いちゃ……いちゃ……。
結局は親が帰ってきてご飯に呼ばれるまでに果物を詰んでまとめて大きくするゲームや、落ちてくる様々な形のブロックを詰んで消す対戦パズルゲーム、1人用だけど動物たちの村を発展させるゲームをやったりした。
パズルゲームは操作に慣れると普通に上手くて何回かやってるうちに手加減なしでも僕が負けるようになった。上達が早くて何よりです。
村発展ゲームは、さすがは芦花というべきか自作の服を作る機能で素晴らしいデザインの服を完成させて、思わず拍手してしまった。
「普段あんまりゲームとかしないけど、どれも楽しいね」
「芦花が楽しんでくれたようでなによりだよ」
「でも、やっぱり2人でいるなら2人でやる方が楽しいかな」
最後にやった村発展ゲームが1人用だったので、そんなことを芦花はこぼした。
僕としても一緒にやりたかったけど、残念ながら持ち合わせがなかったのでね。
「あきーご飯よ〜、芦花ちゃんも降りてきて〜」
「はーい!」
「ご飯だね、楽しみ」
「はてさてどこまで気合が入ってるのやら」
ゲーム後の雑談をしているうちに親から呼ばれた。
本日は我が母が気合を入れて用意しているようで、少食の芦花に一体どれだけ詰め込ませる気なのかちょっと不安。
彼女を連れて一階のリビングへ向かう。
一旦手を洗ってから顔を出すと、テーブルの上にはなかなかに数の料理が。
まじで気合い入ってるじゃん。
「わぁ……! たくさん用意してくれてますね!」
「今日はそれはもうたくさん気合い入っちゃったわ! 食べれる分だけ好きに食べてほしいわ」
「はい、ありがとうございます!」
「気合い入ってんなぁ……」
食卓につき目の前に並ぶたくさんの料理に目を輝かせている芦花。
今回の品は、ハンバーグ、ミートボール、ポテトサラダ、コールスロー、ミネストローネ、いくつかの常備菜。
あと、卵焼き。母作りのものです。
メインだけでも二品、さらにあれこれとバランスも考えて作ったのか彩りも鮮やか。
卵焼きも今日のメニュー的にはあまり合わなそうだけど、なぜか用意していたのには笑ってしまった。お昼に続き2度目である。
「さ、いただきましょ。あなた、お酒は程々にね?」
「分かってるよ。あき、飲み物は用意してあげなさい」
「もち。麦茶でいい? てか、それしかないけども」
「大丈夫だよ、お願い」
洋寄りメニューですが、主食は米です。やはりお米が1番。
自分の分をよそって、隣の芦花の分をこれくらい? と聞きながら盛り付ける。
麦茶を冷蔵庫からグラスに注ぎ、僕と芦花の分を持っていく。
片方を渡したところで僕も席につき手を合わせる。
僕と芦花が隣、対面にお父さん、その隣にお母さんだ。
「いただきます」
「「いただきます」〜」
「いただきますっと……」
芦花はまずはコールスローから。僕はハンバーグへ。お母さんは芦花が何取るかを見ているようだ。
お父さんはビールを飲んでなにやら幸せそうな顔。うん、仕事お疲れ様。
ハンバーグうま〜と思いながらご飯を食べる。
芦花もコールスローの後はハンバーグに手をつけるようだ。
「……美味しいです!」
「良かったわ。普段あきの料理食べてるからなんか違うとか言われちゃったらどうしようかと」
「あはは、そんなこと言わないですよ」
「卵焼きは言われそう」
「なにか言ったかしら」
「なんでもないっす。ハンバーグおいしー」
ハンバーグの感想を聞いて一息つけたのか自分も手をつけ始める。なお、僕が作ったのとは違うのは当然なのだが、そこは芦花、さすがに顔にも声にも出さない。
とはいえ卵焼きはそうもいかないだろうとぽつり呟いたら、対角線から低音の声が聞こえてきたので取り繕っておく。ご飯がなくなったらまずいからね。
ちょっと睨まれてたけど、素知らぬ顔をしている僕に諦めたのか視線を芦花に戻して最近の話を振り始めた。
僕らが付き合ったことに真実たちとどっこいくらいで喜んでるのが僕と芦花の両親たちだ。
それはもう僕らが仲良くしてる話がいくらでも欲しいようであれこれ根掘り葉掘り聞いている。
夏休みなのも相まって特に何もなくとも最近はお互い一緒にいるし、目的もなく出かけたりもしてるけど、毎度何かあるわけでもないし。
芦花も行った先のあれが良かったとか、あの時の僕の横顔が素敵だったとか、あそこの服屋で気になるのがあったとか、あの服僕に似合いそうだとか、ちょくちょく僕についても言及しつつ会話している。
片側で芦花とお母さんが盛り上がる一方、僕らメンズは黙々とご飯を食べて、お父さんはお酒を飲んでいる。一応まだ一本目。そろそろ二本目かな?
