今回はレアな芦花目線
8月上旬。とあるカフェにて私たちは女子会を開いていた。
女子会なので、メンバーは私と真実と彩葉だ。
アキくんと鳩河くんは、今日は男子会をするって言ってた。
たしか、ラーメン食べてボウリングしてカラオケ行くとか。男子高校生の体力すご。私たちだとボウリングでもう満足かも。
そんなわけで女子3人、揃えば姦しいことこの上なくて。
話題は最近流行りのスイーツ、洋服、音楽、配信多岐に渡った。
今は、絶賛お熱い時期のカップルについて。
「で、最近どうなの?」
「えへへ、この前2人で海行ってきた!」
「メロメロにしてやった?」
「うんたぶん。私もちょい恥ずくて顔見れん時多かったけど」
「はー、これこれ恋バナは染みるねぇ」
でへへと顔を緩めている親友の様子に私も心があったかくなる。
ちなみに隣に真実、正面に彩葉が座っている。隣からの幸せオーラのお裾分けがすごい。ハート乱舞してるし。
「入学した時はこんなになるなんて予想できんかったなぁ」
「そう? 傍目から見ても結構わかりやすかったと思うけど、鳩河くんは」
「え、まじ? 私見る目ない感じ?」
んー、それはそうかもね。まあ、何とは言わないでおくけど。
左耳のピアスが、意識の片隅を過ぎる。
まあ、彩葉だもんね。気付くわけない。
「そういえばね〜守くん、休み明けからお弁当作ってくれるんだって!」
「おぉ〜アキくんのお弁当卒業?」
「うん、彼氏のお弁当に乗り換えます!」
「ちょっとー、アキくん傷ついちゃうよー?」
「たかちーはそんなやわじゃないからへーきへーき」
感謝のしるしに何か奢るかー、なんて真実は言ってる。
たぶんそんなことは気にしないだろうけど、まあ受け取るようにフォローしとこうかな。
「あ、弁当で思い出した。彩葉ちゃんと食べてるのあれから」
「い゛っ!? タベテマスヨモチロン」
「これは嘘ですね? 嘘の匂いがしますよ〜」
「どんな匂い!?」
やっぱ食べてないじゃん。これは真実ん家に強制連行強制晩御飯の刑かなぁ?
「や、その、夏休みって時間がたくさんあるから、稼ぎ時だし、勉強にたくさん時間使えるし、推し活いっぱいできるし、その〜……ね?」
「うんうん、それもまたギルティだね〜」
「何も聞いてないな!?」
言い訳なんて聞くわけないでしょうに。私と真実の目が黒いうちはなんとしてでも食わせてやる。
まあ、押し切れるかは分からないけどね。
「彩葉の推しってヤチヨだっけ〜」
「うん、神、生きる希望、私が1日1食で生きれる理由、この世に生まれた神、全人類の女神、睡眠と同等の疲労回復効果をもたらしてくれる精神的お薬」
「うん、落ち着こっか」
真実の軽はずみな発言によりまるでバグってしまったかのように彩葉の口からヤチヨへの褒め言葉が止まらなくなってしまった。
ちょっと恐怖すらあるんですけど。
目がイっちゃってるし、でも頰は上気してるし。
うん、でも彩葉だから可愛いね。
「真実は黒鬼だもんね?」
「……えっ、黒鬼?」
「そ〜! 帝さまカッコいいよね! ね!?」
現実からトリップしてた彩葉が黒鬼の単語で帰ってきた。
と思ってたらすごい苦々しい顔になった。嫌いなのかな?
