誤字報告、感想、評価ありがとうございます!
だいぶ昔の話ではありますが小松菜とあったところが小松菜奈になってるところがあったと感想できて本当に笑いました。何をしてたんだ昔の私は。
総合評価が1000ポイント超えました!初めて!嬉しい!
ぱちり、と目が覚める。
いつになくよく寝た気分で、すぐにでも動き出せてしまいそうなくらい体が軽いなと思った。
起きあがろうとして、右腕に重みを感じた。
そのままそちらを向いて、言葉を失う。
天使だ、天使がいた。
桃髪の無防備に眠る天使が。
少しだけ散らばった長い髪。寝癖もほとんどなくて、指がすっと通りそうだ。
綺麗な孔雀緑の瞳は閉じられていて、長いまつ毛が触れることを躊躇わせる。
化粧を落とした肌は、触れればもちもちと跳ね返してきそう。
唇はほのかに開いていて、すーすーと小さな呼吸音を奏でている。
僕の右腕を枕に気持ちよさそうに眠る幼馴染が、そこにいた。
あまりにも無垢で無防備な寝顔に右腕の痺れなんて気にならなかった。彼女を起こしてしまう方の方が申し訳ない気持ちになる。
起きあがろうとしていた気持ちには少し落ち着いてもらって、僕は静かに寝顔を観察することにした。
と言っても顔の良いところは大体あげたし、上げなくとも誰でもわかるよね? 芦花は最高に素敵な女の子なのでね。
寝起きの頭はシャッキリしてたと思ったけど、眠る芦花の姿を見るまで気づいてなかったあたり相当深く寝ていたようで。
確か昨日はお風呂から上がって髪乾かして、歯磨きしてから部屋で……。
あ〜、うーん。
めっちゃ典型的なバカップルみたいないちゃつきをかました気がしますね。そのまま眠そうな芦花を抱き込んでおやすみ、と。
一緒に寝る予定はなかったのにうっかり同衾(同じベッドで寝る事、古い言い方だね)かますなんてね。何もしてないけど、ちょっと背筋が冷えております。
そういうことはちゃんと責任取れるようになってから、という気持ちではあります。
が、そもそも指輪を渡しといて責任とはなんぞやと言う問題もある。将来まで誓っといて今更責任が取れませんだなんてどの方が言えたものか。
となると、昨日の朝に親が仕事に行く前に「孫はまだ早いからね」なんて言ってたのが思い出されてくる。
何を言ってるんだと聞き流してたけど、うんこれはあかんやつですね。
ちゃんとセーブしないとしれっと流されてしまいそうだ。いや芦花がそんなに攻めてくるようには見えないけど。
僕の意思は芦花にはよわよわの紙っぺらなので、万が一にでもそういう感じになってしまって芦花に押されてしまえば終了である。
気をつけよ。昨日のことをちゃんと胸に刻み込んでおかないと。
ぼんやり芦花の寝顔を眺めながら考えるおそらく早朝。
体感時間はいつも起きる時間よりも1時間くらいは早そうだ。
スマホを撮りたいけど身動きすれば彼女が起きてしまいそうなので、何もできない。
出来ることといえば、自由な左手でそっと髪を撫でる事。
やさーしく、丁寧に撫でると、寝てる芦花の顔がふにゃりと柔らかくなった。わお可愛すぎ。理性さんが休暇に入りそうです、行かないで。
「ん〜……」
「…………」
「……ぉっと」
理性を引き留めつつ、しかし左手君は意思から離れて撫でるのをやめてくれない。
結果、ふにゃふにゃ笑顔の芦花が言葉足らずな、もっと、を要求してきた。口から出てきたのはぉっとだったけど、これは確実にもっとだと幼馴染センサーが反応した。
求められたので、やるしかない。
しばらく僕の左手は撫でマシーンと化した。
右手はシビシビ、左手はなでなで、頭の中は理性を引き止めるためにぴりぴり、心臓はドッキドキで身体中各地が盛り上がってます。たすけて。
1人お祭り状態な僕の前で、無邪気な笑顔を浮かべていた彼女がうっすらと瞼を上げた。
「…………んぅ?」
「……?」
「……ぁ、ちあきだぁ」
「……んぐっ」
たぶんまだ寝ぼけてる。いや、確実に。
だというのに僕を見て名前を呼んでにへらと笑みを浮かべるのはなんだい? 僕をどうしたいんだい? どうにでもしてくれ。
わぁ〜と口から音だけを発しながらまたも胸元に突っ込んでくる。
昨日の再来だと頭の中の理性がヘルプコールをしているが、関係各所はどこもスルー。
というか心臓はさらにバクバクしてるし、右手は感覚ないし、左手はもう止まらないし、頭の中は理性が旅に出ようとしてて大変。
そして胸元では愛しの幼馴染が本能のみで愛嬌を振り撒いていて壮絶な模様、戦場かな? 焼け野原も良いとこです。
「……あっ」
なんて思っていたら胸元から顔を上げて芦花がこちらを見た。
そして、その焦点がちゃんと僕にあった。
瞬間赤くなっていく顔、なのに体は全然離れようとはしてなかった。おや?
