芦花と幼馴染   作:キイカ

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ドルビーアトモスの壁ドンまじで壁ドンでした。
お次はSCREEN X見に行かなきゃ。
あとUA50000突破しました!ありがとうございます!
評価もなんかオレンジ色になってて初めてで嬉しいです!


釣り上げられたもの

 

 

 

 プールの次の日。元々6人集まってなんかしようという話があった日なのだけれど、酒寄さんが倒れてからまだ1週間も経ってないので、安静にということで予定変更してツクヨミでの開催になった。

 場所はツクヨミ内真実の家。僕の家と違って内装とか、家具とか結構揃えられててちゃんとしてる。僕あんまし興味ないからね。風鈴とテーブルくらいしかないし。あ、でも今は芦花からもらった角飾ってるか。バレないようにはしてるけど。

 そんなわけで先に入室? かな、まあ家主とその彼氏はもうすでにいるんだけどね。

 あ、芦花も一緒だよ。

 

「やほやほ〜昨日はずいぶん楽しんだみたいじゃ〜ん?」

「情報早くない?」

「芦花の竹スタ更新されてたからね〜親しい人限定だったけど。ずいぶん可愛いの選んであげたみたいだね?」

「芦花ぁ!? どこまでバラしてるの!?」

「えぇ〜幼馴染に選んでもらったことぐらいだよ?」

 

 ぐへ、それ親しい人にタグ付けされてる僕のこと知ってる人にはもろバレじゃないか……。

 まあでも似合ってたのは事実だし、というか何回か理性飛びかけたし。

 我ながら良い選択だったね。目の前のニヤつく子がいじってこなければね? 

 

「あの水着を着た芦花とたっくさん遊んだんだろうね〜にひひ、自分色に染めた感想は? 独占欲とか、満たされたかい?」

 

 質問が親父くさいぞこの女子高生。

 とはいえ、気分はまあ良かったのも事実ではある。

 が、それを認めるのは癪だな。

 よし。

 

「それは、君の彼氏と同じ感想だと思うよ?」

「……やりおる」

「なんか巻き込まれたんだが?」

「で、2年連続自分の選んだ水着を着てもらった彼氏さんは、どんな気分でしたか?」

 

 巻き込みついでに聞いてみる。

 真実も気になる、というよりかは少し恥ずかしそうだ。守もツクヨミなのに顔が赤くなっている。照れのエフェクトかな? 

 

「……ノーコメントで」

「逃げたな」

「そういう荒鷹はどうなんだよ!」

「もちろん……ノーコメント」

「おい〜!」

 

 いや、さすがに本人を前にして言えるか。それはもはや好きと言ってるのと同義なのよ。

 僕が恥ずか死するわ。

 そもそも当日に似合ってるって褒めまくってるし、似合うと思って選んでるのだからね。

 それを見せたかったからと着てくれたなんて、感無量ですよ。涙ちょちょぎれちゃう。

 僕の感想を吐き出したいなら、先に自分が吐くんだな守! 

 なーんて、思っていたら。

 

「守? わたしどんな気分だったか知りたいな〜」

「……しょーじき、最高でした。俺の彼女って感じで、ウッキウキしてました」

「にひひ、そっかそっかぁ。だってさ? たかちー、そちらは?」

 

 うっそでしょ、まさかゴリ押しで感想暴露させてまで攻めてくる? 

 それは予想外だが? 守も照れつつもなんだかんだそんなにダメージ受けてないし。こいつ強くなったな。

 やばい、芦花も気になるのかじっと見てるし、逃げ場がなくなった。

 ど、どうしよ……。

 

「やっほー! かぐや先に来ちゃったー! ……あれ、どしたの?」

「かぐやちゃん! やほやほ〜今は鷹狩り中かな?」

「へるぷみ〜」

「おもろそ〜! かぐやもやるっ!」

 

 参戦すな。頼むから流れ変えるか味方であってくれよ。

 3対1から4対1になってしまいました。

 圧倒的不利、各個撃破も無理。

 観念して降参するしかないか……? 

 

「ほれほれ、諦めて吐いちゃいなよ〜」

「楽になろうぜ」

「私も気になるな〜」

「よく分かんないけど、吐け!」

 

 遂には四方を囲むように迫ってきやがった。

 無駄にコンビネーションしてくるなよこんなところで。

 うひっ、あの芦花さん背後から耳元で囁くのは反則です! 

