ボーナスタイム!
今度は水族館へ!
海で遊ぶのはお開きにして、今度は近くの新江ノ島水族館に移動した。
営業時間的にも、こちらを先に回ろうという流れになったので。
この後は江ノ島を少し歩こうって話してる。
ビーチバレー対決は最後に僕がダウンしたから勝敗が有耶無耶になったけど、たぶん僕らが負けてたので、僕らと真実たちで酒寄さんとかぐやの分の入場チケットの代金を出した。
酒寄さんは渋ってたけど、優勝商品として決めたでしょとゴリ押した。
中に入れば、まず出会ったのは身近にいる毒を持った生き物たちの展示だ。
テーマ水槽って言うらしい。今の季節は海水浴とかで出会うかもしれないから知識として知っておこうねってことらしいね。
水槽を泳ぐのは、ミノカサゴ、2種類のフグ、ゴンズイ、アカエイ、ムラサキウニだそうだ。
ほんとに身近に泳いでるのこんなの?
「浅瀬の海だと見なそうだけどね」
「そういう油断をしないようにって警告でしょ?」
「そうだけどね、ミノカサゴとかこんなとげとげしてたら危ないの分かりそうだけども」
近くにいたら危ないって思うしね。
ウニとか、ここにいるのじゃなくてもとげとげつんつんしてるから、触れたら刺さりそうだし。
「うっかり浅瀬に泳いでくるかもしれないから気をつけてねってことだよ。ウニはそうそうないだろうけどね」
「シュノーケリング? とかやってたら出会うかもね」
そういうのは器具とか借りないと出来なそうだけど。
今回の海はそんなガチで泳いだりとかはしに来てないからね。
「てか、今更だけどバレーの時のペアで皆行っちゃったね」
「かぐやちゃんとか、彩葉を引っ張って先に行ってるよ。真実は鳩河くんとのんびり見てるみたい」
言われてみたらかぐやと酒寄さんの姿がなかった。
でも先の方からでかい声が聞こえてるので、そこまで離れてなさそう。
真実たちは、手繋ぎながらこれかわいー、だとかおいしそーとか言ってる。
…………いや、ここにいるの毒あるだからね? 食べようとしないで?
「いこ、アキくん。次の所」
「あ、うん」
幼馴染に先導されて、次のエリアへ。
お次は相模湾ゾーンだそうだ。
なんでも相模湾は世界に誇れるたくさんの生き物たちが住んでいる場所なんだって。
「東京だと海が近くにないからあんまり分かんないけど、この辺の湘南の地域だと海に親しみ深いのかな」
「かもね。この辺の学校は海での活動とかもしてそうだね」
釣りするクラブとかあったら気になるな。
釣った魚の観察とか、面白そう。
芦花は、日焼けしちゃうからどうだろうね。
「釣りとかあったら楽しそうなんだけど」
「アキくん釣りのイメージあるかも。のんびりやってそう、私はうーん、アキくんの見てるだけでいいかな」
僕がやってるとこ見てるの? 楽しいかなぁ?
まあ、芦花がいいならいいけどね。
あれこれ見ながら、シラスがたくさん泳ぐ水槽の前に来た。
思ってるより白くないかも?
「シラスって、白くないんだね」
「あれって茹でたりしたら白くなるんじゃなかったっけ」
「そうなの? 生きてるこの子達は青っぽいというか、少し透明っぽいね」
確かに。
説明だと、シラスって名前の魚はいなくて、いろんな魚の稚魚がそう言われるんだ。
へぇ、大体のシラスって呼ばれてるものはイワシの子供なんだって。
「シラスって、魚の子供の総称だったんだ」
「シラスって名前の魚はいないんだってね知らなかったよ」
スーパーで見かけたりするものは、シラスという名のイワシだったとは。
いやまあ子供の頃は名前が違う魚とかもいるから、そういうことだろう。
小柄ながらも元気に泳ぎ回る姿は、なんだか命を感じさせてくれる。
「真実が見たらよだれ垂らしそう」
「やめてよまだ生きてるんだから。……でも、ちょっとシラス食べたくなったかも」
やっぱり?
