なお、ガチガチなやつではない模様。
お気に入り300人突破ありがとうございます!
芦花と幼馴染のじれじれとしたいちゃつきを見守っていただけますと幸いです。
「アキくん」
優しい声色が聞こえた。
まだ、ぼんやりと頭が寝ぼけているけど、聞き間違えるはずもない大好きな人の声。
「起きて、そろそろ皆戻ってくるよ」
「んんぅ、ありがとろか」
「いいよ、お弁当のお礼だと思ってくれれば」
そっかぁ、お礼かぁ。
なら受け取っとかないと。
まだ半開きな目を瞬かせつつ、大きく伸びをする。
……あれ、僕こんな寝方してたっけ。
寝てる間に動いたのかな?
芦花にめっちゃ近いんだけど。
うーん、寝相は悪くないはずなんだけどなぁ。
「どれくらい寝てた?」
「30分ないくらいだよ」
「そっかぁ。結構寝たように感じたけど、気のせいだったみたい。なんか、すごい寝やすかった気がする、なんでだろ」
「……なんでだろうね」
体感1時間くらいの感覚だったけど、そんなものか。
なんか芦花があんまりこっち見てくれないけど、なんだろ。
そんなに見苦しい寝顔だった感じですか? 恥。
「へいへ〜い、食後の運動はいかがか〜い」
「ビーチバレー用にネット借りてきた」
「2人1組でやろ!」
買い物に行ってた3人がわいわいと戻ってきた。
その手には宣言通りのものがあって。
ビーチバレーとか、ルール知らないけど?
酒寄さんはまだうたた寝中。およ、よだれが垂れてますね。見ないふりしとこ。
「いーろは! いつまで寝てるの! 遊ぼ!」
「ぐえっ。かぐや……もう少し休ませてくれても良くない?」
「今日は休みの日でしょ? 休んでるじゃん!」
「いやそうじゃなくて、いや、そうか……?」
「とりあえずネット貼ろう」
「荒鷹そっち任せた。こっちは俺やるわ」
おけおけ。
僕らが準備している間に、女子4人は軽めの体操。
そしてさっきかぐやが膨らませたボールを準備運動がてら女子たちがパスし合っている。
組み合わせは、いつも通りかな?
「ネット張れたよ」
「アキありがと! チームは、かぐやと彩葉、まみとまもる、アキとろかでいいよね?」
「まあ、妥当だね」
「よ〜し、守頑張るよ?」
「任せろ」
「かぐや、ルール分かるの?」
「分かんない! でも、地面に落とさなきゃいいんでしょ!」
「分かってるとは言えるのか?」
やる気十分な、真実守カップル。
かぐやの理解の具合に難ありのかぐや酒寄さんチーム。
そして、僕らはというと。
「身長のアドバンテージがすごいね」
「確かに、私たち高いからね」
バレーにおいては非常に強みとなる身長が僕らは高いので、他の2組よりも有利な可能性がある。
とはいえ、スポーツバリバリな守ととにかく動き回る体力があるかぐや、なんだかんだ小柄ながら体を動かすのは嫌いじゃない真実と、我らが運動神経抜群超人酒寄さん。
意外といい勝負になるかも?
というわけで、まずは僕らと守たちから。
「よっしゃーいくぞ荒鷹!」
「おいガチサーブすんなよ!?」
「狙うのはお前だから大丈夫だ!」
「なんも大丈夫じゃねぇ!」
じゃんけん負けてサーブ権は向こうへ。
運動神経の良い守がガチサーブするのは聞いてないな!?
一般帰宅部員の僕らには荷が重いが!
って、本当にこっち飛んできたし!
はや! いやこわ!
思わず避けかけたけど、さすがに芦花の手前恥ずかしいところは見せれないと踏ん張った。
真正面から来てくれたから、なんとか腕の真ん中らへんで上げたけど、ほとんど直接向こうのコートに帰ってしまった。
運良く真実の方に行ったので、スパイクは来ない、はず。
「守! ほい!」
「よしきた! 真実頑張れ!」
「打つのは無理だって〜!」
「よし、緩めのボールきた」
「アキくん任せた!」
まじですか。
真実の返したアンダーからの返しが僕に来たので同じくアンダーで芦花へパス。
受け取った芦花がオーバーハンドのパスでこちらへ。
思ったよりも芦花上手くない? 綺麗に返ってきたけど?