 ちょ、かぐやさん? もはや肩組んでるんですけど? そんな祭りみたいなノリにされましても。真実? 身長合わないからって背中に乗っからないで? 守? それを羨ましそうに見るのは違うと思うぞ? 

 やば、収拾がつかなくなってきた。もはや僕で遊び始めてるし。

 とりあえず真実を彼氏にパスして、かぐやに膝カックンでも仕掛けて一時的に無力感。

 芦花は……うん、無理だね。

 なので、逃げます。

 

「逃げるが勝ち!」

「あ、待て〜!」

「ちょ、かぐや、膝かっくん初めてなんだけど、こんなに力入らなくなるもんなの?」

「初めてだと思ってるよりガッツリくるよ」

「アキくん逃げちゃった」

 

 翼を使って真実の家の屋根に登る。

 他の皆はすぐには来れないから、しばらく安全だ。

 

「ふぅ。一安心、さすがに言えないよね」

 

 下で降りろ降りろと騒いでるバカップルと、おいで〜と手招きしてる幼馴染に心を強く持ちながら抵抗。

 酒寄さんが来て話が変わるまでは退避です。

 しばらくして僕が降りる気がないのが分かったようで、各々別のことをし始めた。

 真実は家の池で釣りを始めた。ご丁寧にそれ用に椅子も用意してあるみたいだ。……なんで餌がジュースなのかは、触れないでおこう。ここはツクヨミ、そういうこともあるよね。

 で、守は隣でSETSUNAの動画を見始めた。最近上手くなってきてるから、手強い時もあるからね.まあ、まだまだだけど。

 かぐやは真実の家の露天風呂的なのを借りてるようだ。池の横に風呂があるの、不思議だけど映えるね。

 芦花はそんな皆を見守るようにソファに座ってる。時折ネイルを眺めたり、チロちゃんが構って欲しそうに手のひらにくるのを、優しく遊んであげてる。むう、絵になる。

 ……、降りよ。

 

「あれ、降りてきたの」

「僕もチロちゃんと遊びたくなっちゃった」

「そっか、だってさチロちゃん」

「?」

 

 芦花の隣に座って、チロちゃんに指先を差し出す。

 僕らの会話が分かってるのかはなんとも言えないけど、僕の指先を嗅ぐような仕草を見せて、そのままこちらに移ってきた。

 おーよしよし。可愛いね。

 

「よしよし。おっと……、そこ好きなの?」

「チロちゃん頭の上好きだよね。普段見れない所から周りを見渡してるのかな?」

「かもね。なんか、落ち着く体勢になっちゃったし、このままにしとこ」

 

 頭の上でくつろぎ始めるチロちゃん。

 うん、そこそんなに居心地いいのかな。割と不安定な場所だと思うけど。

 いいけどね、ちゃっとバランス意識しなくちゃいけないくらいだから、大変じゃないし。

 視線だけ頭の上で、意識は他に向けて話していると。

 

「お待たせ」

「お、彩葉来たね」

「酒寄さんおつ〜」

「芦花、それに荒鷹くん……えっとそれどういう状態?」

「なんか、チロちゃんが落ち着いてしまった」

「……そっか」

 

 最後の1人、酒寄さんがログインした。

 今の今までバイトだったみたい。

 僕は変わらず週2くらいで緩くやってます。

 最近は予定が埋まりがちなのでね、あんまり入れないのです。

 ログイン場所の1番近くにいた僕と芦花が、声をかけると、僕らに挨拶しようとして、僕の頭の上を見て目が点になった。

 うん、気持ちはわかる。

 が、説明したところでこの通りなので、酒寄さんもスルーしたようだ。賢い。

 

「彩葉やっほ〜体調だいじょぶ〜?」

「んー、よくはなってきたよ。心配かけてごめん」

「彩葉〜? ごめんじゃないでしょ〜」

「……心配してくれてありがとう」

「よし!」

 

 続いて家主の真実が、釣りを継続しつつ体調を気遣う。

 守? お疲れ様ですとは言ってたけど、そのあとは空気。

 かぐやのツッコミに、少し目を細めてたけど、訂正してくれた。うん、ごめんよりありがとうだよね。

 

「ここどーぞ」

「あ、どーも」

 

