カフェ行く前だけで一話行くとは思わなんだ
電車に揺られ、目的地に着いた。
会話は止まらず初メンバーの守が混ざっても、守が話に入らないなんてことはなくて。
むしろ弄られまくってて大変面白かった。
真実と芦花に集中攻撃されてるのは笑いを堪えるのが大変でしたまる。
「恨むぞ荒鷹」
「なんでよ」
「助けてくれなかっただろ」
「真実とたくさん話せたのに?」
「そ、それは、その〜」
やっぱ満更でもなかったみたいだね。
楽しそうでなによりです。
「真実、例のカフェは?」
「もう着くよ〜ほら、あそこ!」
真実が指差した先には、まだ11時前だというのに少し並んでいるのが見えた。
グルメインフルエンサーの嗅覚は素晴らしいね。こんなに人気の店を探し出すなんて。
「もう並んでるとかすごいね」
「早めに来て正解だったね〜」
「ね〜。どれくらい待つかな?」
芦花と真実が前で話す後ろで僕は守を捕まえてこっそり話しかけた。
「守、ちゃんと真実が頼むものとは別のを頼むんだよ? わかってる?」
「お、おう。分けれるようにだろ?」
「ならよし。あとはその場のノリで頑張れ」
「適当すぎるな?」
いやだってそれ以外なんかあるかな。
間違っても真実が興味なさそうなのはやめとけとか?
でもたぶんこの店のメニューを前に見た感じではどれでも喜びそうな気がするんだけど。
まあ、怪しそうなら突っ込んであげればいっか。
なんて思いながら待ち時間を4人のお話しタイムで潰したのだった。
「4名でお待ちの諌山さまー! どうぞー!」
「は〜い」
お、呼ばれたみたいだ。大体30分くらいかな?
1時間とかだったらどうしようかと思ったけどさすがにそこまではかかんなかったか。よかったよかった。
「さぁ〜! みんな何にする?」
「むむ、これはどれも気になる……!」
ようやく入れたからか真実のテンションがすごい上がってる。
芦花も期待が高まってきたのかメニュー見てキラキラ笑顔で、うっ顔が良い……。
守は……混乱してる?
「大丈夫?」
「あぁ……こういう店初めてだから正直なにがなんだか……」
「そっか。とりあえず芦花たちが決めるの待ってからでもいいんじゃない?」
「そうしとくわ……」
メニューから目を離して黄昏ちゃってるよ。
まあ初めましてでこんだけキラキラしたお店で、スイーツメインだと守みたいにスポーツやってたタイプには厳しいか。
僕は芦花によくついて行ってるのでもう慣れてます。
「んー、やっぱりこの1番人気のフルーツパフェにする!」
「じゃ〜わたしは今回はフルーツタルトにしよっかな!」
2人の分が決まったみたいだ。
なら僕は……。
「僕はこのチョコケーキにするね」
「あ、俺は……チーズケーキで」
よしよしちゃんと違うのを頼めたね。
飲み物は全員ホットコーヒーで一緒だった。
砂糖の入れ具合で多分すごい差が出ると思うけどね。
さ、注文注文。
店員さん呼んでっと。
「ご注文はお決まりですか?」
「お願いします。このフルーツパフェ1つと、フルーツタルト1つ。あとチョコケーキとチーズケーキ1つずつお願いします」
「お飲み物はいかがしますか?」
「ホットコーヒー4つで」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
通路側にいた僕が注文を済ませる。
その間にこの後の予定を3人が話していた。
「この後は〜近くの駅ビルのところを回ろうかな〜って思ってるけど」
「それでいいんじゃない?」
「いいと思います!」
「左に同じくー」
さくっと決まってしまった。まあこの辺は真実の方が詳しそうだしお任せしちゃおう。
そのままおしゃべりすること数分。
「お待たせしました! ご注文のお品物を失礼します! ごゆっくりお召し上がりくださいませ!」
「おぉー」
「すっご」
「思ってるよりも大きかったかも……」
「わたしも初めて頼んだ時はちょっとびっくりしたよ〜」
並べられた品物を見て驚愕。僕たちのケーキはまあ普通の感じだ。
しかし芦花の頼んだパフェは一味違った。
まず入れ物が結構大きい。その分だけ縦にも高く積めるからか、いろんな果物がこれでもかってくらいふんだんに盛り付けられている。
いちご、キウイ、バナナ、パイナップル、りんご、オレンジ、マスカット、もも。
8種類も散りばめられている。季節外れのものもあるけど、とっても豪勢だ。
ホイップもたくさん詰められてるし、下の方には砕いたクッキー、その上にスポンジが乗ってて食べ応えもありそうだ。
果物の中に混じってバニラのアイスクリームがちょこんとなっているが、季節的に少々冷たいかも?
