正規の竹取合戦から4日、本日はお疲れ様&優勝おめでとうということで皆で集まって焼肉を食べに来た。
6人ともなると予約取らなきゃ入れないから店選びも大変でした。でもまあ真実が良いところ抑えてくれたのでなんとか。
食べ放題もあるお財布に優しいお店でなによりでした。今となっては皆そこそこお金あるから困らないと言えないこともないんだけどね。こういうところでちょっと貧乏性というか、節約したくなってしまうのだ。
予約時間にちゃんとついて、席に着く。
3人掛け2つのよくあるタイプ。片側に奥からかぐや酒寄さん芦花。
反対側の奥から真実守僕と言った感じ。
かぐやが奥なのは確実に騒ぎ出すから抑えときましょうねという酒寄さんの意志を感じた。
僕と芦花は通路側であれこれ受け取ったりする担当。メンバー的には当然なのかな。
焼き口が2つあるから6人いてもそんなには混雑しないと思う。かぐやが調子に乗って網を全部埋めたりしない限りはね。大丈夫だよね?
「それでは、もろもろお疲れ様でしたー!」
「いぇ〜い! かんぱーい!」
「おめでとーぅ!」
「応援ありがとうございましたー!」
「お疲れ様さまでしたー!」
「お疲れ様ー!」
音頭を取らされましたが、普通に乾杯をした。いやお酒じゃないから乾杯なのかな?
各々ソフトドリンクをぐいっと飲んで笑っている。
ちなみに僕と芦花はウーロン茶、かぐやと酒寄さんと真実がオレンジジュース、守はコーラです。
頼んだお肉が次々と運ばれてきて、早速テーブルが埋まってしまった。
カルビが6人前にロースも同じく、ハラミも同じだけあってタンもたくさん。あれ、ホルモンあるんだけどこれ誰だ頼んだの。
かぐやががっついて網を一面カルビで埋めて、滴る油でめっちゃファイヤーし始めた。さすがに入れすぎでしょもう。
慌てて店員さんが氷を持ってきてくれて、それを網に放り込んだことでことなきを得た。
初手から店員さんのお世話になったことで確実に目をつけられた気がします。時折通り過ぎる店員さん達が僕らの網凝視してる気が。
「燃えたね〜!」
「並べすぎよもう。しかもカルビだけって……他のも焼いてよね」
「まあまあ、どうせわたしたちで食べ切れるからいいでしょ」
「全員が真実の胃袋じゃないからな……?」
焼肉が初めましてなかぐやは燃え上がった炎も、たくさん並べられたお肉も全てが初体験で楽しそうだ。
諌めていた酒寄さんもそういうところを微笑ましく思ってるのかいつもより少し優しめだね。
とはいえ6人前分を実質
守の言う通り芦花はそんなには食べないし、酒寄さんもたくさんは食べるタイプではないと思うし。
僕もめっちゃ食べはしないしね。
こっちの網は安全にいろいろ焼いておきましょ。ロースとかハラミとかなぜかあるホルモンとか。いや、これ誰だ入れたの。
「焼き上がったら適当にお皿に置いといてねー」
「こっちの網で他の焼いておくから好きに持っていってね」
「荒鷹くんと芦花は私たちの良心枠すぎる」
「保護者枠だな」
「誰がお子様だって?」
「かぐや子供扱いしないで!」
いやそういうところ。
てか真実は何対して怒ってるんですか? 誰もお子様とは言ってないが?
とは言っても元より悪ガキタイプのかぐやに、ノリ良し空気読み良しな真実、押しに弱くて流される時が多い酒寄さんに比べれば僕と芦花が落ち着くのも仕方ないというか。
酒寄さんなんかはこっちよりだと思うんだけどね、かぐやのおねだりに弱すぎて戦力外というか。守は真実に対して柔いのでダメです。
「ほれほれ、肉が焼けたよ。欲しいならさっきの言葉を撤回しな〜?」
「何も言ってないんだが? そっちがその気ならこっちはこの綺麗に焼けてるハラミもロースもくれてやらないぞ?」
「殺生すぎる。すいませんでした」
「……っ、敗北はやっ」
真実がカルビをちらつかせてきたけど、残念こちらには残弾がたくさんあるのだ。
そちらがカルビだけ楽しんでる間にこちらはいろいろ楽しめるので?