僕もちょっとシラスの口の気分になっちゃった。
水族館来るとたまにあるよね。
真実ほどではないけど、お刺身とか、お寿司とか食べたくなる。
命の動きを見た後に考えるにはちょと不謹慎かも? でも、仕方ないよね、美味しいし。
いただく時にちゃんと感謝しよう。
その先に進むと、相模湾大水槽というたくさんの魚達が泳ぐ水槽があった。
一際目を引くのは、数えるのも面倒なくらいいっぱいの小魚たち。
「あの大量の小魚、マイワシなんだって」
「すごいいっぱいいるね」
「8,000匹もいるみたい。すごー」
「8000かぁ、数えられないね」
どこぞの8000才の方がやおよろしてきたけど、お帰りくださいまし。お呼びじゃないよ。
大群で水槽の中に銀の川を作るマイワシにも目を引かれるけど、他にも大きなエイだったり、中ぐらいの大きさの魚たちが思い思いに泳ぐ姿が視界を埋める。
ふと、少し先にかぐやたちが見えた。
「すご! ここに8,000匹もイワシいるんだって!」
「すごいね。……やちよじゃん」
「彩葉? そこでヤチヨをだすのはどうかと思うよ?」
うん、思ってはいたけど、口にしてるとはね。
狂信ここに極まれりってか。
てか、かぐやもちょっとよだれ出てないか。
皆食い意地すごいな。僕も人のこと言えないけど。
「綺麗だね」
「うん、綺麗だ」
ぽつりと呟く幼馴染の言葉に、僕も同意する。
たくさんの魚たちが、1つの大きな水槽で泳ぐ姿は、なんだか綺麗で、雄大で、命に満ち溢れていて。
眺めるだけで時間が溶けてしまいそうだ。
まだまだこの先にも展示はある。
そろそろ次に行こう。
「芦花、進もっか」
「うん、いこ」
幼馴染を促し、次のところへ。
お次はなんだか暗いな? 深海ゾーンらしい。
なにやら有名な機関との共同研究がどうこう書かれていたけど、ごめんちょっと興味ないかも。
それよりも展示されてるダイオウグソクムシとかいうでっかい生き物に目がいった。
これ、虫じゃないの?
「でっかいねぇ」
「大きいね。虫なのかな?」
「ん〜……一応甲殻類、らしいよ。つまりはカニとかと分類的には仲間?」
「あー、まあ硬そうな殻あるもんね」
この見た目でカニとかの仲間なんだ。
深海の生き物ってすげー。
え、これ食べられるの?
エビとかシャコみたいな味?
……よく食べようと思ったね。
先人はすごい。
「私たちの知らないところにはこんな生き物も生きてるんだね」
「これが世界の不思議ってやつかな」
「私たちが知ることができることには限りがあるからね。こうやって知らないことを知るのも、一興ってやつ?」
「そうだね、深海の生物とか知るのは面白いね」
他にはオオタルマワシっていう見た目エイリアンっぽいのがいた。
芦花がちょい苦手そうだったので、足早に過ぎ去ったけど。
そのまま次のエリアに行っちゃおう。
進んだ先は、ど真ん中に球体状の水槽が置かれたエリア。
名前はクラゲファンタジーホール。
名前の通りクラゲがたくさん展示されてるみたい。
「おお〜、いろんなクラゲがいる」
「すごいよ、このクラゲとってもおっきい!」
見渡す限りクラゲ海月水母!