「おはよ、芦花。目、覚めた?」
「〜〜っ! ……おはよぅ……千秋、うんこれ以上なく」
おはようの挨拶をすると、一旦悶えたあとに限りなく小さい声で返ってきた。
さっきまでの甘えムーブが思い出されたのかな? もしくは昨日の方か。どちらにせよまあそうですよねって感じ。
普段はどちらかと言うと真面目だしキリッとしてる芦花がら脱力ふにゃふにゃモードになったのはなかなか珍しい。
本人もそれを自覚したのか離れはしないけど、顔をまた埋めて見られないようにしているみたい。可愛いかよ。
「よく寝れたかな」
「うん、ぐっすり。なんだか暖かくて、幸せな気持ちだった」
「おぉう、あの、えと……はい。僕も、です」
「そっか……ふふ、良かった」
うわぁぁぁぁぁ、可愛い!
上目遣いでそんな愛らしい笑み! 100点! 120点! 花丸!
思わずむぎゅっと抱きしめてしまった。
急な抱きしめに芦花から「ふみゅっ」というなんか可愛らしい音が聞こえた。いやほんとに、可愛いな?
そのまま痺れた右腕で抱え込み、左手で背中をポンポンと優しく叩いていると、呼吸のリズムがちょっとずつ伸びていき──。
「……って、寝かしつけるのやめてね」
「バレた?」
──二度寝の誘惑には勝ったようです。
いや、僕が寝顔が見たかっただけで、他意はないです。
抱き込みから脱出した芦花が、僕と同じ目線の高さに体をもぞもぞと動かす。
「もう、そういうことするなら私も仕返ししちゃおうかな」
「仕返しとは?」
「同じように寝かしつけてあげよっか」
「すいませんでした」
鼻先が触れ合いそうな距離で、ぽしょぽしょと小声で話す。
仕返しされるのはいいけど、今やった感じでやり返されると理性が完全に退職しちゃうのでやめてね?
即座に謝って事なきを得た、はずだけどなんだか瞳がギラついてますよ? 悪巧みしてませんか?
そう思っていたのは間違ってなかったようで。
器用にベッドの中で会釈するように謝った僕の頭をそのまま抱え込まれてしまった。
つまりは、芦花の胸元に抱き込まれてるわけで。はい、いろいろアウトです。
「……あの、芦花さん?」
「静かに」
「いや、あの」
「ダメ」
「……え〜」
優しく、だけど顔は上げられないように抑えられていて彼女の顔色がわからない。
でも、ぐっと押し付けられて聞こえた心臓の鼓動はだいぶ早くて、彼女も恥ずかしさを感じているのは確かだった。
僕もさすがに恥ずかしさというか照れが止まらない。最愛の女の子の胸元に丸め込まれてしまえば男の子はもうどうしようもない。
煮るなり焼くなりお好きにどうぞな状態だ。
ついでに足まで絡められてもう身動きが取れない。寝起きの低めの体温が交わり合ってなんだかもう、動く気力も起きる力もなくなってきた。
あ〜、もういいか。
「諦めて寝る……」
「あら、おやすみ千秋」
「ずるだぞ〜……まったく……」
背中をポンポンと叩かれると、次第に睡魔が襲ってくる。
先ほどの仕返しが見事に決まって、敵わないなと思いながらまた瞼を閉じた。
結局二度寝から目覚めたのは体感1時間くらい後。
今度はもう寝る気もなくて、お互い起きようとむくりと起き上がった。
芦花は今日戻るけど、何時まであるから決めてなかった。
晩御飯前かなって感じではあるみたいだけど、どうせ隣だからいつでもいいみたい。
とりあえず身支度整えてから朝ごはんを食べた。
両親はいたので一緒。
2人揃ってリビングに降りてきたのでなんかあらあらニヤニヤされたけど無視。なにもしてないです。その腹立つ視線やめてね。
お父さんはチラチラ見るのやめて? 気になるなら聞きな? 答えないけど。
お母さんの用意した朝ごはんを食べて、仕事に出る2人を見送る。
僕と芦花が並んでると、「……なんだか、いいわね」「そうだな。いい」となにやら意味深に頷きあって玄関を出て行った。
なんのことやらと僕らは首を傾げていたけど、よく分からなかった。
「どする? なにしよっか」
「ねー。ゲームはたくさんしたし、映画の気分でもないし」
「……………………じゃあ」
「ん?」
「もう少しだけ、その、さ」
「……あー」
僕の部屋に戻る階段をゆっくりと登って。
部屋前で彼女の手を取った。
それだけで察してくれたようで、芦花は照れて恥ずかしそうだった。
まあ、はい。僕が芦花と触れ合ってたかっただけです。
寝起きでまどろみながら低い体温が交わっていく感じが思ってるよりも良くて。
そこまでする気はもちろんないけど、手を握ったりするくらいは、その、いいかなと。
彼女の手を引いてベッドに座って。
特にそれ以上はすることもなく。ぎゅっと握った手はいつのまにか指と指を交互に絡め合う恋人繋ぎに変わっていて。
それがより一層密着感があってなんか良くて。
結局その日は僕のいつもの日課はなにもしないまま、芦花と手を繋いだり撫で合ったり、時折離れてみて何から物足りなくなったりしてくっついて過ごした。
晩御飯前に芦花は帰る予定だったけど、なぜか両家合同の食事会が急に発生したのでそのまま2人でお店に向かった。もちろん芦花は着替えに行ったし僕も着替えたけどね。
今回はお寿司屋さんだった。
生暖かい視線を相変わらず感じたけど、お寿司は美味しかったし、物欲しげな視線を感じた時はお寿司を食べさせたりした。
……あれ、もしかして、真実たちの事揶揄えないのでは。