なんにせよすごいのがきた。
芦花も最初は驚いてたけど、すぐに目をキラッキラに輝かせて写真を撮り始めた。あ、ちょっと僕写りそうなんでパフェに隠してもらっても?
無理ですか? あ、そう。
「でもこれ食べ切れるかなぁ」
「だ〜いじょうぶ。そこにちょうどよく食べてくるそうな男子が2人いるでしょ?」
「無理しないでいいよ? 食べ切れない分はもらうよ」
確かに芦花1人だとちょっと怪しい感じはする量だ。
無理そうなら全然もらうので好きなように食べて欲しい。あ、出来ればもも少し残してくれると嬉しかったり。
「諌山さんのも結構すごくないですか?」
「でしょ〜? 次来たらこれ食べようって思ってたんだ〜」
真実のフルーツタルトは、パフェをそのままタルトに乗せた感じの果物たくさんタルトだ。
パフェほどの高さはないけど、タルトの生地のことを考えたらこっちの方がお腹に溜まりそうではある。
食べる前に僕もちょっとだけ写真撮っておこう。どこにあげるわけでもないけど、思い出としてね。
自分のやつ、芦花のやつ、真実のやつ、守が真実のキラキラ笑顔を見てへんな顔になってるとこ。あ、バレた。
「おいこらどこ撮ってるんだ」
「守の変顔」
「少しは誤魔化せ」
「無理〜」
もう撮ったし消す気もございませーん。
さて、コーヒーは僕はミルクだけでいいや。
「みんなミルクと角砂糖は?」
「私は角砂糖1個とミルク少し」
「わたしは〜4個とミルク多めに〜!」
「俺は、2個とミルクほどほどかな」
それぞれのカップに角砂糖を入れ、ミルクはストップって言うまで入れてあげた。
「それじゃ〜!」
「「「「いただきます!」」」」
声を合わせていただきますと。
とりあえずチョコケーキを一口。
ん〜、ほろ苦い感じで好きな奴だ。甘すぎないのが好きだからとても嬉しい!
芦花も一口食べてすっごい嬉しそうに頰を緩めてる。可愛すぎるな?
真美はキラキラお目々でフルーツタルト食べてる。あ、守があまりの眩しさに目を隠してる。
「芦花、ちょっと食べる?」
「いいの? じゃあ私のもあげるよ」
「じゃあももちょーだい」
「いいよ」
この辺で守に助け舟というか、次の一歩を踏んでもらうためにも少し実演しとこうかな。
こうすれば距離が近くなるよって。
「あま、おいし〜」
「ほろ苦くていいね。パフェ食べるの止まんなくなっちゃう」
「そんな気がしたんだよね。好きに取ってっていいよ」
「いいの? ならアキくんも取っていいからね?」
こうだよ? とチラ見すると信じられないものを見る目で守(と真実にも)見られてた。
脇腹こづいて小突いて耳を寄せさせる。
「ぼーっとしてないで真実にもちょっとあげなよ」
「いやいやハードル高いって」
「いけるいける。食べ物関連なら真実のガードも下がるだろうから」
「でも俺の心の準備が……」
「もんどーむよー」
「あ、ちょっ!」
この期に及んでヘタレな守くんのお尻を引っ叩いてやるか。
「真実ー、守がフルーツタルトちょっと欲しいって」
「そうなの? 言ってくれたらいいのに〜。じゃあチーズケーキちょっとちょうだい!」
「あ、はい、もう全然どうぞ!」
あ、燃え尽きた。幸せで白い灰になった。
つついても反応しないし幸福感がオーバーヒートしちゃったかも?
