芦花と幼馴染   作:キイカ

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今、彩葉の家の冷蔵庫が明かされるっ!(みんな知ってる)


空っぽとプレゼント

 

 

 

 3連休2日目。僕は補習の小テストを解いていた。

 内容は別になんてことはない2年の内容と1年の復習だ。

 1年の内に予習していた範囲内だ。まだその先の貯金が出来てないから心配だけどね。

 今日この後は予定はない。芦花も真実と遊んでるから心配されることはないでしょう。

 よし、今日こそ酒寄さんの様子を見に行こう。

 どういう状況かはわかんないけど、とりあえず簡単にご飯用意できるように少し材料買ってから行くか。きっとてんてこまいで何も食べてないか、食べても栄養偏ってそうだし。

 この3日間はバイト入ってなかったから、賄いも食べ切ってるだろうし。

 小テストを提出し、採点結果が問題なかったので、さっさと酒寄さんの家に向かった。

 

 

 

 向かう途中で買ったいくつかの材料を持ちながら、酒寄さんの部屋のチャイムを鳴らす。

 しばらくした後、彼女は出てきた。

 

「はーい……荒鷹くん? 急にどうしたの」

「やほ。赤ちゃんの様子見に来た」

「それにしては手元にずいぶん大きな袋があるように見えるけど」

「それは大変だー幻覚見えてるよー疲れてるから休まないとーほらほら入れてー」

「あ、ちょ、こら、押し通ろうとするな! 袋でガードしてるのタチ悪いぞ!」

 

 流石に手で押し入るのはまずいからね。

 大きめと言うか、たくさん買ったもので押し切らせてもらいまして。

 部屋には赤ちゃんがぽつんと。

 あれ、なんか大きくなったような。

 

「成長、したように見えるけど」

「やっぱり? 私の気のせいじゃなかったんだ……じゃなくて! なに勝手に入ってんの! この前自分が通報しないでって言ってたのにもう忘れたの!」

「いやいや、やましい気持ちなんて1ミリたりともないですよ。赤ちゃんの世話と連日の疲労で限界ギリギリになってそうな大変お疲れ酒寄さんを労いに来ただけなんで」

「そこはかとなく刺してくるのやめて? いやまあ確かにお世話と疲労は……って、それで流されるとでも?」

「おっと、今日の酒寄さんは手強いな。まあ、労うのは今日だけだから許してよ。明日はテストがあって来れないし、酒寄さんも友達とはいえ男子に押し入られるの嫌だろうし」

「今現在進行形で押し入ってることにはなにも触れないのね。別に労ってもらわなくても、私は大丈夫だし」

 

 その目元の隈を最低限隠してからそういう嘘はつこうね? 

 普段はメイクで隠してると思うけど、今はそれすら余裕ないのバレてるからね? 

 さてさて、とりあえず買ってきたもの放り込ませてもらお────え、嘘ぉ。

 冷蔵庫を勝手にご開帳させてもらって声を失った。

 酒寄さんは勝手に開けるな! って後ろで怒ってるけど、聞こえないふり。

 

「なにも、ない……だと」

「一人暮らしなんてそんなもんでしょ。賄い入れとくこととたまに皆からもらったお菓子とか入れとくだけだし」

「にしても入ってなさすぎでしょ。調味料とかは……最低限。野菜とか卵とか何もないじゃん」

「そりゃ高いからね。もやしとかなら買うけど、炒める時間もガス代も勿体無いから」

「…………」

 

 開いた口が塞がりません。

 こんなに限界生活をしていたのですか彼女は。

 今からでも芦花の家に放り込んだ方がいいんじゃなかろうか。

 

「とりあえず、今日は買ってきたものでご飯作るから、休んでなよ」

「いいよ別に。物があれば私でも作れるから」

「その目の下の濃い隈と、散らばりまくった衣服やら勉強道具やらを片してから言ってほしいな」

「うぐっ。で、でも、料理は出来るし!」

「役割分担ってやつでしょ。今は休んであとで勉強するなり、お世話するなりしてよ。僕も作ったらとっとと帰るからさ」

 

 ぐぬぬと唸ってるけど、もう放置。

 さっさとご飯を作りましょう。

 とりあえず普段のお弁当みたく保存の効くものを作りましょ。

 ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼう、キャベツのコールスローに浅漬け。

 ピーマンの塩昆布和えに、いつもの卵焼き。まあ硬めにしとくけど、芦花じゃないから味付けもしょっぱ目。

 あとは、豚肉と小松菜奈の塩炒め。肉類も欲しいよね。

 ナスも買ったからナスの揚げ浸し、そこそこ持つし夏場だから冷たくても美味しいのがいいよね。油は買って来ました、さすがに人様の奴は借りられないよね。調理器具は借りるけど。

 お米はなさそうだけど、まあ、そこはなんとかしてね。

 今の所8品目。ふむ、まあこれだけあれば明けまでは持つかな? 