 一通り挨拶を終えた酒寄さんに、座っていた席を空けてあげる。

 僕はチロちゃんを落とさないように注意しつつ池に足を突っ込むように座った。

 感覚はないけど、見た目は涼しげでよし。

 さずかに、魚は寄ってこない。いや、寄ってこられても足で釣りなんてしたくないんだけどね。

 

「ねーぇー! どーしたら黒鬼に勝てるのー!!!」

「ツクヨミトップライバーなんだから、勝てるわけないって」

「それじゃあコラボライブ出来ないじゃん!」

「だから、こういうのは優勝するところが決まってるんだって」

 

 のほほんと、手のひらに降りてきたチロちゃんを撫でくりまわしながら、後ろの痴話喧嘩もどきを聞く。

 かぐやの夢みがちな発言をばっさり切り捨てる現実思考な酒寄さん。うーん、取り付く島もない。

 でも、ファン数は爆発的に伸びてるし、この前やってたらしいライブは大成功したとか。あとからアーカイブ見たけど実際めちゃ良かった。

 とはいえ残りの期間で一位たるブラックオニキスを抜くにはまだ足りなそうだ。

 それこそ、直接対決、とか? 

 あったりしたら、すごいけどさすがにねぇ。

 現実的にはその下、って言ったら良くないけどテテテさんとか、湯雲さんら辺とコラボとか出来たらもっとファン増やせそうだけどね。

 

「ちくしょー! ブラックオニキスめー!」

「帝様だからね〜とーぜん♪」

「まみはどっちの味方なの!?」

 

 およ、憤慨してるかぐやに真実が茶々を入れてる。

 てか、かぐやって真実が黒鬼推しなの知らなかったっけ? 

 

「推しなもので〜」

「裏切られた〜!!!」

「2推しでかぐやも推してるよ〜」

「や〜だ〜! かぐやだけにして!」

「無茶言わないでよ〜」

 

 生粋のファンである真実にそれは無理難題だろうね。

 なんなら裏切るより前からファンだし。

 

「え、じゃあハトモリは? かぐやのこと推してくれてる?」

「……わり、俺まみまみ推すので手一杯」

「がーん!? そんな、2推しですら、ない……!?」

「ちょっと守〜、推してあげるくらいはいいじゃん」

 

 矛先が守に向いたけど、すっごい気まずそうな顔で断られてしまったね。

 てか推しにもなってたのか。ようこそ、こちら側へ。

 真実はそんな彼氏に嬉しい半分呆れ半分ってとこかな? 

 そんな彼女に対して、守は。

 

「いや、真実が誰を推そうと気にしないけど、俺はまみだけ推してたい。その方が心配とかすることもないだろうし」

 

 なんと男前な発言。

 思わず真実が赤面、かぐやも驚き、芦花も酒寄さんも2度見してびっくりしてる。

 いつのまにやら、彼氏力上げてきてたね。

 

「わーぉ。それなら仕方ないね」

「……いや、友達を推すくらいならわたし文句言わないけど」

「んー、じゃあ、3番目くらいに推しくか」

 

 かぐやもさすがに納得したか。

 真実は、なんか照れさせられたのが不服なのかちょいと捲れ気味? でも、嬉しさもあるから口調がぶっきらぼうになった。

 で、彼女のお許しが出た結果は3番目。

 ……2番目は? 

 

「かぐや3番目なの!? 2番目は!?」

「まあ、恥ずいけど荒鷹」

「え、僕?」

「ま、まさか、アキに負けるなんて」

 

 僕も初耳だが? 

 

「いや、SETSUNAの配信とか見てたら、まじで楽しそうだし、普通に上手いし、それにコメントとかとも楽しそうにやり取りしてるし。なんだかんだ見てて面白いんだわ」

「……お、おう」

「これ、照れてる?」

「照れてますね〜」

「アキ照れてる!」

「荒鷹君照れるんだ」

 

 おうおう、うるさいぞ。

 僕も照れますよ人間なのでね。

 親友からのいきなりのカミングアウトに、さすがにちょっと恥ずい。

 そ、そうですか、2番目ですか。……喜んどこ。

 

「ろかは?」

「私は推しとかいないかなぁ。かぐやちゃんのことは応援してるよ?」

「なら推しってことにしといてよ!」

「えぇ〜わかったー」

「適当に流された!」

 

 そうこうしてるうちにお次は芦花へ。

 まあ芦花は推しとかいないって言ってたしね。

 男性のアイドルとかも好きじゃないらしいし。

 かぐやへの返答が適当なのは、たぶん皆分かってると思うけどね。

 あ、てかこの流れなと次僕では? 

