そろそろブルーレイが届きますね!
「アキの普段の卵焼きうまーい!!!」
「秋鷹の卵焼き本当に美味しいよね」
【秋鷹の卵焼き完成度エグくない?】
【他の料理も普通によかったけど、これは一味違うな】
【食べてないのにね↑】
【やかましい↑】
【これで高校生マジ?】
【主婦もかくやでは】
僕の作った卵焼きを頬張る2人、それの完成度に驚く視聴者達。
なんでこうなったかは数時間前に遡る。
芦花とのコラボ翌日。
彼女はお婆ちゃん家に旅立っていったのでしばらく会えない。
正直寂しいけど、我儘は言えない。
とりあえず日課のランニングと勉強は終わった。
なにしよっかなと考えていたところに、スマホから着信音が。
誰だろ。
「かぐやじゃん。なんだろ──もしも」
『アキ〜〜〜!!! コラボしよ〜〜〜!!!』
「声でか」
スマホを耳に当てたことを後悔したよね。
バカでかかぐやボイスに耳がキーンとなる。
昨日の僕と芦花の配信でも見たのかな?
「なに? コラボ? 急にどしたの」
『昨日の見た! かぐやも一緒になんかやりたい!』
「いいけど、内容は? さすがにノープランは無理だよ?」
『ん〜〜……じゃあ! 料理! やろ! まだ教えてもらってなかったし!』
料理かぁ。
初めて食べたかぐやのハンバーグとかサラダは、僕のよりも美味しかった気がするけど。
「僕が教えることある? かぐやの方が上手いと思うけど」
『卵焼き! あと、じょーびさい? っていうのも知りたい!』
「なるほど、じゃあ具材とか用意しないとね」
『わかった!』
まさかの卵焼きがご所望でしたか。
あれは芦花のために覚えたやつだからちょっと特殊なんだけど、まあいいか。
常備菜は確かに覚えて損はないよね。
てなわけでかぐやの枠にてやることが決定。
事前告知やら準備はかぐやがしてくれるらしいので、開催地酒寄さん家に移動。
…………いや、最初は断ったんだけどね? それ以外となると僕の家しかなくて。
僕の家で作って持って帰らせるのはさすがに申し訳ないかなと。
酒寄さんには許可は得たよ。もちろん。
「というわけで、やってきました年季の感じるアパート」
「ボロアパート!」
「やめなさい」
僕の方は用意するものはそんなにないので、かぐやが準備できたという連絡が来てから向かった。
で、着いて早々これです。酷い言い草だね、否定できないけど。
「で、枠は用意した?」
「もち! ほらこれ!」
「[ししょーに料理教えてもらう! ]……だから師匠じゃないってば」
「えぇ〜〜!? 最初に料理してるところ見たのアキなんだからそうでしょ!」
む、それは確かにそうなるのか?
いやでもなにも教えてないし。
今回で教えるからいいのか?
なんにせよコラボ相手の名前載せてないし。
ちゃんとそこまで告知してよね。
「僕の名前ちゃんと出してよね。皆びっくりしちゃうよ」
「大丈夫だよ! オタクたちはサプライズ好きでしょ!」
「オタク……まあかぐやがいいなら」
ファンのことオタクって呼んでるんだ……。
なんか、もうちょい良い呼び名はなかったものか。
酒寄さん止めなかったのかな。
いや、止めてなお止まらなかったのか?
まあ、そこは置いておきましょう。
「さてと。始める?」
「うん! じゃあ、はじめよー!」
人生2回目のコラボがこんなに早くくることになるとは。
芦花になんか言われそうな気がしなくもないけど、大丈夫だよね?
「かぐやっほー! かぐやだよ! 今日はコラボ! する〜! はい! この人!」
「はーい、皆さんこんにちは、秋鷹です。今日もKASSENじゃないからぶっ放さないよー」
【待ってた】
【秋鷹じゃん】
【コラボ相手誰かと思えば】
【昨日はROKAで今日はかぐやか】
【取っ替え引っ替えしてるな】
「おいこら、言い方悪いぞ。今回もかぐやに誘われてなんだが」
さすがに見過ごせないコメントがあったので反論。
大体の人はお前かみたいな反応なんだけどね。
大体取っ替え引っ替えとか、僕が芦花以外を見てるみたいな言い方心外だが。
芦花以外眼中にないが。
ふざけないでほしいね。
「まあまあ〜。秋鷹はかぐやの友達なんでコラボしてくれてるんだよー。そうじゃなかったらしてくれてないと思うよー」
「それはまあ、そうかもだけど。てか、家主は?」
「いろ、P? 今日も夏季講習だって。バイトはないみたいだから後で帰ってくるよ」
「そっか。じゃあそれまでに配信終わらせたいね」
「えぇ〜終わるかなぁ」
そんなに長くやる予定ないが?
