芦花と幼馴染   作:キイカ

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今回は真実から見た芦花の話

……と?


私の友達について

 

 

 

 校門前で合流した芦花を足早に下駄箱に連行した。

 ちょっと聞きたいことというか、たかちーの前では聞きづらいことがあったからだ。

 

「芦花? 確か返事するの今日じゃなかった? どうするの?」

「……え。そうだっけ。…………うわ、ほんとじゃん忘れてた……」

 

 取り出したスマホのチャットアプリを開いて確認している芦花が渋柿でも食べたのかなって顔をしてる。

 まあ、何度も同じ人に告白されてたらそんな顔にもなるよね〜とは思う。

 

「何回目だっけ」

「たぶんこれで10」

「うわぁ」

「……諦めてくれないかなぁ」

 

 思わず私もすごい顔したかもしれない。たぶんすっごい酸っぱい梅食べた時の顔。

 私が芦花と仲良くなったのが中学に入ってすぐの頃で、確か友達になってすぐ1回目があったと記憶している。

 確かに私の目線でも芦花は中学生とは思えないほど顔が整っていると思う。それはもう美容系インフルエンサーをやるって言われた時に芦花ならって思うくらいには。

 艶のある黒髪は肩まで伸ばしてあって枝毛とかなにもないし。

 切れ長の瞳はちょっと強気に見えるところもあるけど、その奥にはとても繊細で友達思いの優しい光を携えている。

 お肌はもちもちぷるぷる卵肌。まあ中学生だし、私もかも? 

 身長も女子にしては高めで、スタイルも細身でモデル体型ってやつ。

 なにより彼女の内面がとても素敵なんだ。

 

「10もきてたら諦めるのも無理なんじゃない?」

「うーん。とは言っても私にはその気はないし……」

「嘘でもいいから相手がいますとか言えばいいのに」

「それはなんというか、相手に悪いというか、勝手に名前出した人に迷惑というか」

 

 こういうところが素敵だなって思う。

 わざわざ好きでもない相手に真摯に対応するところとか、本当にいる人じゃなくてもいいのに適当な名前をあげるのが苦手なのとか。

 あとは私がお弁当ちょっと足りないな〜って、思ってたのを見抜いてたかちーに多く持ってきて欲しいって頼んでくれてたり。

 私も知らないお店とか教えてくれたり、テスト勉強とか付き合ってくれたり。

 うん、モテないはずがないねこれは。逆になんで誰とも付き合わないのか疑問ではあるのだけど……。

 

「芦花って好きな人はいないの?」

「な、なに? 急に」

「いや、誰とも付き合わないってことは誰か好きな人でもいるのかなって思うじゃん」

 

 あー、ってちょっと考え込み始める芦花を横目に、私は今まで芦花に告白して散っていった人たちを思い出す。

 結構な人数に告白されていたけど、芦花と並んでも遜色ないような顔面をお持ちの方々が多かった。

 まあ、芦花には勝てないかなとは思うけど。

 

「どうなの?」

「うーーーん。好きな人がいるわけではないんだけどー、でも全員気になるような人がいなかったというか」

「結構な面々だった気がするんだけど」

「別に顔が良ければいいわけじゃないじゃん? どちらかというと内面というか」

「じゃあやっぱり好きな人いるんでしょ」

「そういうわけでもなくてぇ……」

 

 どういうわけなんだいこの子は。

 薄々思っていたがやはり彼が原因か……? 

 

「じゃあたかちーは?」

「アキくん? アキくんは……好きではあるけど、そういうのじゃないかな」

 

 じゃあどういう好きなんじゃい! と聞きたくなったけど、芦花の目が少し遠いところを見ている気がしたから聞けなくなってしまった。

 どういう思いで隣に居続けてるんだこの2人は、ただの幼馴染だよね? 

