芦花可愛いね!
今日も幼馴染は最高です!
「芦花〜! 次の授業移動だよ〜! 早く行こ〜!」
「今行くー! 千秋もほら! 行くよ?」
「はーい、先行っててーすぐ追いつくから!」
移動教室の授業に向けて歩いていく幼馴染とその親友の姿を見送りながら、現在中学3年生、黒髪黒目短髪真面目そうな雰囲気の少年は次の授業の教材を取り出しながら内心興奮していた。
(今日も芦花はめちゃくちゃ可愛い! 出来ればもう少し後ろ姿を眺めていたいけど……遅刻するのは流石に……でももう少し……今日も僕の幼馴染は最高です)
この少年、受験生真っ只中でありながら心の中は全く別のことで埋め尽くされていた。
そう、推しともいうべき幼馴染ーー
この少年受験生に混じりて勉学に励みつつ、その裏で幼馴染のサポートにはしりけり。
名をば
テストが近ければ一緒に勉強したり、ノートを貸したり。
悩みがあれば相談に乗り、愚痴があればいくらでも聞く。
運動に付き合ったり、気になるお店に突撃したり。
たまに遊びに行ったり、かと思えば親の付き合いで食事会があったり。
側から見れば付き合ってるのではと邪推されることもしばしば。
それに対して彼はいつもこう言うのだ。
「芦花は推しで神! そこ間違えないで!」と。
周りも呆れるほど芦花が大事な少年と、その幼馴染で推されて大事にされる少女のお話。
「遅かったじゃ〜ん。なにしてたの?」
「ちょっと準備に手間取っちゃって」
いつも通り幼馴染の後ろ姿の可愛さに興奮した後、急いで教室を移動した。
着いた矢先に幼馴染の親友ーー
遅刻なんて絶対にしないが、落ち着く時間は必要なのだ。
本当は今日も推しが可愛くて綺麗で素敵で内心悶えていたことはもちろん秘密だ。
「アキくん移動教室の時いつもギリギリじゃない? 大丈夫?」
「いやいや、毎回準備が遅いだけだから、気にしないでよ芦花」
「ほんとに〜?」
「ほんとだってー」
「あやし〜ほんとは別の理由だったりして〜」
むむ、やはり真実は勘がいいな。確かに高頻度でギリギリに来ていれば怪しまれるのも無理はないか。
でも準備(芦花可愛いエネルギー略してRCE)の消費には時間がいるのだ。
推しからの供給はいいものだと思うが過剰供給には気をつけて欲しい。ほんとにいつか爆発しそうです!
そこのところわかって欲しいなーと真実に念じてみるもまあ当然無理なので。
「いやいやカバンの中ごちゃついてるからどこにどの教科書あるのかわからなくなるんだよね」
「ふ〜ん? まあそういうことにしておいてあげよ〜」
「いやどういうことなのよ。そんなに時間かかるなら整理しようよ?」
「正論パンチ! 効果は抜群だ!」
「ほんとにしてあげよっか」
「ゴメンナサイ」
真実を誤魔化すことはできたが今度は芦花に突っ込まれるはめになってしまった。まあ芦花は可愛いのでヨシ!
芦花の正論パンチは可愛いけど(芦花の手へのダメージが)可愛くないのでしっかり謝っておく。次はもう少し言い訳を考えておこう。未来の自分よ、よろしく! と丸投げしておく。
とまあ授業前の雑談はここまで。
次の授業は音楽、まあ8割先生の選んだ音楽を聴いて解説受けてちょっと歴史学んだりするだけだ。
授業が始まればあとは真面目にーっと、音楽の授業だったからか前の席の真実さんとても眠そうですねぇ。
お隣の芦花は……眠くはないけど聞き入るためか瞼を閉じていらっしゃる。少しリズムに乗っているように見えてとても可愛いがすぎますね!
どうして僕の幼馴染は何をしてても可愛いのでしょうか! 後ろ姿も可愛いし正論パンチしてる姿も可愛らしい、瞳を閉じて音楽を聞いてる姿は女神のよう!