何品やらせるつもりなんですかねかぐやさん?
コメント欄もぼちぼち集まってきたみたいなんで、作り始めようか。
「てか、僕が主体でいいの? かぐやのチャンネルなのに」
「おっけー! アキのやってるところ見て、かぐやもあとでやる! ちょぴっと味見も!」
「うん、りょーかい。じゃ、やろーか」
【秋鷹料理するのか】
【ROKA曰く結構出来る】
【確かたまーにだけど秋鷹も弁当のおかずとか作る配信してたな】
【秋鷹の腕前はいかに】
そんなに期待しないでね?
ただの一般高校生のお料理ですので。
かぐやは映えとか意識した料理作れそうだけど、僕はそういうの苦手なので。
毎日の食卓の周りの一品ってかんじかも。
かぐやはメインのやつをドーン! って感じ。
「じゃあまずはおひたしから」
「冷たくて夏でも食べやすいね! あと保存が効く!」
「そ。不足しがちな緑使いやすいし便利だよね」
「かぐやもブロッコリーとかズッキーニとか使うけど、大体炒めたり茹でたりしてる」
「夏場は暑くてご飯食べるのにも体力使っちゃうからね。冷たいもの、さっぱりしたもので胃を大事にしてあげてね」
【お、おぉ】
【秋鷹、バランス考えてるのか】
【かぐやも普通に料理出来るんだな】
「料理はかぐやの方が上手だと思うよ? 初めて食べさしてもらったハンバーグは凄かった」
「えへへ〜それほどでも〜」
【ずるいぞ秋鷹】
【よこせ秋鷹】
【かぐやこの感じで飯ウマなのか】
【ちょっと予想外】
それはそう。
正直初めて会ってその日に料理食わされることになるとは思ってなかったけど。
なんならあんな遭遇の仕方と、見た目でめちゃうまハンバーグをお出しされた僕の気持ちよ。
その後の月から来たとか、赤ん坊の頃の記憶がちょっとあるとか、飯ウマになる要素はないこともない、って感じかな。
習得が早いのはKASSENの感じで分かったけどね。
当時は僕と同じくらいのなんかテンション高い女の子って感じだし。
それが今では酒寄さん家の食卓を切り盛りしてるとなれば、しみじみしちゃうよね。
「じゃ始まるよ〜まずは──」
作るところとかはもう何度もやったことだから、ほとんど流した。
かぐやは興味深そうに見ながら、自分でやった時のと違いを確認している。
向上心がすごいんだよね。
歌も料理も、好きなことは上手くなりたい! って、意志を感じる。
めっちゃ努力もしてるだろうしね、歌とか。料理は分かんないけど、この前の焼きそば作って行った時も、作り方聞かれたし。
きっと、酒寄さんのために美味しいものが作りたいのでしょう。
【まじで手慣れてる】
【秋鷹って、専業主夫だったりする?】
【いや、高校生なはず】
【高校生マ?】
【ROKAも確か学生ってどこかで話してたし、幼馴染なら同じなはず】
【ROKAの幼馴染なのか秋鷹】
【その辺の話題は昨日の2人のアーカイブにいけ】
【高校生で普通に常備菜の話をするのどゆこと】
どうも一般高校生です、
常備菜はいくらあっても困んないからね〜、作り置き大事。
親も楽だし僕も練習になるからちょうどいい。
「次はキャベツで──」
これ、作り終わる頃には冷蔵庫パンパンでは?
何品か作って、時折味見とかかぐやが作ったものを食べたりしていたら、意外と時間が経ってしまったようで。
「ただいま〜……やば、配信中か」
「おかえりいろは! まだ続いてるよ〜」
「だから名前……はぁ。秋鷹も、かぐやに付き合ってくれてありがとね」
「いいえ〜未だに限界ムーブしてる誰かさんのためになるならお構いなくー」
「ぐっ……はぁ、ところでいつ終わる予定なの?」
【家主、帰還】
【当たり前のようなただいまとおかえりてぇてぇ】
【確かにそろそろ良い時間?】
【かぐやの気分次第か】
「結構作ったし、そろそろお開きにする?」
「ん〜……あ! まだ卵焼き教えてもらってないよ!」
「あー。そうだったね。どーしよ、いろPまだいても大丈夫?」
「私は気にしないでいいよ。引っ込んでるから」
「やーだー! いろPも一緒にやろ!」
「だぁ〜〜!! 引っ付くな! 熱い!」
何を見せられてるんだ僕は。
【てぇてぇ】
【急に家主のいちゃつきを見せられる秋鷹の図】
【何を見せられてるんだって顔になってる】
【それ、昨日の配信見てたやつも思ってたと思うぞ】
【アーカイブ見なきゃ】
嘘でしょここで僕が刺されることある?
