映画だと数秒のところを描いていく〜。
ある日、酒寄さんから急な連絡が来た。
内容は「かぐやが動画撮るからカメラマンやってほしいって」とのこと。
いや、酒寄さんでいいじゃんと返信したら、かぐやがどうしてもとうるさいとのこと。
予定のない日だったこともあり、仕方なく参加した。
ちょうど一緒に夏休みの宿題をしようとしていた芦花に、かぐやの手伝いをしに行くと言ったら、私も行きたいと言われた。
ので芦花も連れていっていいか聞いたら、OKが出たので芦花も参戦。
「やほー、来たよかぐや」
「アキ! ととと……? ん〜……あっ! チョコのパンケーキの!」
「私の覚え方チョコのパンケーキなんだ……ふふっ。改めまして、かぐやちゃん、私は芦花、よろしくね?」
「ろか! よろしく!」
ちゃんと顔を合わせるのはあの以来だっけ。
覚え方で僕も少し笑ってしまった。
いやまあ僕も料理の人だったし、似たり寄ったりか。
「で、なんの動画撮るの? てか、カメラマンはいいとして、芦花には何してもらうの?」
「ペットボトルロケット飛ばすよ! もう作ってあるし! ろかには〜やって欲しいことあったら頼むっ! とりあえずはあんぜんかくほ? が大事だって彩葉が言ってた!」
「あーうん、そこからか……」
「うん、私に任せて」
やることないじゃんなんて思ってたら、むしろ1番大事なところが芦花の担当でした。
酒寄さん丸投げですか?
ちなみに、彼女は今日は講習からのバイトだそうだ。相変わらずですね。
そんなわけで、僕らは近くの広くて障害物の少ない平地に移動した。
最初に動画の最初の口上を撮る。
その後、各準備をこなす。
「こっちはいつでもいいよー!」
「安全確認よーし! いいよー、準備おっけー!」
安全確認した芦花は射線、もといカメラの納める範疇から退避。僕の隣に移動した。
僕らは裏方なので、あんまり動画に出ないようにしている。
かぐやは、ほんなの気にしなーいと言っていたけど、こっちが気にするのだ。コラボとかならまだしも、カメラマンとアシスタントだしね。
「かぐや、いっきまーす! 飛んでけぇっ〜〜!!」
記念すべき第1射。
かぐやの自作ペットボトルロケットは、放たれて宙を舞い、1回転して地面に落ちた。
ぺしょりと墜落したそれを見て、カメラマンの僕の方を見る。
いや、そんな思ってるより飛ばなかったな、みたいな顔されても。
芦花さん? 笑い堪えてませんか? 肩震えてますよ?
「なんか思ってたのとちが〜う。もう1回やろっ!」
「はいはい、好きなだけやりな」
「じゃあ私準備するね」
不満げなお姫様のために再度準備。
そもそもどう飛べば満足なんだ? 考えてなかったけど、これ終わるよね……?
終わりがあるかな思いを馳せながら、諸々用意して第2射。
今度は放たれてから1回転して……こっちに来た!?
「おわぁぁぁっ!?」
「アキ〜っ! あぶなーい!」
「アキくーーん!!??」
なんでか真っ直ぐ突っ込んできたロケットが、僕の右肩にクリティカルヒット。
なんとかカメラ兼用スマホは手放さなかったものの、思いっきりぶれてしまった。あと、ちょっとだけ僕らの顔が映った。
いやこれ思ってるより痛いな?
すぐにかぐやがぺしょぺしょのくしゃくしゃな顔で突っ込んできた。
隣の芦花も心配そうな顔だ。大丈夫だって、そんな不安げな顔しないで?
