フリート・エスケープ(Fleet・Escape) 作:水岸薫
場所は変わって大阪の天保山マーケットプレース、そこでは補給班の
薄茶色の右ショートサイドテールをした澄子は「えっと、あとは八千穂さんの服を…」と言いながら服を選んでいると、薄茶色の左ショートサイドテールをした菫が「身長などは艦長さんからメール
来たから、大体はわかるよ」と言うと澄子は「そうだねー」と答える。
詠は「あの子の気分を考えると…ここは明るめのこれとこれを…下はこれがいいかしら」とブツブツ言いながら服を選んでいた。
そして洋服店で悩むこと数十分後、服を購入し終えた菫たちはマーケットプレースから出ると澄子が「艦長に連絡してくるよ」とスマホを出して連絡をしていく。その間に買い物で買った商品を持っている詠は「思った以上に早く終わったわね」と言うと、菫は「そうですね、でもこれですぐに行けると思いますよ」と答えると彼女は「言われてみれば…そうですね」と理解する反応をした。
その頃不知火の方では、盛子と恭子は空き部屋の清掃をしていた、ようやく清掃が終わったのか掃除道具をしまっているのを八千穂に目撃される。彼女は「あ、あの…ありがとう…ございます」と礼をする。
「ああ、それくらいいいよ気にしないで」
「ええ、それにあなたは艦長の大切な友人。守るくらいなら任せてね」
二人の言葉に八千穂は「は、はい…」と小声で答えると、一は「ふふっ」と微笑んでいた。
彼女が住むことになる部屋の内装は、ベッドと棚が一つと、机は一つで棚についているテレビは薄型。部屋を見て恭子は「足りないものがあったら私たちに話して、共有できるかもしれないから」と言いながら掃除道具を持ち運ぶと、盛子は「そんじゃあねぇ」と去っていく。
一も「じゃあ、ゆっくりしてね」と言ってその場から去っていくと、八千穂は「は、はい」と慌てて答えると、部屋へ入り扉を閉める。
部屋には静寂だけが残る。白と水色のライトが柔らかく揺れ、遠くで海の音が響く。八千穂はベッドの端に腰を下ろすと、ぎゅっと制服の裾を握りしめる。
そして、胸の奥に溜め込んでいたものが、一気に溢れ出す。
「……っ、ひ……ぐ……」
彼女は声を押し殺しながら、涙がぽろぽろと頬を伝っていく。
〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
扉の外では伊吹と盛子が、静かに立ち止まっていた。伊吹は眉を下げ「泣いてるね」と小さく呟くと、盛子は目を伏せ、「仕方ないよ、学生スパイの容疑がかけられて、ここまで逃げてくるまで誰も信用できなかったから」と淡々とした声で言う。
「慰めに行った方がいいかな……?」
一の言葉に伊吹は「いや、それはやめたほうが良い」と首を横に振る。
「今は一人にしてあげた方がいい…だが、私たちはここにいるってことだけは、伝わるから」
伊吹の言葉に一は少し考えると、扉にそっと手を当てると「……八千穂ちゃん、ゆっくり泣いていいからね」と小声で言う。
その声は届かないかもしれない…しかし、優しさだけは確かにそこにあった。