芦花と幼馴染   作:キイカ

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ほのぼのしたい(願望)


ドーナツ食べるだけ!

 

 

 

 夏休みが終わり、9月も後半。

 テストを終えた僕たちは皆でドーナツチェーン店に来ていた。

 酒寄さんもバイトがなかったので連行して来た。

 

「最近限定のやつ出てたから来たかったんだよね〜!」

「マロンのやつ?」

「そ〜そ〜! あとは、紫芋使ったやつもあったはず!」

「美味しそ……でも、お金……」

「それはい〜からい〜から! 私もどれぐらい食べるか悩む〜!」

 

 女子3人がわいわいとどれを選ぶか悩んでいる。

 真実は当たり前のように色々食べようとしてるし。夜ご飯入るの? 

 女子より先に男子組が選んでしまおうか。僕らはそんな食べないし。

 

「守は決まってる?」

「いんや、荒鷹先にどーぞ」

「どもー」

 

 譲られたので、先に取りに行く。

 定番のポンで輪なやつと、チョコのかかったおしゃれのやつ。

 あとはチョコのかかったフレンチなやつかな。

 お、限定のやつ……4個かぁ。

 5人だし、1人足りないか。

 まあ、僕はそんな興味ないしいっか。

 

「席取っとくね〜」

「たかちー限定のやつ食べないの!?」

「や、僕はそこまで興味ないから。皆で選んじゃってよ」

 

 驚いたら真実を尻目に僕は会計を済ませて席取りへ。

 ジュース片手にわちゃわちゃとしている3人を見守る。

 守もサクッと決めてこちらに来ていた。

 対面のソファに座った。

 

「何にしたの?」

「やっぱ定番のやつと、ありがたく限定のやつ」

「ふーん」

「聞いといて興味なさそうだな」

「まあ、見ればわかるし」

「なんで聞いた」

「会話を繋ぐため?」

 

 こいつ……と呆れた目をしている親友を鼻で笑って流しておく。

 今更会話しないと空気が……なんて関係でもないしね。

 適当な会話も大事ですよーってことで。

 

「おのこども、苦しゅうないかな?」

「なにその口調」

「テンション昂っちゃって」

「ほら、彼女がおかしくなってるよ。なんとかして」

「ほら真実さーん。これ食べて落ち着こうなー」

「もぐぅ」

 

 軽やかな足取りで守の隣に座ってウキウキな真実。

 なんだか昔の人みたいな口調の真実がおかしかったので、彼氏に対応は投げた。

 さすが彼氏、抜群の対応力。

 大人しく食べさせられてる真実もまた、満足そうなのでよしってことで。

 

「またしても奢られてしまった」

「今回は酒寄さんのノート大活躍だったんでしょ? 報酬ってことじゃないかな?」

「別にノート貸しただけでそんな……」

「芦花はともかく真実と守はだいぶ助かったみたいだから、受け取っときなよ」

 

 解せない顔した酒寄さんは、ドーナツ3個とドリンクを携えてやってきた。

 そのまま真実の隣へ。

 限定のやつに定番のやつと、ソーセージの挟んであるパイだ。

 ……夜ご飯? 

 

「ソーセージのやつは、酒寄さんが選んだの?」

「いや、芦花に押し付けられた」

「……確実に昼だと思われてるよ」

「うん、まあ、間違いではないけど」

「……後で3個追加ね」

「なんでぇ!?」

 

 テストが終わってそのまま来てるから時刻は昼ぐらい。

 昼ご飯だとしても少ないよね。

 あとで押し付けちゃお。

 

「お待たせ〜。あれ、真実もう食べ終わってるの?」

「むぐむぐ。いや、守くんが押し込んでくるから……」

「なんか変なテンションだったんで沈静化しました」

「それにしても6個を完食は早くない?」

 

 買っていた6個を早々に食べさせられた真実はちょっと物足りなさげ。

 夜ご飯あるんだよね? もしかして兼任しようとしてる? 

 なんて思ってたら最後に芦花が来た。

 空いてるのは僕の隣だけだったので自動的にそこになった。

 

「あとで酒寄さんに追加で押し付けるから、真実も買えば?」

「そ〜しよかな。物足りなかったし」

「6個食べて物足りないはどうなの……?」

 

 まだ食べれる宣言に隣の幼馴染は困惑している。

 まあ、うん。僕もどうかと思ってるけど。

 ちなみに芦花は限定のやつとチョコのかかってない方のおしゃれなやつの2個だ。

 あんまり食べないようにしてそうだね。

 

「私の胃袋は消化が早いのでね!」

「さすがはグルメインフルエンサー」

「そういうものなの?」

 

 守はさすがと褒めてるけど、酒寄さんはそう言うものではないでしょと言葉にして、僕は思っただけで言わなかったが考えてたことは一致した。

 いやでもたくさん食べて食レポとかするなら、必要なのか? 