「んー、まあ、ノーコメントで」
「なんでよ!?」
「私はあーいうの苦手かな」
「芦花は!?」
「私? んー、カッコいいとは思うけどそれだけかな」
「味方がいない……!」
カッコいい男の人ってあんまり好きになれないんだよね。
告白してきた人の大概ってそういう自分に自信があって、だからこそ私を射止めれるとでも思ってそうだったし。
いや、私がそんな高嶺の花だなんて自分で言いたいわけではないけど、これでも一応美容インフルエンサーの端くれですし、告白されてきた数を考えれば、否応でも私が整っている側だというのには理解せざるを得ないというか。
そういう意味では鳩河くんは苦手な部類の方だったんだけど、彼の視線の先には真実しかいないのが分かったから。
だから安全だと判断した。
アキくんは……ずっと一緒にいたし、幼馴染で家族のようなものでもあるので、男性という括りで恐怖心が沸くことはありえない。
誕生日のあの1件も、アキくんなら本当に離れると思ったからこそ、大丈夫と言ったわけだし。
大事な幼馴染なのでね、これからも仲良くしたいのですよ。
「芦花には推しとかいないの?」
「……へ、私?」
なんてぼーっとしてるうちに私に話が振られていた。
推しかぁ。彩葉や真実みたいに熱量を持って応援するってほどの人はなぁ。
「いない、かなぁ」
「えー、もったいない。推しがいると世界が変わるよ?」
「変わる変わる。生きる希望が湧いてくる」
「彩葉のそれはちょっと重みが違うから黙っとこうねー。はい、ケーキ」
「ちょ、なん、あむっ!?」
熱弁に入る前に真実のケーキカットインにより彩葉沈黙。
さすがのタイミングだ。
「今のままでも十分世界は輝いているからさ」
「わー、ちょっとギザっぽい」
「失礼だなぁ。彩葉と真実、あとアキくんがいればそれで楽しいからいいの」
「守くんは?」
「彼はあなたのでしょ」
「や、そうだけどそうじゃなくてぇ……へへ」
「うん、5人でいるのが楽しいから」
嘘偽りない私の気持ち。
中学の頃も楽しかった。3人でわちゃわちゃとしてるの。
そこに鳩河くんと彩葉が加わってより鮮やかに、キラキラと輝く世界になった。
私としてはそれで満足。あとは彩葉がもっと頼ってくれて限界ムーブが減ったらなぁって思うくらい。
「芦花はいい子だねぇ。花丸あげよう!」
「んぅ、それは私のなんだけど?」
「いーじゃんいーじゃん! 誰にもらっても嬉しいでしょ?」
「それはそうだけどさ」
てれてれしてた真実から花丸をつけられた。
普段はつける側なのでちょっと新鮮。
ふふ、今日は良い日だ。
それから話は変わって宿題の話になった。
「みんな夏休みの課題終わった〜?」
「私はもう終わらせたよ」
「私も、8割くらいは」
さすが彩葉、バイトしながらでも課題はもう終わってるなんて。
「早くない!? わたし半分とかなんだけど!?」
「アキくんは7月中に終わらせたって言ってたよ」
「荒鷹くんそんなに早く終わらせたの? 私でもまだだったんだけど」
「彩葉はバイトがあるでしょ〜が」
鳩河くんは……全然だってこの前言ってた気がする。
アキくんは中学の時から、なんなら小学生の時からそういうのはとっとと片をつけるタイプだったな。
「ずっと疑問だったんだけどさ、荒鷹くんってなんなの?」
「なんなの、とは。私の幼馴染だけど」
「あ、ごめん質問が抽象的すぎた」
すごい大雑把な聞かれ方だと幼馴染としか答えれないよ?
「えっととりあえず気になるのはなんであんなに勉強出来るのに、テストの点数抑えてるのか」
「あー、んー、本人がこの前言ってた通りだよ?」
「なら中学の時受験を見てくれた理由は?」
「んー、たしか塾代は高いし、もっと楽しく勉強出来た方が後々いいでしょ? って言ってた」
「一般中学生が中学受験の勉強は見れないと思うけど?」
それは……まあそうかもだけど、アキくんは出来ちゃったし。
まあ、おんぶにだっこな気はしてるけど、でもめっちゃ感謝してるしお礼に一緒にご飯とか行ったよ? 割り勘で押し切られちゃったけど。
「あんだけ勉強する理由が分かんないのよね」
「未来のためじゃないの?」
「それにしては、進路の話とかしないよね? 私は東大目指してるからさ」
「あー、そういえば言ってたね。アキくんの進路かぁ、確かに聞いてないな」
中学の時も、私の進路を先に聞いてから、僕も同じとこ受けようと思ってたんだって言われたし。
「本人に聞いてみたら?」
「絶対誤魔化される。私が聞くより芦花か真実の方がちゃんと答えてくれるんじゃない?」
「ど〜だろ〜ねぇ。わたしにも話してくれるかはわかんないよ? てか芦花が聞いて答えないならわたしが聞いてもねぇ」
「えー、そーかな?」
案外真実の方が話してくれたりしてね。
ん、そんなことはないと思うけど、ちょっと、なんか、うーん。
モヤっとした気がしたけど、まあいっか。
「勉強はまあいいや。じゃあお弁当は?」
「あー、確か小学校のうちから親の料理を手伝って、途中からは作ったりもしてたらしいよ」
小学校の時の調理実習、テキパキあれこれやってたような。
「え、じゃあもう年単位で料理の練習してたってこと?」
「じゃないかなぁ。中学でお弁当になってから、最初の頃は慣れてなくて不安そうだったけど、すぐに美味しいお弁当作ってくれるようになったし」
「いや、中学生が当たり前にお弁当作れるとかどんだけ練習したのよ」
アキくんだし……。てかそれは彩葉もでは。
「1人で生活切り盛りしてる彩葉が言えるかな〜?」
「私はやれることやってるだけですし」
「じゃあアキくんもじゃない?」
「なにを理由にそこまでするのかな」
それはこの前聞いたけどはぐらかされちゃったからなぁ。
「食べてほしい人に幸せになって欲しいからってこの前言ってたけど」
「へー、それは家族とか?」
「違うらしい。未来の彼女とかでもないし、友達でもないらしいよ」
「え、じゃあ誰?」
「わかんない。答えてくれなかった」
誰なんだろ。
なんて横の真実に聞こうとしたら、すごい顔と鉢合わせた。
信じられないものを見るかのような、いやなんで?
