芦花と幼馴染   作:キイカ

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主人公のことではないよ!


ツクヨミデビュー!

 

 

 

 夏休みに入って3日ほど。

 僕は自室で日課の予習をしていた。

 今日の予定は午後から守たちとツクヨミに行く約束をしていた。

 今時珍しく、守は中学の時スマコンを持っておらず、高校に入ってからも買ってなかったらしい。買う予定も当初はあんまりなかったとか。

 それなのについ先日いきなり買っていろいろ教えてくれと頼まれた。

 いきなりどうしたのかと思えば、彼女(真実)のツクヨミの姿も見たいと。

 急にぶち込まれた僕の顔を想像してほしい。それはもう甘いケーキを食べた時の顔でした。

 ちなみに隣に芦花もいたけど微笑ましそうに見てました。優しい。

 そんなわけで午後イチから守にツクヨミ講座をしよーというとこで、真実と芦花にも声をかけて集まることにした。

 酒寄さんはこの夏休みとんでもスケジュールを組んだそうで、ほんとに限りある日数しか余裕はないらしい。

 何してるんだろあの人。てか、食事は大丈夫なのだろうか……。

 

「あ、時間だ」

 

 とりとめもなく考え事をしているうちにスマホのアラームが時間を知らせた。

 さて、先に行って初期スポーンで待ってましょうかね。

 一応守は真実にログイン方法だけ教えてもらってる。

 残りはツクヨミに着き次第って感じ。

 さて、それじゃ僕も向かおうかな。

 

 

 

 深い海に沈むように。

 はたまた果てのない宇宙を突き進むように。

 光の奔流のような視界を通して、僕は赤い鳥居のあるいつものログイン場所に着いた。

 まだ日の昇っている状態だ。

 波飛沫をあげながら降り立てば、目の前には美しき銀色。

 

「────太陽が沈んで、夜がやってきます」

 

 一瞬で空は反転し、夜空の中を流星がいくつも流れる。

 このツクヨミにおいて知らない人はいないであろう月見ヤチヨがその姿を現す。

 

「何度見てもこの入り口、綺麗だなぁ」

 

 初めてのログインの時はここで感動してしばらく動けなかった。

 なんならチュートリアルのヤチヨが僕に手を振るまで周りを見てぼーっとしてたなぁ。

 

「さて、芦花たちより先に待ってないとね」

 

 いつもの通り僕は集合時間よりだいぶ早めに来ている。

 とはいえツクヨミだとログイン時間がバレてしまうので30分が限度ってところ。

 守のアバターはどんな感じかなー、と鳥居を通過しようとしていた。

 

「……」

「?」

 

 通過する直前、なにやら視線を感じたので振り返るといつものお見送りヤチヨにしては珍しくジト目になっている気がする。

 あれ、チュートリヤチヨって、こんな顔したっけ。

 

「ヤチヨさん?」

「それでは、行ってらっしゃーい!」

 

 うわ、急に固定ボイス流すじゃん! 

 びっくりしたぁ。

 いつものヤチヨと変わらないのか、気のせいだったようですな。

 さ、先に行こっと。

 

 

 

 

 

「ううん。何度見ても分からない」

「なにがだ?」

「彼のこと。見覚えがないはずなんだけど、どこかで見た気がする……」

「他人の空似じゃねーか?」

「ううん。あの感じ、たぶんどこかで……」

 

 

 

 

 

 最後にログアウトしたのはせっかくだからと購入してみた和風な自宅。

 とはいえあまり家具とかは揃えておらず、畳の部屋にちゃぶ台と縁側に風鈴とかを置いてあるだけの簡素なものだ。

 お値段はお手頃価格でした。お財布に優しいね。

 そこからワープで初期スポーンに向かう。

 およ? あの特徴的なお団子みたいなポニテに両足で違う色のニーハイは……。

 

「早いねぇ。まみまみ」

「あ、やっほ〜たかち……じゃなかった。秋鷹」

「こらこら、そこは間違えちゃダメでしょ」

「やっぱ現実で仲良くしてる人はうっかりしちゃうよね〜」

 

 一番乗りかと思っていたけど、なんと真実の方が早いではありませんか! 

