フリート・エスケープ(Fleet・Escape)   作:水岸薫

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第十ニ話

「ぐすっ…」

 

 八千穂が泣いていたとき、突然扉が開くと彼女は「ひゃわっ!?」と慌てて反応をする。八千穂は「ど、どうしたのですか!?」と慌てて質問すると盛子は「八千穂ちゃん、こっちに来て!」と答える。

 それを聞いた彼女は「へ?」と目を丸くするが、盛子は「時間がないの、急いで!」と言うと八千穂は「は、はい!」と慌てて答えると、盛子と一緒に動く。

 

 そして連れてきた場所は在庫管理室、そのなかにある木箱を開けると「この中に入って」と言うと彼女は「え、どうして?」と目を丸くすると、盛子は「松風がここに来て艦内を調べるの、あなたを探す為に来たと思うよ」と言うと、彼女は「え」と反応をした。

 

「まさか、警察が用意した…それで私を…」

「多分ね、だけど艦内を見るだけだから。その間にここに」

 

 盛子の言葉に彼女は「う、うん…分かった」と理解すると、そのまま木箱に入ると他の隊員が「洗濯しておいた服と荷物、持ってきました」と持ってくと、盛子は「ありがとう」とそれを持つと木箱の中に入れる。

 そして彼女は八千穂に向けて「しばらくここにいてね」と言うと箱を閉じて、荷物のなかに紛れ込ませていく。

 

 そして20分後。松風が不知火に横付けされ、橋がゆっくりと伸びてくる。ガチャンと金属音が響き、松本純子艦長と数名の隊員が姿を現す。

 

「よういらっしゃいましたなぁ」

「はじめまして。私が松風の艦長、松本純子です」

 

 二人は握手を交わすが、その握手は“笑顔の裏の探り合い”だった。純子は「早速ですが、調査してもよろしいですか? もちろん、あなた方の私室は見ませんが」と言うと、彼女は「それはありがたいなぁ。うちは構わへんよ」と笑顔で答える。

 

「では、始めて」

 

 純子の言葉に、松風の隊員たちが艦内へ散っていく。調理場、医務室、倉庫、洗濯場、風呂場…不知火艦内を松風の隊員たちは徹底的に調べるが、八千穂の姿はどこにもない。

 そんな中、黒髪のロングヘアーをした松風隊員『五十鈴(いすず)』が在庫管理室に入っていく。

 

「あれは…」

 

 ふと彼女は木箱があることに気づくと、蓋を空けて中を見る…が、中に入っていたのは米袋。彼女は「流石にこれは違うわね」とつぶやくと箱を閉め、在庫管理室から去っていく。

 

〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇

 

「艦長、艦内を捜索したところ夢命瓦八千穂は見つかりませんでした」

 

 隊員からの報告を聞いた純子は「そう。ご苦労さま」と答えると「直ちに松風に戻るようにしなさい」と指示を出す。

 隊員は「分かりました」と答えると「全員、松風に戻れ」と指示を出していく、そして純子は桃華恋に向き直ると「夢命瓦八千穂は不在と確認しました。我々はこれで失礼します」と言う。

 

「そっか。気ぃつけてな」

 

 桃華恋はそう答えると純子は「ええ」と返答する。そして数分後、松風の隊員と純子は松風に戻ると橋を引き、ゆっくりと離れていく。その姿が完全に見えなくなるーー。

 

「ふぅ……何とか耐えたなぁ」

「そのようですね、艦長」

 

 桃華恋の言葉に不知火の乗組員たちは、胸を撫で下ろした。

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