 

「彩葉はかぐやとヤチヨでしょ?」

 

 あ、違った。

 先に酒寄さんが入った。

 

「ヤチヨは当然として……なんであんたのことも推してる前提なのよ」

「えっ……推してくれてないの? あんなに仲良くライブとかしてきたのに? ほんとに? 彩葉〜〜???」

「うっ……こんなところでおねだり顔すんな……あーもう。推してます、推してますよー」

「よっしゃー! 勝ち取ったぞー!」

 

 酒寄さんの分かりづらいツンデレというか、デレ隠しをかぐやが突っ込んで破壊しに行ったね。

 で、見事酒寄さんのガードを崩してデレを引き出したと。

 業前ですな。お見事。

 

「アキ!」

「げっ、こっち来た」

「げってなに! アキの推しは!? もちろんかぐやだよね!」

「残念ながら僕の推しは1人だけだよ」

「…………えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!???」

 

 声でっか。

 そんなに驚くこと? 

 かぐやを応援してるのは芦花と同じだけどね。

 僕には揺るぎない不動の推しがいますので。

 誰にも動かせないよ。

 

「……だれ、だれなの! アキの推し! かぐや知らないんだけど!」

 

 なんでか知らないけど血眼で急に詰め寄ってきた。

 そんな詰め寄るほど気になるものかな? 

 よく分かんないね。

 

「ひみつー」

「うがぁ〜〜!! ひみつーじゃないよ! 教えて教えておーしーえーてー!!!」

「あぁぁ〜〜揺らさないで〜〜」

 

 諦め悪いな? 

 あと肩掴んで揺らさないで? 

 チロちゃんが吹っ飛びそうで怖いが。

 翼の中に隠れてなんとかやり過ごしてるみたいだけども。

 

「誰か! アキの推し知ってる人いないの!?」

 

 あ。

 真実がさりげなーく、釣竿に視線を戻した。

 芦花は、知らないからこちらを不思議そうに見ている。

 守は元より知ってるから、動画から視線を外してない。てか、今見てるの僕のやつだな? こんな時に見るな? 

 で、1番怪しい挙動をした酒寄さん。なんとびっくり下手くそな口笛を吹き始めました。まじか。

 

「彩葉? 知ってるねその感じ」

「なんのこと? 私なにも知らないヨ?」

「隠し事へたっぴ! 教えてー!」

「ぎゃあぁぁ〜〜揺らすなー! 病人は優しくってこの前荒鷹君に言われたでしょーがー!」

「あっ……ごめん」

「いやちょ、そんな急な落ち込まれても」

 

 あっという間に僕から酒寄さんに距離を詰め、ターゲットを変えて、なにやら悪い顔でにじりよる。

 そして僕のと同じ感じで肩につかみかかって揺らす。

 が。

 本人の言うとおりまだ体調は万全じゃないことを言われて思い出したのか、急速にテンションがダウンした。

 おかげで酒寄さんも高低差に着いていけなくなってるよ。自分で言ったのにね。

 

「とりあえず推しの話は後にしよ。それで、どーすんの? これから」

「んー、やっぱし帝と勝負出来たらなぁ〜」

「いやいや、向こうはプロ、こっちはアマチュアもいいとこ。話にならないよ」

「KASSENで決戦とかよさそうじゃん?」

 

 ここで芦花の援護射撃! 

 しかし、それが現実的に出来るものかは……ね。

 

「それだ! KASSENで対決して決着とか!」

「無理無理、ボロ負けだって。大体かぐやと私と、誰を呼ぶ気?」

「え? アキ」

「え、僕?」

「荒鷹君なら……まあ確かに1番上手いしね。でも、それでも黒鬼には勝ち目がなぁ」

 

 なんかしれっと呼ばれたけど、さすがにそんな大舞台託されるのは話が違いますよ? 