そんな感じでやり返せばすぐに、白旗を振る真実。あまりの速さに守が吹いた。
食に関してはこだわりがある分、それをちらつかせたら弱いもんね。昔からそうでした。
真実の高速敗北に皆大笑い。しかしお肉はゲットできた真実はご満悦の様子。
カルビをあっちこっちに配る酒寄さん、こちらも焼けたお肉を適当に置いていく。
空けた部分には芦花が新しいお肉をいくつか置いてくれる。うーん、素晴らしいタイミング。
「ぅんまぁ〜〜!! 焼肉さいこぉ〜〜!!」
「お肉、おいし……」
「酒寄さんが泣いてる……」
「最近はいいもん食べてるでしょうに」
「それとこれとは別なんでは?」
「彩葉のことだから普段のご飯もある程度は節制してそう。かぐやちゃんが聞いてるかは別として」
たっぷりタレをつけたカルビを食べて、目をキラキラさせて喜ぶかぐや。その隣で焼けたロースを一口味わってほろりと涙を流す酒寄さん。
その様子にやや引いてる守と、明らか他よりも多い枚数の肉が乗せられたお皿を速やかに片付けていく真実。
僕は適当な事言って突っ込んで、芦花は真面目に考えて返している。
うん、いつも通りって感じ。
カルビが一撃で片付けられたので空いた皿をもらって新しいお肉を注文しておく。
6人もいると肉の回転が早すぎて大変だ。
あっという間に消えていくお肉、空いた皿はそばに積み重ねて持っていってもらえるようにしておく。
追加のお肉と、しれっと頼まれてる大盛りご飯。これは真実だな。
あ、ていうかホルモンは誰……真実かい。
今回もカルビハラミロースレバータンじゃがバターホタテバターとなんか色々来た。しれっとレバーあったけどこれ酒寄さん?
今度はかぐやが大暴れする前に色々バランスよく網に載せることに成功した。何度も燃やされてはたまらないからね。
時間のかかるものは先に、それ以外は適宜バランスよく焼きましょう。
「今更なんだけどさ、皆ヤチヨカップでは協力本当にありがとうございました!」
「あっ! かぐやもみんなのおかげでヤチヨカップ優勝できた! ありがとう!」
じわじわ溶けるバターを眺めながら、各自話していたら突然酒寄さんとかぐやが感謝を言い始めた。
「いやいや、2人が頑張ったからじゃん? わたし達はそのサポートしただけよ〜」
「そうそう、2人で勝ち取ったんですから」
真実と守は謙虚な姿勢。いやまあ僕らもそのスタンスではあるけど。
この結果は2人で努力して勝ち取ったもの。僕らはそのサポーターにすぎない。
かぐやの眩しいぐらいの才能と、酒寄さんの献身的なサポートと必要な時は前に出る覚悟があったからこそ。
コラボという方法で多少は僕らも貢献はしたけど、それだけ。
「誇りなよ、2人の努力が色んな人に認められたんだからさ」
「彩葉もかぐやちゃんも可愛くて凄いんだから、ようやく世界がそれに気付いたんだよ」
「もぅ……皆優しすぎ。私だけだったらここまで来れたとは思えないよ」
未だに酒寄さんは謙虚過ぎるというか、自分に自信がなさそうだけど、それは勘違いというか。
彼女を閉じ込めた檻が、その可能性を小さく見せていただけで。
かぐやがそれを壊そうと外から働きかけた結果、彼女はヤチヨカップで優勝するまでに羽ばたいた。
それは彼女自身の力だし、それを引っ張り出したかぐやのおかげでもあるね。
今回の優勝は酒寄さんをもっと前向きにするんじゃないかなって思ってる。いや、隣にかぐやがあるし前向きにならざるをえないかな。あれだけ引っ張ってくれるなら、勝手に進んでくだろうしね。
僕たちは、その背中を押して見守るだけ。
「今度コラボライブするんでしょ? 頑張ってね」
「そうだよ、あのヤチヨと並ぶんだから自信持ちなよ」
「わたし達もちゃんと見に行くからね!」
「最前列取らないと」
勝ち取ったコラボライブという大一番を、彼女たちが楽しめるように願う。
それがサポーターとして僕らがする最後のお仕事かな。その先は2人でどこへでも行けるだろうから。
きっと人気がすごく出て、雲の上の人になりそう。サインでももらっておこうかな?