「あき」
「なに?」
「今、どうだ?」
「どう、とは」
もぐもぐしながら、ぼんやりお父さんのビール缶見て美味しいのかなと疑問に思っていたら、急に内容がわかりづらい質問が飛んできた。
もう酔ってる? と思ったけど、その眦は、わりと真剣で。
……もしかして、どうって芦花とのこと聞いてる?
「……芦花とのことなら、幸せだよ」
「そうか。それならいい」
「いやいやあのさ、いくらなんでも言葉端折りすぎでしょ。親子でも分かることと分からないことあるからね?」
「今伝わったならいいだろ」
「それで説明怠るからたまにお母さんに耳引っ張られるんじゃないの?」
「うっ」
我が家の家庭内ヒエラルキーはお母さんがトップです。我が父は言葉が足りないというか、言外に伝えてくるというか。
お母さんの察し力でなんとかなっております。
ある意味この背中を見てきたから僕は芦花に褒める時は直接ちゃんと言ったりしてるのかもね。言わないと伝わらないし。
芦花も察し力は高いというか、僕に限って感じ取られてる気がするけども。
「まあ、仲良くやれてるならいいけどさ」
「……そこは痛いところだからつかないでくれ。あと、ビール持ってきてくれないか?」
「仕方ないなぁ」
空になった缶を受け取り、捨てるついでに冷蔵庫へ。同じ種類のでいいか〜とキンキンに冷えてるビールを取り出す。
と、そこへ芦花が。
空になったグラスを持ってきているあたり、麦茶欲しいのか。察せなかったので敗北。察し力はまだまだのようです。
「ごめんね気付かなくて。グラスもらうよ」
「いいよ、アキくんもお義父さんと話してたからね」
「まあ、そうだけど。……お父さん、ね」
「? お義父さんでしょ?」
「これ義理の父のほうだな? ……間違ってないけど、ありがと芦花」
「? どしたの?」
「なんでもない」
確実に義理の父とかいてお義父さんと呼んでいるのが分かる。
ならばきっと母のこともお義母さんになるのだろう。
それはつまり将来的にはそう呼ぶことを了承していて。
いやうん、指輪渡してるし、なんなら今もつけてて煌めいてるけど。
なんかこう、気恥ずかしいというか家族なんだなというか。
麦茶を渡したのに、僕が動かないところを見て小首をかしげる姿も愛おしくて。
冷蔵庫前で固まっている僕らを、お母さんがニヤニヤと、お父さんがビールまだかとじっと見てるのに気付くのは、もうちょぴっと後のこと。
「ごちそうさまでした! 全部美味しかったです!」
「それは良かったわ。片付けはこちらでするから、芦花ちゃんはくつろいでて。ほらあなた、よろしくね」
「任された」
「あき、お風呂用意しておいて」
「はーい」
なんだかんだテーブルにあったものは綺麗になくなった。芦花も普段よりかは多めに食べていて、少しだけ動くのが気怠げに見えた。
その辺を察したのかお母さんが諸々を僕らに振り分けて、当人は芦花の隣を確保。お喋り続行というところかな。
食器を下げてお父さんに託して、僕はお風呂場は移動。
浴槽の掃除と、ついでに周りのお掃除ですよ〜。
芦花が入るのだから、入念にね。
髪を乾かすのにも時間はかかるだろうから先に入ってもらうことになるかな。
掃除が終わったら栓をして、あとはボタンを押して自動でちょうどいい量を貯めてもらう。
気付いたら30分くらいは経ってたな。芦花はリビングかな?
アキくんがお風呂場に向かってから、百夏さんとお喋りすること数分。
不意に、彼女は真剣な目をした。
「芦花ちゃん。あの日の質問覚えてるかしら」
唐突なふりに、一瞬なんのことかと思ったけど、直近のことだと気付いた。そして、その内容も。
「どれくらい好きか、ですか?」
「そう。あの日私はまだ足りないと言ったわね」
「そうですね、合格で不合格、でしたか」
「ええ。今ならあの日の言葉の意味が分かったかしら?」
そう問われて私は、確かにあの時の段階では足りてなかったし、その不合格の意味も今なら分かる。
好きという気持ちでは合格、足りてたけど。
愛してるという気持ちでは不合格で足りてなかった。
その理由は彼に聞けというのも、彼の気持ちが既に愛になっているからだとようやく分かった。
「はい、あの日の私はまだ好きでしかなかったですから。今なら、胸を張って言えます。愛してると」
「うふふ、なら良かったわ。あの子も回りくどいというか、変なところであの人に似ちゃったから。大事なところは濁すというかなんというか、ね」
「そうですね、もっと早くに言ってくれたら、というのは結果論が過ぎますから言いませんが。だとしても隠しすぎですね」
「家系なのかしらね……あの人本当に伝えるの下手くそでね。あきは大丈夫かしら?」
さっき少しだけ聞こえた彼とお義父さんとの会話、内容は少ないしそもそもお義父さんがあまり喋らなかったけど、なんとなく百夏さんの言いたいことは分かった。
でも、アキくんは逆にそういうところを意識して私にちゃんと伝えてくれてると思う。
日頃、なんなら本当に些細なことでも褒めてくれるし感謝もしてくれる。2人きりだとすぐに好きとか囁き出すから、たまに脳が沸騰しそうになる。
「大丈夫ですよ。むしろ伝えられすぎて時々私がやられますね」
「あら、お熱いみたいね。良かったわ、あの子ほんとに芦花ちゃんのこと好きだから、ちゃんと伝えれてるか心配で」
「安心してください、彼のこと絶対離さないので」
「……あら。熱すぎて私も当てられそうだわ。そろそろ退散しようかしらね、あきも戻ってきそうだし」
「芦花〜いる〜?」
ちょうどよくアキくんが戻ってきた。
浴室の掃除でほんのり湯気を浴びたのか、なにやらしっとりしていますね?