 彼氏の姿を1番最初に見たかったのかな? 可愛らしいですねぇ。

 あ、まみまみというのはこのツクヨミでのアバターネームだ。

 僕は安直に秋鷹、まあ、分かりやすいね。

 さすがにインフルエンサーをしている真実と芦花は実名を出すのはよくない(そのわりにはあんまり本名から離れてない気もするけど)から名前を変えている。

 僕も似たようなものです。

 

「まみまみってツクヨミだと大人っぽいよね」

「それリアルだと子供っぽいって意味? 失礼でしょ〜」

 

 いやだってねぇ。リアルの真実はなんかこう庇護欲をそそるというか。ちまっこいし。

 でもツクヨミの姿はもうちょい大人っぽくなる。まあちょっとね。

 髪の毛は結んで、お団子ポニテ(名前が合ってるかはわかんない)に獣耳(モモンガらしい)。

 上には食べ物(さすがに本物ではない)が貼り付けられたビスケット色のポンチョに、その下から白の和服の裾が見えている。

 下はオレンジのスカートに右足がクリームソーダみたいな靴下。左足がホワイトソーダみたいな感じ。食べ物関連だねどこも。腰には長めのしっぽが、これが1番わかりやすいモモンガモチーフかも。

 ちなみに靴は赤い花尾の黒い厚底下駄を履いています。盛ってますね。

 

「そういう秋鷹は無難なかっこにしちゃってさ」

「やー、派手派手は苦手なもので」

 

 僕はツクヨミにおいては青髪青眼の短髪になってまして、首元に鷹の目のゴーグルをつけてます。ちなみに後頭部らへんに天狗のお面があるよ。赤地に長い鼻のやつ。

 上はデフォルトの和服の袖周りを短くして、動きやすさ重視。

 背中に鷹の羽根を生やしてるので、その部分も穴が開いてます。羽の色は紫苑色。普段は邪魔だから織り込んでるよ。

 下は袴みたいなのを履いてます。上下ともに紺色ベースで、袖には3本の白いラインがあるよ。あと秘密だけど、胴体部分の見えづらいところに白い芦の花が一輪だけあしらわれてるよ。何とは言わないけどわかれ。

 下の袴にもサイドのところに黒い線が2本。

 靴はつま先に鷹の爪を模した突起がついた厚めのスニーカー。

 

「うん、何度見ても無難」

「分かってるよい。でもこれはこれで気に入ってるから」

「まあ、秋鷹はその格好だとあんな配信しちゃうもんね」

「やめい。ちょっとトリガーハッピーしてるだけじゃないか。視聴者は視覚的に楽しいし僕もたくさん撃てて楽しい、Win-Winだよ!」

「全然楽しそうだからいいんだよ? ただ、普段の様子と違いすぎてね」

 

 あーまあうん、自分でもちょっとはしゃいでるなとは思うけどね。

 なんか楽しくなっちゃうんだよね、あれやってると。

 芦花にも楽しそうでいいねって言われるし。たまに一緒にやる時はお手柔らかにねって言われてるし。

 芦花に当てれるわけないじゃないか! 

 どんなに強い相手よりも芦花にだけは一生勝てない気がします。

 

「あー、まあ、楽しいので。また今度みんなでやろうね」

「いいよ〜。今度は彩葉も呼んでやりたいな」

「5人だと何があったっけ?」

 

 今KASSENでプレイできるモードは1体1の『SETSUNA』、3対3の『SENGOKU』そして7対7の『KASSEN』だ。

 他にもあったはずだけど、ちょっと記憶が……。

 

「ん〜5人なら『HAISUI』とか?」

「あー、そんなのあったね」

 

 HAISUIとは、5人1組でやる突破型のモードだ。

 正面から迫り来る大量のミニオン(雑魚敵)と立ちはだかる強敵(牛頭とか馬頭とか)を打ち砕いて生き残るもの。

 5人も集まるならあと1人集めてSENGOKUをすることの方がよくあるのと、システムの都合上、NPC相手なのでつまらないと感じる人が多くあんまりプレイ人口がいないようだ。僕も忘れてたくらいなのでだいぶマイナー。