 

「始めまーす」

「もう勝手にして……」

「あーぃ!」

「んぁ? なんだか興味津々じゃない?」

「あー、今はなんでも興味ありまくり期みたいよ」

 

 赤ちゃんがお目目キラキラでこっちを見ている。

 酒寄さんが赤ちゃんを抱えて僕の調理現場を見せにきた。

 いやあの、そんな見せ物にはならないんですけど。ただの家庭料理ですよ? 

 

「視線を感じる……最近多いなこれ」

「まあまあ減るもんじゃないし。私としては休めなくて残念ですねー」

「こやつ、棒読みじゃないか」

 

 絶対一欠片も思ってない言い方。

 別にいいけどさ。

 トントンと包丁を入れる。

 テキパキと和える。

 フライパンを借りて肉を炒める。

 チャカチャカと卵を混ぜる。

 1つ1つは別に普通の主婦の方がやるようなことでしかないんだけど、なぜか赤ちゃんはガン見。なぜだ。

 え、もしかして下手? いやまあ、高校生だから本物の主婦とかには勝てないけどね。

 一応親には褒めてもらえてるんだけどなぁ。

 

「やば、眠くなってきた」

「だから、寝ればいいじゃん」

「さすがに、部屋に異性がいる状態で寝るのは乙女的にちょっと……」

「あ、そう。僕は気にしないけどそうなら、頑張って」

「おいこらもう少し気を使わんかい」

 

 どっちなんだよもう。

 赤ちゃんは楽しそうに笑ってるし。

 まあ、ほっといて仕事終わらせましょ。

 

 

 

 それからしばらくして諸々作り終えた。

 気付いた時には視界に酒寄さんはいなくて。

 どこかなって思ってたら、勉強机に突っ伏して寝てしまっていた。

 結局寝てるし。でも、そこだと体バキバキにならないかな? 

 まあ、お布団でガッツリ寝るのはさすがに無理か。

 あれ、赤ちゃんは? 

 

「あーぅ! いぁー!」

「あれ、背中見られてた感じかな」

 

 元気そうな声で背中の方から声が聞こえた。

 ずいぶん楽しそうな表情ですね。

 

「えっと、こう、かな?」

「あーぃ!」

「あってるみたい。よかった」

 

 とりあえず抱えてみた。

 案外重い。というか、なんか不安。

 命の重みというか、こんなに小さくとも生きてるんだっていう不安定感? 

 子供を育てる時は、こんなに小さくて儚い命を大切に目を離さないようにしないといけないのか。

 うひゃー不安しかないねー。

 いつになるかは分からないけど、未来で子供を抱く時が来たら、また考えよう。

 

「やることは終わったけど、家主はおねんねかぁ。どうするかな」

「あぃ、あぃ!」

「うわぷ。なんだよもー。人の顔で遊ばないのー」

 

 僕の顔に手を伸ばして、その小さなもちもちの手でつついて引っ張ってくる。

 やば、めちゃもちもちしてる。

 全体的にもちもちだけど、手はより一層感じるね。

 ほっぺとかも凄そう……。でも両手塞がってるから触れないんだよね。

 

「いーぃ! うーぁ!」

「あひゃー、やめへー。ひほほほおへあほふなー」

 

 ありゃーやめてー、人の頬で遊ぶなー、と言う声はおもちゃになりました。

 ずいぶんと楽しそうでなによりです。

 僕の方はモチられて犠牲になりました。

 

「あぅあぅあー!」

「ん? おょわー!?」

 

 モチモチから解放されたかと思ったら、腕を巧みに蹴って突撃してきた! 

 そんなアクティブに動くもんなのか赤ちゃんって!? 

 もちろん、ノーガードですのでクリティカルヒットです。

 ぐへぇっ!

 あ、あごぉ……。

 

「……落ち着きを、覚えて、ね」

「んぃー?」

 

 頭突きかましといて本人はノーダメージ。どういう頭の固さですか。石頭かな? 