「アキくん大丈夫!?」
「ごめんねぇアキ〜! あんなふうに弾道が曲がるなんて知らなかった!」
「大丈夫大丈夫、2人とも大袈裟すぎ。まあ、ちょっと痛かったけど、折れたりだとか、そういうのはないから大丈夫だよ」
「ほんとに? 肩取れたりしない?」
「人間の体はそんな簡単に各部位が取れるものじゃないよ? プラモデルじゃないんだから」
「とりあえず後で痣になってないか確認してね」
「もち」
波乱の第2射を終えて次で終わりにしようと言うことで、再度用意。
今度は安全を考慮して、スマホを固定して僕らは離れることにした。
一応、どちらに飛んできても安全なように僕と芦花も距離は取ってる。
さぁ、最後の1発、どうなるか!
「よーしいくよー! おりゃ〜〜!!!!」
気合い十分なかぐやの声と共に、空は舞い上がるペットボトルロケット。
なんと驚き3回転もして中々の飛距離を出して……またこっちに来た!?
「あ、わ、私!?」
「芦花っ!」
今度は芦花の方へ!?
やばい、芦花が怪我するっ!
体が勝手に動いて、彼女の方へ。
なんか、刺された時と同じような感じがしないこともない……なんて。
「あぶなーい!」
「へ、アキく────きゃっ!」
ぶつかる前に辿り着いたものの、勢い余ってそのまま芦花を────。
「怪我はない芦花!?」
「……ないけど、ちょと、近い、かも、ね」
「え……あっ! ご、ごめ」
「いい、よ。……ありがと」
────押し倒してることに気づきませんでしたー!
地面を背景に視界に綺麗な幼馴染の顔。やば、顔が良い。じゃなくて。
なんてこった、まるでラブコメじゃないか。ヒロインは人気でそうだけど、主人公があまりにも地味すぎてこれは良くない。
いや、自分のことを主人公っていうのあまりにも痛いけど、この場合は仕方ないよね。
なんて、現実逃避していて気付かなかったけど、芦花顔赤くない?
「大丈夫? 立てる?」
「うん、大丈夫」
「なんか顔赤いけど、やっぱりどこか怪我してない?」
「ううん! してないしてない! 気にしないで!」
「芦花がそういうなら……あ、土着いてるよ」
「あ……う、ん」
髪に土着いちゃった。払い落としてと。
背中も土が着いちゃった。僕の勢いが強すぎたあまりに……ごめんね。
優しく背中のも払ってあげる。
どう見ても顔赤いんだけどなぁ。夏だから体温上がっちゃったのかな?
あとで飲み物渡さないと。
あ、かぐやのこと忘れてた。
「かぐやは……なにしてるの」
「いやぁ、なんかかぐやのこと忘れてるし、ちょっと割り込める雰囲気じゃなかったから、カメラ回してた」
「おいこら、顔映すな心配しろあと絶対投稿しないでよ?」
「心配はしてるよもちろん! 大丈夫ろか?」
おい返事がないぞ。
投稿しないよね、ね?
「うん、怪我はないよ。さすがに2回連続こうだと危ないし、これはもうやめとこっか」
「そうだね、せっかく芦花がいるんだし、メイクでも教えたもらったら?」
「それいいかも! じゃあ、家帰ろっ!」
結局返事はなかったな。大丈夫かなぁ。
僕はいいとして、芦花は下手に男の影があると炎上とそうで嫌だなぁ。
かぐやは……まあ、酒寄さんがどうにかするでしょ。
編集はかぐやがしてくれるみたいだし、ちゃんと釘刺しとかないと。
ところ変わって今度は芦花の家。彼女は一旦シャワーを浴びて土などを落としてから準備。
さすがに家主不在で酒寄さんの家に上がり込むのは不味いのでね。
僕の家は映えないので却下。
まあ、芦花の部屋に僕がいるのもまあまあ異物感ありますけどね。
さてさて、今度こそカメラマンに徹し────。
「わはー! 失敗したー! どうこれ! おもろくない?」
「カメラマンに聞いてくるな! 声はいるでしょうが!」
「別にいいじゃーん。あとで編集でどうとでもなるし〜」
「この悪ガキ……」
「わるわらべでーす! ぴーす!」
────たかったですが、無理でした。
普通にカメラマンに話しかけてくるんだもん。
思いっきり口紅やら、アイラインがズレてとんでもないことになってるのに、元の顔が良いからかピースしてるとそれはそれでなんか良い感じになってるのがちょっと腹立つ。
でも、メイクしてる幼馴染の方が僕的には顔が良いのでまあいいか(?)。
自分の本領発揮ということもあって、芦花は生き生きとしてて楽しそう。うん、やっぱり楽しそうな芦花の笑顔は最高ですね。乾いてはいないけど乾いた心に潤いが。
NGシーンは後でどうにかするとして、再度メイクし直して、今度はばっちりメイクの美少女が完成した。
「どーよ! 可愛かろ〜?」
「うん、言動が落ち着いたらね」
「それ褒められてる?」
「うんうん褒めてるホメテルー」
「絶対ちがーう! ちゃんと褒めて〜!」
「あ〜分かった分かったからこっち突撃してくるな! カメラに映らなくなるから!」
「いぇ〜い! アキも映しちゃえ!」
「やめい!」
強めの顔面でこっちに迫ってくる絵面は、ファン視点ではいいかもだけど、残念ながら僕は求めてないのでやめてね?