 たかちーも芦花を見る目が明らかに他のことは違うけど、でもそういう好きとかの色ではない気もするし……。

 この2人はよくわかんないなぁ。

 

「まあ断るならサクッと断って甘いもので食べちゃお〜!」

「ふふふっ、それもそうだね」

「それじゃ教室にいこっか〜」

「はーい」

 

 長々と遠回りしながら話していたけど、話したいことは話せたので教室に向かわないと。

 

「あ、そうだ。来週の土曜日にさ、真実がこの前投稿してたカフェにアキくんと行こうって話してるんだけどさ。真実もどう?」

「……じゃあ私も行こうかな〜」

「やった。アキくんにも伝えとくね」

 

 ……ほんとにこの2人はただの幼馴染なんでしょうか。

 

 

 

「ごめん今日はちょっと予定があるから先に帰るね。アキくん、真実また明日!」

「……また明日ー」

「また明日ね〜」

 

 1日の授業が終わって芦花が足早に教室を出て行った。

 朝話してた通りのあれだ。

 たかちーが怪しんでるような気がするから、ここは足止めしとくべきか……? 

 

「ねー真実?」

「なに〜?」

「芦花の予定知ってるんじゃない?」

「……なんのことだか分からないな〜」

 

 やっば。すごい疑われてるじゃんこれ。

 私そんなにわかりやすいのかな? いやまあわかりやすいかぁ。

 

「朝一芦花引っ張ってったのに教室にいなかったし」

「ギクッ」

「芦花に聞いても散歩としか言わないし」

「それはその〜……」

「真実もなんか隠してる感じするし」

「ヒョエッ」

 

 直感ですか!? 鋭すぎませんか!? もしかして今までのもバレてる感じですかこれ!? 

 私悪くないはずなのにどんどん追い詰められてる気分なんだけど! 

 

「で、ほんとのとこは?」

「……」

「お弁当これからも欲しい?」

「…………ずるくない?」

「友達に見せちゃおっかな。罰ゲームジュースでくっそまずい奴飲んだ時の動画」

「いやいやいやいやいや! それはダメでしょ絶対!」

「隠し事する方が悪いよね」

「……はぁ」

 

 ごめん芦花。私隠し事向いてないや。

 

 

 

 私たちがその場に着いた時にはもうクライマックスというか、これから告白しますよーというところだった。

 あのあと洗いざらい吐かされ、一発緩めのデコピンもらってこの場に来た。

 今は壁に隠れてこっそりしている最中。

 

「あの人何度か見たことあるな」

「そりゃ結構有名だし。確かサッカー部のエースだったはず」

「そうなんだ。興味ないからどうでもいいや」

「あ、はい」

 

 小声でコソコソと話してる最中も私たちの目は芦花とエースくん(名前忘れた)から離れなかった。

 内容はあんまり聞こえないけど、一方的にエースくんが話しているのを芦花が聞いてる感じだ。

 とっとと断って終わりにしちゃえばいいのに、優しいんだから。

 なんて思っていると、ようやく告白。そして差し出された手。

 芦花の反応は……っていうまでもなくごめんなさい、だね。

 綺麗に腰を折って頭を下げてる。こういうところが芦花のいいところなんだよねーって思っていると。

 

「えっ、なんかエースくん怒ってる?」

「……ぽいね」

「どゆこと? なんで怒りはじめたの?」

「……わかんない」

 

 芦花が頭を上げてから何を話したのか分かんないけど、エースくんが急に怒り始めた。

 立ち位置的に芦花の顔しか見えないけど、びっくりしているから何かあったっぽい。

 まだバレてないとは言え、ずっと顔出してたら芦花にバレちゃいそうなんだけど……と思っていた。

 

「どうしよ〜……あれ、なんかやばい?」

「……」

「芦花、怯えてない?」

「…………」

「これはまずいかも……ってたかちー!?」

 

 怒っている相手に芦花の顔が怯え始めたあたりでもうたかちーはそばにいなかった。

 エースくんが地団駄を踏んだあと、芦花の手を掴もうと近づき始めたのだ。

 この辺りで私の視界にはすごい勢いで走っていくたかちーが見えた。

 芦花も気づいたのかな、怯えていた顔が驚きの顔に変わっていったのがわかった。

 え、これどうなるの? 