芦花はその中でも1番大きいやつに反応したようだ。
なになに? パシフィックシーネットルと言うようだ。
うわ、確かに他の種類と比べても明らか大きいな。
「クラゲって小さいイメージがあったんだけど、大きい種類もいるんだね」
「ね、シーネットル? っていう種類のクラゲはどれも大きいみたいだね」
他にもブラックシーネットル、インドネシアンシーネットルってのもいるみたいだ。どちらも大きい。
大きいのばかりに気を取られてたけど、小さい種類のもいろいろいた。
タコみたいな足のあるタコクラゲ。
名前そのままのアカクラゲ。
もふもふの傘をもったミノクラゲ。
さらにミズクラゲ、カラージェリー、サムクラゲやら14種類くらいは展示されてるらしい。
クラゲにもたくさん種類があるんだね。
「すごいいっぱい種類がいるんだね」
「見た目でわかるくらい違うのもあれば、結構似てたりするのもいるね」
「でも、どれも、ふわふわして、ぷかぷかして、なんかのんびりしてるね」
「見ててこっちまでゆるーくなっちゃう」
2人して真ん中にあるクラゲプラネットという球状の水槽の前に立ち止まる。
中をふわりふわりと、浮かんでは沈み、その柔らかな体をしならせ、縮ませ、穏やかに、緩やかに、のんびりと漂っている。
なんか、癒される。
ここだけは時間の進みが遅くなったように感じるくらいだ。
今気づいたけど、かぐやと酒寄さんもこの景色に見惚れて立ち止まってるな。
かぐやがぼーっとしてるなんて珍しい。
酒寄さんも目を奪われてるようで。
真実たちも、近くに来たようで、僕らと同じように立ち止まって、ぼんやりと眺めている。
似たもの同士だな、僕たち。
ちらりと隣を見る。
水槽に映るクラゲの揺らぎを眺める、幼馴染の横顔。
特別狙ってるわけでもないだろうに、水槽内の照明に照らされて、その顔が優しく輝いてるようで。
この場で唯一僕だけクラゲじゃなく、大好きな幼馴染に見惚れてしまった。
ぼんやりと、綺麗だなと思う。
じっと見られてることに気付かれちゃったのか、彼女がこちらを見た。
「……なに、アキくん。そんなにじっと見て。何かついてる?」
「……ううん。なんでもないよ」
「そっか、そろそろ次に行く?」
「そうだね、行こうか」
名残惜しいけど、このまま見惚れてたら、バレてしまいそうで怖いから。
芦花の言葉を、これ幸いと僕も同調して移動した。
少しだけ、もうちょっとその横顔を見ていたいと思ってしまったけどね。
「次は太平洋?」
「名前が壮大だね」
暖流と寒流が交わるのが相模湾らしく、北からの親潮、南からの黒潮に育てられたそれぞれの潮の特徴を持った生き物がいるらしい。
親潮の方は、北からの流れで太陽の光も弱いらしく地味な色のお魚が多いらしい。あと、種類も少なく同じような生き物が住んでるみたいだ。
黒潮の方は、南からの流れで太陽の光が強く色鮮やかな整体環境を作ってるらしい。そのへいかそこに住む生き物たちは鮮やかな模様を持ってたりするようだ。あと、種類も豊富。
「あ、これ映画にも出てくる可愛いこ」
「クマノミだね、オレンジが鮮やかで綺麗だね」
「こっちは小さいサメ? かな? このくらいのサイズだと可愛いかも」
「そうだね、愛嬌あるかも」
黒潮の生き物たちは見てて楽しくなるような色合いの魚が多かった。
クマノミとか特にね、芦花が写真撮ってかわいーなんて言ってるし。可愛いのはそう言ってる君なんだけど。
続いて親潮側。
……うん、説明通り地味目な色合いだね。
「この、なんとも言えない感じのぶさかわ? 的な?」
「オオカミウオだって。うん、そんなに強そうに見えないかも」
名前の由来は狼のように尖ったキバが生えてるから? それに凶悪な顔面も?
ほんとにぃ?
