芦花と幼馴染   作:キイカ

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芦花の思い出探訪〜原点〜

 

 

 

 真実とカフェで話した後、解散してから1人で考えていた。

 一体いつからアキくんは私を好きだったのか。

 そして、どれくらい好きなのか。

 あれだけ隠されていた気持ちに気付いた今、おそらく私と彼の好きという気持ちに差があるのだと思う。

 今となってはそれもきっと少しずつ埋まってきてはいると思いたい。

 でも、最初の疑問なところが解決しない限り、埋めきれず辿り着けないと思う。

 だから、誰にそれを聞くべきか悩んでいた。

 しかし。

 

「真実以上にアキくんのこと知ってる人なんて、思いつかないんだけど……」

 

 私の中では彼女が私の次に彼を知っている人だった。いや、私も表面でしか知らなかったから1番かは分からないかな。

 そんな彼女でも中学生の時までしか分からない。

 おそらく、小学生の時からもう好かれていた気がしなくもない。

 でも誰に聞けば? 

 答えが出ないまま、自室のベッドで転がっている。

 そんな時、階下からお母さんの声が。

 

「芦花ー、アキくんママとご飯行くけどくるー?」

「……! いく!」

 

 そうだ、なんて単純なことに気付いていなかったのか。

 生まれた頃から知っている、1番身近な人がいたではないか。

 アキくんの、お母さん。

 降ってわいたチャンス、行くしかない。

 行って、ダメ元でも聞くしかない。

 ベッドから跳ね起きた私は、再度行くことを伝えて準備を始めた。

 

 

 

「やー、いつも付き合ってくれてありがとねぇ芦花ちゃん」

「いえいえ、こちらこそお母さんの我儘に付き合っていただきありがとうございます」

「私そんな我儘言ってるつもりではないんだけど……」

 

 集まったのは私とお母さん、それとアキくんのお母さん。

 いつもならここにアキくんもいたけど。やはり今日もこなかった。

 理由を聞いたら、まだ泊まり先で厄介になっているとのこと。

 ……来てたなら、直接聞いてもよかったけど、果たして答えてくれたかな。

 とりあえず親2人の会話を聞き流しつつ、ご飯を食べる。

 私のメインはその後だ。

 

「そういえば芦花ちゃん、最近うちの子とどうなの? 上手くやってる?」

 

 なんて思ってたら、ちょうど今彼のことであれこれしている私にダイレクトな話題が来た。

 アキくんのお母さん──百夏(ももか)さんはたぶんそんなことは知らないだろうけど。

 でもちょうどよかった。どうやって話題を切り出すかな困っていたから、向こうから振ってもらえるなら。

 

「そうですね、仲良くさせてもらってます。でも、今ちょっと……」

「……そうなの? 私で力になれるなら、頼ってね?」

「ええ、お願いしたいことがちょうどあります」

「あら」

 

 私のお母さんはおやおやと静観の構え。

 今はそれが助かる。下手に突かれても困るしね。

 百夏さんは、ほんのり首を傾げて私の言葉を待っている。

 さぁ、頑張らないと。

 

「アキくんっていつから料理をし始めましたか?」

「料理? うーん……確か、小学校1年生のときからかしら」

「小学……!?」

 

 そ、そんなに前!? 

 私の予想ではもう少し高学年かと思ってたんだけど!? 

 その頃の私はまだキラキラのビーズとかで遊んでた気がするんだけど! 

 アキくんそんなに早くから料理の練習してたの!? 

 

「えぇ、いつ頃からか急に私に料理教えてってねだってね。あんまりそういうこと言う子じゃないから、びっくりしたの覚えてるわ」

「それってどれくらいの時期だったかって……」

「ごめんなさいね、そこは少し曖昧なのよ。でも、わりと初めの方だったはずよ」

 

 そんなに早くから……。

 でも、その頃はまだ私のことを意識してなかった可能性もある。

 確認しないと。

 

「その頃って何から練習してました?」

「んー、まずは包丁の握り方とか、野菜の洗い方とか教えてたわ。さすがにすぐにはやらさせてないわね。でも、すぐに覚えてくれたから夏ぐらいには簡単なものは作ってたはずよ」

「それって、卵焼き、とか?」

「……いや、それはもう少し後ね。その時は焼くだけとか、炒めるだけが、多かったわ」

 

 あれ、となると、意識し出したのはもう少し後? 

