短めで申し訳なし。
「お邪魔しま〜す。今日明日はよろしくね」
「ようこそ、と言ってもよく来てるしお隣だからそこまで特別でもないかな?」
時刻は10時頃、引っ越しの日に話していたお泊まりをそこから数日後に実現した。
とはいえ両家ともに仲が良いのでお泊まりしたいと言った時もどちらも全然OKとゴーサインが秒で出た。なんなら今度は僕が芦花の家に泊まりに来なよと呼ばれることに。
外堀がしっかり埋まっていて大変よろしいようで。いやありがたいんだけどね。
ちなみに僕の両親は仕事なのでもう家を出ている。帰りは夕方前とかかな?
「何度も来てはいるけどさ、こう、なんというか、泊まるほどの時間の滞在は物心ついてからはなかったじゃん?」
「あー、確かにね。ちっちゃい頃はたまに預かってもらってたとか預かったとか聞いたような」
「でしょ? だから、ちゃんとこうしてくるのは少しだけ緊張しちゃう」
「ほとんど自分の家みたいなものだからくつろいでほしいな。とりあえず荷物は僕の部屋でいい?」
「そこは頑張るよ。うん、お願い」
芦花の荷物を受け取って僕の部屋に置いておく。
寝泊まりする場所については……まあ、選択肢は色々あったけどなぜか親からあんたの部屋でと言われたので、そういうことで。
さすがに布団は敷くけどね。一緒のベッドはまだ早いです。
「さて、何する? お昼には早いから時間あるよ」
「課題は終わってるから、どーしよっか」
「なんか映画でも見る? 遊ぶには短いし、映画とかなら丁度いいかも」
「いいね、サブスクのやつ? 何か見たいのあるの?」
リビングへ移動しながら何を見るか話し合う。
気になるものは大体芦花か、守とかと見てるので見逃したものはない。
芦花も気になるものはないようなので、適当に選ぶとしよう。
「じゃあ、見てるとは思うけどこれにしようか」
「お、いいね。私たちが生まれた頃とかのやつで人気なんだってね」
「そーそー。遠く離れたところに住む高校生の男女が入れ替わって〜ってやつ。僕好きなんだよねこれ」
「私も一度見たけど好き。飲み物だけ用意して見よっか」
サブスクにあった昔人気だった映画を見ることに。
なんというか、主人公とヒロインが困難を乗り越え、最終的に現代で巡り会うのが本当に泣けた。
お茶を用意してソファに並んで座る。
スタートボタンを押して、プロローグが始まる。
この映画曲もいいんだよね、カラオケとかでも歌うくらいには好き。
序盤の出会いのシーン、現実的にはあり得ない入れ替わりの現象に戸惑う2人。そこから自分ではない生活を楽しみ、入れ替わった相手を認識して喧嘩し、だけどなんだか気になっていく。
そうしてお互いの意識が変わってきたところで、重大な事実が発覚。そして、入れ替わりが起きなくなった。
困惑した主人公が原因を探り、見つけてしまったものに驚愕そして、落胆。
でも、彼はそこで止まらなかった。
いつかの思い出から、前に進むことを選択し、黄昏れ時の幻想的な場所で、ヒロインと再会する。
この時の音楽がまーじで神。何回もリピートした。
ここから主人公がまた入れ替わってヒロインを助けるために奔走して、結果はエンディングで。
見るのはたしか3回目かも? でも、またまた涙が。
良い作品は何度見てもいいね。
「……っうう、良かった」
「うん、やっぱいいね……って泣いてる!?」
「いやぁ、ハッピーエンドで感動しちゃうよね。再会のところは初見で泣いた」
「千秋って意外と涙脆かったんだね。一緒に映画見た時はあんまり泣いたところ見たことなかったのに」
「それは、まあ、芦花の前で泣くのは格好悪いというか、ね」
「なら、心変わりでも?」
ぽろりぽろりと涙をこぼしている僕に芦花がびっくりしたようだ。
まあ今まで芦花の前で泣いたことはないから、仕方ないか。
そんな姿見せるのは気まずいし、情けないからね。
でも、今はもう芦花の前で何かを隠す気もないというか、彼女ならどんな僕でも受け入れてもらえるという前提を知ったから。
本当にダメなところ以外は曝け出してもいいかなぁという気になりました。
「芦花になら、気にしなくてもいいかなって」
めちゃめちゃ端折ったけど、伝わるとは思う。
「ふーん。千秋はそんなに私にカッコつけなくてもいいと思ってるんだ〜かなしーしくしく」
「や、違くて? てか、名前呼びながら嘘泣きするのは良くないよ?」
伝わってるけどめちゃ白々しい嘘泣き。でも、演技派過ぎて涙見えてまして。
心臓に悪いのでやめてもらえると。
「まじで涙を流されますと僕の心臓に悪いからやめてほしいな?」
「あ、これはその、映画が良かったからその名残でね? 本当に悲しいわけじゃないよ?」
「それはよかった。でも、ガチで心臓に悪いです」
「ごめんって」
あの一瞬で涙流せるなら女優もいけるんでは。
でも遠くに行ってしまいそうなので嫌ですね。活躍するのは嬉しいけど、そばにいられないのはちょっと。
