芦花と幼馴染   作:キイカ

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テストは、戻ってくるほんの少し前に終わってたと言うことで。
UA30000ありがとうございました!ゆっくりですが原作進めていきます!


嵐は突然に

 

 

 

 3連休明け、火曜日。

 テスト返却があった。

 と言っても、僕はその時はまだ学校には戻れてなかったので、僕の分はなし。

 その分のテストは昨日くらいにやったので、まだ帰ってこないかな。

 で、酒寄さんはいつも通り学年1位。さすがですね。

 芦花は、僕が目覚めたとはいえ本調子では無かったみたいで、少し成績が落ちてしまった。非常に申し訳ないのです頑張ります。

 真実はまあ、元よりあんまりやる気出してないので今回は平均点付近を彷徨っている。

 守も同じ感じだ。

 

「ひゃー、次のテストは頑張らないと成績に響くやつだ」

「次はたかちーいるしなんとかなるでしょ〜」

「人任せはよくないよ?」

「私も落ちちゃったな」

「芦花は面倒見るから安心してね」

「私は!?」

「真実は守がいるでしょ」

「守は勉強面は……」

「真実!?」

 

 いちゃつくなバカップルが。しれっと呼び捨てになってるし。

 お互い教え合って成績伸ばせばいいじゃん。

 まあ、目の前に僕と酒寄さんがいるから縋りたいのは分かるけどね。

 あいにく今は芦花で手一杯でーす。勉強だけじゃなく奢りだとか色々な面でね。

 それはさておき、今日の酒寄さんはなんだか挙動不審というか、僕たちの会話に参加して楽しそうにしている時もあれば不意に何かを思い出して不安げな顔をしている。

 もしや? 

 

「酒寄さん?」

「なに? こっちにこいってこと?」

 

 ちょいちょいと手招き。

 さすがに赤ちゃんの話をするのに皆といっしょではいろいろ不味いよね。

 

「なんかたまに不安そうなのは、この前の赤ちゃん?」

「え、顔に出てた?」

「まあ、わりと。でも、他の皆はあんまし気にしてなさそう」

「うわーあぶな。ありがと。まあ、さすがに色々ありすぎてね」

 

 そりゃバイト帰りに赤ちゃん拾えばそうだろうね。

 

「結局どうしたの? 親戚とかに預けた? それとも警察?」

「私が育てることにしたよ。拾った責任もあるし」

「真面目だねぇ。じゃあ、僕の作り置きは助かったんじゃない?」

「あぁ、うん。それはとても。……作り主を教えろってうるさかったよ」

「?」

 

 もう言葉が話せるようになったのかな? 

 成長早すぎない? まあ、2日目に見た時にはわりと大きかったからなんとも言えないけど。

 

「とりあえずありがと。気をつけるね」

「うん、どうしようもなくなったらご飯くらいは作ってあげるよ」

「そりゃどーも。……そうなったら困りそうだけどね」

 

 ? さっきから意味深なことばっか言ってる。

 どうしたのかな。赤ちゃんの育児で頭おかしくなっちゃった? 

 まあ、そろそろ戻らないと怪しまれるし、突っ込むのはやめとこ。

 皆のところに戻ると、この後のことについて話していた。

 するりとその輪に入り込む。

 

「この後どうする?」

「お昼どっか行こっか〜」

「僕も行くー」

「私も行くよ」

「彩葉は?」

「ごめん、今日は帰るね。やることあって……」

「そっか、また今度ね」

 

 テスト返却で今日は終わり、昼前なのでご飯でも食べようなんて話していたら、酒寄さんは帰宅すると。

 うん、確実に赤ちゃんのことですね。仕方なし。

 でも、芦花が引き留めてないのは意外かも。いつもならちょっと強引目に行くのに。

 

「じゃあまた明日」

「うん、また明日」

「ばいば〜い」

 

 彼女を見送って、僕らはお昼を食べに駅前に向かった。

 いつも通りな日常、明日もテスト返却で午前で終わり。

 明後日から通常授業に戻るから、のんびりしたいね。

 のんきな僕は、台風が迫っていることに気付いていなかった。

 それはもう特大のものに。

 

 

 

 テスト返却の終わった次の日。

 通常授業の始まった日、今日は朝から酒寄さんがそれはもう面白い形相だった。

 僕らの話で笑ったかと思えば、不安げな顔をして、かと思えばスマホを開いてニヤニヤ。

 あまりにも不審者ムーブすぎる。

 何事かと思えば、なんとヤチヨの握手付きミニライブチケットが当たったらしい。

 なるほど、それは確かに酒寄さんがこうなるわけだ。

 