さすがに思いっきりは打てないので守の方は音だけ大きい平手打ちになった。
そこからしばらく緩めのラリーが続く。あまりスパイクとかは来ない優しいラリーだ。
「すごい、バレーっぽい!」
「ビーチバレーだからね」
「打つの、かぐやもやりたい!」
「さすがにいきなりはきついでしょ」
「彩葉は出来る?」
「んー、出来ないこともない、かも」
「見本! 見たい!」
「はいはい、チャンスがあったらね」
外野の2人の声が耳に入った。
テンション上がりっぱなしのかぐやが、キラキラした目で酒寄さんに話しかけまくっている。
酒寄さんも、なんだかんだやる気になってきたのか僕らのラリーを真剣に見ている。
いやあの、僕らど素人だよ? 体育の授業で齧った程度の知識でやってるから、ガチのスパイクとか止めれないからね? やめてね?
「おらー! 荒鷹覚悟!」
「勢い強いって!」
なんて、よそ見してたら、守のやや強めスパイクがこちらへ。
狙ってるの顔だろ絶対!
後ろに下がってアンダーであげたけど、勢い強すぎてコート外へ。
くそう、先に点取られた。
あ、3点取った方が勝ちってことになってるよ。
優勝したところが、この後近くの水族館の代金を奢ってもらえるってことでわりと皆燃えてたりする。
僕と芦花はそこそこかな。どっちにしても行くのは変わりないし、どっちの代金を払うにせよ、そこまで嫌じゃないので。
それはそれとして、勝負だし楽しもうねって感じ。エンジョイ勢ってやつ?
さてさて、本当なら点とった方が連続でサーブすると思うけど、今回は1点ごとに交換するよ。
というわけで、芦花へパス。
「芦花、好きなように打っていいよ」
「私でいいの?」
「うん、よろしく」
「おっけー、任された」
実は、授業の時に芦花がアンダーサーブだけでなく、オーバーのサーブもやってたのを知ってるのだ。
そこを見込んで頼んでみたけど、正解だったようで。
綺麗なフォームから流れるようにサービスを打ち込み、思いの外綺麗に飛んできたボールに驚いた守がボールを吹っ飛ばしてこちらに得点。
素晴らしい!
「さすが芦花、上手いね」
「授業も役に立つんだね、綺麗に入ってびっくりだよ」
「ちゃんと練習してたからじゃない?」
「……それ知ってるんだ」
おっと、口が滑ってしまった。これは聞かなかったことにしてほしいな。
隣の幼馴染からジト目が向けられておりますが、見ないふりして素知らぬ顔。
授業中でも隙あらば見てるのがバレるのはまずいからね。
「よっしゃ〜、芦花がやるならわたしもやるよ〜!」
「お、真実も上から?」
「いや、さすがに無理」
やらんのか〜い。
勢いづいて言った割にはアンダーからのサービス。
でも、高い。
これ取りづらいんだよね、シンプルだけど。
高い分普通にやると高く返ってそのまま向こうのコートにいきがち。
さすが真実、計算高いな。
「取るよ〜、芦花よろしく〜」
「は〜い」
よっ、と。
落ちてくる地点に入って、なんとか芦花にパスを繋ぐ。
けど、やっぱりちょっと高かったかも?
芦花も返すの大変そうだ。
「ごめん! ちょっとずれたかも!」
「任せて!」
言葉通り返ってきたボールはネットから遠目だけど、そこはお任せあれ。
バックアタック? 的な感じで後ろからも打てるよ!
