わたすきタイム、まもなく!
作者は朝から映画館に突撃して、買えるのが10時なのを知らなかった無知です(土下座)
でも買えたからよし!
かぐやがド派手な宣言をした翌日。
学校で酒寄さんにあの後どうなったか聞いてみたら、案の定大変だったようで。
ライバー始めると言って聞かないかぐやに、手を焼かされたようだ。
まあ、そうなるよねーと僕らは納得してしまったけど。
「明日から夏休みかぁ」
「今年は早いね」
「なんか、全体の休日数の調整がなんとか言ってたような」
「そうだっけ〜」
「そうだったかも」
僕らは終業式を終えて、ホームルームで駄弁っていた。
一応まだ夏休みの諸注意だとか、いつものがあるので。
今年の夏休みはそれはもう波乱に満ちてそうな予感がしてならないね。
主にかぐやだけど。振り回される未来が見えるみえる。
そういえば、体育祭も9月に回るらしい。僕はどっちにしろ参加できるかは怪しいけどね。先生から許可が出るかどうか。
「彩葉は夏休みはどうするの?」
「もちろん、勉強勉強バイトバイト、休息も入れて、この夏は無駄にしないようにするよ」
「いや、あの遊んだりって意味でね……?」
「芦花、分かりきってたでしょ?」
「たかちー、それでも様式美は大事だよ〜」
「荒鷹くん? 真実? それはどういう意味かな?」
「言葉の通りですけど?」
「ですけど〜?」
夏休みの予定を聞いた芦花が絶句するくらいの内容を、僕らは知ってたと言わんばかりに茶化していく。
実際予想は出来てたけど。
酒寄さんはそんな僕らに「こいつら……」なんて言ってるけど、自分の普段の行いのせいだよね〜。
そんなわけで、どうにかしてどこかで休ませようと僕らは画策し始めたり。
出来るかどうかは別としてね。彼女の目指す先を知ってるから、邪魔をしたいわけではないけれど、それはそれとして息抜きしないと爆発しかねないからね。
「今日は、2人ともバイトだっけね」
「うん」
「そうだね」
「じゃあ、夏休み入ったら遊ぼうね、彩葉」
「うん、予定なんとかして空けるね」
「無理しないでよ……?」
「今更ではないでしょうか」
「嘘でしょ鳩河くん、あなたもそっち側なの?」
しれっと守も刺していって酒寄さんが悲しい顔をしている。
いやまあここに無理しがちな人の味方はいないよ〜。
そんなこんなで僕らの夏休みは始まる。かぐやという嵐を添えられて。
バイト終わり、更衣室で着替え、連絡が来てないかスマホを見たら芦花から何やら動画のリンクが送られて来ていた。
何かと思い開いたら────。
「うわ〜、これは……すごい、なぁ」
────それはもう大変
大変オブラートに包んでますけど、包まないならかなりやばい。
かぐやの配信だったのだけれども、いやもう初手の自作と思わしき立ち絵、不協和音としか聞こえない音楽、内容ないから終わると言う計画性の無さ、挙げ句の果てには配信画面切り忘れからの顔バレ。ついでに酒寄さん家の内部も少し見えてしまっている。
これを役満って言うんじゃないのかな.麻雀はあんまり知らないけど、動画では見たことある。たしか、すごい上がり方をすることだったような。これは逆方向にすごいけど。
うわ、これ酒寄さんに報告した方がいい気がするけど、僕の口から伝えるのはちょっと……。
「荒鷹くん? なんかすごい顔になってるよ?」
「あはは……深刻な悩みを抱えてしまって」
「そんなに?」
うん、君のことですー。
というか、芦花もこれを僕じゃなくて酒寄さんに送るべきでは? なぜに僕?
面白かったけども。うん、はちゃめちゃだし、勢いだけでやってるのが分かるけど、なんか次が気になっちゃう感じがした。
何をやらかしてくれるかな、とかね。
まあ、監修するであろう酒寄さんの胃痛は考えないものとする。そこはもう僕の管轄ではないので。
巻き添えはごめんです。
僕は賢いので、この動画のことは黙っておきます。
だって、言えば確実に巻き込まれると思うので。
「まあ、気にしないで」
「荒鷹くんがそういうなら」
うん、それでいいよ。
困るのは僕じゃないしね。薄情と思われても、さすがにあの予測不可能な嵐の被害は避けたいよね。
そうしていつも通り酒寄さんに賄いを押し付け、そのまま部屋に入るのを見送った。
ちょっとかぐやのおかえりの声が貫通してた気がしたけど、気のせいかな? 壁薄そうだから、気のせいじゃないかも?