「それはそれとしてもう少し表情筋どうにかしたら?」

「そうは言ってもね〜うへへ、ヤチヨぉ〜」

「だめだこりゃ」

「トリップしてるね〜ほっとくか」

「他の方には見せられない顔ですねこれ……」

「彩葉、ご飯は食べてね」

 

 お昼休み、いまだにニヤニヤ時折ハッとして不安気、不意に僕らの話で笑う怪しい人の完成。

 ついぞ僕らに心配される始末。

 どうしたものかな。

 

「とりあえず芦花、ご飯口に突っ込んどいて。入れれば食べるでしょ」

「りょー」

「うへへ、まぐっ」

「お〜ほんとに食べてる」

「でも、顔が……」

 

 ほんとに残念すぎる。

 顔は良いのに、この溶け具合。

 どうしてこうなってしまった。

 完璧美少女から残念美少女にジョブチェンジしてますよ〜。

 

「餌付けしてるみたいなんだけどこれ。絵面大丈夫?」

「顔面溶けてる酒寄さんがやばいから大丈夫」

「なにが大丈夫なのか小1時間問い詰めたいな〜」

「大丈夫じゃないけど大丈夫ということにしておこ」

 

 見せられないよ! な顔の酒寄さんをガードするように周りを僕らで囲う。

 手間のかかる子ですね。

 

「今日はバイトも入ってないからこの後は大丈夫だね」

「こんな状態でバイトなんて……と思ったけど彩葉ならさすがに切り替えるかな」

「でも時折ニヤついてそ〜」

「確かに」

 

 バイトなくて良かった。バイト中までガードするのは無理だよ? 

 あ、でも今日は芦花達が酒寄さんに奢る日では? 

 

「今日連れてくんじゃなかったっけ」

「うん、パンケーキ屋さん」

「テスト面倒見てもらったからね〜」

「ありがたや」

「僕もいない間の面倒見てもらったから奢るかー」

 

 放課後に酒寄さんを連行することが確定した。

 今日は逃がさないよ〜? 

 

 

 

 というわけで放課後。

 今日も速やかに帰ろうとしている酒寄さんを、芦花真実が両サイドから確保。

 

「え、ちょ、私今日も帰りたいんだけど……」

「今日はバイトないでしょ?」

「たかちーに確認済みだよ〜」

「え、どこへ……?」

「新しいカフェ行くよ」

「ほら、れっちご〜」

「お金ないから〜、後生ですから〜」

 

 なんと言おうと連れてくと決めているので逃しません。

 後ろは僕らが固めてるので、前からしか逃げれないけど、まさか2人を振り払うだなんて出来るわけもなく。

 駅近の新しいパンケーキ屋に向かった。

 

「あれ?」

「どした荒鷹」

「なんか、後ろの木に今茶髪の女の子いた気がしたんだけど」

「他校の子とかじゃないか」

「にしてはラフだったような。まあいいか」

 

 道中視線を感じて振り返った。

 でも、誰もいなくて。

 なんだったのかな。

 前の3人は酒寄さんを逃がさないようにしつつ、進路の話をしている。

 酒寄さんは変わらず東大らしい。

 

「eスポーツとか音楽系とかよさそうなのに〜」

「それじゃ認めてもらえないだろうからさ。東大行くしかないんだ」

「うひゃ〜わたしはだだ甘なのに大変だ」

「そっか……彩葉なら行けるよ、頑張って!」

「うん、頑張るよありがと」

 

 真実は甘やかされているから〜なんておどけてる。

 たしかにそうだけど、なんだかんだやるときやるので、親御さんもそういうところを見てくれてるんじゃないかなって思ってる。

 芦花は、どうかな。今のところ特には考えてないみたいだけど、インフルエンサーの道を進むのか、普通に進学するのか、はたまた? 

 まあ、僕は芦花を支えるだけなので。

 早めに聞き出さないとなー。

 

「守はどうするの?」

「俺は普通に進学かな。早く同棲とかしてみたいし」

「いいね。頑張れよ」

「おう、受験の時は頼むわ」

「それは自分でなんとかしなさいよ」

「さすがに無理だって」

「いや僕も大学受験まではさすがに……」

「またまたぁ。どうせ先取りしてんだろ」

「それはそうだけど。何人も見れるかは分からないよ」

 

 大学受験ともなると勉強する範囲広すぎるしね。

 さすがに僕の一般人の容量では無理がある。酒寄さんみたいに限界突破すればいけないこともなさそうだけど、芦花に止められるだろうしね。

 出来ないものはすっぱりやめときましょ。

 