「よい、しょっ!」
守目掛けて飛んでいく。
今度は綺麗に受けられボールが上がる。
真実のトス、守の強めスパイク。
それずるくない? スパイク普通に打つのはどうかと思います。
止められないまま、2点目を奪われた。
「現実で運動神経良いやつはいいねぇ」
「荒鷹も悪くはないだろ」
「そんなに良くもないけどね」
サービス権はこちらへ。
次は僕が打つかぁ。
といっても、僕も真実と同じくアンダーぐらいしか出来ない。
オーバーは練習したけど明後日の方に飛んでくから諦めた。なぜだ。
「そーい」
綺麗な放物線を描いて守のところは飛んでいく。
「おーらいおーらい、真実よろしく」
「あいよ〜受け取れ〜」
これまた綺麗なアンダーハンドパスで上げられたボールは、真実のトスでまたまた守へ。
待て、なんかこっち見てないか。
「おらっ」
「ぐえっ」
やっば飛んできた!
と思う頃には構えた腕を吹っ飛ばす形でスパイク炸裂。
ボールは軽やかにコート外へ。
1-3僕らの負けだ。
「スパイクずるくない?」
「荒鷹の身長なら大体打てるだろ」
「やってなかっただろ」
「こっちも勝ちたいんでな」
ガチじゃん。
ネット際まで上げてくれれば確かに大体打てるけども。
それだと面白くないからやってなかったのに。
次があったら守狙ってやる。
一旦僕らは撤退して、次は守たちと、かぐやたちだ。
僕らはマットの上に避難。
さすがに動いたから暑いね。
「はい、冷たいドリンク」
「ありがとアキくん」
「負けちゃったねぇ」
「まあ、そこまで優勝狙ってたわけじゃないし。楽しかったからいいんじゃない?」
「そだねぇ」
さっきの芦花のオーバーハンドサーブを、見様見真似でやってネットにボールを突き刺しているかぐやを眺める。
勢いは凄いんだけどね、あれ成功したら止められなさそう。
「かぐやちゃんってさ、凄いよね」
「なにが?」
「あれだけ頑なだった彩葉を、こうやって振り回してるところとか」
「あー」
眺めていた先の人に気付いたのか、芦花はかぐやの話題を振ってきた。
確かに、去年の夏休みも酒寄さんは誘ってたけどまあまああれこれ理由をつけて不参加にしようとしてたな。
なんとか押し切ったけどね。
でも、今年は割と普通に来た。これもかぐやのおねだりパワーだったりして。
「なんかさ、私たちが彩葉をあれこれ助けようとしてたけどさ、かぐやちゃんがその辺ぜーんぶ上手くなんとかしてくれてるように見えてさ」
「まあ、押しが強いかぐやを、止めきれない酒寄さんだからそうなのかもね」
「私たち、助けになれてたのかなって、たまに思うんだ。今も前よりも明るい笑顔に見えるし」
確かに、かぐやと一緒にバレーやってる酒寄さんは、前よりも笑ってる姿が多く見られる気がする。
とはいえ、まだまだ女子高生らしい雰囲気とは程遠い感じもするけどね。バイトと勉強のデスマーチは変わってないみたいだし。
そんな所を見て芦花さん、ちょいとナーバス?