「狼が由来らしいけど、ほんとかなぁ」
「うーん……あ! 確かに牙鋭そうだよ!」
「おぉ、ほんとだ。強そう」
「言われてみれば顔も凶悪? かも?」
そこは疑問系なのね。
同意だけども。
ほかの生き物も見て、僕らは進む。
ペンギンとアザラシのいる水槽で、可愛くて写真を撮りまくる芦花を眺めたり。
ウミガメの浜辺というところで、ゆったり泳いでるウミガメに癒されたり。
カワウソの展示場所でも、写真を撮りまくってたり。
2人で館内の展示をゆっくり見て回った。
正直、展示よりも隣の幼馴染に気を取られてることの方が多かったけどね。
可愛い生き物を見て瞳を輝かせてる芦花があまりにも尊くてね。写真撮りたかったなぁ。さすがに自重したけど。
でも、ペンギンを見てる時に良い感じに近付いてきたから、2人で一緒に写真を撮った。僕らの間にペンギンが挟まる感じでね。
やった、大事に保存しよ。
「いろんな生き物がいたね」
「今度は別の水族館にも行きたいね」
「いいね、ここにはいない子たちも見てみたいね」
水族館を出て、先にお土産のクラゲのぬいぐるみっぽいのを抱えてるかぐやたちと合流。
真実たちを待つ。
「アキどれが好きだった!? かぐやはミノクラゲ! もふもふ!」
「んー、僕はクマノミかな。芦花は?」
「私はペンギンかも。カワウソも可愛かったけどね」
「クマノミ! 確かに! 彩葉は!?」
「私は……私もミノクラゲ。なんか、触り心地よさそう」
一緒! とかぐやが喜んでて、酒寄さんがそれをはいはいといなしている。
仲良さそうでなにより。
その後も展示の内容を話していると、最後の2人がようやく出てきた。
意外とゆっくり回ってたみたいだ。
あ、手繋いだままだ。
「お待たせ〜ゆっくりしすぎちったぜ」
「お待たせしました」
「いーよいーよ! 楽しんだでしょ! それじゃあ江ノ島回ろう!」
「お〜!」
閉館間際で時間的には夕刻というところ、結構アクティブに動いてるけどかぐやはまだまだ元気らしい。
元気な彼女を先頭に、江ノ島に続く橋を渡っていく。
どうせなら海鮮丼とか食べたいな。お店あるかな?
島を回るのは案外サクッと終わってしまった。
道なりに歩くと、神社だったりお土産屋さんとかはあったけど、すぐに奥の島の沿岸まで着いてしまった。
ボートとかも合ったみたいだけど、時間がないので断念。
今は付近で海鮮丼を食べれるお店を探し中。
皆水族館を回ってそういう口になってしまったみたいだ。
「こことかどうよ〜」
「さすがまみ! 良さげだね!」
「まあね〜、みなもここでよき?」
「さんせー」
「芦花に同じくー」
「私も」
「俺も」
真実が見つけた良い感じの海鮮丼のお店に満場一致で決定。
お、しらす丼もあるみたい、楽しみ〜。
「ここだね」
真実に案内してもらってお店に到着。
6人入れるかな?
酒寄さんが席があるから確認中。
「全部2名席になるみたい、どうする?」
「んー、仕方ないんじゃない? 僕はいいけど」
「私もいいよ」
「食べれればよし」
「俺も食べれるなら席は気にしないです」
「かぐやもー!」
問題なしだね。
じゃあ、席はさっきの感じで別れるのかな?