芦花も微笑ましそうに──ん? なんかちょっと捲れてない? どした?
「芦花?」
「なーにアキくん。かぐやに迫られて嬉しい感じ?」
「いやいや待って待って。なんでちょっと怒ってるの? 芦花のメイクがばっちりだからこんだけ盛れてんのでは? ちゃんと技術を誇って?」
「別に、怒ってないよ。なんか、アキくんが楽しそうでいいなって。私のメイクテクで、かぐやちゃんが可愛くなったならいいけどさ」
なにやら嫉妬しておられる?
ちょいむくれ気味の幼馴染さんは、ツーンと顔を背ける。横顔もかわよ。
じゃなくて。
まったく、僕の心は昔から君以外見てないのに、なにを嫉妬してるのやら。というか、嫉妬されてるということは、もしかして羨ましいと思ってる?
「芦花?」
「なーに」
「せっかくだし芦花もばっちり決めて写真撮れば?」
「なんでよ。かぐやちゃんのメイク動画でしょ? 私はいらないでしょ」
「どうせなら2人揃ってメイク決めた動画の方が伸びると思うよ? ね、かぐや」
「へ? うん! そう思う! ろかも一緒に写真撮ろっ!」
「……かぐやちゃんがそう言うなら」
よし。誘導成功。
かぐやも僕の意思を汲んで……くれたわけではなさそうだけど、直感で察してくれたようでなにより。
と言うわけで、今度は芦花のメイクタイム。さすがにここは撮らないよ、怒られるからね。かぐやは撮ろうと提案して、怒られました。今後ろでしょんぼりしてます。
あ、こら、顔触らない、メイク崩れちゃうでしょ。
「終わったよ」
「おぉ! ろか可愛い! 最強!」
「ふふっ、ありがと」
「アキもそう思……アキ?」
「あれ、アキくん?」
拝啓、芦花へ顔面が強すぎると人はうっかり尊死することが分かりました。あとはよろしく頼みます。僕より。
はっ。
なんか一瞬昔から今までの芦花が見えた気が……これが走馬灯? 芦花しかいなかったけど?
それはさておき、やはり芦花しか勝たん。
可愛い。
可愛いがすぎる。
元々可愛いのに、さらに可愛くなっちゃってさ。
何回僕のこと惚れさせるの?
そろそろ心臓の替えが必要だよ?
キャパオーバーが近いよ?
死因、可愛いの接種しすぎによる尊死になるよ?
はぁ、自分で提案しといてなんだけど、やはり幼馴染は最高だ。
「ねぇ、アキくん? 聞いてる?」
「はっ、なんだい芦花」
「アキようやく帰って来た〜。ろかがメイク終わってから5分くらい固まってたよ?」
「そんなに? いやぁ、ちょっとあまりにも可愛すぎて。やっぱ芦花は最高に可愛いね」
「……そっか。ありがと」
「ちょっと〜かぐやにはそんなに褒めてくれなかったのに〜」
かぐやがぶーたれてるけどスルーします。だって幼馴染が可愛い顔してるので。
およよ? 照れてます? 顔が赤いよ?