……ちょっと興奮しすぎたな落ち着こう。
まあ授業は聴き流して、音楽の授業はゆるいので内職しててもバレはしない。
とりあえず昨日は文系やったし今日は理系で攻めるか。サクッとまとめて芦花にも共有できるようにしないと。
そんなこんなで音楽の授業を過ごしてお昼休みへ。
今日はいつもより時間があったから色々詰めてきたぜ。
「旦那さんや、今日のご飯はなんだ〜い?」
「今日は卵焼きにタコさんウィンナー、きんぴらごぼうと昨日の残りのミニハンバーグと緑とか赤とかの野菜でっせ!」
あと旦那さんやめてね? と言うのと同時くらいで、広げた俺の弁当箱からタコさんウィンナー持ってかれてた。早すぎるのでは。
「やっぱり荒鷹家のウィンナーは美味しいね! なんかちょっと味が違う気がする?」
「そんなに違いなんてないと思うんだけどね」
「私もそう思うよ? アキくんのやつと前に食べ比べてみたけど明らかにアキくんのが美味しかったもん」
ぐはっ。
推しからのお褒めの言葉いただきました!
料理の練習(家庭料理の範疇)しといて本当によかった! 全ては食べ盛りの中学生のお腹とそろそろ色々気にしてそうな芦花の健康を守るため!
「真実行儀悪いよー? ちゃんといただきますしてからじゃないと」
「は〜い。いただきま〜す」
「どうぞー芦花も、ほら」
「ありがと。じゃあ卵焼きもらお」
「私ハンバーグ!」
「はいはいゆっくりどうぞ」
手元にある中学3年男子とはいえ明らかに大きい弁当箱から
なんでそんな大きさかといえば、自分の分だけじゃ足りないらしい真実を見て芦花から「余裕があるなら真実にも分けてあげて欲しいなー……なんて」と言われたのでそこから大きめのお弁当箱にランクアップしたのだ。元々芦花にもあげていたのでさして変わらないし、真実は美味しいものには素直でちゃんと評価をくれるのでWin-Winかも! なんて思っている。
芦花も最初はそんなにはいらないかなーと言ってたけども。たぶんそういうのが気になるお年頃なのだとしても!
ちゃんと食べてちゃんと寝てちゃんと運動しないとダメ! と何度も説得することで突破した。
もちろん言ったからには運動には毎回付き合っているし(頼まれれば)、バランスには気を遣っている。芦花の美貌を霞ませるのは許さないからね!
「毎度ながら思うんだけど、ほんとにこんなにもらっていいの? 材料も色々買ってるだろうからその分は出したいんだけど」
「いーのいーの。僕が好きでやってるから」
「私も毎回いっぱい食べてるけど本当にいいの〜?」
「芦花に頼まれましたので! 大丈夫!」
「芦花に甘いね〜」「私に甘すぎない……?」
そりゃ推しですので、ね! まあそれ以外に理由がないわけではないけど、そこは以下省略と。
大事な大事な幼馴染の頼み事なら最優先で取り組ませていただく所存でございまする。
なんてことは内心に留めておきつつ、放課後のことを思い出し話題に上がるとしよう。
「ところで、今日の放課後はどうする? 勉強会やる?」
「ん〜私は今日はパ〜ス。昨日頑張ったから疲れた〜」
「私は頑張ろうかな。狙ってるところ確実にしたいし」
「私も同じとこだけど芦花もう大丈夫なのでは……?」
「そんなことないよ? 不安要素は無くしておきたいじゃん?」なんて言ってる芦花の横顔(可愛い)を眺めながら今日の勉強会の内容を考えておく。
昨日は真実も交えて文系(国語英語)を主にやったし、今日はやはり理系(数学理科)といこう。さっきまとめておいたノートも役に立ちそうだしね。
「そういえばライバー活動はどんな感じなの?」
と思い出したように二人に聞いてみる。芦花は美容系インフルエンサーを初めて一年ほど。
元々小学生の時から思ってはいたけど、可愛いし綺麗だし美人だし素敵なので当たり前に思っていたが、やはり芦花はモテる。というか顔面が強過ぎる。
中学生になってより洗練されて可愛く綺麗になった彼女は中2の誕生日にスマコンを買ってもらい、そこからライバー活動も始めた。
もちろんチャンネルは登録済みだし通知も届くようにしている。当たり前ですね!