「彩葉〜♪ 一緒にしよー!」
「はいはい、だと思ってたよ」
「守、一緒でいいよね」
「逆に真実と以外で俺許されることある?」
「ない」
「だよね」
かぐやは酒寄さんの手を取ってもう空いてる先に向かってるし。
真実と守も普通に2人で席に座った。
うん、まあそういう流れだもんね。
「芦花、こっちの方にしよ」
「角の方だね、いいよ」
僕らは静かに角らへんの空いてたところに座った。
間も無く来てくれた店員さんに注文、僕は釜揚げしらすと桜エビの海鮮丼。
芦花は僕のやつの桜エビのところがサーモンになったバージョン。
悩ましかったけど桜エビに惹かれましたね。
「サーモンも良さそうだったよね、悩んだ〜」
「なら私の少しあげるから桜エビちょっとちょうだい?」
「いいよー」
やった、どっちも楽しめるぞ。
さすが芦花さん優しいね。流れるような気配りに感心しちゃうね。
「たくさん歩いたから結構お腹減ったかも」
「海で食べてからかなり運動したからね、僕もお腹ぺこぺこだ」
「アキくんは水族館でちょっとお刺身想像してたのもあるでしょ」
「バレた?」
まあ、しらす丼たべたかったのも、そういう理由もあるよね。
見てたらお腹すいちゃって、健康的な男子の胃って感じ。
なんてお互い水族館やら海の話をしてたら、注文が届いた。
おぉ、しらすと桜エビたっぷりだ!
「美味しそう……!」
「ね! ここで正解だったね!」
「うん! 早く食べよ!」
お手拭きでちゃんと手を拭いて、手を合わせて。
「いただきます」
「いただきまーす」
ちゃんとかかさず挨拶をしてから、一口。
やば、めちゃうまい!
茹でられてふわふわになったしらすの食感と、ほのかな塩味。
桜エビも柔らかめで似たような食感だけど、殻ごとなぶんそこのパリッとした感じとエビの旨みがあって、とてもよき!
スプーンとまんなーい!
「おいしー!」
「美味しいね! あ、アキくん一口もらっていい?」
「どうぞどうぞ! 僕も1つもらうね」
お互いほどほどに食べ進めたところで、忘れてなかった交換タイム。
2つの丼を寄せ合い、好きなように取る。
僕は一切れもらえれば十分です。
芦花は好きなだけ持っていっていいよ。
と、思ったけど本当に一口だけ、スプーン一杯分だけもらっていった。
「サーモンも甘くて美味しいね! 桜エビどう?」
「うん、ちょっとパリッとした食感とエビの旨みがあっていいね!」
「だよね!」
似たような感想を持ってくれたようでちょっと嬉しい。
味覚が似てるって、なんかいいよね。
そこからはどんどん食べ進めて僕はあっという間に平らげてしまった。
はぁ、満足。
芦花は一口が小さめだからまだ食べてる。
やば、急がせるつもりは全くなかったけど、僕がこんな早く食べ終わっちゃったら焦っちゃうかも?
「ゆっくりでいいからね? 僕ちょっとがっついちゃった」
「……うん。分かってるよ、ゆっくりしてて」
「はーい」
ほっ、よかった。
安心したところで、他のメンバーはどんな感じかな?
酒寄さん達は……、どっちもまだ食べてるな。お、かぐやがあーんをしようとしているな。酒寄さんがなんとか回避しようとしてるけど……あ、かぐやのおねだりで落ちた。ちょろ。
真実達は……、わぁ、普通にお互いのやつ食べさせ合ってるじゃん。しかも具材被りなし。徹底してるなぁ、コーヒー欲しくなるから見るのやめとこ。
どちらもまだ時間がかかりそうだ。
うむ、なんか追加しようかな。
「むむ、む?」
「私も食べ終わっちゃった」
「珍しいね、芦花いつもはもっとゆっくりなのに」
「お腹空いてたから、ね」
そっか、もうちょいお昼作ってきた方が良かったかな?
予想通り、というにはめちゃ食われたから芦花の分が足りたか怪しかったけど、微妙に足りてなかったかも?