 グルメインフルエンサー道は奥が深い……。

 その辺はさておいといて。

 

「で、どうなの、限定のやつは」

「そう! それなんだけどね! もちもちふわふわ〜で、食感は最高! で、中のクリームがマロンの風味たっぷりで甘いのにくどくなくてどんどん行けちゃう感じ! 口当たりも滑らかだし、飲み物にも合いそうで、これは食べに来た甲斐があったね!」

「お、おぉ。さすがインフルエンサーやってるだけある」

 

 これには思わず皆感心した。

 フォロワー数15万人は伊達じゃなかった。

 中学の頃からさらにフォロワーの増えた真実は、芦花とコラボしたり、あっちこっち探索しては隠れた良いお店も発掘してそれはもう人気が出まくっていた。

 これもひとえにテスト補修もなく、自由時間をしっかり確保できている所以なのかも? 

 あとは最近だと彼氏が出来たからか恋愛相談とかにも乗ったりして、恋する女の子たちな道標にもなっているとか。

 ……しれっと匿名な質問箱で芦花らしき人が質問してたのも見かけた。

 たぶん真実も気付いてるけど。

 

「写真は撮ったし、後で揚げよ〜」

「私も真実と来たよ〜って揚げよっかな」

「いいよ! 私も芦花と友達と来たって書いとく!」

 

 インフルエンサー2人組が盛り上がり始めた。

 高校生になって、昔よりも大人っぽさとか、可愛さとか、綺麗さとか、そういう良いところが伸びた結果2人ともフォロワー数がだいぶ増えている。

 芦花は今はなんと20万人の大台だ。

 自分のことではないけど、とても鼻高々で嬉しい! 

 たくさん努力してるのは知ってるから、それが認められたようでなんかすごくハッピーなお気持ち! 

 僕? 一応12万くらいは……。別にさして有名ではないので、そっとしておいてね。

 

「酒寄さんはそういうのやらないの?」

「そんな暇ないからね。勉強バイト推活、時間があればさらに勉強。たまには皆で遊んだり。勉強もバイトも削れないから、時間が足りないぃ」

「おおぅ。現役高校生とは思えない発言」

「完璧女子高生になるためには、テストもバイトも、なんなら遊びも疎かには出来ないので! まあ、大変だけどね」

 

 そりゃそうでしょ。

 今でこそ僕もバイトの日数は週3くらいまで減らしてるし。

 それを変わらず週5で続けてテストの点数は軒並み最上位をキープするとか、並大抵のことではない。

 なのに僕らの誘いには乗ってくれるんだから、今でも十分完璧女子高生では? 

 

「体壊さないようにね?」

「大丈夫。この程度で壊れるほどやわな体じゃないので! 体育の成績だって最高のやつだったし」

 

 うん、そうじゃない。

 けど言っても聞かないから諦めー。

 うっかり頑張りすぎて倒れないかはちゃんと見張っとかないと。

 ヤチヨに今度は地面に埋められたりしかねないし。そんなことしないとは思うけど、この前のビットの一件もあるから何するか分からぬ……。

 

「てか! 思い出したんだけど! この前の配信!」

 

 あ、やべ。

 ちょうど考え事してたからか危険な話題が出て来たぞ? 

 まずいぞ? 確実に面倒なことになる。

 

「私も1度も当たったことないのに、荒鷹くん配信でとはいえ狡くない!?」

「そんなこと言われましても。あれは運だし、いつかは酒寄さんど当たるでしょ」

「それはそうだけど……ぐぬぬ、私もヤチヨとやりたい、いやでもまともな試合にならない……でも一緒に遊びたい……うむむ」

 

 強火ファンは怖いなぁ。

 とはいえ自分の中でループに入ったようなので一安心。

 今はそっとしておいて、今のうちに追加のドーナツ買ってこよ。

 

「たかちー追加分? わたしも行く〜」

「うん、芦花はなにかいる?」

「私は大丈夫だよ」

「守くんは〜?」

「俺も大丈夫」

 

 というわけで2人で再度ショーケースの前へ。

 さっきので売り切れたから限定のやつは残ってない。

 