「ちゃんと塾行きな」

「へーい。真実も塾行くかな」

「さぁね。一緒のところ探せば?」

「おう、そうする」

 

 1年もすると当たり前みたいに惚気てくるな。

 なんかイジリがいなくなったような。

 でも、幸せそうだしいっか。

 なんて、話しているうちに例のカフェに着いた。

 5人分の席を用意してもらって、お誕生日席に酒寄さんを放り込んだ。

 その右手前に芦花と僕、反対に真実と守だ。

 酒寄さんはメニュー見て渋い顔をしていたけど、押しに押されて注文確定。

 僕らは適当に頼んだ。

 酒寄さんのところに三段重ねのクリームたっぷりパンケーキ。

 芦花はチョコの2段くらいのパンケーキ。

 真実はフルーツのたくさん盛られたパンケーキ。

 僕はチョコケーキ、パンケーキはちょっとゲシュタルト崩壊しそうなもので……。

 守はフルーツタルト。さっぱりしてそうだから選んでそうだ。

 

「彩葉ノートで試験突破記念」

「あと、守は赤点回避成功〜」

「「お礼の品でーす、ご査収くださ〜い」」

「あ、ありがとう!」

 

 若干1名恥ずかしそうな顔をしていますが、酒寄さんのノートがなければテストは危うかった。

 今回の奢り費用も実は守と僕の方が多めに出してます。

 僕はまあ、いない間の面倒見てくれた代的な? 

 

「じゃあ、いただきま──「シュッ!」──あ!?」

「にょっ!?」

「えっ」

「なにっ」

「わっ」

 

 嬉しそうにパンケーキを食べようとしていた酒寄さんのそれの2段目が、今、目の前で一瞬にして消え去った。

 驚いた僕らはその行き先に視線を送った。

 そこにいたのは、やはり気のせいではなかった、茶髪に酒寄さんが前に着ていたワンピースを身に纏った少女。

 大層美味しそうに1段分のパンケーキを頬張って「ううんまああああ!!!!」と唸っている。

 よく一口で食べたねあれ。

 

「よっ、彩葉!」

「え〜可愛い〜彩葉の友達?」

「彩葉の服着てるね、似合うじゃん」

「えええっとぉぉぉ、そう、親戚! 遠くから来てるの!」

 

 キラン! っとウインクを決めてこちらを見やる少女は、酒寄さんの知り合いらしい。

 にしては、反応がずいぶん驚きすぎてるようだけど……。

 てか、まだパンケーキ狙ってるじゃん。

 

「パンケーキ好き? 私のもどうぞ」

「パンケーキ? これがぁ!? 彩葉のとぜんぜんちがぁう!」

「どんなの出したの酒寄さん」

「うるさい、聞かないで。あれは私の血と涙と努力の結晶よ」

「ごめんて」

 

 芦花の差し出したパンケーキに標的を変えてまた食べ始めた。

 にしても美味しそうに食べるね。笑顔がピカピカしてるよ。

 一応まだ紹介されてないんだけど、芦花も普通に自分の品物渡してるあたり優しさを感じた。

 で、誰なのこの子。

 

「彩葉〜、こんな可愛い子、教えてくれないなんてひどくなーい?」

「そそそれはそその、えっとととと、友達というか、親戚というかっえーっと、あの、その、なんというかっ!」

 

 なにやら挙動が怪しくなりまくっている酒寄さん。

 もはや冷や汗を見えるような。

 なんて思っていたら、芦花に続いて僕のもしれっと半分くらい平らげてから口を開いた。

 おい、なにしれっと食べてる。

 

「月から来たの!」

「え……」

「ツキ?」

 

 一瞬沈黙した。

 全員の目が女の子を見る。

 誰かが口を開く、よりも早く。

 

「ツキ、そう! 築地! 築地から来てるの! この子まだよく分かってなくてね〜あはは〜!」

「築地かぁ、美味しいお寿司屋さん知りた〜い」

 

 明らかに誤魔化してるようにしか見えないけど、そこは大人な真実が乗っていく。

 うん、優しさを感じた。

 ん、いや、あれは本当に築地と思ってる? 美味しいものがある場所なら気にしてないのか? 

