芦花と幼馴染   作:キイカ

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真美視点
最後にちょっと主人公


寄り道での一幕

 

 

 

 私と芦花は今、マ◯クでポテトを摘んでいた。

 最初はここにたかちーもいたのだが、なんでも特売セールがどうとか、近くで安く買える場所があるとか行って急にどこかに行ってしまった。

 ちょっとしたら戻ると言ってたけど、今行くか? と思ってしまった。

 

「急だったね」

「ね〜。そんなに急ぐことなのかな」

「分かんないけど、安く買えるのは良いことなんじゃない?」

「たしかに」

 

 ちびちびとジュースを飲み、ポテトを口に運び、たわいもない話に花を咲かせる。

 なんとまあ高校生らしい放課後でしょう。うん、中学生の時もやったことあったな。

 

「そういえばさー、鳩河くんとは最近どうなの?」

「なになに〜。別になんもないけど〜」

 

 おっと、急に話の方向が変わってきたぞ? 

 最近というには時間が経っているけど、仲良くなった鳩河くん。

 元々中学のクラスはたかちーと同じく3年間一緒。

 たかちーと話している姿を何度か見たことはあった。

 でもそれ以上の関わりはない相手だった。私と芦花とたかちーで話してる時も、そこに参加してくることはなく。

 私たちからたかちーに話しかける時にいても、どこかへ行ってしまうからだ。

 そんな彼があの冬の日、いろいろ悩んでいた私に声をかけてきてから私たちは4人でつるむようになった。

 

「そうなの? 鳩河くん、私と話してる時わりとカチカチなんだけど」

「え〜ほんとに? わたしそんな感じしないけどな」

 

 確かに私と話してる時はまあ多少の緊張はあるような感じはするけど、それでも精一杯会話しようって意志を感じる。

 芦花と2人きりのときはなんか狐に摘まれてるみたいに話せなくなるらしい。

 まあたかちーが睨んでるのもありそうだけどね。あれは本当に幼馴染を見守る顔か……? 

 

「真実と話すのが楽しいんじゃない?」

「ご飯の話ばっかりしてるのに?」

「そういうところが良いんじゃない?」

「えぇ〜ほんとかな」

 

 まあ鳩河くんが私の話をよく聞いてくれることは否定しない。

 最近行ったお店の話だとか、行ってみたいお店の話だとか。

 彼はなんでも聞いてくれるし、興味を持って返してくれる。

 案外彼は私のことをよく見ているのかもしれない。悩んでたことに気付いてくれたし。

 となると、もしやもしや? 

 

「でも、まだ仲良くし始めて4ヶ月とかだよ?」

「別に年月なんて気にしなくてもいいと思うけど。向こうがどう思ってるかだし」

 

 ん〜〜、いや別に嫌いなわけではなくて。でも好きかと言われると分かんないし。まあまだ観察中というか? 

 さすがにそんな簡単に落とせるほどわたしは軽くはないのだよ? 

 あ、でもご飯に釣られたら分かんないかも。ご飯は大事。

 

「まあ、まだ観察中ってことで許してくださーい」

「仕方ないなぁ。でも彼、わりとモテそうだよ?」

「確かに。元々テニス部だったらしいし、爽やか好青年って感じかも?」

「……そこまで言うなら気をつけたほうがいいんじゃない?」

 

 うっ。いやでもほら、そんな簡単に近づけないというか。まだそういうのは難しいというか? とりあえず保留なんですよ保留! 

 この話はわたしに不利すぎるからやめよ! 

 話を変えてしまえ! 

 私が気にしていたことを聞くチャンスだし! 

 

「まあそれはおいおい考えさせてもらうね〜。それよりもさ、私ず〜っと気になってたんだけどさ」

「話を逸らしたね……で、なに?」

 

 バレてら。まあ変えられたのでよし! 

