フリート・エスケープ(Fleet・Escape)   作:水岸薫

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第十一話

 その頃松風は、西日本の和歌山県に移動していた。松本純子艦長は「情報を」と言うと、隊員は「はい」と答える。

 

「この先に三万メートル先に艦隊『不知火』が視認範囲に入りました」

 

 隊員の報告を聞いた松本純子艦長は、鋭い目で前方の海を見つめると「……やっと追いついたのね」と呟く、そして彼女はすぐに指示を出す。

 

「不知火の艦長に連絡。 内容は『夢命瓦八千穂がいるか確認』。それと『乗艦許可』も要請しなさい」

「了解、至急連絡します!」

 

 彼女の指示に隊員は答えるとすぐさま行動に移す。

 そして松風の無線が起動し、不知火へ向けて通信が送られていく。

 

 

 松風が不知火を見つけていたとき、不知火の見張り台にいた薄茶色のショートボブの見渡(みわたし)(めぐみ)は双眼鏡を首から下げ、海を見渡していた。

 

「今回も異常なし……」

 

 彼女がそう呟いた瞬間、視界の端で“光”が反射した。不審に思ったのか「……ん? あれは?」と彼女は素早く双眼鏡を構える。

 レンズの向こうにあったのは、灰色の巨大な艦影…駆逐艦『松風』が海を切り裂いていた。

 

「松風! なんでここに!?」

 

 それを見た彼女はすぐに伝声管に向けて「こちら見渡恵!」と報告を入れる。

 

「方位、西北西! 距離三万メートル! 駆逐艦『松風』が接近しています!!」

 

 彼女の声は艦内に響き渡り、のんびりしていた艦内の空気が一瞬で凍りついた。

 

〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

 

 恵の報告を聞いた桃華恋は「警察が来ると思ったが、まさかの松風か…しかしなぜ」と考え込んでいると、扉からノック音がした。彼女は「どうぞ」と言うと扉が開き、晶が入ってきた。

 

「失礼します。艦長、無線から松風艦長の松本純子艦長から連絡が」

「松本純子艦長が? わかった、うちにつなげてくれ」

 

 彼女の言葉に晶は「分かりました」と答えると伝声管に「艦長につなげてくれ」と指示を出すと、電話のランプが点灯すると、彼女はそれに出る。

 

 桃華恋は電話に出ると、松風の艦長『松本純子』の声が響く。

『こちら松風艦長、松本純子です』

「こちらは不知火艦長、模歌桃華恋です。どうしましたか? 東の保安軍の海軍がどうしてここに?」

『すみません、突然ですがそちらに夢命瓦八千穂はいますか?』

 

 純子の声に桃華恋は一瞬だけ息を整え、落ち着いた声で答える。

 

「夢命瓦八千穂? いやぁ、そんな変わった名前……聞いたことありませんなぁ」

『そうですか』

 

 彼女のやりとりに桃華恋は『(これが密告があったなら“確実な情報”として言うはず……やとしたら、これは“探り”やな)』と心の中で考え込む。

 そうしている間に通信が続いていると、純子は 『それとですが』とあることを言い出す。

 

『そちらに向かっても構いませんか? もちろん強制とは言いません、あくまで船内を見るだけですので』

「艦長…」

 

 純子の言葉に晶は反応すると、桃華恋は迷いなく「もちろん構いませんよ」と答える。

 

「その夢命瓦 八千穂が、この艦内に乗ってるわけありませんからねぇ」

『分かりました。では今から20分後、松風が向かいますのでご了承を』

 

 純子はそう言うと電話が切れ、艦長室に静寂が落ちる。桃華恋は「……厄介なことになったなぁ」と真剣な目つきで呟く。晶は「艦長…どう動きますか?」と言うと、彼女は「そんなの、決まっとるやろ?」と答えると、ある提案を言い出す。

 

「松風が来るのは20分後、それまでの間に八千穂を絶対に見つからんようにしいや!」

 

 彼女の言葉に晶は「分かりました」と答えると「隊員たちに伝えてます」と伝声管で伝え始める。そして桃華恋は「八千穂、必ず守ってるで」と小さな声で呟く。

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