フリート・エスケープ(Fleet・Escape) 作:水岸薫
長門が異変が起きていた同じ頃、駆逐艦「松風」の艦橋では松本純子艦長が、八千穂の“スパイ容疑”の書類を読み返していた。
「これが資料の内容…それにしては妙におかしいわね」
資料を見ていた彼女は、軍人としての直感で“何かが噛み合っていない”と感じていた。書類には、“警視庁が捜査した結果、八千穂の部屋に置いているパソコンから、学生スパイである証拠が見つかった”とある。
「(学生スパイなら、証拠はもっと巧妙に隠すはず。 パソコンの暗号化、偽装ファイル、本の中に仕込む……いくらでも方法はある)巧妙じゃない、極端に凡ミスすぎるわ、まるで“パソコンの中に誰かがわざと入れた”みたいに」
彼女は書類を閉じ「これは……調べ直したほうが良いわね」と静かに呟いた。
この時、松風の艦長は、“真実”に気づき始めていた。
長門の砲弾が不知火の甲板に当たり、黒煙上がっていた。そこに「どいたどいたどいたっす!!」と消火器をを抱えてきた、紫色のショートボブ(外ハネボブ)の
消火をしている間、薙刀香菜は「これはどうなってるの…」と考えながら長門に向けてを睨む。
「長門が本当に当ててきた、あの子を捕まえるために…ここまでするの?」
そこへ伝声管から『大丈夫か!?』と桃華恋の声がしてきた。香菜は「不知火に損傷は出てしまいました。幸い、怪我人はいません」と答えると、向こうから『そっか……怪我人がいないだけでも良かった…』と安心する声がした。
『せやけど、どうしてここまでやるんや…長門がなぜ…??』
桃華恋の言葉に香菜は「わたくしも分かりません…どうしてこんな事をするのかも」と言っていると、長門の主砲から砲弾が放たれ近くの海面に当たると、巨大な水柱が立ち上がり香菜は「きゃっ!」と驚く。
益子は「うわっ! またなんすか!?」と反応をすると、水色のショートポニーテールをした女性
伝声管から話を聞いた桃華恋は「なんどここまでやるんや」も考え込んでいると、八千穂が震える声で「あ、あのっ!」と言い出す。
それを聞いた皆は一斉に彼女を向くと、八千穂は「あ、えっと…」と口をゴモゴモとして目線をそらしていた。それを見た桃華恋は「ああ」と何か理解したのか「伝声管、使ってもええで」と言うと、八千穂は「あ、ありがとう」と慌てて礼をすると伝声管に向けて言い出す。
「魚雷発射班の皆さん! 使っていない魚雷ってありますか!?」
伝声管に向けて八千穂は言うと『こちら古谷一、魚雷ならいくつかあるけど。どうするんの?』と一が返答すると、八千穂の目が強く光ると「―作戦に使います!」と言うと、一は『へ?』と反応が返ってきた。
『何があったのか、わかるようなわからないような…こっちに来て! 場所はー』
一の言葉に八千穂はメモをすると「わかりました、そちらに向かいます!」と慌てて走っていく。それを見た盛子は「ついて行ったほうがいいかな?」と言うと、桃華恋は「せやな、念の為八千穂の所についてってくれへんか?」と言うと、彼女は「わかった!」と八千穂の後を追っていく。
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八千穂と盛子は魚雷置き場へと行くと、一が「こっちだ!」と彼女を連れて魚雷の山を見せる。
「ここにあるのが全部だ。で、これをどう使うんだ?」
「これに発煙筒をつけて、魚雷の爆発を利用して“煙の壁”を作るの!」
「なるほど、それで魚雷が必要なんだね」
八千穂の話に盛子は理解していると、そこへ三日月詠が班員た知を連れて「例の発煙筒持ってきたよー!」と発煙筒が入った箱を持ってきた。
「ありがとう、詠さん!」
八千穂は礼をいうと、詠は「こちらこそ!」と答えながら箱を開ける。そこに入っていたのは大量の発煙筒がぎっしり入っていた。
八千穂は箱から発煙筒を数個出すと、魚雷に縛り付ける。
「この発煙筒は水と混ざると煙の量が倍になる特殊な発煙筒…これを魚雷に括りつけて、爆発と同時に煙を撒き散らすようにするのです!」
「なるほど…魚雷を“煙幕弾”にするわけか!」
八千穂の行動に一は理解すると、盛子は「私も手伝うよ!」と協力する。
その頃機関室では、出井が機関部の改造を続けていた。
「無理を言ってすまない、機関部を改造させて速度を増せることはできるか?」
「おう! これくらい楽勝だぃ!」
晶の言葉に出井は答えると、晶は「助かる…!」と反応をした…その瞬間。
ドォォォン!!
『うわっ!!』
長門の第二射が、不知火を揺らしていく。
その頃長門艦橋では、主砲は勝手に動きコンピューターや無線機が使えないといった混乱が広がっていた。
「どうなっているの……?」
華が驚いていると隊員は「艦長! このままですと不知火は沈没します!」と慌てて言うと、彼女は「仕方ないわね」と唇を噛みしめると、「直ちに電源を落として! 強制乗艦は中止よ!!」と指示を出す。
隊員らは「了解!」と答えると、装置の暴走をとめるために電源を切り始める。