 

「あ、ROKA来た」

「やっほー。2人とも早いね」

「やっほーROKA」

 

 アバターネームはROKA。本名をローマ字にしただけじゃんとは思うけど、芦花だとおしゃれに感じるから不思議だね。

 ツクヨミの芦花は元よりピンク色の髪に鹿の角が生えている。現実より長い髪を背中側で編み込んでおり、その終端を叶結びっていう縁起の良いらしい結び方で止めている。

 今更だけどピンクが似合うかもって思ってたの、ツクヨミの芦花が元からピンク髪だったからかな。

 で、上はおへそが見えちゃうくらい短い薄紫の和服に、フードのついたちょい大きめのパーカーを着ている。

 下は薄紫のショートパンツの上にピンクとライトグリーンのふりふりスカート。それとピンクのベルトにホルスターがついておりそこにオコジョが入っている。

 なんでか聞いたら可愛くない? って言われた。それを言ってる君が1番可愛いが? あとこのオコジョ、やたら僕にまとわりついてくるんだけど、懐かれてるのかな。

 薄紫のニーハイブーツ(芦花から聞いた)はつま先だけ黒く、足首周りに濃い紫の花尾が結ばれてる。

 ちなみに、ツクヨミだと芦花の瞳は紫っぽくなる。紫苑色だと聞いた。現実でもツクヨミでも芦花の瞳はとっても綺麗だ。

 それはそれとしてうーん、何度見てもおへそが……。

 

「毎回思うけどおへそさぁ」

「アバターだからいいの。アキくん気にしすぎじゃない?」

「えー、でもぉ……」

「早く慣れてくださーい」

 

 無理ですってばぁ。そんな大胆な芦花さんは僕耐えられません! (なにが?)

 まあ、いつものことなのでしばらくすれば通常運転に戻ります。たぶん。

 このやりとりツクヨミくるたび毎回してるな……。

 

「ROKA〜? アキくんって呼ぶのはダメじゃな〜い?」

「あ。でも、秋鷹だし、大丈夫……ダメ?」

「ダメじゃないよ〜」

「おいこら」

 

 芦花ならなんて呼んでもおっけー! あ、でもリアバレはまずいか? ROKAのガチ恋(そんなんには負けないけど)に狙われるか? 

 まあ、大丈夫っしょ。

 

「アバターネームとも被ってるから大丈夫だと思うよ。まあたかちーはダメだけど」

「うぇ〜、わたしもアキくんって呼ぼうかな」

「「それはダメ」」

「えっ、2人で合わせてまで言う?」

「まあ、それは芦花の特権というかなんというか」

「……鳩河くんの前でそう呼んだら拗ねちゃうよ?」

「うぐぅ」

 

 その呼び方は芦花以外にはさすがに許せないかなぁ。真実がダメってわけではないけど、そう呼んでいいのは芦花だけって決めてるので。

 まあ、芦花のそれは僕とは違う理由だったけどね。あれでも、そのわりにはちょっとむすっとしてるような……? 

 

「芦花?」

「なーにアキくん」

「や、なんでもない」

「? てか、今絶対いつも通り呼んだでしょ」

「すご、分かるんだ今ので」

「そりゃ伊達に幼馴染してませんし?」

 

 幼馴染の直感が今日も冴え渡っておりますね! 確かにいつもの現実呼びを意識してたけど、バレるとは。

 幼馴染道は奥が深い。

 さて、そろそろ守も来るかな? 

 と、鳥居を見てみると、ちょうど良く吐き出されてきて、そのまま地面に突っ込んだ初心者が1人。

 

「ぶへっ」

「あるある」

「だね〜」

「皆通る道だ」

 

 初心者の洗礼その1(それ以外は不明)、チュートリアル終了後のヤチヨ投げで地面とご対面だ。

 すっ転んで仰天してる守に真実が近づいて行く。

 

「びっくりしたー……!?」

「やほー、ツクヨミへようこそ〜!」

「あ、えっと()()()()?」

「うん! 真実だよー! ()()()!」

 

 立ち上がった彼の目の前には愛しの彼女さんの姿が。

 2人は付き合ってからお互いの呼び方を変えると言ってたけど、学校にいるときは変わってなかったのにいつのまに? 