「皆……本当にありがとう! 私、皆と友達になれて本当に良かった」
「かぐやも! みんなに会えてよかった!」
「うぇ〜い、なにしんみりしてんのさ。今は焼肉楽しまないと! ほら、それ焦げちゃうよ!」
「え、やば! 彩葉お皿お皿!」
「え、なになに、うわ、片面少し焦げてるじゃん……」
「あはは、ほーら。しんみりしてる場合じゃないよ? お肉が焦げちゃうからね!」
真実が空気を変えてくれたおかげで、ほんのりしんみりとしていた空気はまたどんちゃん騒ぎに戻った。
その様子をにこにこと僕と芦花は眺めている。
「明るくなったね」
「うん、あの時も思ったけど楽しそうに笑うようになったよ」
今までの酒寄さんなら笑ってもなんだか、少し寂しげだった。
でも、この前のKASSENの日、かぐやと笑い合ったあの時。確かに酒寄さんは心から笑っていた気がする。
それは今目の前で楽しそうに笑っている彼女の表情からも感じ取れて。
なんだかようやくだなといった感じ。
「芦花としては、ちょい複雑?」
「ん〜? そんなことないよ? 昔なら、そうだったかもだけど」
聞くのはちょっと悩んだけど、一応。
今はそうじゃないのは十分分かった上で、確認のために。
予想通り芦花はそんなことはないと首を振る。
「今は、アキくんがいるからね」
「……そんなこと言っても何も出ないよ? はい、いい感じのタン」
「ふふふ、タンが出てきたよ?」
くっそ、上手く乗せられた感じがする。でも、芦花ならいいか。
ニコニコ笑う対面の天使に敗北。別に自分で食べるために用意していたわけではないけど、なんかいい感じのタンを献上しておく。
奥側からなにやらこそこそ話しが聞こえてくるな?
「2人の世界じゃんね」
「割って入るのは無粋だよ」
「なんか私の話されてた気がしたんだけど」
「気のせいじゃない? 彩葉はいカルビ」
「あ、ありがとかぐや……って、これなんかデカくない?」
「なんか大きいのいたから彩葉にあげる! ちゃんと火は通ってるよ!」
真実と守がこっち見てこそこそ話してるけど、聞こえてますよー。
いや、僕らの話も聞こえていたか。うん、突っ込むのはやめよう。
酒寄さんもほんのり聞こえていたみたいだけど、内容までは分からなかったようだ。セーフ。
で、かぐやのあげたお肉、まじででかいな。3枚分くらいはあるように見えるけど。
「てかもうお肉ないじゃん。頼むか」
「荒鷹よろしく、とりまカルビ」
「へいへい。サラダも欲しいから頼も」
「アキくん私も欲しいな」
「もちろん。3人前分ぐらいにしとくか」
追加の肉に、サラダ。あとそろそろお腹も満たされてきたから締めのご飯か麺か頼んどこ。
「食べたねぇ」
「食べたな」
「かぐや、もう食べれない……」
「調子に乗ってデザートにパフェなんて頼むから……」
「ここの冷麺中々良かったね」
「ねー。一口もらったけど私も頼むか悩んじゃった」
結局あの後肉のおかわりをもう一回して締めに入った。
真実と守は石焼ビビンバ、僕は冷麺、酒寄さんとかぐやはユッケジャンクッパを頼んだ。芦花は僕のを少しあげた。
その後デザートに真実守酒寄さんがバニラアイス、かぐやが「これうまそー!」と頼んだパフェが想定よりもデカくて、1人で食べきれず総力戦をすることになった。
いや、焼肉屋のデザートのサイズではないだろあれ。
真実をして満足させる量だったので、あれはすごい。
店を出て、いつもの最寄り駅前で解散。
真実たちはどこかに寄るようで、僕らとも別れた。
いつもの帰り道、途中でコンビニに寄ってアイスを買った。
今回のチョイスは、芦花は6個入りのチョコアイス、僕は小粒サイズのアイスがたくさん入ったやつ。これは黄桃と白桃味。
そのまま近所の公園でベンチに座って食べる。
「あ、星型ある」
「それ珍しいやつじゃない?」
「うん、そう──ハートもあった」
「えっ? すご……」
芦花が箱を開けると1つでも珍しい形のやつが2つとも入っていた。
レアすぎぃ。すごい確率じゃん。
「アキくんに星型あげる」
「いいの? レアだけど」
「私はハートの方食べるからいいよ、はい、あーん」
「あーん」
流れるように付属のプラ棒で刺して、僕に差し出してきたのでなんの躊躇いもなく食べた。
僕も自分で買ったアイスを大口の方で開けて食べ始める。んー、桃味おいし。
芦花もハートのチョコアイスを食べて、んーと機嫌良さそうにしている。
夏のアイスは美味しくて魅力的だね、いっぱい食べたくなっちゃう。
もそもそと袋からアイスを取っていると、芦花が欲しそうな目でこちらを見ていた。
「はい、あげる」
「ん、ありがと」
となれば当然あげるわけで。
袋から出した1つの身を摘んで芦花に持っていく。
彼女はそのまま僕の指先からパクりといった。
……?
