かぐいろVSあきろか!
バトルフィールドに転送された僕らは、開始前特有の緊張感の中にあった。
真実達は外で実況みたいなことをするようだ。
といっても僕らにはそれは聞こえないようになっている。
聞こえたところで反応できないだろうしね。
コメント欄も、今は非表示。
後で確認しようかな。
「ROKA背中は任せた」
「うん、アキくん、前よろしくね。サポートするよ」
僕らの調子はいつも通り。
気負い過ぎず、ゆるすぎず。
平常運転だ。
対してかぐやたちは?
「よっしゃー! やったるぞー!」
「そんなに気合い入れなくても……」
「勝ち負けあるなら勝ちたいじゃん! いろはは違うの!?」
「いや勝ちたいけれど、てか名前。さっきまでちゃんと出来てたじゃん」
「あ、やべ。でもやっぱちゃんと呼びたいじゃん?」
「う……でもダメなものはダメ!」
向こうもいつも通りそうですね。
さてさて、そろそろカウントダウンが始まる。
酒寄さんが強いから、上手いこと抑えてダメージ稼ぎたいけどどうかなぁ。
かぐやも未知数だし、どう転ぶことやら。
「とりあえず酒寄さんのワイヤー軌道には注意しようね」
「おっけー。かぐやちゃん一撃が重いから気を付けてね」
「りょー。隙見せなきゃなんとかなるでしょ」
ハンマーなんて大物、ぶち当たらなければなんとか出来る。
手数の多い酒寄さんとのコンビは相性的にはいいね。
さて、それじゃ、やろうか。
3
2
1
スタート!
初手はマシンガンの弾幕とライフルの連射。
狙いはない。というか狙っても当たらないだろうし、今回は動かすことがメインだ。
芦花はネイルを展開して防御サポ。酒寄さんのクナイ弾を弾いてくれれば文句なし。
かぐやは何を持ってるかは分かんないけど、僕が撃ち落とせればよしかな。
「うっひょー! すっげぇ弾数! これが弾幕ってやつ!?」
「アホなこと言ってないで避けるよ! ほらこっち!」
「ああん。待ってよ〜」
選択は岩場に隠れるか。
ふむ、なら、それごと削り切ってあげましょ!
「ROKA合わせて」
「はーい」
両方ライフルモードにして、芦花のネイル弾と合わせて岩場を壊すように怒涛の射撃。
数発耐えてたところで、このままだと撃ち抜かれることを察した酒寄さんが転がり出てきた。
かぐやは反対側に出た様子。
なら、酒寄さんを狙うか。1番厄介だし。
「ほらほら削っていくよー!」
「ちょ、私狙いか!」
「そりゃいろP上手いからね」
またマシンガンとライフルの混合弾幕で酒寄さんを狙う。
芦花にはネイル弾でかぐやの牽制をしてもらう。
どんな動きをするか分かんないけど、その辺の対応は芦花にお任せ。
僕は酒寄さんを攻める!
「相変わらずエグい弾幕ね……でも、舐めないで!」
覚悟の決まった酒寄さんが双剣で弾きながら突撃してきた。
かぐやもそれに合わせてハンマーを盾にしてこちらに接近。
ふむ、あれって盾にもできるんだ。硬いな。
酒寄さんはマシンガンの中にあるライフル弾だけを的確に避けながらこちらを、目指してくる。嘘みたいだけど本当に見分けてるくさい。やばいね。
でもまあ、完全に出来てるわけじゃないから、時折カスってダメージを受けてる。
この感じだと接近のが早いなぁ。
下がるか。
「ROKA下がるよ」
「ん」
もっと削るために接近する2人から後退する。
僕の弾幕を受けてる酒寄さんはいいとして、ROKAのネイル弾を受けてるかぐやは思ってるより早くこっちに寄ってきてるな。
数発かぐやにライフルを撃って援護、普通に受けたかぐやはハンマーにヒビが入ったことに気づいて悲鳴をあげた。
「うひゃー! アキの弾おもっ! ハンマーが壊れちゃう!」
「かぐや! ダメージ覚悟で突っ込めない!?」
「いけないことはない!」
「よろしく!」
おや、かぐやに突っ込ませるんだ。
まあ、来るならこいって感じ。
体力が連結されてるHIYOKUにおいては、どっちを削ろうが体力は減るしね。
なにより寄ってくるならショットガンで一気に持っていける。
さあ、こい!