そんな彼女は一年でもう五万人ものフォロワーを獲得したと。
僕に言わせてみれば「芦花の素敵さなら当たり前。むしろ気づいてない方が節穴では?」なんて言ったりしてる。
親友には引かれたけどまあ気にしない、数少ない友人でもあり実は真実のことが……なんて知ってるけど黙っておこう。実るといいね。
「私は受験期だしあんまり活発ではないけど、週に一回くらいは動画出してるよ」
「私は食べるのメインだし、チャンスがあれば動画撮ったり写真撮って投稿してるよ! まあ勉強に集中しなさ〜いってお母さんには言われてるけどね」
「そりゃそうでしょ、大事な時期なんだし」
芦花はコツコツと続けているようでなによりです。
真実はグルメインフルエンサーとして活動している。一応登録はしてあるし通知もつけてるけど、メインは芦花です。浮気じゃないです許して。
よく美味しそうな料理の写真をあげてて、これいいなーと思うことしばしば。
時々気になったものは場所を聞いて1人で行ったり、予定が合えば芦花と行ったり。
むっ、真実のおかげで芦花と出かけるチャンスを得ているな? もう少し弁当の量を増やすか……。
なんて取り止めもないことを考え散らかしていると
「アキくんは? KASSENだっけ? いい感じ?」
「芦花はあんまりやらないもんね〜たかちー大暴れしてるよ?」
「えっそうなの?」
「いやーそれほどでも……」
矛先がこちらに向いてしまったので謙遜を一つ。
別にほんとにそんなすごい腕前があるわけじゃない。
ただちょっと反射神経が良かったので、ツクヨミのゲームでもいい感じに戦えるだけなのだ。
あと、たかちーとは真実が作り出した僕へのあだ名である。あらたからちあきだから真ん中とって、たかち、で伸ばし棒で完成。安直ですね。
まあでも下の名前で呼ぶには近すぎるし、苗字で呼ぶにはちょっと硬すぎるのでちょうどいいかなって思ってたりする。
なおそのあだ名は真実しか使ってない。
「それほどでもあるでしょ〜。この前は何連勝だっけ、12連勝ぐらいしてたじゃん」
「12!? すごいじゃん!」
「いやいや相性的なのがよくて……」
「謙遜もすぎるとよくないよ〜? 芦花さんやっちゃえ〜」
「自信持ってよ! 花丸あげちゃうから!」
あっあっ。
それはいけません芦花様。それは僕には過分なご褒美ですぅ!
ちょっと興が乗って調子こいちゃったんですぅ。その後プロゲーマーに当たってボコられてるんですぅ。
でも花丸もらえたからよしとしよう。
「ありがと芦花、真実も見てくれてありがとね。今度息抜きに3人でやろうよ」
「いいね〜たまには息抜きしないと入るもんも入らないしね〜」
「それいつも息抜きしてる真実が言うことかな?」
「……推し活は大事ですよ? 許して? ほらたかちーも」
「いやここでパスしないでよ。そりゃ推し活は大事ですけども」
むむぅ〜? って顔でこちらを見ている芦花から視線を逸らしつつ、真実からもしれっと睨まれているので睨み返しておく。
「てかたかちーの推しって誰なの? 推しがいるみたいなことはよく言ってるけど、誰かは言ってないよね〜」
「確かに。誰なの?」
「……秘密、ということでここは」
いやまあ目の前にいるんですけども。なんなら幼馴染なんですけども。極め付けに家も隣ですけども。
これはずっと秘密にしていること。明かしても問題はないとは言え恥ずかしい気持ちは多分にあるので隠しておく。
まあ、真実は若干気づいている節がありそうな気もするけど。
「えー幼馴染の私にも教えてくれないの?」
「えーとまあ明かせない秘密もありますよってことで、オネガイシマス」
「何故にカタコト?」
「まあたかちーの推しはおいおい探り当てるとして〜」
そこ発掘するの諦めてほしいなーなんて思うんですけど! 思春期男子の推し(幼馴染)を当てるのは罪深いのでやめましょう。
なんて話をしているうちに気付けば昼休みの時間の終わりを告げる鐘がなってしまった。
「やば喋りすぎて次の授業の準備してない!」
「また鞄漁るので時間費やしてしまうのでは〜?」
「今度整理しよっか」
「あ、大丈夫です今回はすぐ見つかったので」
空になった弁当箱をサクッと片付け午後の授業に備えるとしようかな!
今度は速やかに準備しないとね! 疑われるので!
しれっと主人公のあだ名の説明を追加しました