晴人はバイクを取り出して、またがる。

 

「また会おう!魔法使い。」

 

手を挙げて答える晴人はバイクでこの場を去った。

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「これはサーヴァントの記憶か...。」

 

「あなたに聖杯をもたらすために、この令呪を譲ってちょうだい。」

 

「俺は忠義を果たすために聖杯の導きに応えた。」

 

「...武功を立てるだけが忠義じゃない。」

 

 

「さぁ、ショウタイムだ。」

 

 

 

第8話 主と従者

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