「アキ、覚悟ぉー!!!」
「やーだね!」
「やらせないよ?」
「ちょっ、2人がかりはずるじゃん!」
ROKAのネイル弾を体力で受けたかぐやがハンマーの攻撃範囲まで接近。
振り上げて来たところで、僕と芦花のターゲットを交換。
僕がショットガンでかぐやを狙い、芦花には酒寄さんを牽制してもらう。
圧力の差もあるから、早く仕留めないとね。
芦花のネイル自体は少しかぐやに残してるけどブラフみたいなもの。僕の攻撃の方が多いからそれにはバレないでしょう。
「ほーら、蜂の巣だぞー?」
「ぎゃー! いろはへるぷ!」
「今行く!」
「おっと?」
数発食らわせたところで酒寄さんが飛びついてきた。
やばいやばい、寄られるとさすがに僕らの方が不利だ。
すぐにROKAと共に後退。
足並み揃えて二手に別れたりはしないよ。
もちろん追撃なんて出来ないようにショットガンの反撃も忘れずに。
「くっそ、逃げられた」
「うへぇ、ちょっと穴だらけになった……」
「まだいけるでしょ、私だって何度もやられてるから」
「いろPでもそうなんだ。アキって強いね」
「お小遣い稼ぎできるくらいにはね〜」
「お小遣い以上でしょうが……」
確かに。
1月の総額はバイトの給料よりも多い時もある。
いっぱい配信できた時はって感じだけどね。
夏休みはわりとやれてるからたくさんいただいております。
「よっしゃ! もっかいアキ狙う!」
「ちゃんと考えなさいよ? まっすぐ行っても撃たれるだけだから」
「分かってる! 行ってきまーす!」
「話聞いてた!? もう!」
話聞いてるかわからないかぐやに振り回されながら、酒寄さんと2人で突っ込んできたね。
正面からからなら迎え撃つまでだけど、さすがにそれだけじゃないと思うし。
芦花のネイルを角度つけて展開してもらって、多角的に狙うか。
さっきので半分くらいは持ってけたから、もう一息だ。
ライフル両手持ちで突っ込んでくる2人に撃ちまくる。
連射速度で酒寄さんにはバレてるな。でも、避けてたら先にかぐやが倒れちゃうよ?
かぐやも頑張って避けてはいるけど、酒寄さんほどは上手くはないから擦りダメをくらい続けている。
地味に芦花のネイル弾がいい仕事をしてくれてる。
ライフルのまっすぐな射線の外側から飛んでくるから、結構当たるのだ。
と言っても酒寄さんには弾かれるし、かぐやはハンマーを盾にしてるから当たってる割にはダメージになってないけど。
でも、それでいい。意識を散らせてるなら十分だ。
ぶち抜くのはアタッカーの僕の仕事だからね。
「ROKA、出るからよろしく」
「うん、決めちゃって」
擦りダメで残り体力を3割くらいまで持っていった。
距離はそこそこ、ダメージ覚悟で突っ込めるくらいかな?
向こうは最後の攻撃と来るだろうから、出鼻を挫くようにこちらが先に攻めるとしよう。
さっきまで引きながら撃っていたのを、今度は一気に距離を詰めながらショットガンで攻め立てる。
「おわっ!?」
「いきなり!?」
当然引き撃ちが続くと思ってた2人は混乱。
急速に接近してきた僕に対応しきれない。
酒寄さんは反射的に双剣を振るってきたけど、残念、そんな甘い攻撃には当たれないね。
軽く避けて隣の呆然としたかぐやに狙いを定める。
「終わりだよ」
「かぐ──」
酒寄さんが声をかけるよりも早く。
ぼくがかぐやをぶち抜いてポリゴンにした。
第1ラウンドは僕らの勝ちだ。
「また蜂の巣にされたー!」
「くっそ、最後の反応出来れば……」
「いぇーい」
「ないすー」
ハイタッチしてる僕らと負けて項垂れる2人。
まあ、これが年季と絆の差ですよ。
【GG】
【秋鷹とROKAのコンビネーションえぐない】
【ROKA様の返事がん、とかはーい、とか緩いのにちゃんと通じてるの、すごい】
【これが幼馴染の絆か】
【かぐやいろPも善戦したけどね】
【コンビネーションの歴が違ったな】
【というか、幼馴染組、息合いすぎてほとんどツーカーでは?】
【二手に別れることもなく、下がる時もお互い見てないのに距離感ばっちり】
【なんだこいつら、通じ合いすぎ?】
「すごい言われよう」
「まあ、幼馴染だしね」
「だとしてもあんなに連携上手いか?」
「かぐやたち手も足も出なかったんだけど」
「まあ僕らの強みを生かしたというか」
「寄られる前に削り切るのが私たちの得意な戦法だしね」
コメント欄から僕らの絆についてたくさんコメントがきてる。
まあ、十数年芦花を見てますので? そりゃなんとなく考えてることは分かりますよ?