 僕は一般SETSUNA配信者ですので、プロゲーマーの黒鬼さんたちとやるのは荷が重いというか。

 そもそも芦花がいないとやる気が……それはまた別問題か。

 

「えぇ〜対決〜!!」

「ダメったらダメ! ダメダメダメダメ、ダメ!」

「ぶぅ〜〜、彩葉の、……無茶しがち!」

「それどんな悪口よ! でも今は1番刺さる……」

 

 それはそう。

 もっと言っちゃえかぐや。

 とまあ、かぐやの今後のことを話していた時でした。

 真実がなにやらさっき釣り上げて、再度釣り針を垂らしていたところにデッカい魚影が。

 それと同時に、かぐやにメッセージがきた。

 巻物が広がるようにメッセージ画面が広がると、それを読んでいたかぐやがどんどん嬉しそうな顔に。

 そして反対に隣でそれを読んだ酒寄さんがなんか、脱力し切ったムンクの叫びみたいな顔になって転がってしまった。

 なにごと? とりあえず真実助けるべきか? あ、守が行った。

 

「黒鬼からの挑戦状!」

「……わぁ」

 

 1番可能性の低そうなコラボが、実現しそうです。

 え、もしかして本当に連れてかれるやつかこれ。

 

「向こうから挑まれちゃったなら! やるっきゃないよね! よーし、練習だ! アキ、よろしく!」

「うへぇ、まじかぁ……」

「大物が釣れたぁ〜〜!!」

「なんで池からクロマグロが……?」

「波乱の展開ってやつだね」

 

 大物を釣り上げたかぐやと真実。

 巻き込まれた僕らの運命はいかに。

 なんて言うと壮大だけど、実際のところは練習がてらKASSENするだけ。

 日にちの指定は3日後。それまでに出来るだけかぐやを鍛える? 無茶言うねぇ。

 

「とりあえずKASSEN場に行くかー。酒寄さんは大丈夫?」

「…………やるしかないでしょ、これ。気が重い……」

「ご愁傷様です」

 

 また倒れたりしないよね。

 今度は肉体じゃなくて精神的な疲労でやられそうだよ酒寄さん。

 

 

 

 それからKASSENを数戦したところで本日は解散。

 かぐやはセンスもあって成長が早い。

 でも、あと2日で黒鬼に勝てるかは……うーん。

 

「どう思う?」

「あんまり言いたくないけど、キツそうだよね」

「せめて1月あったらいいとこ行けそうな気がしたんだけど」

「まあ、ヤチヨカップの期間もあるから仕方ないね」

 

 僕らはいつものように話していた。

 真実と守も何度も戦って疲れたのか、守に寄りかかるように真実がへたれている。

 そんな僕らと真実たちを見ていたかぐやは、不意になにか気付いたように手を叩いた。

 

「あっ。もしかして」

「なに、余計なこと思いついたの?」

「違うよ、アキの推し誰だったのかなって、今なんとなくわかったかも」

「……そ、そうなんだ」

 

 うん、頼むからもう少し誤魔化してくれない? 

 それだと粉かけられたらバレるやつだが。

 

「ハトモリってさ、まみ推してるじゃん?」

「おう、そうだな」

「で、2人とも仲良し」

「そうだね〜……」

 

 急に始まった寸劇に、守は普通に返したけど真実は疲れて元気がなさそうだ。

 

「てことはさ、アキの推しってろかじゃない?」

 

 ぴしり。

 空気が固まる。

 飛躍しまくった結論のはずなのに、答えは合ってるという。

 さっきまでの疲労感はどこへやら。

 真実は、ポーカーフェイスを決め始めた。

 守も、笑顔を浮かべつつも、その裏を見せないようにしている。

 酒寄さんはあからさまに動揺してる。だめだこりゃ。

 芦花は、そんなまさか、といった様子。

 僕? 少しだけ肩が跳ねちゃったけど、それ以外は反応してないはず。

 

「どう? 合ってる?」

「いやいやいや、ただ幼馴染で仲良しってだけで推し認定されるのは違うでしょ」

「でもさ、なんかこう、アキってろかには優しいし、KASSENとかの時と応援とかフォローが手厚いというか」

「気のせいじゃない?」

「いつも一緒に組んでるし、離れた時は露骨につまんなそうじゃん」

「いやぁ、そんなことは」

 

 思ってるよりちゃんと見てるな!? 