「なってたか、そうじゃないかなんて気にしなくてもいいと思うよ。僕らは僕らの意思で酒寄さんの助けになろうとしていた。それは変わらないじゃん?」
僕のお弁当押し付けだとか、ご飯奢ったりとかね。
「それは、そうだね」
「ならさ、結果がどうであれ酒寄さんを思ってのことならそこに優劣なんてつけない方がいいよ。酒寄さんが助かってたかは、酒寄さんが決めることだし友達の僕らだからこそやれたこともあったと思うし。かぐやは同居してるからこそ僕らよりも近い距離で酒寄さんを助けれるわけだしね」
僕らの距離感と、かぐやの距離感は違う。
1年の間で出来た、友達という絆。
転がり込む形で入り込んだかぐやと酒寄さんのそれは、僕らにはそりゃあちょっと思うところのあるように見えるかもしれないけど。
でも、劇的な変化をもたらすのはいつだって外部要因というか、第三者なわけで。
「友達だからこそ、かぁ。確かに、昔だったらもっと助けたい、頼ってほしいって思ったけど、むしろ頼られるまで待つのも友達の役目なのかもね」
「そゆこと。なんでも助けるわけではないし、でも、助けを求められたならそれに答えるのが友達のあるべき姿ってやつじゃない?」
芦花のそれはたぶん好きが故に助けたい、もっと頼られたいだと思う。
でも、それが変わったのなら、変わっても問題がなくなったのであれば、それもまた僕らの絆の形としてあるべきものだと思う。
僕のスタンスは、芦花に頼られない限りは、頼られるまでは手出しはしない、だしね一応。
どうにも見過ごせない時はさすがに助かるけども。
僕のキャパにも限界はありますので、そして大部分は芦花に割いてるので。
余ったところでお助けしますよっと。
「アキくんって、優しいね」
「優しいかなこれ。見ようによっては頼られるまで何もしないやつに思えない?」
「それは自分を悪者にしすぎでしょ。勝手に助けてくれる人は、良い人かもだけどそれが助けてくれる人のタメになってるかは分からないじゃん。彩葉の件は、まあ押し付けてるからちょっと微妙だけど」
「あれは自分を削りまくってる酒寄さんが悪い」
「それはそう」
意見が一致して笑い合った。
僕としては芦花以外を助ける気がなくて、その本人があまり頼ってくれないから余ってるところで真実だったり守だったり酒寄さんをフォローしてるにすぎないし。
正直芦花が関わらないなら僕はあんまり他のことは興味がない。酒寄さんも初手はなんかクールな人だなーとしか思ってなかったわけで。
僕の真ん中に芦花がいるから、芦花にはそう見えてるんだろうなと思ってる。
僕は僕を善人だとは思ってない。悪人でもないとは思うけどね。
芦花にとって善人であれればいい。それだけでいい。
逆に、芦花に対して悪人なら僕も悪人になる。芦花に害するやつなんて、いらない。
おっと、過激な思考が周ってしまった。
話を戻そう。
とりあえず僕らは僕らなりのやり方で酒寄さんと付き合えばいいんじゃないかなって僕は思ってるよ。
「あ、終わったみたい」
「かぐやたちが勝ったみたいだね」
「試合なにも見てなかったね」
「まあ、そういうときもあるよ」
なんか深いかもしれない話をしてしまったからね。
さあ、最後の試合と参りましょう!
「覚悟しろアキー!」
「お手柔らかにね」
「隣の猛犬が噛みついてきそうで怖い」
「よろしくね彩葉」
穏やかムードな酒寄さんと芦花を尻目になぜかかぐやから熱い視線を感じている。なんで。
「じゃんけんぽい」
「負けたー!」
「リアクションがデカいって」
じゃんけん負けただけで四つん這いになって地面叩く人初めて見た。
酒寄さんは呆れてるし、芦花は笑ってるし。
賑やかですねぇ。
「ほら、始めるよ。芦花からどうぞ」
「は〜い。行くよー! それっ!」
初手は芦花のサービスから。オーバーハンドの綺麗なサーブは、酒寄さんへ。
「ほいっと」
「かぐやちゃんにまかしとき!」
「いいから早くよこせ!」
喧嘩してます?
でもその割に息ぴったりなんだよねこの2人。
酒寄さんが上げたパスを、謎に高くトスするかぐや。うん、かぐやらしいね。
それに合わせるように助走をつけ、高く飛び────。
ドシュッ!
────僕の顔の右横数センチをボールが通っていった。
「かぐや? スパイクはこうやってやるのよ」
「おぉ〜! かっけぇ〜! 次かぐやもやる!」
「じゃかぐやがサーブあげてね、私トスするから」
いやあの、素晴らしく綺麗なフォームからバレー選手もかくやのスパイクが飛んできたのですが。
地面の砂派手に爆心地みたいに飛び散ってますよ?