まあいっか。荒治療ということでここは。
別にあーんとかしてるわけではないんだから、そこまでのことなんだろうか。
僕だってそこまでしたことは……ない……なかったような……あれ、どうだろ。
いやでも物心つくまではなかったはず。たぶん、きっと、おそらく。
そこまで攻め攻めにはなれないからね、うん。
「うーん。やっぱりちょっと多かったかも」
「じゃあ残りはもらうよ」
「ありがとアキくん」
とか考えてたら芦花がここでギブアップ。まあ確かに結構量あったし、下の方にはお腹に膨れるものまであるしね。
さて、スプーンは……あ。
パフェ用のやつは芦花の分しかなかったか。
うーん。
「どうしたの?」
「や、スプーンが……」
「私のでいいなら使っていいよ?」
「い、いいの?」
「? うん」
平静に。平静を保つのです。別にへんなことは何もない。店員さん呼ぶのが面倒だから。わざわざ洗い物を増やすのも悪いから。
そんなどうでもいい理由を頭の中でぐるぐるこね回しながら芦花からスプーンを受け取る。
真実の視線が一瞬鋭くなった気がしたが気にしていられない。
僕のミッションはいかに顔に出さずにこの残りのパフェを消費し切るかだ。
「そ、それじゃいただきまーす」
「召し上がれ〜なんて」
冗談めかして言ってる芦花の笑顔で大ダメージ。やめてくれそれは僕に効く。
無心だ。無心で進めるのだ。
ざっくざっくとパフェのそこを掘り進めていると。
「アキくん足りる? サンドイッチとかあるみたいだけど」
「んぇぁ。あー、ちょっと欲しいかも」
「あ、たまごサンドあるよ! これどう?」
「う、うん。それでお願い」
芦花の卵焼きを食べてから卵焼きがお弁当に毎回いるから、芦花は僕が卵が好きだと思っている節がある。
実際卵料理が好きかと言われればまあ好きではある。
でもそれは芦花の手料理だったからであって、なんでもいいわけではないのだけども。
でもこうやって芦花が選んでくれたのならそれを断る気は全然ない。
なんでも好きになれちゃうよ。
「鳩河くんは? 何か食べる?」
「……はっ。あ、えーと、じゃあミックスサンドでお願いします」
あ、ようやく帰ってきた。ちょっと芦花に夢中で守をいじってる余裕がなかったな。
まあ真実はまだフルーツタルトに夢中そうだし、大丈夫でしょ。
追加で頼んだたまごサンドとミックスサンド(あと真実が追加でショートケーキも頼んでた)が来る頃には僕は残りのパフェは食べ切っていた。
守もチーズケーキを食べ終えたし、真美もフルーツタルトを片付けていた。
サンドイッチはどちらも2つずつ。真実の前にはショートケーキが置かれている。
僕らの前に置かれたそれに、おや。真実の視線が……。
「……鳩河くん、1つ欲しいって言ったら怒る?」
「あ、全然大丈夫ですよ! なんなら全部でも」
「それはダメだよ〜。ちゃんと鳩河くんも食べなちゃ。足りないでしょ?」
「いやまあそうですけどもぉ……俺のことは気にしなくてもいいのに」
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです!」
たまごサンドを1つ手に取りかじりつつ、となりの会話を眺める。
まあ真実なら入るとは思ったけど、結構大きかったよなあのタルト……なんて思っていた。
ふだんからよく食べてるから胃も大きいのかな、と思っておこう。
食べ放題とか行った時にどれだけ食べてたかは……うん、忘れた。そういうことにしとこ。
芦花はそれ苦笑いで眺めたいた。食後のコーヒーを傾ける様もとてもない……。
「意外と好きかもこの味」
あんまり期待してなかったたまごサンドは、思いのほか好みの味だった。甘めふわふわの卵焼きを挟んでいるようで結構がっつりしている。
スクランブルエッグかと思ってたけど、厚みで違うのがわかった。
「そうなの? ……一口、もらってもいい?」
「!? いいけど、大丈夫?」
「一口ならいけるいける。流石にそこまで余裕ないお腹じゃないから」
いやあのそうじゃなくて一つじゃなくて一口だと……どこからもらうおつもりですか。
「じゃあもらうね」
「あ、うん」
「ほら、こっち寄せてよ」
そう言って芦花はお皿の上のではなく、僕が持っていたものを引き寄せ一口頬張った。
「あむっ。……意外としっかりしてるね。2つでもお腹に溜まりそうだね……アキくん?」
「ウンソウダネチョウドイイリョウダネ」
あー、守のこと何も言えないや。
今僕は顔面が崩壊するのを必死で堪えてるから。
それは反則だと思うんですよ芦花さん。いくら幼馴染といえどそれはズルいですよ。
隣の真美もすんごい顔してるし。守は……こっちもとんでもないものを見た顔してるし。
まあうん分かるよその気持ち。今僕もどうしたものかと困ってるもん。
とりあえず気にしないふりして残りを食べ切らないと。
あー顔熱い。今って冬だよね? 顔だけ春来てるんだけど!?
甘い……のか?