 芦花は、それよりも気になることがありそう。

 

「ねぇ彩葉」

「な、なに?」

「この子のお名前は?」

「な、まえ。名前?」

「うん、可愛いこの子のお名前教えて?」

 

 そういえば1度も酒寄さんも名前を呼んでないと思う。

 芦花はそれが気になっていたみたいだね。

 もう少し気にすることもあると思うんですけど。

 守は固まったままだし。

 

「え〜〜〜〜っとぉ…………かぐや!」

「かぐや?」

「そう、かぐやっていうの!」

 

 果てしなく困った様子だった彼女は、不意に天啓が降りてきたかのようなひらめき顔でそう言った。

 かぐやかぁ。

 かぐや……姫。竹取物語?

 どこから名前を取って来たのかはなんとなく察した。

 まあ、それは置いておきましょ。

 

「可愛いねかぐやちゃん」

「え〜かわよ〜」

「かぐや? かぐや……かぐやっ! えへへぇ〜〜」

 

 褒められて心底嬉しいのか、自分の名前を連呼している少女改めかぐや。

 てか、今更だけど苗字は? 

 見た感じ年齢近そうなんだけど、下の名前呼び捨てはちょっと、気にしちゃうなぁ。

 

「酒寄さん、苗字は?」

「みょ、苗字!? そ、それはぁ……いったん気にしないでもらえると!」

「え、あ、はい」

 

 気にしないでと言われても。

 うーん、仕方ない下の名前で呼ぶしかないのかぁ。

 かぐや。かぐやかぁ。呼びやすいしまあいっか。

 

「かぐや?」

 

 試しに呼んでみたら、こちらを向いてしばらく首を傾げた後、ハッとした顔でこちらに指を刺し────。

 

「ん? ……あーっ!? あの時料理してた人!」

 

 ────特大の爆弾を落とした。

 

「…………え゛っ?」

 

 時が止まった。

 僕と、酒寄さんと、芦花の。

 油の刺されてないブリキ人形ばりにぎこちない動きでこちらを見る酒寄さん。

 それとは反対に僕でも追いつかない速度でこちらをみる芦花。

 あかん、これはやばいやつ。

 とんでもない爆弾落としてきやがったこいつ。こいつなんて呼ぶのは失礼だけど、初手からやばいこと言ってるからは仕方ないよね。

 思考だけでも現実逃避したかったけど、残念ながら隣の幼馴染が逃してはくれなくて。

 

「アキくん?」

 

 それはもう大変冷たい声色でした。背筋がゾクゾクしちゃうくらい。

 やば、変な扉開きそう……落ち着け、いや落ち着いていられるかこの状況。

 

「アキ? アキって言うんだぁっ! アキ〜! あれ教えて!」

 

 で、芦花の呼び名に反応して僕の名前を呼び始める。

 非常にタイミングが悪かったね!

 うん、とりあえず火に油を注ぐのはやめてほしいな!?

 

「待って待って待って待って待ってほんとに待って」

 

 情報整理できてないのに爆弾追加で落としてくるのやめてくれないかなぁっ!? 

 僕君のこと知らないのになんで料理してるところ知ってるのかなぁっ!? 

 なんなら君も今僕の名前知ったそぶりだったよねぇ!? なにごとぉっ!?

 そしてとんでもない冷たさの視線が突き刺さってるんですけど芦花ぁっ!? 

 なにもしてないよ!? 幼馴染のこと信じて欲しいな!? 

 

「ね〜ね〜アキ〜、かぐやもあれやりたい〜」

「…………酒寄さん、どうにかして」

 

 僕ではどうしようもできないので、これ以上この場が終わってしまう前に、元凶と思しき酒寄さんに声をかける。

 

「はっ! ごめん、用事思い出した帰るねごちそうさま美味しかったまた今度埋め合わせするから〜〜〜〜!」

 

 ようやく再起動した酒寄さんが、手元の残ったパンケーキを全て飲み込み、かぐやの手を引っ掴んで嵐のように退店した。

 残されたのは、重苦しい空気を漂わせる僕の大事な幼馴染。

 それを見てなんだか可哀想なものを見る目で僕を見る真実。

 あと、フリーズから戻って来たと思ったらまた固まった守。

 

「とりあえず、食べよう」

「アキくん、後でお話」

「ハイ」

 

 まずは食べてから、そう思って声を出したはいいけど。

 隣の芦花から絶対零度の声色が飛んできて僕の人生終わったかもしれない。

 この背筋の凍り具合、刺された時以上かも〜。

 笑えなーい。

 ひぃん。

 ……助けてぇ。

 

 

 

 







やっぱり振り回されてる方がアキくんらしいかも。
原作を抑えつつ、アキくんたちがいることによる差異を上手いこと押し込んでいく。
大変だぁ。
この時まだ金髪じゃないのに金髪って書いてたのを修正
金髪イメージ強すぎる……
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