 

「卵焼きはたぶん、調理実習の時からじゃない?」

 

 そこで、私のお母さんがするりと口を挟んできた。

 調理実習、いつのだろう? あんまり記憶にない。

 

「それっていつの?」

「たぶん、小5とかじゃないかしら? 学校で卵焼きか何かを作ることになって、芦花失敗したのかうちで練習するってやる気だったのよ?」

「〜〜〜〜! 私そんなことしてたの!?」

「ええ、可愛かったわねあの時も」

 

 ぐ、ぐぬぬ、記憶にないけどすごく恥ずかしい……。

 でも、それなら卵焼きはいつから? 

 

「あぁ、その時ぐらいにアキくんからうちの卵焼きの作り方聞かれたわね。特に何も思ってなかったけど、あれ練習のためだったのかしら」

「……かもしれないわね。どう思う? 芦花ちゃん」

「えっと……」

 

 そんなにも早くからうちの卵焼きの味知ってたんだ。

 私が練習したやつ、食べたことあるんだろうな。あんまし覚えてないけど。

 やば、まじで恥ずかしい。でも、そう考えるとその時には私のこと考えてくれてたんだ。

 となると、アキくんが作り方を聞いたのは確実に私のためってわけで。

 ……顔が熱い。この店冷房効いてないんじゃないかな? 

 

「ふふふ……顔が赤いわよ芦花ちゃん」

「……これは、その、冷房が弱くて」

「私は快適よ? なにか思い出したのかしら?」

 

 むむむ、百夏さん、からかってませんか? 

 にやにやしてるし、どことなく昼の真実のニヤケ顔と重なるところがある。

 てか、私たちのこと見守ってくれてたのは百夏さんも一緒なんだから、バレてるかすでに。

 隠しても無駄かな。

 

「……百夏さんは、アキくんが私に、その……好意を持ってるように見えますか?」

 

 私のわりと勇気を込めた問いに対して、彼女は何を今さらと言わんばかりに呆れた顔で口を開いた。

 

「それはもう、分かりやすかったわ。逆に、気付いてないと思ってた?」

「……いいえ。今痛感しました」

「そう、案外芦花ちゃん鈍いのね。あんなに分かりやすいのに」

 

 うぅっ、そこまで言わなくても。

 確かに今考えればすごい分かりやすいと言えるけど! 

 幼馴染としての距離感がそれを隠してしまったから、分からなかったのだ。

 正直アキくんはずっと隠す気でいただろうし、あのままだったら私は気付けないままだったと思う。

 かぐやちゃんの追求はそういう点では渡りに船だった、ほんとに。

 でも……鈍いかぁ。

 

「それで、芦花ちゃんはそんなことを聞いてどうしたの? もしかして、告白された?」

「……まあ、似たようなところではあります。でも、ちょっとややこしいことになってしまって」

「ふーん?」

 

 勘が鋭いというか、私が分かりやすいのかな。

 告白されたのか問われてしまえば、私としても否定できなくて。

 でもその後のことを考えると、肯定だけ出来るわけでもなく。

 そんな私の反応を見て、なにやら考えている百夏さん。

 

「その、百夏さんから見て、アキくんっていつから、その……」

「好きだったかって?」

「……はい」

「そうねぇ……教えてあげても、いいんだけど」

「だけど……?」

 

 それでも、私はここでアキくんの想いの丈を知るために少しまごついてしまったし、百夏さんに拾われてしまったけど、ようやく聞くことができた。

 でも、彼女の反応は少し予想と違くて。

 少しだけ目を細めて私を見つめている。

 なんだろう、もっとよろしくね? みたいなことを言われそうな気がしてたんだけど。

 

「芦花ちゃんは、覚悟はあるかしら?」

「か、覚悟ですか?」

「えぇ、あの子の親として、私にも思うことはあるのよ。特に貴女のこととなるとね」

 

 普段は優しくて、穏やかな眼差しから一転して、真剣で私を見定める視線。

 今気付いたけど、隣のお母さんも静かに、でも確かに私をじっと見つめている。

 どちらも、私の覚悟を見ようとしている気がする。

 