あのこれ、本当に素人が取れるやつですか? 怖いんですけど。
「……芦花」
「無茶言わないで? 私も無理だよ?」
「ですよねー」
いやまあダメ元ですけど。
運動ならなんでも出来るのかよこの超人は。
そりゃ守たちも、さくっと負けるわ。
「よーし! じゃあ次はかぐやのサーブね! いっけぇ!」
気を取り直してかぐやのサーブ。
勢いやよし。しかし、どうにも成功する未来が……。
あ。
「あ」
「ありゃ?」
綺麗にあげたボールを打つまでは良かった。
が、当てたところが悪かったのか、変な回転をしながらボールはあらぬ方向に飛んでいき──。
「え──へぶっ」
「守〜〜!!??」
──近くで観戦していた守の頭へクリーンヒット。
おでこらへんにヒットして思いっきり後ろに倒れた。
わぁお、すごい威力。
「守ー!? ごめーん!? 大丈夫ー!?」
「鳩河くん、大丈夫?」
ボールでぶっ倒された守は、手だけあげて親指を立てた。
あ、大丈夫なのね。
でも、起き上がらないのでそのまま真実が頭を抱えて膝枕へ。わお、大胆。
「大丈夫そうだから、放っておこう」
「だね。試合ぞっこー」
飛んで行ったボールを回収して、サービス権はこちらへ。
とりあえずアンダーのサーブで、スタート。
先ほどのことをふまえ酒寄さん達はやや穏やかめのバス回しで攻撃なし。
かぐやもさすがに反省してるのか落ち着いている。
が、落ち着いてるのが性に合わないのか途中で派手にトスをあげてしまってボールをコートの外の方は飛ばしてしまった。
これで2-1。あと1点だね。
「やばい! 負けちゃうよ彩葉!」
「焦らないの。まだチャンスはあるんだから」
さすが酒寄さん、こういう時でも冷静沈着ってやつ?
芦花も落ち着いてるけどね。平常運転だ。
「よーし、行くよー」
酒寄さんのサービス。
正直さっきのスパイクがあるから怖いんだけど。
綺麗に投げられたボールは真っ直ぐ上がって、助走をつけて走ってきた酒寄さんが飛びながらそれを打ち込んで──。
バシュッ!
──また、触れなかった。
いや取れるかぁ!
「よし、サービスエースは気持ちいいね」
「いいなー、かぐやもさっきそれやりたかったのに」
「かぐやにはまだ早いわよ」
まじであの人なんなの。
スパイクも上手くてサーブもえぐいんだけど。
芦花も横目で見て首を横に振ってるし。ですよね、わかる。
2-2だけど、これ勝てる未来が見えないが?
サービス権はこっちだけど、いけるか?
「芦花、頼んだ」
「あんまり期待しないでね」
いや、うん、仕方ないよね。
芦花のサーブもめっちゃ綺麗なはずなのに、ついさっきお手本みたいなサーブを見せられたからなぁ。
なんだか天才との差を見せられた気分だ。
そんな幼馴染のサーブを見送り、向こうは酒寄さんが上げる。
やば、これ絶対打ってくるやつ。
かぐやのなんだかんだ綺麗なトスに合わせて、酒寄さんが、飛ぶ。
そして、振りかぶって────。
ここから、なぜか世界がスローモーションに見えた。
視界の隅でようやく起き上がった守と、彼を心配そうな顔で見ている真実。無事で何より。
隣の芦花は酒寄さんの動きに対応できるようにはしてるけど、やっぱり怖そう。だよね、分かるよ。そして可愛い。
正面左、かぐやが酒寄さんにいっけー! と言わんばかりに手を振り上げている。元気だなぁ。
そして、正面、酒寄さん。綺麗な助走で踏み切って飛び上がった彼女は、まっすぐ正面にいた僕の方にスパイクを放って。
────そのまま僕の顔面に向かってきた。
あ、終わった。
「アキく──」
芦花の呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、直後に顔面への強い衝撃で意識を失った。
「アキくん!?」
私が彼を呼ぶ頃には、彩葉の放ったスパイクは顔面に吸い込まれていて。
最初に見た威力のまま、着弾したそれは、あっという間にアキくんを吹っ飛ばした。
本当に現実で宙を舞う光景ってあるんだ。
なんてことを感あるくらいさすがに非日常的な光景だった。
どこかへ飛んで行ったボールを尻目に、すぐに駆け寄る。
動く気配がない。
まさか、気絶してる?