ソファに座っている私を見てパッと笑顔を浮かべて寄ってくる。可愛い。
「あき、掃除終わったみたいね」
「うん、ボタンも押してある。貯まったら芦花からでいい?」
「いいわよ、お客様だからね」
「そんな、お仕事終わりですし、お二人からの方が」
「いいのよ、気にしなくて。先に入っちゃいなさい」
「……では、お言葉に甘えます」
「貯まるまで時間あるし、部屋でゆっくりしよう」
「ん、じゃあ百夏さん、また」
「ええ、また」
強引に一番風呂を押し付けられてしまった。
仕方ないので今度アキくんがうちに来る時はアキくんを一番風呂に入れてあげよう。
部屋に戻った僕らは、貯まるまでの時間がそんなにないのでゲームをするわけでもなくカーペットの上で背中合わせでの形で座っていた。
僕は本を読み、芦花はスマホで何かを見ている。スマホをタップする音が時々響く。
背中越しの芦花の体温が、なんだか心地良くて。あまり体重をかけないように遠慮していた。
すると。
「千秋? 遠慮してるでしょ」
「え、なにが?」
「体重かけないようにしてるの、分かってるよ?」
「なぬ」
「さすがに重みで分かるよ。もっとかけていいから──いや、かけてよ。その方が嬉しい」
バレちゃった上にもっとこいときたか。
その方が嬉しいとまで言われてしまえば、逆らう余地もなく。まあするかもないけど。
少しずつ、彼女の方に体重を乗せていく。さっきまでは彼女を支える感じで、全てを受け止めていたけど。
今度は力を抜いて、彼女にも受け止めてもらう。
ちゃうど良い感じでお互いに背中を預けあって、くすぐったい気持ちになった。
そして、さっきは感じなかった心臓の鼓動が、こちらにも響いてきた。
とくん、とくんと彼女の小さな体を震わす振動が、僕にも。
「重くない?」
「ぜーんぜん? さっきまでが軽すぎたからね」
「むう、僕が言うべきセリフでは?」
「千秋が遠慮してたんだから、その資格はありませーん」
「ぐぬぅ」
背中越しに、顔も合わせてないのに、僕らは笑い合ってるように感じた。
声のトーンとか、体の振動とか、そういうので笑ってるように思えた。
幸せな時間だった。
「そろそろお風呂貯まると思う」
「ん、じゃあそろそろ行こうかな」
「わっ……」
「おっと、急に立ち上がったからかな? ごめんね」
そろそろ溜まりそうだなと思って、芦花に伝えたらそのまま立ち上がられてしまって僕は乗せていた体重の行き先を失ってころりと地面に転がってしまった。
眩しい部屋のライトをバックに、芦花がくすりと笑みを浮かべて手を差し伸べる。
わぁ、天使みたいじゃん。後光がさしてるなら女神か?
なんて、どうでもいいことを考えてしまって芦花の手を取るのが遅れてしまった。
ので。
「なーにぼんやりしてる、のっ」
「……ん? お、わぁっ」
彼女の方から手を引っ張られた。
体重の差的に持ち上がらなそうだったけど、僕も反射的に起き上がったので逆に芦花が勢い余って尻餅をついてしまった。
「わ、ごめん芦花。大丈夫?」
「んーん、大丈夫だよ。千秋が勢いよく起きてくるからびっくりしちゃった」
「ちょっとぼんやりしてたわごめんね」
「いいよ」
「芦花ちゃーん、お風呂溜まったわよ〜」
「はーい、今行きまーす! ……行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
お母さんにも呼ばれて、芦花はお風呂グッズを持って降りて行った。
……あれ、もしかしてこの後お風呂上がりの芦花と過ごす?
…………お風呂上がる前に水被っとくか。
あまり関係ない話ですが、芦花とアキくんの親の名前をここら辺で。本編ではたぶん出す予定がないので。
アキくん母、百夏(ももか)。アキくん父、冬万(とうま)。
芦花母、桂花(けいか)、芦花父、柊(ひいらぎ)。
アキくん家は数字と季節、芦花家は秋の花から取っております。