 でもそれは推しだからというより、好きだからの方が強いんだけど。

 それは、かぐやには違いが分からないか。

 結果として追い詰められてるのは間違い無いんだけど。

 

「それにさ、昨日2人でプール行ったんでしょ?」

「な、なぜそれを」

「ろかの竹スタ」

「芦花ぁ」

「かぐやのオタクたちが言ってたんだけどさ、女の子って2人きりで遊びに誘うのは、好意があるサインなんだって」

「いやあの、それは推しとは関係ないのでは」

 

 てか、それ自意識過剰でなければ、芦花が僕のことを……。

 いやいやいやいやいや、まさか。

 でも。

 ちらりと、芦花を見ると、ほんの少しだけ、顔が赤い……ような? 

 

「んぁ? 話が逸れたかも。まあ、何が言いたいかというと、アキの行動の節々からハトモリがまみを推してるのと同じようなふいんきを感じたのですよ」

「ふいんき……」

「あっ、雰囲気だった! でも伝わったでしょ?」

 

 それはもうしっかり。

 伝わりすぎてるし、周りも察し始めてるし。

 真実とか半分くらい死んだ目だし、守もハラハラした顔してる。

 酒寄さんは後ろでごめんって手を合わせてる。いや、何かを漏らしたわけではないんだけどね、演技が下手なのはどうにかしてくれ。

 肝心の芦花は、顔が赤いけど、逆になんか覚悟が決まってるように見える。

 ……なにごと? 

 

「で、どうなの?」

「……」

「おやおやぁ? これは当たりかなぁ?」

「…………」

「地球には沈黙は肯定とみなすとかなんとかあるらしいね?」

「………………撤退!」

「あ! ちょ、アキ────」

 

 誤魔化しは出来そうだけど、それよりも芦花の視線が突き刺さりすぎて。

 これ以上は我慢できなくて、僕はワープして逃げた。

 

 

 

 自分の部屋に逃げて、縁側に転がって目を瞑る。

 そりゃ確かに言われたことは大体間違ってないし、推しであり愛してもいるし、大好きだから、その辺が似たような雰囲気と言われてしまえば、どうしようもない。

 かぐやにそれがバレるとは思わなかったけど。

 思ってるよりも僕らのことをよく見てたようだ。

 

「……はぁ。そりゃ推しだけども」

 

 本人の前でそれを公言するのはまずいというか。

 最悪関係が壊れかねない。

 さっきは誤魔化ししれないというか、空気に耐えられなくて撤退してしまった。

 後でちゃんと上手い言い訳考えておかないと。

 いつもならもう少し適当なこと言えるんだけど、さっきはいきなり過ぎて頭が回らなかった。

 

「それもこれも、ちゃんと好きと伝えれてないから」

 

 そうだ。

 ちゃんと彼女に好きだと、伝えて想いを打ち明けていれば別に問題はなかった。

 守たちと似たような雰囲気だったとしても、同じ関係だからと言えたし。

 結局僕が踏み出せないまま、ずるずるとここまで引きずってきてしまった。

 芦花からの攻勢をなんとか、やり過ごして、どこか良いタイミングで。

 なんて言って、気を逃し続けているだけ。

 決心さえすればなんて、甘えている。

 

「好き、か」

 

 1人でなら言えるのに。

 そりゃ、聞く人がいないから当然なんだけど。

 世のカップル夫婦は、ほんとにこの試練をよく乗り越えたよね。

 僕はこんなにも、悩んでいるのに。

 

「好き、好きだ」

 

 1人で呟いて、胸の中に溜まりに溜まって溢れ出してしまいそうな想いを、少しだけ吐き出していく。

 こうでもしないと、最近の芦花の攻勢に耐えられない。

 

「好き」

 

 そろそろ、抑えれるかな。

 なんて、思っていた。

 ここがツクヨミでなければ、気づけた。

 でも、迂闊に目を瞑ってしまったから。

 

「好きだ」

 

 気付かなかった。

 忘れていたわけじゃない。

 でも、まさか追ってきてるとは思ってなかった。

 あの時の覚悟の決まった顔は、もしかして。

 なんて、後から思ったり。

 

 

 

 

 

「芦花──好き」

「……アキ、くん?」

 

 

 

 







さてさて、金色の嵐に掻き乱されて、2人の仲はどうなるやら?
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