 あれ、芦花がこっちに向かってきてる。

 すっごいたかちーとエースくんを気にしてるけど、だいぶ早足だ。

 

「真実!」

「芦花! ごめん!」

「なにに謝ってるの? むしろありがとうって私は言いたいよ」

「たかちーに隠しきれなくて……あとこっそり覗くような感じになっちゃって」

「あー……うん、いいよ。助かったし」

「……芦花?」

「……ごめん、やっぱ怖かったかも」

 

 私のそばに来た芦花は顔だけならばまだいつも通りを保っていた。

 でも、やっぱり内心怖かったんだろうなって。

 途中から涙声になっていった。

 私はすぐにぎゅっと抱きしめた。

 

「大丈夫。芦花は悪くないよ」

「……ありがとう」

 

 私より背の高い体が弱々しく震えているのを感じて怒りが込み上げてきた。

 私の大事な親友を泣かせるなんて。

 一言文句を言ってやらないと気が済まない! 

 なんて思っていたのだけれど。

 

「芦花落ち着いた?」

「うん。ありがと真実」

「芦花はここにいて? 私もあいつに一言言ってやりたい」

「大丈夫?」

「たかちーもいるから平気平気」

 

 いざとなればさすがにたかちーが守ってくれるはず。

 なんていうのはちょっとずるいけど、でも芦花を泣かせたやつに正直腹が立って仕方ないし、たかちーの様子が気になるところもある。

 とりあえずまずは様子を覗こうと、またこっそり顔を出して見て。

 私は言葉を失ってしまった。

 

「……」

「真美?」

「…………」

「ねえ真実ってば」

「………………」

「……真実!」

「っ! 芦花?」

「どうしたの? 顔色悪いよ?」

 

 思わず言葉を失い、そのまま呆然と見ていること数秒? わかんないけど。

 芦花に揺さぶられてようやく意識が帰ってきた。

 顔色悪い? そりゃあれを見たらそうもなるよね。

 なんて、芦花が気になって見ようとしているのを全力で止めた。

 

「帰ろっか」

「え、帰るの?」

「うん。あとはたかちーに任せよう」

「え、え。待って一緒に帰らないの?」

「今日は芦花に甘いもの奢ってあげる」

「ちょ、真実!? 待ってよ!」

 

 私は芦花の手を取りその場を急いで離れた。

 たぶん万が一でも芦花があの場面を見てしまったら傷ついてしまう気がした。

 たとえ芦花が悪いわけじゃなくとも。

 あれは関わってしまった芦花にだけは見せられない。

 

 

 

 そんなに流れるのってくらい涙と鼻水で汚れ切った顔のエースくん。

 顔以外が全然汚れてなくて逆に目立つ。

 整っている顔だとは思っていたけど、そんなの跡形もないくらい()()に歪み切っていた。

 今になって思い出したが、エースくんは女癖が悪いという噂があった。

 芦花に10回も告白しといて、その間に何人もの女の子と付き合っては別れてを繰り返していたらしい。

 でも顔がいいから、サッカー部のエースで人気もあったからかあんまり表には出てこなかった。

 まあ女子の間ではそこそこ有名ではあったけど。

 でもそんな彼が、もはや体とは思えないほど顔を歪めて泣き喚いていた。

 声はあんまり聞こえなかったが、声も出ないほどだったのだろうか。

 

 

 

 まるで能面のように感情が抜け落ちた顔とそれとは真逆の、いくつもの感情が混ざって濁って澱んだ黒い瞳は。

 こちらに気づいた()()()()がちらっとこっちを見ただけで私は声を失って固まってしまうくらいだ。

 その全てを向けられた彼の気持ちは……考えたくもない。

 秘密にしよう。

 芦花には絶対に教えられない。幼馴染のそんなところは見るべきではないと思う。

 たぶん、彼も秘密にしてねっていつもの顔(にこにこ笑顔)で明日には言うだろうから。







芦花の髪色は中学の頃は黒髪で高校で染めたのかなというお気持ちで今回書いてます
地毛でピンクっぽいのはどうなの?という気持ちと中学から染めてるのはなんかなぁと思ったので
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