 

「いつのまにやら下の名前で呼んでるじゃん」

「やるねぇ鳩河くん」

「お、えっと、荒鷹と綾紬さん?」

 

 僕らも2人に近づく。僕らの姿を見てまた驚いてら。

 

「そだよー、ここでは秋鷹でよろしく」

「私はROKAね」

「わたしはまみまみだよ〜」

「ほぇー、皆アバターネームあるんですね」

「守も決めるんだよ!」

 

 僕らのアバターネームを見て悩み始めた守をよそに、僕は芦花とこっそり話し合う。

 

「これ、ツクヨミ案内するの真実に任せて僕らは後ろから見守ったりしてるのがいいんじゃない?」

「ありかも。お邪魔虫はこの辺で退散しちゃおっか」

「ふ〜た〜り〜と〜も〜聞こえてるよ〜?」

「あ、やべ」

 

 しれっと2人で退散しようかと思ってたら真実が聞いてました。地獄耳ですか? 

 仕方なし、諦めて出来立てカップルの邪魔にならない程度に着いていくとしましょう。

 

「よし、ここではハトモリって呼んでください」

「ハトモリね、おっけー」

「ハトモリくんね、分かった」

「私は〜?」

「真実さんは……いやいや、ちゃんとここではハトモリって呼んでよ」

「え〜……分かった。じゃあわたしのこともちゃんとまみまみって呼んでね?」

「うっ、善処します」

 

 おーおー、ほんとに僕たちいるのかなこれ。

 あ、忘れてたけど、守のツクヨミの姿は鳩の羽があしらわれた和服に、腕の部分に小手をつけてる。あれ、よく見たら首からひまわりのペンダント? 真実のことイメージしてるんか?

 あと後頭部らへんから鳩の羽が生えてる。羽ペンをさしてるみたいな感じだ。

 だいぶシンプルですね。あ、靴は草履みたい。黄色の花尾に黒色かぁ。

 

「さてさて、そろそろツクヨミ巡りを始めようか」

「よろしくお願いしますよ、先輩方」

「おー、任せて〜!」

 

 テンション高めの真実に任せて進行開始! 

 まあ僕と芦花は後ろをついてくだけですけどね。

 

「あ、そういえばさ、芦花は4人とかで出来そうなKASSENのモード心当たりない?」

「4人? んー、あ、あれ。えーと……」

 

 お、何かある感じ? 

 

「2対2の『HIYOKU』だったかな」

「『HIYOKU』? ……あー! あったねそういえば」

 

 そういえばそんなものがあったなと思い出した。

 2対2で戦うモードだ。これの特殊な点は、2人の体力が連結される点だ。つまり片方がダメージを受けると両方の総合体力が減るのだ。

 対人だから割とやる人が多いかと思いきや、このルールが結構曲者で好みを分けたのであまり有名ではなかったようだ。実際僕も忘れてたし。

 名前の由来は比翼の鳥から来てるらしい。1羽では飛べないけど、2羽揃うと大空に羽ばたくという。

 

「ちょうど4人だし、KASSENについても分かるからあとでやりたいね」

「いいね、私も久しぶりにやりたいなと思ってたし」

 

 ようやく出てきた4人で出来そうなモードにちょっとワクワクしてきた。

 なにより2人の体力を連結するのがいいね。

 僕がミスらなければ芦花に傷一つ付かない。素晴らしいね、やる気が満ちてきたぜ。

 とまあ、それは後のお楽しみとして、今はツクヨミビギナーなハトモリくんの案内を終わらせましょ。

 

 

 

 







ようやくツクヨミに来ましたね。
そしてヤチヨさんも登場……ですが、ちゃんとした出番はまだ先の予定。
なによりヤチヨの立ち位置が難しい……
あと、ツクヨミアバターの描写がこれで伝わるのかという問題。
ガイドブックに小説、なんならwikiまで漁りましたね
あと、オリジナルのKASSENを二つも……やるかは未定ですけどね
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