まあ、最近はちょっと怪しいけどね。何を思ってあんな攻め攻めしてるか分からないこともしばしば。
うーん、まだ本調子ではないのかな。
まあそれはさておき。
芦花も僕と何度もペアでKASSENはやってるし、個人練習も欠かさずやってるから、前よりももっと上手くなってる。
そりゃ負けるわけないよね。
「さ、第2ラウンドといこうか」
「次こそアキをぶっ潰す!」
「せめて一太刀くらいは入れたいな」
「いろPもっと自信持ってよ! いろPしか頼りにならないんだよ!」
「そんなこと言われても、SETSUNAならまだしもHIYOKUだと秋鷹の穴をROKAが埋めちゃうからなぁ」
【秋鷹といろPだといろPの方が強いのか?】
【意外かも。あのヒットボックスで勝てるんだ】
【もしくは、プラベだから着てなかったりして】
【それはありそう】
んー、間違いではないね。
無名の頃の酒寄さんと配信で当たってるからねぇ。
その時はウルト切って勝ったけど、なしだとどうとも言えないかも。
タイマンならそうだけど、HIYOKUなら負けないよ。それもROKAが相方ならね。
「それじゃあ始めようか」
「勝つ!」
「勝てるかなぁ」
「ふふふ、頑張れいろP」
芦花さん? 応援するならこっちでは?
第2ラウンド。
今度はちゃんと遠距離戦に切り替えた2人と撃ち合い。
酒寄さんのクナイ弾。
かぐやのハンマーから撃たれる、なんだこれ、うなぎ? なんだそれ。
僕のマシンガンとライフルの弾丸。
芦花のネイルから飛ばされるネイル弾。
4種類の弾が飛び交っている。
……いや、うなぎってなに。
「かぐやのうなぎ弾ってなに」
「分かんない! なんかおもしろそーだったから!」
「さ、さいですか」
本人も知らないのかい。
あの見た目なら竹とか飛ばした方がまだ分かったんだけど。
でも見た目に反してハンマーから撃たれてる分威力は高めだ。
当たればまあまあいいダメージになりそう。
……ぬめぬめしそうで嫌だけど。
とはいえ削りたいならこちらに分がある。
そもそも遠距離メインの僕だし、向こうの弾はいくつか相殺している。
でもかぐやたちはそれをしてしまうと攻撃が薄くなる。
ので、こっちが一方的に削っている状態だ。
射撃戦に持ち込まれても僕らは困らないんだよね。
近接の方がどちらも不得意だし。
「埒が開かないわね。距離を埋めるよ」
「あいあいさー!」
「こっち来そうだ、上手いこと維持しようか」
「はーい」
射撃しながらこっちに寄ってきたのを察知したので、こちらもじりじりと後退。
もちろん、向こうも気づいたようでむすっとした顔になった。
そんな顔されてもね、こちらは手加減しませんよ?
「ほらほら、早くしないと削り切っちゃうよー」
「えいえーい」
「ゆるい感じで言ってるのに弾幕エグいんですけど!」
「ROKAも可愛く言ってるけど結構えげつない角度から狙ってるよね?」
バレた?
芦花のネイルは今真上だったら真横だったりあちこち動きながら撃ちまくってる。
一撃自体は軽いけど、何度も食らえば馬鹿にならない。
なにやり、芦花の成長を感じるよね。去年はこんな動きは出来なかったでしょうに。訓練の甲斐があったね。
「アキくんとの特訓の成果だね」
「ROKAが真面目に頑張ったからでしょ」
「戦闘中にいちゃつくな!」
「ずるいーかぐやもいろPといちょつきたいー」
「やめろ! 集中して!」
普通に会話してるだけでいちゃついてませんが?