なんか、指先まで、食べられた気が。
「あの、芦花さん?」
「ん?」
「えっと、それは僕の指です」
「……ん、ごめん。落としたらまずいと思って」
「うん、そうだね、僕の渡し方が悪かったね」
ぴしりと目をまんまるにしている芦花と、耳の熱い僕。
どちらもじわじわと赤く染まっていって、視線を合わせていられなくなった。
でも。
「……ぷっ、くく」
「……ふふっ、あはは」
微かな沈黙の後、僕らはどちらともなく笑い出した。
ほぼ同じタイミング。
「今更こんなことでも照れてるの、なんか不思議だね」
「いやでも付き合ってまだ数日だし、間違ってないのでは?」
「十数年想っててその間に似たようなことしてただろうに?」
「んぐっ、……それはずるくないですかね!?」
「んふふ、ごめんね? でも、ちょっとしたことでも照れてくれると、ちゃんと意識されてるんだなって思って嬉しくなっちゃって」
「あったりまえでしょ。僕がどれだけ芦花のことを──」
過去を思い出してしたり顔で笑う芦花に、僕はたじたじ。
確かに昔似たようなことをしてなかったわけではないけど、それはそれとして今あんなことがあったら照れるのは当然というか。
そんな僕に芦花は嬉しそうに笑みを浮かべていて。
僕が芦花をどれだけ好きなのかを話そうとして、口にアイスが放り込まれた。
ちべたい。
「あむんっ!?」
「はーい、アイス食べて落ち着こうね〜」
「……」
「なーに、その目は──はむっ!?」
くすくす笑う芦花に、やられてはばかりではいられないとこちらもアイスを出してお返し。
そっとお口に押し付けてあげた。今度は指を食べられないように、唇に当たったくらいでそっと離した。
無事回避できた指を眺め、お互い静かに見つめる。
アイスを飲み込んだ後、また笑い合う。
「仕返しされた〜」
「先に仕掛けたの芦花じゃん」
「まさかアキく……んんっ、千秋にされるとはなぁ」
「げふ、ごほっ。……さっきは忘れてたのに」
「大事なことだからね。忘れてたのはごめんね」
「んや、いいよ。僕も頼んでおいて言わなかったしね」
2人きりの時はと頼んだことを、最初は芦花も忘れていて普通に呼んだけど僕も何も言わなかった。
でも、今になって思い出してくれて、呼ばれてしまうと咽せてしまって。
幸せな気持ちと恥ずかしい気持ちが少しだけ混ざっている。でも悪くはない気分。
「そろそろ酒寄さん達引越しの日だね」
「ね、マンションの最上階だってね。すご」
「今度は引越し祝いで集まるか」
「いいねそれ」
数日後に控える酒寄さん達の引越し。
僕らも手伝えそうなことがありそうなので参加予定だ。
そしてら今度はそれの祝いで皆で騒ぐ。
今年の夏休みは賑やかで落ち着かない日の方が多いようだ。