 顎をやられた僕はその場にしゃがみ込んだ。

 赤ちゃんからは手を離せないけど、というか、再度確保した。

 次隙を見せたら何されるか分からないからね。

 

「んぁ……ふぁ〜。……あ、荒鷹くん、遊んでくれてるの?」

「うん、正確には遊ばれてるが正しいかも。起きたならそろそろ帰るから助けて」

「助けて……ねぇ。そのまま連れて帰ってくれた方がいろいろいいんじゃない?」

「そんなわけ……あーもうほら、泣き出しちゃったよ。ほら、お母さん受け取って」

「誰がお母さんじゃ! ……あーあー、はいはい泣かないでね〜」

 

 酒寄さんが無慈悲なこと言うから泣き出しちゃったよ。

 そのままパスして、酒寄さんの腕に包まれたら、すぐに笑顔になった。

 む、なんだか敗北感が。

 まあ、いいか。本当の子供ならそうはいかないけど。

 

「じゃ、いろいろ詰めたから頑張って」

「あ、えと、……ありがとう」

「いーのいーの。僕がいない間たくさん頑張ってくれてたからね」

「それは、別に、そういうわけじゃないし……」

「僕がそう捉えたからいいの。ほら、赤ちゃんがお待ちですよ?」

「あーぃ! あぁー!」

 

 放っておかれるとすぐにぐずっちゃうから大変だね。

 さてさて。ここらで退散だー。

 

「じゃ、また学校で」

「うん、ありがとね。学校で」

 

 玄関から出ようとしてると、赤ちゃんがこちらに手を伸ばしていた。

 あー、んー。

 振り返って人差し指を差し出した。

 ちっちゃい手で、ぎゅっと握られた。

 

「あぅ♪」

「めっちゃ懐いてない?」

「いや、おもちゃとして見られてそう」

 

 しばらくして離してくれたところで、僕は部屋を出た。

 赤ちゃんは、まだこちらを見ていた。

 

 

 

 家に着いた。

 時間は割とあるし、今日は配信しようかな。

 かれこれ4ヶ月ぶり? 一応目覚めた後にしばらくおやすみする旨の投稿はしてるけど、そろそろ戻っとかない少ないファンに見限られちゃうからね。

 とはいえ、連戦は無理だからほどほどに雑談して終わりかな。

 時間は1時間後に設定して。

 さて、夜ご飯の支度しよ。

 

 

 

「今日は雑談メインだけど、ぶっ放していこー! 秋鷹だよ」

 

【久しぶりのトリガーハッピーの時間だ!】

【本当に久しぶりで草】

【4ヶ月ぶり?】

【腕落ちてそう】

【今なら狩れる……!】

 

「あー、確かに腕は落ちてるかもね。リハビリしたらまた募集してやるからその時はよろしくー」

 

 本日の話題は近況報告がメインだ。

 しばらく空いてた時間の辻褄合わせの説明と、最近のこと。

 とはいえ、どちらかといえば視聴者の質問に答えることの方が多いかな。

 

【最近推し活はどうなの?】

 

「お、それ聞く? もちろん、今でもバリバリだよー。といっても、推しの方も前ほど活発に配信してなくてね」

 

【残念なやつ】

【秋鷹の推しって誰なん】

【そういえば誰か知らんな】

【古参勢を持ってしても分からん】

 

「それは秘密でーす。まあ、機会があればそのうち分かるかもね〜」

 

【隠し事やつー】

【最初期から推しがいることを公言しているけど、バレないんだよな】

【そんな隠すようなこと?】

【もしや、知り合いだったり?】

 

 おっと、勘の鋭い視聴者がいるな? 

 何言われても流すけど、怪しくなって来たぞ? 

 

「秘密は秘密ー。もしかしたらライバーとかやってなくて公言出来ないだけかもよ?」

 

【無名の推し?】

【地下アイドル的な?】

【もしくは、名前を明かすと諸々バレるとか】

【謎が深まる】

【はや明かせ秋鷹】

 

「いやいや、諦めてくださーい。そういえばこの前ハトモリがさ────」

 

 強引に話を変えておこう。

 この話題をつつかれるのはあんまり嬉しくないからね。

 あと、たぶん後から見るであろう真実にニヤつかれるのが想像できる。

 彼氏の話で濁しましょう。

 それから、たわいもない話で時間を潰した。

 SETSUNAをやらない配信もまあまあ楽しい。

 でも、やっぱり戦うのも楽しいからな〜。

 

「そろそろ終わりにしまーす。次回はSETSUNAで会いましょう! それでは! ばいばーい」

 

【乙鷹】

【今度は推しバレ期待】

【過去の配信漁って探してみるか】

 

 やめい。

 ないから。

 ないよね? 

