仮面ライダーウィザード in第四次聖杯戦争 作:T氏@pixiv
不快なハエの羽音とともに一人の男はその場を血に染めながら走馬灯をぼんやりと眺めて
いた。
「エリンの英雄、フィオナ騎士団の騎士団長フィン・マックールと我が娘グラニアとの婚
約。皆の者、今宵は盛大に祝ってほしい!」
王である騎士団の主は娘の婚約を祝し、乾杯を捧げる。
騎士団のメンバーとともに盛大に祝うランサーにグラニアはうっとりとした目を向ける
「私を連れ出し、この不幸な婚約からお救いください。これをあなたに課せられるゲッ
シュとします。」
この日にランサーはグラニアに迫られ、戦士に課せられる誓約「ゲッシュ」を結ばされ
る。
「...裏切者め。」
駆け落ちしたことで騎士団長の怒りを買い、追われる二人。
追ってきたかつての仲間たちでさえも彼の槍裁きで手にかける。
「なぜ私に手を出してくれないのですか!」
「私は元主であるフィンへの忠義がある。」
だが、無理に迫られたランサーは愛を重ねてしまう。
様々な困難を乗り越え、
「喜べグラニア!フィンが俺たちのことを認めてくれたぞ!」
グラニアはランサーにうっとりとした表情を向けていた。
「ディルムッド...グラニアの恨み、忘れたと思うか。」
「はっ!?...夢。」
セイバー陣営に殴り込みを仕掛け、返り討ちにあったケイネスはベッドに寝かされてい
た。
「ディルムッドの伝説...これはサーヴァントの記憶か...。」
体中に走る痛みに耐えながら、動けない体でも何とかあたりを見回す。
「ここは...」
「気が付いたようね。」
「ソラウ...うっ!?」
上体を起こそうとするも拘束具がそれを阻む。
「なにがあったのか...覚えてないの?」
彼の脳内にアインツベルンでの記憶が流れる。
ソラウによると、魔術回路が暴走し二度と魔術を行使できなくなったことが伝えられる。
「私は...」
「泣かないでケイネス...諦めるのはまだ早いわ。」
絶望で涙を流すケイネスの頬に添えてハンカチで拭うソラウ。
「聖杯が願望機なら、勝ち残ればいいわ...だから、ね?」
令呪が刻まれた腕の甲に手が添えられる。
「あなたに聖杯をもたらすために、この令呪を譲ってちょうだい。」
「だ、駄目だ!」
「アーチボルトに嫁ぐこの私が信じられないの?」
脳裏にソラウがランサーに目を向けていた時が流れる。
「だが...ソラウ...ランサーが君に...忠誠を誓うと。」
「えぇ、彼だって聖杯に導かれた英霊。たとえマスターが後退することになっても目的の
ために受け入れるはずよ。」
「ソラウ...ランサーはそんな殊勝な奴じゃない!」
ケイネスに顔を向けるソラウ。
「どうしてそんなことを?」
「奴は聖杯を求めないと言った。聖杯を求めぬサーヴァントなどありえない!その胸の内
をこの令呪があれば」
「ケイネス」
「令呪は...渡せない。」
彼の言葉にソラウはため息をつき、俯く。
「分かってないのね...私たちは勝たなければならないのよ。」
ソラウは添えていたケイネスの手に視線を移し、彼の指をあらぬ方向へ曲げる。
「あ...あぁ。」
手羽元の関節を曲げるような音に恐怖するケイネス。
「ねぇ、ケイネス。私ほどの霊媒治療術では本人の同意なしに根付いた令呪を摘出できな
いの。」
ハイライトのないソラウの瞳にケイネスは顔を歪ませる
「この腕ごと切り落とすしかなくなるけど...どうするの?」
彼は必死に頷く。
「分かってるじゃない...ケイネス。」
彼の視界がだんだんと暗くなる。
「これでランサーを...」
(「奥さんを大事にしとけよ。」)
(ソラウ...私が悪いのか...)
フォーリナーの言葉が脳裏に浮かび、暗転した。
「...見つけたぞ!」
「貴様!?」
真夜中の路地裏を巡回していたランサーは目的であるキャスターを見つける。
「雑魚で避けられたか...」
「私の邪魔を...」
キャスターは海魔を召喚して盾にする。
「消えなさい!」
「クッ!?」
追加で海魔が召喚される。
ない。
『フレェイム シューティングストライク』
「フォーリナーか!」
この場に呼び出された海魔をすべて焼き尽くす。
「なぜ神は!!私の邪魔をする!!」
「...あんたの行いのせいだろ?」
リングを再びはめ直すフォーリナー。
「ギエェ!!」
「待て!」
赤い霧を発生させる。
「逃げられたか...」
キャスターの姿はどこにも無かった。
「フォーリナー、助太刀に感謝する。」
「気にすんな。俺はお節介な魔法使いだからな。」
ランサーは二本の槍を肩に担ぐ。
「気になっていたんだが、あれからあんたのところのマスターは上手くやっているの
か?」
「...我が主はセイバーのマスターにより重傷を負っており、代わりにソラウ様が代替し
ている。」
「なるほどね。」
(「私を支えて!私と聖杯を取って!」)
脳裏にさきほどソラウがランサーと会った時の彼女が映る。
「浮かない顔だな。」
「...いらぬ心配をかけたな、フォーリナー。」
「そういえば、お前の望みは主に忠義を果たすとあの夜言ってたみたいだな。」
影のかかるランサーへ宝石の仮面を向けるフォーリナー。
「...その様子だと俺の正体も気づいているだろう。俺は忠義を果たすために聖杯の導き
に応えた。」
「でも、聖杯は万能の願望機だろ?他の望みはないのか?」
「...聖杯にかける望みなどない。そういうフォーリナーはどうなのだ?」
ランサーはフォーリナーを見つめる。
「実は俺もないんだよ。俺が召喚に応えたのはマスターが助けようとしている少女の声に
惹かれただけさ。」
「フォーリナー...騎士道精神はあるようだな。」
「騎士道か...別に俺にはないんだけどな。」
「晴人!」
すると、どこからか男の声が聞こえてくる。
「すまない...俺のマスターだ。」
「早く主の元へ行ってやれ。」
フォーリナーはランサーに背を向ける。
「ランサー、今のマスターは不安なはずだ...武功を立てるだけが忠義じゃない。」
「フォーリナー...それは」
「主君の希望になれるのはあんただけだ。」
彼はその場を去ってしまった。
「俺の忠義か...」
(「たかだかセイバー一人に必勝を誓うだと!」)
グラニアとソラウが向ける彼への瞳、ホテル倒壊前でソラウに向けていたケイネスの表情
とその言葉。
(...騎士道を求めるあまり忠義を尽くせていないということか?俺は...)
彼はケイネスとソラウの元へ駆け抜けた。
次回、仮面ライダーウィザード
「凛ちゃん!?」
「泣いている暇なんかないの!逃げるのよ!!」
「雁夜君?どうしてあなたがここに!?」
「お姉ちゃんを助けて...雁夜おじさん。」
「さぁ、ショウタイムだ。」
第9話 遠坂親子との再会