 

「髪色どうして急に変えたの?」

「……イメチェンって言ったら?」

 

 嘘ですね。はい。

 3年程度の付き合いですけど、3年も一緒にいるんだから、そんな見え透いた嘘は分かっちゃうよ? 

 

「それで私が信じるように見える?」

「……ですよね」

「とっとと吐いちゃいなさいな〜」

 

 芦花は一瞬目を伏せて、少し考え込んだようだった。

 別に似合ってないとかは全然思ってないんだけど。

 私が仲良くしてた芦花は、急に派手髪に変えるような突飛な行動はしない。

 それこそ何かしらの理由はあるはず。

 それをいうならその()()のピアスも、気にはなっている。

 誕生日パーティのときから気付いてはいたが、突っ込むのはさすがに今じゃないと思って避けていた。

 今はちょうどいいタイミングだった。

 

「んーとね。まあこうして髪を明るく染めたら、告白される回数も減るかなって」

「あ〜ね」

 

 なるほど。確かに髪がピンクの顔面つよつよギャルなんて、普通に考えたら告白するのには勇気があるだろう。

 それこそ、本気で好きになった人か、底なしのアホか。

 黒髪の時は、もっと多くの人が芦花を射止めようとしていた。

 誰にでも優しくて、黒髪清楚な感じがあったから。

 顔が良い人、頭が良い人、運動神経が良い人、話が上手い人、いろんな人がいた。

 でも1人も芦花は受け入れなかった。

 前に芦花に聞いた時は、「しっくりこない」とか言ってた。

 あとは内面が見えない、とも。

 芦花は外見だけじゃなく中身でも判断しようとしていたのだ。

 で、お眼鏡に叶う人は1人もいなかったと。

 仕方ないとは思うけど、一部の女子からは反発もあった。と言っても、芦花が、本当に優しくて良い子だからほんの一部だし、何か起こそうもんなら大多数の人を敵に回すから何もなかったけど。

 

「それに真美なら気付いてると思うけど、このピアスも」

 

 うん。気付いてた。意味も調べたから知ってる。

 たぶん鳩河くんは知らないし、彩葉も気付いてない。

 たかちーは、うん、知ってるでしょうね。彼、芦花の変化には最初に気付くし。

 なんなら誕生日当日に会ってるはずだから、そこで問い詰めてるかな? 

 まあ、そこはいいとして。

 

「うん。でも、ほんとにそっちだけにするの?」

 

 言葉は濁して、でも伝えたいことは伝わるように。

 

「……別にそういうわけではないよ。でも、これで意味を察して寄ってこなくなるならいいかなって」

 

 あぁ、なるほど。自衛のためと。

 そこまで賢い人ばかりではないとは思うけど、一応そういう意味も含んでるのか。

 

「あとは単純にちょっと怖くなっちゃった、から」

「告白されるのが?」

「いや、男の子が」

「それは……最後のせい?」

「うん。さすがにちょっとね」

 

 受験前最後に告白してきたエースくんがトラウマになってしまったのか。

 やっぱ殴っとけばよかったかも。

 もしくは止めに入っておけば……やめやめ。この話はもう考えても意味ないし。

 たかちーが割って入って、芦花の心はほんとにダメなところまでは傷付かなかった。深くはあるかもしれないけど、それでもまだマシだった。

 それで終わりなんだ。

 

「だから、自分自身を変えてみようってこと?」

「そういうこと。実際今日も視線は感じたけど、途中から減ってきてたしね」

 

 それはたぶんたかちーがすごい顔してたからでは……? まあ芦花にバレないようにはしてたけど。

 でもそういうことだと、たかちーは幼馴染だからいいのかもしれないけど、鳩河くんは? 