さ、また呼ばれる前に帰らないと「アキ〜〜〜〜!!!!」うるっさ、こんな夜中にデカい声で叫ばないでよもう。
「アキッ! アキッ、見てこれ! 配信!」
「分かった分かったから、とりあえず薄着でこんな時間に外に出て来ないの」
パソコン持って何故か下にいた僕のとこまで走って来たかぐやを、受け止める。
勢い強すぎだが。お腹は守らないと。下手すると芦花に怒られかねない。
で、見せられるまでもなく内容は知っておりまして。
なにやら悪寒を感じて、視線を上へ。
見上げれば、般若がこちらを見下ろし、早く来いと手招いていらっしゃる。
やめてほしいなぁ、僕関係ないよねぇ。
しかしながら僕の手を引くかぐやと、眼光鋭いその保護者に抗えるはずもなく。
渋々僕は連行されてしまった。ごめん芦花また帰るの遅くなるかも。
「荒鷹くん、悩みってこれのことだった?」
「その通りです」
「なんで説明してくれなかった?」
「いやぁ、僕芦花から送られて来た動画見ただけだし」
「ねね! どうだった! かぐやの初配信!」
「あんたは黙ってて」
「やだー! かぐやもお話しするのー!」
正面右から酒寄さんが、左からかぐやがそれぞれ反対の形相で話しかけてくる。
般若と、笑顔で。いやまじで僕関係ないんだけど、なんで正座させられてんの?
「正座崩していい? いいよ? ありがと」
「何も言ってないが。まあいいけど」
「で、僕はなんで巻き込まれた?」
「知ってたのに教えなかった罪」
「それはそうだけども。というか、元はと言えば保護者の監督責任では」
「誰が保護者だ」
「むずかしー話は後にしよーよー! どうだったか教えてー!」
僕らの会話はまだかぐやにはよく分からないようで。てか、楽しい話がしたいだけだなかぐやは。
まあ感想と言えば……。
「立ち絵が手書き」
「かぐやが描いたっ!」
「内容が短い」
「なんも思いつかなかったんだもーん」
「顔バレ」
「切り方分かんなくって⭐︎もう覚えたよっ」
「音楽がね……」
「どれも私もおんなじ意見なんだけど……あの、不協和音はどうやって……」
「不協和音? ジングルのこと? 見つけたこれでやったの!」
「私のキーボード! 勝手に出したな!」
求められたので答えれば、かぐやが鼻高々そうな感じで返して来た。
いや、あのクオリティでその自信満々な感じはなに……?
まあそれは置いておこう。
酒寄さんがジングル(配信のときに流れてた音楽)について言及したところで、キーボードを発見した。
酒寄さんのらしい。音楽の授業もピアノめちゃ上手かったから、なるほどね?
というか、部屋がびっくりするくらいごちゃついてる……。
この前来た時は何もなかったのに、既に一角が埋められてる。
あるのはなんか、なんだ? 何に使うんだこれ?
「これ、何に使うの?」
「配信! 色々買ってみた! ちゃんと百均だよっ」
「お、おぉ」
選んだもののセンスが……なんだこのトーテムポール。
何使うのか分からないけど、かぐやの頭の中にはきっと設計図があると信じて。
見なかったことにしよう。
で、かぐやは酒寄さんのキーボードを持ってにじり寄っていて。
「彩葉弾ける感じだよね〜? こんなの持ってたんだし! いっちょお願いしますよ〜ね、い ろ は!」
「ぐうっ、一曲だけよ?」
ちょろっ。
ていうか、僕そろそろ帰っていいかな。
時間はまあ、前よりは遅くないけど、そろそろ芦花に心配されちゃうし。
「そろそろ帰るよ? 僕もあんまり遅いとまずいし」
「え〜〜〜!!! 帰っちゃうのぉ。もっと遊んでかぐやと! アキ〜〜!!」
「また今度ねー。じゃ、ばいばーい」
「ぶぅ〜。絶対だよ〜! ばいばーい!」
酒寄さんは、まだ何か考えてるようで反応がなかった。
かぐやに戸締りだけ頼んで僕は帰宅した。
帰りの公園で、いつものように芦花が待っていた。
「芦花? こんな時間に外はやめてって言ったよね?」
「早くアキくんが帰って来てくれたら大丈夫だよ?」
「そう言う問題じゃなくて……もう。かぐやに捕まったら遅くなるから本当にやめてよね」
「……ちゃんと、帰ってくる時に連絡くれたらずっと外では待たないよ」
「じゃあそうする。でも、本当にやめてよね。心配なんだけど」
「私も心配なんだけどなー」
「うっ……ごめん」
「いいよ」
この後僕の家で夜ご飯食べてちょっとまったり雑談した。