芦花の進路次第ではありうるから、その辺はおいおい話さないと。
とまあ僕の心労は伝わったみたいなのでよし。
そんでお時間もちょうど良い感じなのでお昼制作へ。
本日はそんなに手間をかけない簡単なものに。そうめんと、卵焼きと常備菜を適当に。
夜ご飯にお母さんが「たまには私も芦花ちゃんに作るわ!」と意気込んでしまったので、どれだけ用意されるかわからないのでね。お昼は軽めにしときます。
さて用意はできたし席につきましょ。
いただきまーす、と。
「卵焼きある〜」
「ないと逆にしっくり来なくなっちゃった」
「私のせい?」
「ん〜かも?」
「じゃあ責任とって食べます」
「や〜僕の分も食べないでよ?」
「それは聞けないかも〜」
「なら先に食べるしか」
箸が向かうのがお互いそうめんじゃなくて卵焼きなあたりがね。
そしてそれを取り合ってよく分からない問答を繰り広げたりね。
そもそもちゃんと2人で同じ量食べれるように切って分けてるから、最後の一個の取り合いにはなりません。
そんなことになったら譲っちゃうしね。
今日も今日とて卵焼きの出来は素晴らしい。芦花もにこにこしてますね。よし。
「私も千秋の卵焼き食べないとなんかしっくり来ないようになったかも」
「似たもの同士じゃん」
「何を今更。私がきっかけで、千秋が習慣にして、お互い必要なものになったんだから。ずっと作ってよね?」
「それはもう、お任せあれ」
そうめんをちゅるちゅると啜りつつ、卵焼きトークを挟む。
僕らの食卓には卵焼きがないともう違和感しかないようだ。我ながら習慣って怖いね。
ずっと作り続けてるからあって当然なものだと思ってるところがある。卵は常に常備されてるし。
芦花も同じような気持ちみたいで嬉しい。
軽めのお昼を終えて、食器を2人で片して洗ったあと、僕の部屋へ。
今度はゲームタイムだ。色々あるから芦花が楽しめそうなものを探そう。
まずは、協力ゲームから。有名な配管工のやつをやってみる。
「芦花、それを持ってこのボタン押すと空飛べるよ」
「ん? お、なるほど。さっき飛べるやつ千秋が取ってたから似たこと出来る?」
「できるねぇ、僕のキャラを持って同じボタン押せば飛べるよ」
さすがに長年幼馴染やってるので、息ぴったり。
操作にも慣れた芦花は高難易度ステージもお手のもの。
「あそこにコインがあるね」
「僕のこと踏んでいっていいよ。残機多いし」
「わかった。……よし、取れたよ」
「いえーい、パーフェクト〜」
いくつかのステージをちゃんと集まるものも集めてクリア。
まだまだステージはあるけど、他のも試したいので一旦終了。
「これ面白いね」
「気に入ってもらえたみたいでなにより」
「次はなにやる?」
ウキウキしてる幼馴染可愛すぎな。
お次は対戦ゲーム。と言ってもNPC込だけどね。
いわゆるモモパ、竹の星をたくさん取った人の勝ちになるやつだ。
「このミニゲーム難しくない?」
「僕はわりと得意……うわこいつ邪魔しやがった」
「わ、こっちにも来た」
「は? 芦花の邪魔するとか許せん。滅ぶべし」
「千秋? NPC相手にそんなに怒らないで?」
対戦ゲームといいながら芦花のサポートをしたり、邪魔したNPCをしはわいたり、時折ミニゲームで芦花に負けたり。
「やった、わたし1番」
「2番〜まあ予想通りー」
「軒並みNPC潰しといてよく言うよ……」
無事芦花を一位にすることに成功。
でも、さっきのやつの方が楽しそうだったかな?
「これも面白いけどもっと人数いた方が良さそうだね」
「どうせなら皆でやった方が楽しいかもね」
「じゃあ、これは一旦終わり、次は?」
芦花も次のゲームが楽しみのようですね。
それではこのレースゲームを始めましょう。
12台同時に走って1番を決めるやつだ。アイテムとか、ショートカットとかを駆使して先頭をキープするのがコツだね。
僕は骨甲羅、芦花は星のお姫様を選んだ。
「初手はスタートダッシュ決めるために、信号が青になるギリギリのタイミングでボタン押すんだよ」
「こ、こう?」
「そうそう……あ〜ちょっと押しすぎたね。オーバーヒートしちゃった」
「やば、めっちゃ置いてかれたんだけど!?」
「大丈夫、アイテムは順位低い方が良いの出るから」
「へーなるほど、この大砲みたいなのは?」
「それしばらく自動運転でかっ飛ばしてくれるやつ。めちゃ優秀」
「じゃあ使おう……すご、いっぱい抜かしてくんだけど」
「今しれっと引いていったの僕ね」
「え、ごめん」
「大丈夫、追いつくから」
レースゲームは不慣れなのか初手のスタートダッシュを失敗したり、甲羅を明後日の方向に投げたり反射したそれに当たったりとまあまあ大変だった。
が、それ以上に運が良いのかアイテムが良いものが多く、最終的には3位内を取る事が多かった。
僕は巻き添い食らって7位とかでした。
「私これは苦手かも」
「運はいいんだけどね。他のにしよっか」
「うん、お願い」
時刻はまだ15時ぐらい。
お次は何にしようかな?