いつも可愛いって褒めてるはずなんだけど、珍しいな。
リアクションがオーバーすぎてお世辞とは思えなかったのかな? まあ、ちゃんと受け取ってもらえたならなにより。全部ほんとのことだしね。
「ほら! かぐや写真撮るんでしょ?」
「そうだった! ろか! 撮ろ!」
「わわっ、引っ張らなくてもそんなに近いとくっついちゃうよ」
「近いくらいがいいんだって! 知らないけど!」
「いや、知らんのかい」
でも、顔の強い2人が近いとなんかいい感じは、するかも。知らんけど。
2人は表情を変え、ピースしたり、ポーズも変えてみたりしてたくさん写真を撮った。
データはあとで酒寄さんに送るけど……あ、そういえばかぐやもスマホ買ったんだっけ。じゃあ本人に送るか。
「かぐや、スマホ買ったんでしょ? 連絡先交換しとこ」
「おっけー! ろかもしよ〜?」
「もちろん、はい」
かぐやらしい連絡アプリのアイコンにちょっと笑った。
あと、早速スタンプを連打してくるな。やかましい。
「じゃあ、かぐや編集するから帰るね! ばいばい!」
「ここから1人で帰れるの?」
「だいじょぶ! マップ見て歩く! 散歩みたいなものだし!」
「ならいっか。気をつけてね」
「うん! じゃあまたね!」
金色の嵐は去っていった。
あ、なんで金髪なのか聞くの忘れた。まあいっか。宇宙人だし髪色も自由自在だったりするんじゃないかなぁ。
いや、そんなことあるか? でも、急成長してるしなぁ。
分かんないけど宇宙人だしいっか。
「かぐやちゃん金髪になってたね」
芦花も気になってた様子?
いつのまにか髪色変わってたしね。
「ね。でもあの色の方がかぐやに似合ってるんじゃないかな。活発で、元気溌剌とした感じにちょうどいい」
「……アキくん的には金髪は好き?」
金髪? ん〜別にどっちでも……。
その人に似合うならなんでもいいからなぁ。
芦花は今のピンクも、元の黒髪も似合ってたから、なんでも合うんじゃないかな?
あ、でも、今の方が芦花らしくて好きかも。
「普通かなぁ。その人に似合えばって感じ」
「そっか。私は似合うかな?」
「芦花にも似合うと思うけど、個人的なことを言うなら今のピンクか最初の黒髪がいいと思うよ。まあ、芦花の好きな色にしたらいいと思うけどね」
「ふ〜ん、今の方がいいんだ。わかった」
うん? まあ、好きにしてくれて構わないけどね? 僕はどんな芦花でも好きなので。
ゲーミングヘアーでも、たぶんきっとめいびー。発光してるのはきついかなぁ? まあ、その時による。
「てさか、さすがにかぐやちゃんのこともうちょっと褒めてあげてよ。しょんぼりしてたよ?」
「あー、下手に褒めると調子乗って何するかわかんないからなぁ。酒寄さんがいたら対応投げれるんだけど。てかそうなる前に止めてくれるし」
「確かに。彩葉なら止めてくれる……よね。てかさ、私には褒め言葉素直に出してくるじゃん。悩んでくれないの?」
「脳から反射で出てるからなぁ。芦花ならいつでも可愛いし、普段の芦花もすっぴんも、さっきみたいなメイクばっちりでも」
「………………」
あれ、芦花?
返事がないなと顔を見たら、茹蛸みたいになって固まってる。
え、変なこと言った?
「芦花?」
「ちょっと用事思い出したから帰るね! ばいばい!」
「ちょ、芦花さん!?」
唐突に再起動したと思えば、そのまま慌ただしく帰って行った。
……なにごと?
思いの外長くなったので、かぐやの編集した動画を見る回はまた次回で。