「ほんとに良かったの? 限定のやつほんとに美味しかったけど」

「いいよいいよ、女子3人は目が輝いてたし、守も興味ありそうだったからさ。僕は皆嬉しそうならそれで」

「……たかちーさ、もう少し自分の楽しみとかに目を向けた方が良いんじゃない?」

「え、すごい言うじゃん。別に推し活もちゃんとやってるよ?」

「そうじゃなくて! いや、そうでもあるか? どっちにしても! こう言うところでジャンケンとかで決めるのも、それはそれで楽しいじゃん!」

「えー、まあそうだけど。それで真実が負けたらどうするのさ」

「え゛。あぁ……うん……歯食いしばって耐える」

「そこまでするなら私食べたいって主張して!?」

 

 食への執念が凄すぎる……。

 さすがにそこまでの熱意は持ち合わせてないから、真実に譲っちゃうよね。さすがに。

 とはいえ、なんでも譲ると思われてるのはねぇ。

 

「芦花が絡まないなら別に気にしないけど、絡むなら話は別だし?」

「あ、うん。それはそうだろうけど」

「絡む機会が少ないからこうなっておりまする」

「むーん、じゃあ限定が3個だったら?」

「僕と守を抜けば良いよね」

「なら2個は?」

「女子でじゃんけんすれば?」

「1個!」

「それはもう奪い合い……っていうのは嘘で。変わらず女子でじゃんけんでよろしいのでは」

「ならそれが芦花がめちゃ欲しがってたら?」

「……確率上げるために参戦します」

「おい」

 

 そりゃあ芦花のためならしますよ? 

 受け取ってもらえないかもって? 

 押し付けるので大丈夫! 

 

「うん、まあたかちーならそうするよね。知ってた」

「知られてた。まあ、そういうことでして。酒寄さんには何にしようか」

「お腹に溜まりそうなものがいいんじゃない? これとか、あれとか」

 

 そう言って指さしたのはたしかにクリームたっぷり詰められたやつと、全体的に大きくてチョコとかコーティングされた立派なやつ。

 ふむ、ソーセージのやつあと2つくらい入れとけば夜まで持つでしょ。

 

「4個になっちゃった」

「いいんじゃない? 彩葉いつもお腹減ってそうだし」

「いやあれは空腹感とか麻痺してるタイプでしょ」

「あー、そうかも。空腹感よりもとりあえずなんか口に入れればいっかで食べてそう」

 

 想像しやすすぎる酒寄さんの食生活に、心の涙がほろり。

 ちゃんと賄い食べてるよね。冷凍して別の日に回してたりしないよね? 

 不安だ。そこはかとなく。

 まあ、見た感じはそんなにげっそりとはしてなさそうだし、大丈夫だと信じて。

 

「真実は?」

「わたしはさっき食べてないやついろいろ〜。わたしも4個くらいいっちゃお〜」

「夜ご飯入るの?」

「もちろん! 別腹ってやつよ〜」

 

 すごーい。全部で10個も食べてるのに別腹だってー。

 男子高校生の僕とか守でもさすがに言えないが? 

 無限大すぎるな真実の胃袋。

 

「何も言うまい……」

「? ほら、会計しちゃお〜」

 

 会計を済ませて先に戻る。

 酒寄さんは再起動したようだ。

 

「おかえり。……なにそれそんなに食べるの?」

「? これ君の」

「……頼んでないけど」

「うん。頼まれてないよ?」

「いや、どゆこと?」

「どゆこともなにも、そんな少ない量でお昼を済ませようとして、なんなら夜ご飯も済ませようとしている、少食にしてももっとましな言い訳があるよねって子がいるらしくてね?」

 

 あ、黙った。

 よし、沈黙は肯定とみなして彼女の前に置いておこう。

 こうやって押し付けるのが最適解だよ? 芦花さん? 見てますか? 

 ……なんでこっち見てるの? 今日も可愛くて素敵だよ! 

 

「アキくん、一口残してたんだけど食べる?」

「え゛。い、いいの?」

「うん。アキくんだけ食べてないのは可哀想と言うか、ほんとに美味しかったから食べてないのもったいないなって」

「そ、そっかぁ。ありがと、じゃ、じゃあいただくね」

 

 ありがたく、ありかたーくもらいましょうね。

 はい、一口といえど、芦花はわりと残してくれてたので、味は分かりそう。

 だったけど、まあ、うん。

 こういってはなんだけど、間接ほにゃららってやつだからあんまし分かんないかも!? 

 まあ、美味しいってことは分かった。

 それでよし。

 

「美味しい?」

「うん、美味しいヨー」

「? どこ見てるの?」

「今日は晴れだなーって」

「そうだね?」

 

 うん、秋晴れってやつ? 

 雲ひとつなくて綺麗だなー。

 

 

 







おしゃれなやつ=ファッション
限定のやつとかは実在しないやつなので、深く考えないでね!
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