次の日からかぐやはそれはもうなんでもやっていた。
どこかで見たような内容だったり、二番煎じ三番煎じなんて気にしない、とにかくなんでもやるスタイル。
でも、それが面白いというか。かぐやの反応が良くて。顔、言葉、身振り手振りでそのリアクションを全部伝えてくれる。
だから、見ていて飽きないし、次も見ようって気になってしまう。
「芦花ー、一緒にかぐやの配信見よーよ。気になるでしょ?」
「いいよ。……気になってたし、ちょうど良かった」
芦花と一緒にツクヨミの家の縁側で、2人並んでかぐやの配信を見たりする時間を作った。元々芦花も気になっていたからちょうど良かったしね。
太巻きを一本食べ終えるまで一言も発さない配信は、画面外の酒寄さんのなんかたくさん伸びるくるくるのついたやつで妨害されて一瞬で終わったし。その時の顔はまじで面白くて、芦花とめっちゃ笑ってしまった。
「一瞬……ふっ」
「動画時間短いから何かと思えば……ふふっ」
ゲーム配信は、いろいろやるけど死にゲーをしてクリアできた時の反応が本当に良かった。思わず小躍りしてるのを見て僕もホッとした。芦花も胸を撫で下ろしてたな。
「良かった……このままクリア出来ないかと思ったよ」
「私は無理かも、アキくんなら出来る?」
「ん〜苦手なんだよねこういうのは。時間かかりそうかなぁ」
映画同時視聴は、うっかり好きではなかったらしい結末(バッドエンド)を引いてブチギレていて面白かった。芦花は内容が悲恋だったからかなんだか難しい顔をしていた。
「バッドエンドにそんなに怒らなくても」
「でも、私もこんな悲しい展開はあんまりかなぁ」
「そりゃ僕もハッピーな方が良いけどね。物語にはたくさんの結末があるんだし、こういうのもあるって思えばいいんじゃないかな」
「……そうだね」
お悩み相談では、かぐやらしいバッサリとした回答でファンの悩みをぶった斬っていた。確かにすっぱり忘れて次に行ければ楽だけど、人間簡単にはそうはいかないんだよ……?
芦花も同じことを思ったようで。
「人間簡単じゃないんだよね」
「ね。かぐや的にはもっと楽に生きればいいのにって思ってるからこそなんだろうけどね」
「それが出来たら苦労しないよね人生」
「ねー」
本当に、なんでもやっていて、だからこそ面白いしファンも増えているんだなと思った。
毎日少しずつだけど、かぐやのファンが増えていくのを僕らも見守っていた。
ちなみに1番人気は歌配信だと思われ。
はちゃめちゃやるし、リアクションも大きいかぐやだけど、歌う時は別人みたいになるのだ。
元気な曲はイメージ通り、しっとり系は大人しく静かで雰囲気を出すのが上手い。
「まーじで、歌に合わせて雰囲気変わりすぎでしょ」
「どれも合っててすごいね」
「芦花も歌って欲しいなって、思ってますよ?」
「……機会があればね?」
「ほんと? やった」
これで鷲掴みにされたファンも多そう。
たまに路上ライブもするようになって、僕らも予定が合えば参加した。
「いろP、顔出しだけは頑なだね」
「まあ、これはこれで可愛いしありじゃない?」
「あんなでかい着ぐるみで可愛い……?」
ちょっと芦花の感性が謎です。
それはおいといて、歌は良かった。
まだ集まるファンは少ないけど、着実に名前を広げている。
酒寄さんは相変わらず顔は出さないし、勉強をしてるのでしょう。夏期講習がどうこうという連絡がグループに来ていた。僕も抜けた期間の補習が少しあるので、学校であったりするし。
きっとご飯とかをかぐやが作ってるんだろうけど、まだ不健康そうに見える。なんだかねぇ。
ランキングはまだ下の方だけど、上昇具合は素晴らしい。
その内皆とコラボとかすることもありそうだね。
まあ、僕は男だし燃えかねないからそういうのはなさそうだけど。
芦花と真実がその辺を担当してくれるでしょう、僕はいつもの配信を────。
なんて、思っていた日が、僕にもありました。
「え、ペットボトルロケット?」
「うん! アキも手伝って!」
「これ、僕燃えない?」
────なぜか金髪になっている元赤ちゃんから、配信を手伝えと請われてしまいました。
なぜに。
かぐや大暴れタイムが始まるっ!
超かぐや飯見ました?素晴らしい供給で無事焼けました。ところで諌山しんじつさん家、誕生日全員同じってマ?
50話まで来てしまいましたね、果たして完結する頃には何話になるやら。