仕方ないけどね、真実の胃は計れないし。かぐやもけっこう食べたし。
さてさて、食べ終わってしまったからには席を空けた方がいいけど、残り2組はすぐには出てこなそうだな。
「どーする? なんか追加する?」
「ん〜、お店出て散歩とかどう?」
「いいね、そうしよっか」
芦花は散歩がご希望みたいなので、沿わせていただくよー。
グループのトークに外で散歩してるよと残して、退店。
日も暮れてきて、夏の長い日も、大部分が隠れてきた。
空は茜色に染まり、端の方は夜の静かさが近づいてきている。
この時間も綺麗で、乙なものだ。
「空が綺麗だねぇ」
「うん、黄昏時っていうんだっけね」
「へー、そんな名前があったんだ」
僕もネットかなんかで見ただけなんだけどね。
でも、ネットの画像と実際に見るのは全然違うや。
百聞は一見にしかず、なんて言うけれど、その通りみたい。
皆で出かけた日のことだから余計に綺麗に見えてるのかも。
もしくは、隣に君がいるから? なんて、ちょっとクサいかな。
「これも思い出だね! 江ノ島での、黄昏時」
「写真にでも残しておく? 撮ろうか?」
「どうせなら、一緒に入ってよ。私だけ撮るんじゃなくてさ」
「いいけど、どうやって……」
「そんなの、自撮りでしょ」
茜色の空をバックに、僕と芦花がうまく入るようにカメラを向けようとして、彼女は思ってるより近づいてることに気付いていない。
結構近くないかな?
僕がデカいせいでうまく入らない感じな気がしてきた。
芦花の腕もプルプルしてるように見えなくもないし。
「あの、僕が持とうか?」
「いいよ、それよりもっと寄って!」
「もっと!?」
今でもだいぶ寄ってますけど!?
これ以上寄ると触れちゃいますが!
腕と腕だからまだいいけども!
「ほらアキくん早く!」
「う〜わかったよ!」
結構鬼気迫る声で言われてしまえば従うしかない。
諦めてぐっと芦花に近寄る。
あぅ、腕が当たってます……。
「ん〜微妙に……ほら、もっとこっち!」
「うぇっ、もっとぉ!?」
ぐいと引き寄せられて、芦花の肩に手を回すような距離に。
ここまで寄らなきゃ撮れないとかある!?
「よしいけそう! いくよー!」
「あ、ちょ、待って!」
「チーズ!」
「わぁっ!」
体制を崩しそうになって思わず肩を抱いてしまった。
なんとか、カメラの方は向いてたけど、ピースとか出来てないよ?
大丈夫、今のやつ?
「僕の顔変じゃない? もう一回撮る?」
「んーん、おっけーだよ。後で送るね〜♪」
「そ、そう? ならいいけど」
なにやら上機嫌な様子で。
そんなに写りよかったのかな。
まあ、僕がしょぼくとも芦花が良い感じで撮れてるならいっか。
わちゃわちゃと自撮りしてたら皆も出てきたみたいだ。
「空、めっちゃ綺麗だから皆で撮ろうよ」
「いいね〜、たかちーよろしく!」
「ですよね、知ってた」
まあ、いつものことですしね。
はい集まってね〜。
「あれ、真実が見えないぞ」
「ここにいるって! ここ!」
「お、いた。ちょっと上げすぎたか」
「喧嘩売ってる? 買うよ?」
いえいえ、滅相もない。
それでは、笑って笑って〜?
はい、チーズ。
「いぇい!」
「ぶい!」
「ピース!」
かぐやと真実と芦花のそれぞれのピースと、やたら半目になってるぎこちない酒寄さんのへにゃピース。
そして、顔は決まってるのにピースが真正面に出されてるせいでなんか面白い守。
ふふっ、僕ららしいね。
「これで、どうでしょ」
「お、いいね〜特にこの彩葉の顔!」
「守もピースまっすぐすぎじゃない? カチカチじゃん」
「わぁ〜私を集中して見ないで! もっかいやろ! ね!?」
「ちょっと固くなったな」
もう1回と願ってる酒寄さんに、無慈悲に保存した画像を送りつける。
こういうのは1回目が1番大事だからね。諦めてね〜。
誰も酒寄さんのお願いを聞くことはなく、帰りの電車に向けて駅に歩き始めた。
「お願いだからもう1回撮らせてぇぇぇ〜〜〜!!!」
酒寄さんの嘆きが後ろで木霊してた。
どんまい。
UA40000超えましたありがとうございます!
長めの海回はこれで終わり!