こんな露骨にくっついてないし、いちゃついてなんかないんだけど?
普通の幼馴染の距離感だったと思うが?
うーん、幼馴染ってそんなもんじゃないのかなぁ。
わからぬ。
「ほらアキ! 卵焼き!」
「あぁ、うん、わかった」
ぼーっとしてたらかぐやに急かされちゃった。
君のせいなんだけどね。
まあいいや、とりあえず作るから。
酒寄さんは確か固めだったよね。
「卵を割って、しっかり白身を切りながら混ぜて」
【普通に片手で割ったな】
【てか、卵混ぜるのも無駄なく早くね】
【殻一つもないじゃん】
【ハトモリ:俺も初めてやった時は殻が入ったなぁ……】
【ハトモリじゃんちっすちっす】
「あ! ハトモリ! やっほー!」
「なに? ハトモリいんの? 見んな」
「ほんとハトモリには塩対応ね……」
【塩対応草】
【塩鷹爆誕】
【ハトモリ:いつもこうなんで慣れましたわ】
【さすが親友】
【まみまみ:たまには優しくしたげて】
【わ、まみまみも来た】
なんか皆集まってきたな?
守と真実まで来たし。
暇なんかあいつら。
たしか、今日は2人ともデートとか言ってたような?
終わったのか、2人で見てるのか。
後者な気がするな。
「まみまみもいる〜〜♪」
「暇人だねぇ」
「ならROKAもいるかな?」
「ROKAは今おばあちゃんの所だから、いないんじゃない?」
たぶん電波どうこうじゃなくて、家族と団欒してそう。
それからしばらくコメントが流れたけど、芦花は見当たらなかった。
まあ、そんな気がした。
「てなわけで、かんせーい」
「はや! めちゃ綺麗! すごーい!」
「秋鷹の卵焼きいつ見ても綺麗よね」
【めっちゃ綺麗じゃん】
【画面越しでもわかるこの綺麗さ】
【絶対美味いやつじゃん】
【飯テロぉ】
【お腹減ってきた】
【卵焼き食べたい】
【ハトモリ:やっぱ秋鷹の卵焼きには勝てないわ】
【まみまみ:あれは本当に良いものだもんね】
【このカップル食べたことあるんだ】
「卵焼きは秋鷹いつも弁当に入れてたもんね」
「まあ、黄色って色味的にあんまないからね、それに卵焼きは好きだし」
「うぇ〜〜!? かぐや知らないんだけど! 弁当ってなに!」
「今は夏休みだから作ってないけど、学校があるときは毎日用意してたんだよね。おかず用意して小さな容器に詰めて持ってくの」
【まじで主夫じゃん】
【一家に1人秋鷹ほしいかも】
【ハトモリ:俺も欲しい】
【まみまみ:私も】
【秋鷹ひっぱりだこじゃん】
【いや、まみまみはそれでいいのか……?】
ほんとにそう。
僕じゃなくて守がいるだろうに。
守ももっと頑張って真実の胃袋握らないと。
「ほら、出来立てのうちに食べなよ。いろPも」
「やったー! いただきまーす!」
「私もいいの? じゃあ、いただきます」
「んまぁー! 秋鷹はしょっぱ目が好きなんだね!」
「うん、まあ、どっちかといえばね」
「いろP? どしたの?」
「いや、いつもは甘めで柔らかめだった気がしたんだけど」
【秋鷹は固め派か】
【それにしょっぱ目と】
【およ?】
【普段とは反対?】
【まみまみ:にやにや】
【なんだなんだ、まみまみはなにを知ってるんだ!】
あー、んー、まあそうだけど。
真実め、余計なコメント流しやがってに。
酒寄さんもそこに気付くとは思わなかったな。
誤魔化す……のは無理かな。
流石に、酒寄さんでもバレるなら厳しいか。
「まあ、いつもはいろPの言う通りで作ってるね」
「そなの? 今回はなんで反対に?」
「確かいろPの好みはそっちだったと思ってたからね。合ってたけど」
「んん? てことは、普段は別の人の好みに合わせてるってこと?」
【おっとぉ?】
【なるほど?】
【どういうことですか】
【まみまみ:にやにやにやにや】
【まみまみがにやにやbotになってる】
いやー、そこ突かれるの痛いなぁ。
そんなの1人しかいないだけどさ。
まあ、さすがにバラせないよね。
「まあ、そんなとこ」
「かぐやも普段のやつ食べたい!」
「え、まじ?」
「食べたい食べたい食べたーい!!!!」
いやそんな駄々こねなくても。
酒寄さん振り回されてる腕を迷惑そうに見てますけど。
保護者さん? 仕事して?