 ちょっと不安になってきた。

 たぶんバレるようなことは言ってないはず。

 うん、自制がよく効いているはずなので大丈夫。

 あ、そうだ。今なら芦花いないし、ツクヨミで芦花のプレゼント用意出来そう。

 現実のはまだ考え中だから、とりあえずのをね。

 よし、行ってこよー。

 

 

 

 最初に前に芦花と散歩した白の花畑に行った。

 目当ての花を5種類ほど手折ってインベントリへ。

 現実だとこんな簡単に持っていくことは出来ないから、ツクヨミ様々だね。

 んで、お次は花屋へ。ツクヨミでも花屋はあるらしい。

 お求めの花を探して2軒3軒と巡る。

 4軒目でようやく全部集まった。

 ツクヨミの自宅に戻って、上手いこと纏めて1つのアイテムにする。

 よし、完成だ。

 アイテム名は……普通に花束でいいや。さすがに凝った名前だとバレかねない。

 さて、いつ渡すべきか……。

 

「うーん」

「なに悩んでるの?」

「うぉわっ!?」

 

 昨日に引き続き2度目の不意打ち。

 もはやわざとでは? 

 

「芦花? ちゃんと連絡してってあれほど……」

「したけど、反応なかったじゃん」

「え、まじ? ……ほんとだぁ。ごめ〜ん」

 

 ほんとに連絡きてた……。全然気付かなかった。

 でも、きたの数分前だ。

 良かった。バレてはなさそうだ。

 

「で、なに悩んでたの」

「ん、あー、えっと……」

 

 ちょうどいいし、渡しちゃってもいいのかな。

 まあいっか。隠しとくとまた不安にさせそうだし。

 

「誕生日さ、何も渡せなかったじゃん? 仕方ないとはいえ、思うところがあってね」

「……まあ、どうしようもないタイミングだったからね」

「だからさ、これ。いつか渡そうと今日用意したやつ。タイミングとかなんもなくて申し訳ないけど、誕生日プレゼント代わり。もらってよ」

 

 ぽん、と花束を出してそのまま手渡す。

 へ? って感じの顔でそれを受け取った芦花は、唖然としてる。

 うん、まあそうなるよね。

 

「ツクヨミなら、いろんな花が集められるしさ、枯れないから。ちょうどいいかなって。この前の花畑の白の花と、芦花のツクヨミでの瞳の色の紫の花と、髪の色のピンクの花で揃えてみた。現実の瞳の孔雀緑もとい緑色だと、良い感じの花がなくて無理だったけど」

「あ、えっと。あり、がと」

「気に入ってくれたら嬉しいな」

 

 なんか、フリーズしてる。

 なんでぇ? 

 

「う、うん。嬉しい、よ。でも、私返せるものない……あ」

「?」

「こんなものでいいかはわかんないけど、私の角、片方取れたんだけどさ、部屋のインテリアにしようかなって思ってたけど。アキくん。いる?」

「いる。めっちゃ欲しい! ありがと!」

「え、えぇ……」

 

 なんか引かれてるけど気にしない! 

 争奪戦も辞さない覚悟でしたので、合法(?)で手に入るのであればそれに越したことはないよね! 

 よしよし、部屋に飾るか。それともインテリアでなにか作ってもらうか。

 ツクヨミ用のアクセサリにしてもらうのもありかも。

 うへへ、どうしよっかな〜。

 

「……なんかすごい喜んでくれてるし、良かったのかな」

「んへへ……んぅ、なに? なんか言った?」

 

 芦花がなにかを呟いてた気がするけど、あんましよく聞こえなかった。

 まあ、良かったとか言ってたような気がするからいっか。

 

「なんでもないよー。このまま少しお話しよ」

「いいよ」

 

 花束をインベントリにしまって縁側に芦花は座った。

 僕ももらった角をしまって隣に座る。まだちょっとニヤけてるな、落ち着け。

 風鈴がちりんとなる。風があるかは分からないけどね。

 ほとんど毎日最近は話してるから、ネタは無いけど、ないからこそ本当に些細な取り止めもない話が出来る。

 ふわりふわりと、時間を緩く消費する。

 ただ君の隣にいることができる今が、とても嬉しい。

 幸せだなぁ。

 

 

 






また少し芦花の精神が回復した!
アキくんが詰め込んだ花一覧、花言葉?そんなの分かり切ってるでしょうに。
白の花
アナベル、オステオスペルマム、ブライダルベール、トルコキキョウ、ビオラ
紫の花
ペチュニア、アゲラタム、フジ、フロックス、ニオイスミレ
ピンクの花
スターチス、クルクマ、チューリップ、コチョウラン
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