フリート・エスケープ(Fleet・Escape) 作:水岸薫
長門の主砲がゆっくりと旋回し、不知火の方向へ向けられる。海面に当たったのを確認した華は続けて「威嚇射撃を続けなさい、多少当たっても爆破しないように調節を」と指示を出すと、隊員は「了解!」と答えると「威嚇射撃を続けろ!」と指示を出す。
ドォォォォォン!!!
主砲から再び海を割るような轟音が響くと巨大な砲弾が放たれ、不知火のすぐ横に着弾し、巨大な水柱が立ち上がる。
水柱の衝撃で艦が大きく揺れる。大きな揺れに晶は「この衝撃は、まさか…威嚇射撃!?」と反応すると、盛子は「連続なんてひどいよー!!」と怒る。
しかし桃華恋は「いや、これは進路を塞いでる可能性が高いな…これは恐らく」と考え込むと、蟹江は「もしかして…!」とあることに気づく。
「松風同様、この戦艦を調べに来たかもしれへん」
桃華恋の言葉に皆は表情を強張る、桃華恋の話を聞いていた八千穂は「そんな…できれば攻撃を最小限でここから逃げる」と呟いていると、何かに気づいたのか「桃華恋ちゃん。確か発煙筒はたくさんあったよね?」と質問する。
「何や突然? まぁ発煙筒ならぎょーさんあるが…それをどうするん?」
「うん。実はー」
八千穂は皆にある事を話すと、桃華恋は「ふむふむ…」と反応をする。そして。
「発煙筒を大量に使って、海面に“煙の壁”を作れば、長門の視界を奪える…なるほどなぁ」
「うん。それやったら、最低限の攻撃で…長門から逃げ切れるかも、しれないよ」
八千穂の言葉に晶は「なるほど、それでしたら怪我人を最小限に抑えることができますね」と言うと、盛子も「やるね、八千穂ちゃん!」と彼女に抱きつく。
「でも…問題は、不知火の速度と操縦です。長門より速く、ここから逃げないといきたいですが…」
八千穂の悩みに桃華恋は「それなら安心しいや」と答える。
「速度は照楊出井に任せとき、彼女は癖は強いけど腕は確かや。全開にすれば時間は稼げる」
「操縦なら私に任して、船の操縦なら負けないよ」
桃華恋と蟹江の言葉に八千穂は「そうだね…」と言うと「そう、だよね。出井さんと蟹江さんなら…きっと」と落ち着くように言っていると、桃華恋は八千穂の肩に手を置く。
「八千穂の作戦、うちは信じとるで」
桃華恋の言葉に八千穂は「桃華恋ちゃん」と、目が揺れた…その瞬間。
ドォォォォォン!!!
艦が大きく揺れ、八千穂と桃華恋は思わず「わっ!!」と声を上げる。
『こちら見渡恵! 前方に威嚇射撃、通路を塞ぐように撃ってきています!!』
「ここまでやってきたかぁ…!」
伝声管から恵の報告を聞いた桃華恋は、頭を抱えながら答える。
〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
長門の艦橋から様子を見た隊員は「艦長、砲弾は不知火の前方に着弾、進路を塞ぎました」と報告をすると、華は「そう」と冷静に呟く。
「直ちにボートの用意を、不知火に強制乗艦を行うようにして」
「はっ!!」
華の指示に隊員らは答えると、伝声管で「各隊員に継ぐ! 不知火に強制乗艦を!」と伝えていき。外からゴムボートを出して乗車する行動をしていく…が突然、ギギギッと主砲がブリキのように勝手に動き始めた。
「……え?」
それを見た華は目を丸くしていると、主砲は不知火へ向けられたその数秒後…。
ドォォォォォン!!!
主砲から砲弾が放たれ、その砲弾は不知火の甲板に直撃すると爆発し。甲板から黒煙が立ち上る。
「何してるの!? 砲撃はあくまで威嚇射撃だけって指示したのに!!」
華は慌てて伝声管で砲雷班に言うと、向こうから
『す、すみません! 装置が……言うことを聞かなくて……!』と慌てた声が返ってきた。それを聞いた彼女は「はい!? どういうこと……?」と驚きの反応をしたその瞬間、突然艦橋のモニターに砂嵐が流れスピーカーから雑音が流れ始める。
「操縦が効かない!? そちらはどうだ!」
「こちらも同じく! 無線はどうだ!?」
『無線も同じく! 起動しません!!』
突然の事態に彼女は「これは一体!?」と驚いている。長門の艦橋に、初めて“異常”の空気が流れた。