「芦花ちゃんは気付いてなかったみたいだけど、あの子相当貴女に入れ込んでるのよ? それこそ、自分を変えちゃうくらいには」

「自分を、変える……?」

「えぇ、元々のあの子とは別人なくらいにね」

 

 知らなかった。

 私の記憶の中のアキくんは、もう中学くらいからの頼もしくて、いつでも見守ってくれて、優しい笑顔の、今となっては好きになってしまった彼しかいない。

 記憶の朧げな、小学校の時の彼を私は、思い出せない。

 

「その上で聞きたいわ。芦花ちゃん、貴女はどれぐらいアキのことを、好きでいてくれるのかしら」

 

 どれぐらい。

 私の好きの量なんて、よく分からない。

 誰かに取られるくらいなら私の隣にいてほしい。

 出来れば、未来もずっと隣で一緒に笑っていたい。

 そんな気持ちがどれぐらいのものかなんて、私自身では判断できない。

 それでも、今問いかけられた質問の重み、なにより真剣な眼差しを私に向ける百夏さんの気迫が、私の逃げ腰を止める。

 もし、アキくんと一緒にい続けるのなら、ここで濁した回答なんて出来ない。

 それは、彼女にも彼にも失礼だ。

 ならば覚悟を決めよう。

 これが2度目になるかもしれない、私の彼への想いの確認だ。

 

「……私は、アキくんと一緒に笑っていたい。願わくばこの先も隣で、ずっと。それくらいには、彼のことを────好きです」

「そう……」

 

 私の宣言に、百夏さんは静かに一言返して黙ってしまう。

 お母さんも何も言わない。

 しばらく静寂が場を支配する。

 私は、足りなかった? それとも、足りている? 

 どちらとも言えない彼女の表情に、次第に焦りが生まれる。

 そんな私の気持ちを知っているかのように、彼女は口を開いた。

 

「そうね、ある意味合格で、また、不合格ね」

「ど、どうしてでしょうか」

「それは、あの子と話しなさい。覚悟は見えたわ。でも、まだあの子の想いに追いつけてないわ」

 

 その言葉を最後にさっきまでの真剣な雰囲気は霧散して、いつもの優しいアキくんママの顔になってしまった。

 追いつけてない、まだ。

 ここまで遡ってなお、私はアキくんの想いに辿り着けない。

 いったいどこまで、彼は私のことを。

 百夏さんは知っているようにも見えるけど、答えてはくれないだろう。

 もう私のお母さんと談笑してるし、今更聞いても自分で考えなさいと言われてしまいそう。

 とりあえず彼が変わり始めた小学1年のとき、それが鍵だと思う。

 でも何も思い出せない。

 なにがあったのか、どういう心境から今に至ったのか。

 私は知る必要がある、でももうこれ以上は本人に聞くしかない。

 今、この半端な状態で、彼は答えてくれるのだろうか。

 分からないけど、もう、迷っている時間は無さそうだ。

 明後日控えるかぐやちゃんたちの大舞台、そこまでにはアキくんの調子を戻さないといけない。

 今のままだと絶対勝てない。そもそも勝ち目の低い戦いなのに、もっと勝てなくなってしまう。

 

「会わなきゃ」

 

 私は決心した。

 また逃げられるかもしれない。

 そも会ってくれるかどうか。

 どうしたら……。

 そんな折、私のトークに連絡が。

 相手は……!? 

 

「アキくん!?」

 

 今、私が追い求めている彼からだった。

 内容は、明日の夜、SETSUNAのプラベで待っていると。

 今すぐ会いたい、そう返したかった。

 でも、それはしなかった。

 出来たかと言えばできたけど、それをしたらきっとアキくんはまたどこかへ行ってしまう気がして。

 この招待が、きっと最後のピースになってくれると思う。

 彼の想いを理解する、その大事な1つに。

 KASSENは苦手だ。いや、今となってはそこまででもないけど。

 彼と何度も特訓して、そこそこ戦えるようになったけど、彼に1度も勝ったことはない。

 きっと、明日のSETSUNAで勝利を求められるはず。

 私に出来るだろうか。いや、やるしかない。

 なんとしても勝って、決着をつける。

 この小さな騒動にも、私たちの関係にも。

 そして、この燃え上がった想いにも。

 

 

 







さぁ、決着をつけましょう。
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