「アキくん? アキくーん!」
「荒鷹くん大丈夫!?」
「アキー!? 守の次はアキまで!」
「そんな通り魔みたいな言い方しないでくれる!?」
いや、通り魔みたいなものでは。
横目でもまっすぐ顔に向かってたけど。
まさかあんな綺麗に当たるとは。
大丈夫かな、脳震盪とか起きてないよね?
「返事がなくて心配なんだけど、どうしよ」
「とりあえず日陰で安静にしよう? 鳩河くん呼んでくるから、運ぼう」
「分かった」
この後いつの間にか復活していた鳩河くんに、可哀想な目を向けられたアキくんを一緒に運んだ。さすがに2人でもキツかったので真実にも手伝ってもらった。
彩葉とかぐやちゃんは氷もらってくると行ってお店の方に向かったようだ。
日陰に移動させて、とりあえず安置。
真実たちはネットを片付けるようだ。
手伝おうと立ち上がったけど、そばにいてあげなと押し返されてしまった。
それもそうかと座り直して、ぼんやりとアキくんを眺めた。
彩葉のスパイクが当たったところが綺麗に赤くなっている。よく鼻血出なかったね。漫画とかだとこういう時って鼻血出たりするもの? らしいけど。
とにかく冷やすもの欲しいよね、と思っていたらかぐやちゃんがダッシュで帰ってきた。
彩葉がいないけど……。
「とりあえず氷! もらってきたよ! 彩葉は置いてきた!」
「置いてきちゃったかー。まあ、ありがと。もらうね」
「じゃっ、後はよろしく!」
「え、あ、うん」
氷を渡すだけ渡して、かぐやちゃんはまたダッシュでどこかへ向かっていく。途中で彩葉を捕まえて、どこかに行ってしまった。
嵐みたいに来て、戻ってったな。
「とりあえず直だと冷たいから布、服の上がいいかな?」
アキくんの持ってきたラッシュガードを借りよう。
氷をこれでくるんでおでこらへんに当ててあげよ。
「大丈夫かな」
起きる気配のない幼馴染に、ちょっと不安が過ぎる。
どうにもあの日のことがぶり返してくる。
嫌だ、そんなことはないと分かってはいるんだけど。
ちゃんと呼吸してるし、体温もある。
けど、目を覚ましてくれないのは、心に悪い。
「早く起きてよばーか」
なんて、ちょっと悪態ついちゃうの許してね。
まあ今回はアキくんが悪いわけではないけどさ。
あんなにまっすぐ彩葉のスパイクが飛んでいくなんて、誰も予想できなかったと思うし。
そういえば、鳩河くんが頭にボール当たった時は真実膝枕してた、よね。
…………、素足でかぁ。はず。
でも、アキくん喜ぶ、かなぁ。いや、分かんないな。
私たち付き合ってるわけじゃないし。でも、してあげたい、かも。
「ん、いっか」
真実たちはしばらく戻ってこなそうだし。
あの感じだとかぐやちゃんたちも戻ってくるのはまだ先でしょうし。
誰にもバレない。うん、大丈夫。
だから、そっと、そっとね。
「起こさないように」
さっきまでは起きてほしいなって思ってたけど。
今はなんでかまだ起きないでと思っている。
不思議だ。でも、いま目が合ったらもう顔が見れないと思う。
なんでだろう。むむむ、まだ気持ちの整理が終わってないから、分からない、かも。
まあいいや。
よし、彼の頭を、優しく、ゆっくりと持ち上げて、と。
後は、私がもっと近くに寄って、彼の頭の下に、差し込めば。
「よし」
なんだか、幾分か顔色良くなったような。
気のせいかな?
氷のおかげかな?
でも、私のおかげだと嬉しかったり。
我ながら大胆だとは思う。でも、こんなことアキくんにしかしないし。
したいとは思わない。
……ん、なんか、んん?
私、どうしてアキくんならって思った?
ビーチバレーしすぎてメインのところが尻切れトンボに。
次回に続く!(海編何話やるねん)
あと、これ書き始める前に、地震がありましたがみなさん大丈夫ですかね。こちらは大丈夫でした、みなさん無事でありますように。