 

「たかちーと鳩河くんは? 大丈夫なの?」

 

 さすがに気になるので尋ねてみる。

 

「アキくんはぜんぜん大丈夫なの。いてくれると安心できるし」

「幼馴染パワーか」

「かもね。鳩河くんは……まあちょっと不安ではあるけど、でも大丈夫」

 

 さすがは幼馴染だった。あれだけ芦花に気を配ってるから大丈夫なのも当たり前か。

 鳩河くんは、不安ありか。

 たぶんなんかあればたかちーがなんとかしてくれそうだけど。

 

「ならいいけどさ。ちゃんとダメな時は私にも言ってよ? 力になるからさ」

 

 そう言ったら芦花はクスッと笑った。

 

「ありがと。真実と仲良くなれて良かった」

 

 真面目な顔してすーぐそういうこと言うんだから。

 顔が良いからなおタチが悪いね。

 男の子なんて芦花仲良くしよなんて言われたらみんな両手をあげて喜ぶだろうに。

 なんなら女の子でも一緒だと思うけど。

 罪な女ですよ、綾紬芦花って子は。

 

「まあ、そういうことなら私は安心ですよ〜」

「今後ともよろしくね、親友さん」

「任されたよ、親友さん」

 

 グーとグーをぶつけ合ってお互い笑い合う。

 親友なんて響きはくすぐったくて、ニコニコしちゃうけど。

 でも私は芦花とそういう仲の良さを感じてるし、芦花もそうだと思ってくれていて嬉しかった。

 

「ごめーん。ようやく買い物終わったよ〜。あれ、どしたの2人とも」

 

 私たちがニコニコと笑い合ってるところにようやくたかちーが帰ってきた。

 両手にちょっと荷物を抱えている。なんか主婦みたい。

 

「なんでもないよ〜私と芦花の秘密〜」

「うん、秘密」

「……まあ仲良いならいいけどさ」

 

 そう言って芦花の隣に腰掛けた。

 たかちーと芦花が話し始めて、何を買ってきたのかとか、セールってそんなに急ぐものなの? とか言ってるなぁ。

 彼女の横顔は確かに安心し切ったような顔で、たかちーをとても信頼しているように見える。

 なるほど幼馴染の距離感ってこんなものかと思うけど、男女の幼馴染ってこんなものなのか? とも思う。

 正直、たかちーの過保護さは幼馴染というには少々重いのでは? と思ってたり。

 この辺の話を誰かに共有してみたいけど、仲間がいない……。

 だれかいないかなぁ。

 私は幼馴染同士の会話を眺めながら、中身の無くなったジュースを啜るのだった。

 

 

 ────────────────────────

 

 帰り道のこと。

 芦花と2人で帰っていた僕は、芦花の攻勢に尻込みしていた。

 

「片方荷物持つよ。それ私たちのお弁当の具材もあるんでしょ?」

「それはそうだけど……いいよ重いし」

「ならなおさらだよ! 片方私が持つから!」

「大丈夫だって。ちょっとした筋トレみたいなもんだよ」

「さっきから持ち手をコロコロ変えてるのに気づいてないとでも?」

「うっ、よく見ていらっしゃる」

「観念しなー?」

 

 やばい、このままだと芦花に持たせなくてもいい荷物を持たれてしまう! 

 どうしよう! 

 なんて思っていたら。

 

「あら芦花ちゃんじゃない!」

「あ、いつもお世話になってます」

「あ、母さん」

 

 救世主から分からないけど我が母が出現した。

 仕事帰りにしては早いけど、早上がりでも出来たのだろうか。

 まあいい。ちょうどよく来てくれたので、ここは一つ。

 

「母さん。はいこれ」

「うん? あぁ、買い物してきたの?」

「そ、2つあるから1つ持って」

「あ、それ私が……」

「いいのよ、芦花ちゃん。いつも息子と仲良くしてくれてありがとね」

「いえいえこちらこそ、いつもいっぱい助けてもらってます!」

 

 よし、荷物から意識を逸らすことに成功した。

 あとはお家に帰るだけ。

 明日は何を作ろうかな?

 

 

 

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