「んー、私もかぐやと同意見ってことで」
「嘘でしょそっちにつくの?」
「だって、私もなんだかんだ普段のやつに慣れてるからさ」
ぐぬぬ、味方になると思っていた人に後ろから刺されてしまった。
しょーがない。もう1つ作るかぁ。
「はぁ、わかったよ。普段のやつも作るよ。ちなみに蜂蜜とかってある?」
「蜂蜜? ん〜確かこの辺に……あった!」
「どーも」
がさごそと近くの棚から引っ張り出してきたね。
気のせいじゃなければその中に激辛パウダーなるものが見えたけど。
企画用かな? スルーしとこ。
さて、必要なものは揃ってしまった。
諦めて作りましょう。
「流れは大体変わらないんだけどね──」
卵を割って、しっかり白身を切るように溶いて。
蜂蜜もここで適量混ぜる。
脳裏に幼馴染の顔が浮かぶ。幼い小さな時の芦花の笑顔だ。
お弁当を作り始めて、まず卵焼きを入れようと思ったのは、君の作ってくれた卵焼きが美味しかったから。
初めて作った失敗気味の卵焼きを美味しいと笑ってくれた。きっと、殻とか焦げとかで不味かっただろうに。
丁寧に小鍋に流し込む。あまり長く焼きすぎないように気を付ける。
何回目かの卵焼きを食べてもらって、柔らか目が好きだと君は言った。柔らかめに作るのは難しくて、たくさん失敗した。
くるりくるりと、優しく、でも素早く転がす。
十数回目で、甘めの方が好きだと彼女の親が教えてくれた。甘くしすぎたり、そんなに甘くなかったり、上手く作れないことも多かった。
残りの卵液も入れて焼いていく。
何十回も作り重ねて、とても上手く出来た卵焼きを、君はとっても美味しそうに食べてくれた。
花丸あげるだなんて、花も綻ぶような笑顔で言ってくれた。
嬉しかった。
ただ、君に美味しいと笑ってほしくて。
何度も何度も作って、甘さの調節も重ねて。
硬さの調節もたくさん試行して、君の好みに限界まで近付けたかった。
だって、君がくれた卵焼きは、僕にとってそれくらい美味しかったから。
「──はい、完成」
「お、おぉ……」
「……なんか、なんかさ」
ん? なんか言葉失ってる?
【あーあ】
【まみまみがニヤついてたのってそういうこと?】
【まみまみ:にやにやにやにやにやにやにや】
【もはや壊れてないか】
【ハトモリ:俺も精進する。美味しいもの食べて欲しいし】
【俺もたまには親のために料理するか】
【私も料理頑張ろっかな】
なんだなんだ、なにがあった?
真実はもはや壊れたようににやついてるし、守は決心固めてるし。
視聴者は料理頑張ろうとしてる人がたくさんいるし。
どゆことなの?
「え、なんなの?」
「気付いてないならいいんじゃない?」
「かぐやもそー思う! さ、食べていい!?」
「えぇ……まあ、どうぞ」
「ひゃっほーい! いただきまーす!!!」
こうして、最初のかぐやと酒寄さんの反応に戻るわけだ。
「アキってさ、何考えてさっき作ってたの?」
「んー? んー……食べてもらう人?」
「それはかぐやたちのこと?」
あー、それは……。
違う、とは言い切れないのか?
いやまあ、料理の全ての目標は芦花に美味しく食べてもらうだから違うか。
でも、今回は2人のためでもあるし。
いやでも考えてたのは遠い昔の思い出だし。
うむむ。
「なるほど?」
「……ん、なにが?」
「いーや? なんでもないよー! かぐやもアキみたいに綺麗で美味しい卵焼き作るー!」
「うん、頑張れー。何度もやってたら辿り着けると思うよ」
積み重ねのたまものだしね。
さて、やること終わったし配信も終わりかな?
「それじゃあ、締める?」
「そだね! んじゃ皆! おつかぐー!」
「おつかぐー」
【おつかぐ!】
【これROKAにも見せたいな】
【そのうち見るだろ】
いやだからなんで?
どうして芦花が出てくる?
謎なんだか……?
卵焼き作ってる時のアキくんの様子?
そらもうとっても穏やかで優しい顔だったそうですよ?