フリート・エスケープ(Fleet・Escape) 作:水岸薫
朝日が海面を照らし、不知火の甲板に柔らかい光が差し込む。そんな中、ゴムボートには模歌桃華恋と夢命瓦八千穂、沖谷澄子と沖谷菫にエメラルド色のショートサイドテールをした女性『
桃華恋は「そんじゃあ行ってくる」と言うと晶は「お気をつけて」と返答した。そしてゴムボートは不知火から離れていくとそのまま高知県・第三島に向けて発進していく。
「桃華恋ちゃんもこっちに来たのはなぜ? 艦長で忙しいのに…」
「まぁ息抜きも必要やしたまにはええかと思ってな…それに補給に必要な道具が急に出てきたし、人数が多ければ楽やと思ってな」
桃華恋の回答に八千穂は「でも…」と戸惑っていたが、鳥乃が「艦長の言う通りよ。あなたが狙われている以上、目的地の場所に着くまで守ってやるのは私たちの任務だから」と言うと、詠たちは「うんうん」と頭を上下に動かす。
「八千穂ちゃん、たまには私たちに任してよ」
「この先何があるかわからないけど、守ってやるよ」
「そうだよ!」
詠に続いて澄子と菫が言うと、八千穂は「み、皆…」と目が潤っていると桃華恋が「さて、感動するのはええけど…ここは気分を変えて買い物するで!」と言うと、詠たちは「おおー!」と答えるのであった。
不知火から離れること数十分後、桃華恋たちが乗ったゴムボートは、高知県・第三島に到着する。埠頭に到着し陸へと上がり町中へと進んでいく中、街を見て詠は「ここが高知県・第三島ですか、初めてきます」と言うと鳥乃も「私も…こんなに賑やかな島は意外ね」と感心していた。
すると八千穂は「高知県・第四島は日本の南部にある人工島の一つ、そこは三日月の形が特徴で別名『三日月島』とも呼ばれているの。ここは漁港と市場が活気に満ちているの」と分かりやすく説明すると、菫は「八千穂さん、すごい…覚えてるの?」と感心するように反応すると、彼女は「えっと、少しぐらいなら、なんとなく」と照れながら答えた。
そして桃華恋は「せっかくやし、手分けしていこか、そっちの方が手間省けるし」と言って、詠と菫と澄子、桃華恋と八千穂と鳥乃の二手に手分けして買い物を開始することになった。
「買い物する品はそんなに多くはないけど…パンに牛乳に砂糖…よし、これを買ってこよう」
「菫、この先にスーパーがあるよ。パンと牛乳はそっちで追加しようよ」
「わかったよ!」
澄子たちはスーパーによって、あらかじめ買う品を探していた。
双子と詠が駆けていく姿は、先ほどの戦闘の緊張を忘れさせるほど軽やかだった。
その頃桃華恋と八千穂と鳥乃は…。
「必要なものは大体は買いましたね」
「せやな、あとは…八千穂。他に何か買いたいものあるんか?」
「私? えっと」
桃華恋の言葉に八千穂は左右を見渡していると、「あ、あれはどうかな?」と指をさした。指さした先にあったのは、全国100円ショップ『ヤスソー』。
三人は店に入ると、八千穂はまっすぐ“ぬいぐるみコーナー”へと歩いていく。犬と猫のぬいぐるみを手に取り、桃華恋に猫のぬいぐるみを差し出す。
「はい、桃華恋ちゃんは猫だよ」
「ぬいぐるみか…せやけどええんか? こんな安物で?」
ぬいぐるみを受け取り桃華恋は質問すると、八千穂は「うん」と首を縦に振る。
「これでいいの。だって、これは私と桃華恋ちゃんの“大切な物”だから」
八千穂の言葉に、桃華恋の胸に、じんわりと温かいものが広がった。
「…ほんま、あんたは…」
二人の絆は、戦いの中でさらに強く結ばれていく。
〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
一方その頃、神奈川県立海原寅羽吏女子学園では授業の真っ最中。花園真由はノートを開きながらも、夢命瓦八千穂の事が頭から離れなかった。
「八千穂ちゃん…今頃どうしてるのかな」
真由が心配そうに呟いた、その時。突然、ガラッと教室の扉が開く。
そこに入ってきたのは、松風艦長・松本純子。突然現れた艦長に、教室中が静まり返る。
「ここに……花園真由はいますか?」
「真由さんなら……こちらに」
純子の質問に生徒は答えると、彼女は真由の席まで歩き、席に着くと静かに告げる。
「この授業が終わったら、第二教室へ来てください」
そして一礼し、教室を後にした。それを見た生徒たちは「え、なんで艦長が……?」「真由さん、何かしたの……?」とざわつく。
当然、真由本人も呆然としながら「私に用が…あるの?」と呟く。
この時胸の奥に、不安と期待が入り混じった感情が渦巻いていた。