「なにその顔」
「や、なんでもない。今度感謝のしるしに焼肉奢ってあげよって思っただけ」
「なんでなの」
「しーらないっ」
追求する前に真実はお手洗いかどこかに行ってしまった。
むぅ、いったいなんだったんだ。
「彩葉はどう思う?」
「真実の顔?」
「うん」
「わかんない」
だよねー。
しばらくしてから真実が戻ってきた。
「ちょっと中座にしては長くない?」
「この後の予定を埋めてたのですよ〜」
「ふーん?」
「ところでさ、芦花にとってたかちーってどんな存在なの?」
「へ、急に何?」
「や、中学からずっと思ってたんだけどさ、あんだけいろいろしてくれる幼馴染だからさ、芦花はどう思ってんのかなって」
どう、かぁ。
うーん。
家族。生まれた時からずっと一緒にいたらしいからもう身内のような感じ。お互いの両親も仲良いし、なにかあったら連絡してねって言われてたり。
親友。困ってたら助けてくれるし、悩んでたら一緒に考えてくれる。甘やかすだけじゃなくて、しっかり厳しくしてくれるとこもある。真実とはまた別の大事な友達だ。
異性としては……身長高いし、ランニングとかしてるけどちゃんと食べてもいるから健康的な体型だし。清潔感ある髪型だし、普段のおしゃれも気を使ってるのがわかる。
あと料理もできるし、勉強もできる。
む、意外とモテるタイプか? でも今までそういう話聞いたことないなぁ。
でも、うーん。幼馴染としての側面が強すぎてなぁ。
「いろいろありすぎてなぁ」
「端的に言うと?」
「んー、家族、親友、一応異性」
「一応て」
真実の目が哀れなものを見る目だ。いや仕方なくない?
「あんまりそういう目で見れないというか」
「あーまあ近くにいすぎたらそうもなるか」
「まあそういうのひっくるめて幼馴染って枠な感じかも」
「ふーん。なるほどねぇ」
私の中のアキくんはいつでも笑ってるし、背中を押してくれる。
この簡潔には言い表せない複雑な気持ちの入り混じった彩葉への想いも、それに葛藤する私のことも。
昔からなにかあれば助けてくれたな。
「たかちーからは聞いたことある?」
「アキくんから? ないなぁそういうの」
「荒鷹くんも幼馴染って答えそうじゃない?」
「……はぁ」
それはそうかもって思ってたけど、そのため息はなんですか真実さん?
呆れてるような、可哀想なものを見るような。
心外ですけどー?
「まあ彩葉には期待してないけど」
「酷くない? 私なにかしたっけ」
「おだまり。芦花は……うん、もう少し考えな」
「えー、どゆこと」
それっきり真実は黙ってしまって。
私と彩葉は首を傾げつつあーでもないこーでもないと、話し合いを続ける羽目になった。
そうこうしてるうちに、私の次の予定の時間が来てしまった。
「ごめん、私このあと親たちとご飯の時間だ」
「じゃあ解散かな、あ、それってアキくん家族とも?」
「うん、そうだよ」
「ふ〜ん……」
? なんかジト目で見られてる?
なに、なんなの?
「まあいいや、じゃまた今度遊ぼうね」
「うん、またね!」
「彩葉は予定ある?」
「ないけど、なに?」
「この後も付き合って。まだ聞いてもらいたいことあるから」
「? わかった」
このあと0時にも更新ありますー
当たり前のような存在の幼馴染、壁は分厚い