なんか不当な扱いを受けた気がした。
ので、そろそろこの戦いを終わりにしようと思います。
ゲージは溜まってる。
「……! やば、ウルトくる!
「え、まじ?」
おお、勘づかれた。
まあ、止めれるなら止めてみなってね!
ウルト起動、ライフル乱射タイムだ!
「おりゃ〜!!!!」
「うひゃ〜!!! たいさん退散!」
「止められるわけないでしょーが!」
2、3発もらったところで逃げられた。
でももう体力も僅かまで削ってる。
トドメを刺しに行こうか。
「今回はマシンガンで行こうかな」
「アキくん私は?」
「さっきと同じで角度つけて牽制お願い」
「かしこまり〜」
合体機構、強化マシンガン。
威力と連射性能に優れたやつ。
さ、どこまで逃げられるかなー。
「なんかやばそうなの持ってる!」
「ウルト中に使える連結機構ね、やられる前に寄るしかないか」
「りょー! 突撃ー!」
僕の攻撃を察知した酒寄さん達が先に打って出てきた。
とはいえ距離は十分。
こちらの方が早いかな。
そら、いつもの倍以上の威力と密度の弾幕をプレゼントだ!
「いややっぱ無──」
「ぎゃぁぁ──」
なんか言ってたのが聞こえたけど、弾幕が通り過ぎた頃にはポリゴンも残ってなかった。
まあいっか、僕らの勝ち!
「やっぱ遠距離挑むんじゃなかったわね」
「かぐやたち近距離職だし、無茶だったね」
「当然だよね」
「アキくんの本職だしね」
【ナイスゲーム】
【GG】
【遠距離本職には勝てないよねそりゃ】
【ROKA様のサポートも素晴らしかった!】
【遠隔武器であんだけ動かせるの凄いな】
【ああいう系統の武器は上手く使えれば強いけど、難しいからな】
【秋鷹の強化マシンガンエグいな】
【そりゃ吹き飛ぶわ】
【次は近接戦で頑張れかぐやいろP】
【初にしてはよく出来てたしねかぐやも】
【てか途中で幼馴染の距離感で話してませんでしたか?】
【ROKA様の普段通りっぽい笑顔……スクショしました】
【秋鷹も戦闘中なのに余裕だったな】
【幼馴染てぇてぇなのか?】
【まだだ、まだ待つんだ。義務てぇてぇの可能性があるぞ!】
ふふふ、そうだろうそうだろう?
芦花はすごいのですよ。めちゃ訓練頑張ったからね。
そりゃ褒められて当然だよね。
本人は受け取ってくれないけどね。
あと、スクショしたやつ悪いことに使ったら許さないからね?
それと義務てぇてぇってなんだ。
「おつおつ〜」
「良い戦いだったな」
「どーも。そっちも盛り上がった?」
「2人で雑談してたわ」
「意外と盛況だったよ」
ならよかった。
諸々終わったところで締めの挨拶してもらおうかな。
「かぐや、そろそろじゃない?」
「ん! じゃあ皆、今日はここまで! また皆でコラボしたりすることもあるかもだから、各自のチャンネルを要チェック! じゃ、おつかぐ〜」
「またね〜」
「ご馳走様でした! ばいば〜い」
「おつROKA〜」
「またどこかで〜」
「かぐやをよろしくお願いしますー」
【おつかぐ!】
【おつ鷹】
【おつまみまみ】
【おつROKAでした】
【やばい、おつまみまみがおつまみに見えた】
【やめい】
【思ったけども】
【笑ってしまった】
確かに流れ的にはおつまみになるけど……くっ。
おつまみ……ぷっ。
「あー! 秋鷹笑ったな!」
「いやいや、おつまみは……ちょっと……ぷぷっ」
「こいつ……覚えとけよ」
「まあまあ、仕方ないよね」
うっかりリスナーの返事に笑ってしまって、真実に詰められた。
なんとも締まらない終わり方になってしまった。
まだ彩葉は覚醒前なのでね……ってことで。
覚醒したらきっと勝てる……はず。